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はるかかなたのエクソダス2 ~夜明けの翼  作者: 風庭悠
第12章:第三の災厄:ブヨが地を襲う
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第91話:ヘリオポリス奪還

 [星暦998年6月20日]


ジョシュアは何度も深呼吸を繰り返す。落ち着け、落ち着け。緊張感に手が震える。

ほかのチームメイトたちが2回の戦いで華々しい初陣を飾る中、出遅れていた自分にようやくチャンスが回ってきたからだ。


 「ヘリオポリス奪還作戦」である。ヘリオポリスは、もともとテラノイドが建設した14の軌道エレベーターを持つ主要都市のひとつであり、元は「ウインダム」とい名でスフィア王国の首都であった。アマレク人はそのうち13の都市を使用し、残りの一つは、フェニキア連邦が租借している都市、『ティルス』である。


 そして、およそ200年前、重力子炉グラヴィトン・リアクター事故で放棄された都市である。現在、都市にの外側には立ち入れないようにするための構造物がめぐらされており、都市へは軌道エレベーターか空路で侵入するほかはない。


 「ようは、 軌道エレベーターを制圧おさえてしまえばおわりです。ただ、軌道エレベーターをの天頂部にある構造物がっやかいなのです。」

尊が説明する。


もともと貴族(ハイ・ランダ―)たちの宮殿パレスとして調えられたため、もはや宇宙港の付属施設どころかコロニーとなっていたのである。

「バッキンガム、ケンジントン、ウインザー、コート・ハンプトンの4つからなるコロニーはかなり堅固です。とにかく宇宙港を制圧し、物資を補給する聖杯システムをおさえなければなりません。」

宇宙港は現在でも貨物港として用いられており、そこにある物資を押収するだけでもこちらの財布が楽になるのだ。


「まあ、こちらが交渉材料として争う姿勢をみせているので、まさかいきなり分捕りに来るとはアマレクも思っていないでしょう。」


 作戦は、ラザロ隊が囮として航空守備隊をおびき出す。エリカ隊とジョシュア隊が空港を襲撃。カレブ隊と尊がメインシステムを手に入れる。 ボウマンと旧戦線の部隊が一気に地上まで制圧する。」というものであった。


 作戦名は「トリクル・ノック・ダウン」(金持ちからおこぼれを奪い取れ)である。


「作戦の成否の鍵はジョシュア隊が握っています。ジョシュアが空港の防衛システムをどう抑えるかがこの作戦の肝ですからね。頼みましたよ。」

尊がやんわりとジョシュアにプレッシャーをかける。


「ミ、ミノ●スキー粒子とかまけば……」

「ジョシュアよ、それは設定の違うお話じゃ。「星暦」と「宇●世紀」は違うでの。」

ジョシュアの冗談にベリアルが真顔でツッコミをいれた。


 作戦が始まる。まずネーヅクジョイヤは宇宙港を防御するアステロイド・フィールドに紛れてゲート・アウトする。このアストラル・ドライブはアマレク人には知られていないため、容易に接近できた。まず、反対方向にやはりゲート・アウトしたラザロの部隊が姿を現すと、アマレク側は緊急発進スクランブルをかける。ラザロはデコイを使って大軍にみせかけているため、アマレク側も駐留部隊のほとんどを出撃させた。


 そこにネーヅクジョイヤから発進したジョシュアとエリカの部隊が空港を襲撃する。異変に気づき戻ってきた駐留部隊をエリカ隊とラザロ隊が挟み撃ちにする。ジョシュア隊はその間、空港の防衛システムを無力化させることに専念した。それには、ミサイルの制御アンテナを破壊したり、空港の監視ポッドを破壊することが含まれる。ようは、攻守のための目をつぶしていくのだ。


「俺の初陣地味すぎ。」

ジョシュアはぼやくも、どれほどこれが大切な任務かは理解していた。

「一つも見落とすな。おれたちの失敗は即味方の死につながる。」

部隊に発破をかけ続ける。


「隊長、終わりました。」

次の展開に気がはやる部下たちに、ジョシュアは

「だめだ、もう一度確認してくれ。」

場所を変えて何度でも点検させる。すると何点か見落としが発見される。


尊はカレブの主天使ドミニオンマルバスの指揮座に収まっていた。

壁面に穴を穿つと、ボウマン率いる主力部隊と共に侵入する。中には敵の守備隊が待ち構えていた。


交戦しつつシステムと接続をはかる。

「ベリアル、頼んだぞ」

「任せろ。」

ベリアルは送り込まれるやいなや全システムを制圧し、全施設のコントロールを尊の意思の下においたのである。

ここで戦況はほぼ決した。


戦況をモニターで見守る守備隊の幹部に尊から通信がはいった。

「くそ、テロリストめ。」

隊長は忌々しそうにつぶやいた。

「こちらは、スフィア王国国防軍、士師ジャッジの不知火尊と申します。お初におめにかかります。当方はこのヘリオポリスのすべてのシステムをコントロール下に置きました。速やかに武装を解除し、投降してください。これ以上の抵抗は無益であるばかりか、未来ある有為の人材の無為の損失を招きかねません。我々は皆さんの退去を求めているだけです。速やかにご返答ください。」


「何をバカなことを。」

隊長が吐き捨てたときだった。管制室に警報音アラートがなり響く。

「全システムがダウンしました。生命維持モード始動します。」

今度は部屋が暗くなる。モニターには残り時間のカウントダウンが始まった。


「どうした?システム復旧急げ!」

隊長の檄にも、みな首を振る。完全にコントロールを奪われたのだ。

続いて、各所の隔壁が閉鎖され、中の守備隊の動きが寸断される。陸戦機セトに乗る兵士たちもついに投降を始めた。


主力のボウマン隊は、軌道エレベーターを降り、地上港の制圧に取り掛かった。地上のアマレクの戦力は微々たるものに過ぎない。


さらには、エリカ、そしてラザロ隊と交戦していたホルス隊も補給のために帰るに帰れなくなっていた。


「限界です。残念ながら。」

側近に促され、通告から12時間後、隊長は投降を通達してきた。

「我々を捕虜にするというのであれば、最後の一兵に至るまで戦う」

そう意気込んだ隊長に対して尊は穏やかに微笑むと


「御心配にはおよびません。みなさんの退去中に攻撃はいたしませんから。」

そう約束する。


 彼らも落ち着いて退去し、軍人の意地を見せた。

これは、大きな勝利であった。先の2戦は勝ったとは言え、尊やチームメイトが勝っただけである。

多くの兵士が参加した一戦はまさに、スフィア「軍」としての勝利だった。


尊はボウマンとその部隊を守備隊として残し、ひとまず神殿へと引き揚げた。今度は軍の主力をここに移して本拠地として固めなければならない。


「これで国としての要件は完全に整いました。法、国民、そして『領土』です。」

しかし、これが長く、苦しい戦いの始まりを告げることになるのだ。

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