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はるかかなたのエクソダス2 ~夜明けの翼  作者: 風庭悠
第11章:第二の災厄;蛙は地にあふれる
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第82話:メンフィス上空の激突

グレッグはそのまま、作業着に着替える。

「あなた、どこへ行くつもりなの?」

驚いた妻が声をかけた。

「いや、取材だ。」

グレッグは、妻の不安げな顔から、傍にいてほしい、という気持ちを読み取れた。しかし、ここでいかないわけにはいかないのだ。


「すまん。一緒にいてやれなくて。でも、カエルはカエルだ。危険な生物というわけではない。ただ、どこからでも入り込むから気をつけて。」

グレッグはレインコートを着込み、耳栓をし、さらにバイク用のフルフェイスのヘルメットをかぶる。さらにカメラを担いで一旦。自宅の門から通りを覗いた。

「二輪でも、無理か……。」


何台も車が立往生しており、既に乗り捨てられているものもあった。交通は完全に麻痺していた。

グレッグが編集部に電話すると、さすがにだれも出ない。編集長に電話すると、軍がヘリコプターを飛ばすので、そっちに詰めている記者に取材させる、ということだった。

「お前の家からじゃ、ここまで歩いたら日が暮れる。」

そういわれてしまうと諦めざるを得なかった。


「まてよ。ヘリといえば家にも有るじゃないか。」

グレッグは独身時代に購入したラジコンヘリ(ドローン)があったことを思い出した。若い頃はそれで無謀ともいえる取材を敢行したものだった。今は、わりと簡単にヘリコプターでの取材を許可される立場になり、すっかり使わなくなっていたのだ。


そこに、グレッグの携帯にマリアンから着信があった。どうやら、決死の思いで出社を試みたものの、どうにも先へ進めなくなり、近所のグレッグにSOSを求めたのだった。

「丁度良いところに来た。」


苦手なカエルまみれになって玄関に現れたマリアンを苦笑しながらグレッグは迎えた。

「こいつを飛ばしたい。手伝ってくれ。」

何とかグレッグの家までたどり着いてほっとした表情と、苦手なカエルに全身を覆われた苦々しい表情をミックスさせたまま、マリアンは二度頷いた。


「先輩、これでいいですか?」

カエル防止に臨時の柵を廻らせた2階のバルコニーはウッドデッキになっていて、この時期になると同僚を呼んでバーベキューなどをするのだが、今日はラジコンヘリのポートになっていた。マリアンがムービー対応のデジカメを着け、コントローラをつかってグレッグはシャッターや、機体制御の様子を見ていた。記録媒体を確かめると、テイクオフさせた。


グレッグがこの街を住居に撰んだのは、中心部(ダウンタウン)に比べて高台にあることだった。街を一望できるので、火災など大きな事件があればすぐに気がつくことができる。とりわけ、人類解放戦線の取材を続け、ルポも上梓したこともあるグレッグにとってはうってつけだったのだ。


「ごめんなさいねえ、マリアン。主人の我が儘に巻き込んでしまって。」

 グレッグの妻のティファニーが、サンドイッチとコーヒーを持って来ながらマリアンを気遣った。家について、顔色が悪かったのに、グレッグときたら休ませるどころか手伝わせるなんて。若いお嬢さんに何かあったらどうするの、ティファニーはこんこんとグレッグに言い聞かせる。目がすっかり少年時代に戻ったグレッグは生返事をしながら、作業に没頭していた。二人の娘の4歳(もうすぐ5歳)になるクリスティは、マリアンの膝を占拠していた。


「すごーい。」

モニターに映し出される上空からの街の映像にマリアンとクリスティは声を上げた。

グレッグの愛機は割と高性能で、半径2kmほど、(ただし上空は200mほど)の移動可能である。

そして、見守るものたちに衝撃が走る。街全体が緑色で覆われ、なおかつ蠢いているのである。臭気まで再生できれば嘔吐感がこみあげるほどであった。


「酷い。」

街は完全に麻痺していた。緊急車輌も走れず、軍の医療ヘリが飛び交っている。火災が起こっているようだが、完全に放置されていた。無限軌道を装備した戦車が、カエルを踏み潰す嫌な音をたてながら走っている。要人の移送かもしれない。


考えることは同じなのか、数多くのラジコンヘリ(ドローン)が飛び交っていた。むろん、グレッグのものより、性能が落ちるため下を飛んでいるのだが、時折衝突して地面へ墜ちて行った。


「!?」

一瞬、目の前を人の顔が過った。


「今の、人でしたよね?」

マリアンの言葉に促されるかのように、グレッグはリモコンを用いて先程の人影を追った。その人影はテラノイドの軍服をまとい、カーキ色のマントを翻し、杖を持った精悍な若者であった。

「お義兄ちゃん!?」

マリアンが戸惑いと、嬉しさの混じった声をあげる。背中には一対の光翼が付いており、原理は定かではないが、それで飛行しているようだ。


「シェムス・ホルか。あのマントに光学迷彩が使えるはずだ。自分の姿を隠すどころか誇示してやがる。」

グレッグの声は忌々しさを隠さない。シェムス・ホルとは「ホルスの眷属」という意味で、小型の飛行戦闘スーツ、スフィア側でいう「大天使(アーケンジェル)」である。


「わざと撮られている、ということですか?」

「そうだ。前回の災いの時、政府は頑なにヤツの関与を認めなかった。今回はわざわざのお出まし、ってことか。」

「でも、憎しみも集めるんじゃないかしら。」

「そうだな。畏れも、だろう。」


しかし、もう一人、飛行スーツの人物が現れる。黒尽くめの戦闘スーツにジャッカルを模した黒いヘルメットを装着していた。その人物は尊の前に立ちはだかるかのように相対した。


「不知火尊、いや、ゼロス・マクベインだな。こんなところで高みの見物か?」

尊はその声に聞き覚えがあった。


「これはこれは。アモン・クレメンス殿下。ご無沙汰をいたしておりました。」

アモンは無言で尊に銃を向ける。

「いろいろありましてね。今は政府との交渉役をしていますよ。」

アモンは発砲する。弾は尊の眉間を正確に捉えていたが、そこをすり抜けていった。


「やはりな。非物質アストラル化ができるわけだ。やはり、ここで始末すべきか。」

アモンの戦闘スーツが更に黒さを増す。黒色のオーラのような光で包まれ始める。

「おやおや、こんなところで始めるおつもりですか?」

尊は驚いていた。


「尊、躊躇してはならん。相手は手加減の要らぬ相手じゃ。どれ、わしがでばるかの。」

ベリアルが発動する。尊の身体を翼が包み、中で光を放つ。現れたのは、アモンとは対照的に真っ白な

戦闘スーツに白いマスクである。






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