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はるかかなたのエクソダス2 ~夜明けの翼  作者: 風庭悠
第9章:雛鳥たちの羽ばたきに~万神殿編
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第62話:子供の頃裏山に作った秘密基地って、アニメの影響だったのかな。

今日から新章突入、神殿編がはじまります。

[星歴996年 4月7日]


 ネーヅクジョイヤはアーサーの指定した座標に到着した。


 原野のど真ん中に何があるのかと、皆訝しげだったが、やがて機体の直下に大きな魔方陣のような紋様が浮かび上がった。"召喚陣(ゲート)"である。


「ネーヅクジョイヤ、降下せよ。」

尊の指示をシモンが復唱し、機体をゲートに向かって降下する。すると、地面に当たるような衝撃もなく、 まるで水面下に没していくかのように機体は地面へと呑み込まれて行く。地面に完全に没すると、今度は反転して、浮上していく。浮上した先にあったのは地上の景色であった。


 「シモン、ここが万神殿パンデモニウムです。」

万神殿は地表から深さ数十㎞以上の深さにある直系10kmの球体の空間である。これを掘りぬいたのは先住民ケルビムであり、惑星管理者「マーリン」によってキングに譲渡された。見た目は半球状であるが下半球は地下構造物となっており、生産・軍事・貯蔵などあらゆる生活空間が詰め込まれている。


 一方、地表は広々とした空間となっており、神殿以外の構造物は存在せず、湖と人口の川、そして森や公園となっていた。空も天頂部は5,000mに達するのものの若干の圧迫感は否めない。神殿地下のいずこかに、キングアーサーの本体が収められているアヴァロン宮殿がある。地上の神殿ではアバターと接触できるはずである。バラクの幼少期は神殿に本体が収められていたが、「背教者」の増加によって、深部へと移されたのである。


 「シモン。船長のあなたはドックまでクルーを引率してください。また、連絡をとって合流しましょう。」

 白い服を着た祭司の一人がモニターに現れた。彼の案内によってもう一度ゲートを沈み、反転して浮上すると今度は地下ドックに運ばれていた。

「まるで魔法だね。」

シモンはつぶやいた。


 一方、その前に尊やエンデヴェール家、またチームメイトや戦線の連中が船を降りると、大祭司(神殿の管理の最高責任者)自らが出迎えに来た。

「大祭司を務める宝井亮介(たからい・りょうすけ)と申します。遠路はるばるようこそおいでくだしました。」

ローレンとクララの手をとって挨拶する。


 彼はよわいは60歳近くの温和な紳士である。彼は、バラクを見つけると

香介こうすけ、しばらくみないうちにすっかり司令官姿が板にがつきましたねえ。子どものときは……」


こども時代のエピソードを披露しそうになる。戦線のみんなは興味を示し、バラクは困り果てていた。10年ぶりくらいの再会である。

「亮介さんこそ、すっかり大祭司っぽくなりましたよ。」

横から、大祭司の子供時代を知る尊が助け舟を入れる。


「亮介さんはこう見えて若いころは……。」

大祭司は若かりし頃の『武勇伝』を披露されそうになると、慌てて尊に水を向ける。

「おや、尊さんも帰ってきたんですね。」

今度は、お付きの若い司祭たちが残念そうな表情を浮かべた。


「ええ、すっかり予定がくるいました。」

若い司祭たちが手分けして戦線やチームのメンバーを彼らに割り当てられた居住区画へと案内する。

3時間後に「食堂」に集合することにした。」


「尊さん、実は『モルドレッド卿』が動き出したようなのです。」

亮介は尊と二人きりになるとこう切り出した。


「ほう、あの『ドM様』がねえ。」

 モルドレッド卿とは、およそ1000年前、星暦の始まるきっかけとなった「JUSTIN暴走事件」を事件を引き起こした人物で、尊と同じ「天使の身体」を盗み出していずこへと姿をくらませた男である。元は「ジェームズ・ハリス」という名であったが、「キングアーサー」システムに対抗して「モルドレッド・モリアーティ」と名乗っている。モルドレッドは伝説ではアーサー王と敵対した人物で、一方、モリアーティは有名な探偵小説の悪の親玉の名字である。


彼がそう名乗ったときキングはモルドレッドの「ド」とモリアーティの頭文字イニシャルである「M」を取って、

「お前なんざ『ドM』で十分だ。この変態野郎。」

と返したことから、眷属(ハイ・エンダ―)の間ではそうよばれている。


「わかりました。今回彼はアマレク側に付いて、わたしとやりあう、ということですね。どうもアマレクの動きの早さの意味が飲み込めました」

 正直、尊は現在の人類とアマレクの力関係であれば人類の解放はそれほど困難ではない、と踏んでいたのだが、こちらも計算の修正が必要なようである。


「やつがどこまでアマレクに侵食しているのか。こちらも探ってみる必要があるのう。」

ベリアルの言葉に尊も頷いた。


数時間後、「食堂」(会議室のようなもの)に一同は会した。バラクは正式に  "人類解放戦線"の解散を宣言し、あらたに「スフィア王国国防軍」の設立を宣言した。現段階ではトップの尊が、代表者の士師ジャッジとして、バラクが尊を補佐する司令官と決まっただけである。これから2年の訓練によって、組織は徐々に固められることになる。


無論、参加するか、改めて地上に帰るかは本人の意思に任されることになった。

「ただし、希望者は必ず"割礼"を受けていただきます。それがないとここでは何もできません。」

割礼とは本来男性のぺニスの包皮の部分を切除することだが、ここでは、左目を摘出して、ナノマシンで構成された義眼型デバイス(ラティーナ)を埋設することである。これが、後世のテラノイドたちの特徴になったことは言うまでもない。


もちろん、尊やバラク、ボウマンといった神殿出身者はすでに施術済みであり、バラクが常にサングラスを掛けていたのも、起動時に生じるナノマシンの発光現象を悟られないためだったのである。


「リアル"目キラーン"ですな。」

ジョシュアの言葉に皆噴き出してしまった。


もう一つ必要なのは「定期的な睡眠」だった。必要な基礎知識や教養をデバイスを通して睡眠中に大脳皮質に直接刻み込むのである。後世の「義務睡眠」のエポックとなる出来事となった。


「もしかして……夜更かしは禁止ですか?」

そう、恐る恐る聞いたメンバーに祭司はニッコリ微笑んで

「そういうことになりますね。でも、1日8時間勉強するのと、睡眠をとるのではどちらがよいですか?」


「皆、2年間の辛抱だ。これまでより辛いことはないが、自分の意思を鍛える良い機会だ。頑張ってほしい。」

バラクは既に終わった課程であるので、他人事のように皆を励ますのみであった。


明日(12/30)から1/3まで、「星暦元年の残照」を集中連載、完結予定です。

こちらは1/4からの連載再開になります。みなさん、良いお年を!

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