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はるかかなたのエクソダス2 ~夜明けの翼  作者: 風庭悠
第8章:始まりの始まりへと~メンフィス脱出編
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第56話:「やる男」は「やらせる男」になります、という話。

「すいません。質問いいですか?」


ラザロが、静まり返った会場で手を挙げた。尊は発言を許可した。尊も自分の演説に手ごたえを感じたものの今一つ足りないものがある、とおもっていたからだ。


「あなたが士師ジャッジであることの証拠(しるし)をみせてください。あなたの言葉は理に適っていますが、人間はそれに加えて感情を突き動かす「もの」が必要です。あなたがご自分に命をあずけることを要求するなら、それに足り得る「人物もの」であることを示すべきです。我々はバカなのです。あなたが思っているよりもずっとね。」


 なるほど、と尊は思った。それが自分には足りないものだったのだろう。

「なるほど。おっしゃる通りです。みなさんの思いはわたしと同じですが、背中を押す一手が必要なのですね。指摘をありがとう。ラザロ。」


礼を言うと切り出した。

「ではみなさん、わたしも少し出し惜しみがすぎました。わたしの本当の姿をお見せしましょう。」

尊がそういうと、尊の背中から大きな、それも純白の翼が顕現する。みなが驚いていると、その翼は尊を繭のように包み込む。さらに中で大きな光が生じているようである。やがて翼を広げて現れたのは光り輝く姿をしたまさに天使そのものであった。


みな恐れのあまりひざまづく。

「今から500年以上も昔、GOSENゴシェンEDENエデンを名乗っていたころ、彼らは王城キャメロットに軍隊をさしむけました。それをたった4名でせん滅し、悪魔の異名を受けた先住民ケルビムの4体のアプリ、その1つであるベリアルが私の身体の中にあります。私は「白鳥の騎士」パーシヴァル。それはこの純白の翼に因んで名づけられたものです。天使は主役にはなれません。おわかりですか?わたしはみなさんを勝利に導き、守護する存在なのです。」


「まだ十分出し惜しんではいるがの。」

ベリアルが厭味ったらしく尊にささやく。

「『主役』は出し惜しみするんですよ。」

「さっき主役はみなさんです、っていってなかったか?」

「だから言ったでしょう。わたしは「やる」英雄ではなく、「やらせる」英雄なのです。」


格納庫は一気に盛り上がった。そういえば地球人種テラノイドはお祭り好きの人種なのだ。


尊は翼を収めるとバラクに水を向けた。

「ここからは司令官にお話ししていただきましょう。」


「勇敢なる同士諸君。」

バラクは演説を切り出した。


「私はおよそ10年前、この不知火尊を連れて、この街に潜伏した。彼の正体は『円卓の騎士』の一人だ。つまり、実際にはここにいる誰よりも年長なのだ。彼はこの計画を実行するまでさらにその3倍の時間をかけてきた。そして、ここに来て実際に奴隷の暮らしも経験してもらった。彼は我々の仲間だ。そして、指導者となる。私は元々人類の本拠地である万神殿で祭司を務めていたシードの一人だ。彼はわたしが子どものころからの友人なのだ。」


「円卓の騎士」も「シード」も彼らの中では伝説おとぎばなしでしかなかったが、あの尊の姿を見せられてしまったら、信ずる以外なかった。人間は目に見えるものには弱いのである。


「出発は3日後、早朝4時とする。参加を希望する者は挙手。」

バラクの求めに十数名を残し、ほぼ全員が手を上げた。


手を上げなかった物の中にはダタン・コナーズがいた。ダタンはバラクに尋ねる。

「旦那、ちょっと聞かせてくだせえ。」


「ここは誰かが残って陽動をかけた方がよくないですかい?」

ダタンの提案にバラクは聞き返す。

「君が残るというのか?」


「旦那、俺はパス……っていうより、皆の出発しやすいように、陽動をかけやすぜ。」

「それで良いのか?コナーズ」


尊もその意図を確認する。

「それはありがたい申し出です。ですが、よろしいのですか。」

「じゃあ、坊っちゃん、お聞きしますがその万神殿とやらには酒場やおネエちゃんと楽しいことができるお店ってあるのかい?」


「ありませんね。残念ながら。」

尊は苦笑する。

「じゃあ決まりだ。俺はここで皆の帰りを待ってるよ。」

バラクも尊もそれ以上説得を試みることはなかった。


それからアジトのなかでは、引っ越しのための準備でまさにてんやわんやになっていた。尊とシモン、チームの仲間たちも皆の手伝いをしながら、"戦線"内に漂う空気に違和感を感じていた。


"戦線"の組織は情報収集専門のチームと、組織の維持のためのバックアップチームに別れていたが、互いにあまりよい関係では無かったようだ。


情報収集チームは、資金を稼ぐためなら営利誘拐のような"汚い手"も辞さないバックアップチームを蔑んでいた。一方のバックアップチームも、資金を食い潰すだけで汚れ仕事もせずにエリート面をしたがる情報収集チームをスパイ"ごっこ"とバカにしていた。


尊もシモンもこの危険な空気の中で、今回の神殿への移動に不安を感じていた。中にいる連中にとってこの齟齬はそれほど問題にならないと感じているようだが、尊たちのような外部の人間にとっては不安要素にほかならなかった。何しろ、決してアマレク側に神殿のことを知られてはならなかったからだ。


よって、尊はあえてネーヅクジョイヤ号を基地上空まで呼ぶつもりはなかったし、ランデヴーポイントについても司令官以外の全てのメンバーに伏せて置いたのだ。

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