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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
魔法使いが存在しなかったやる気を出して旅に出るまで
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散々なんだし

投稿のスピード早すぎて疲れます

 さて…、僕たちは今クエストを受けているはずだ。昨日そう決めたからね。それならどうして今森の中で隠れているのか。


「っ!!師匠見つかりました!!」

「くそっ…逃げるぞ!!」


  全力疾走。

  後ろから追いかけてくるのは大きな熊。普通の熊なら問題なく立ち向かえる。ただその熊は少し違う。


 何故か体がボディービルダー並みにムキムキだった。熊なのは顔だけ。走り方もアスリートのように綺麗で、速い。僕たち4人のパーティーはひたすらにそれから逃げていた。何故こうなったのか。


 それは朝に遡る。




 チュンチュン


「………」


  朝か…。眠たい。この眠さは2度寝しないといけない。


「……………スー………スー………」

「アルト師匠!!朝ですよ!!起きてください!!」


  アルトがまた寝た3分後、エプロンの少女がアルトを揺さぶる。


「う~ん…。起きたくない~。」

「そんなこと言わないで起きてください!!」


  ミルスは寝起きが悪い師匠を必死に起こしていた。


 ………誰だこの子?夢か…?


 アルトは寝ぼけて、まだ自分が引きこもりライフを送っているものだと思っていた。


 夢なら………、何してもいいよね…?


「え…?し、師匠!?」


  アルトは寝ぼけながらミルスに飛び付いた。


「そ、そ、そんな///し、師匠いきなり…そんなこと…!!」


  アルトはミルスの首を舌でなぞり始める。


「い、いやっ!!まだ心の準備がふわぁっ!?」


  …これ夢か?リアルすぎる。味も香りも暖かさもわかる。


「はぅぅ…///」


  ミルスはアルトに上から乗っかられているため逃げることもできない。


 アルトが寝ぼけているとそこに好ましくない人物がやってきた。


「おんやぁ?…!!アルトきゅん!!僕も混ぜて!!!!」


  ちょうど部屋に入ってきたシーナがアルトを飛んでさらっていく。そのおかげでミルスは解放されたものの、吹き飛んで頭を打ったアルトは目が覚めた。


「いてて…。あれ?なんで…。そうかもう引きこもり生活はおさらばだったね…。」


  アルトが自分の現状を思い出した。そして理解した。


「アルトきゅーん!!僕もペロペロしたい~♡」


  ………………え?………ちょっと待て!!何この状況!?なんで僕はシーナに押し倒されているんだ!?


「え!?ちょ…!?だ、誰か!!」


  アルトは暴れるものの、引きこもりの魔法使いが超絶活発な勇者に勝てるわけがなかった。


「誰か人を呼んでたね?僕がいるじゃないか。」


 顔が近い!!…いや、悪い訳じゃない、むしろドキドキする。シーナは可愛い。でも何もしなければの話だ!!この無表情と腐った中身さえなければ!!


「止めろ変態!!放せ!!」

「嫌に決まってるじゃないか♪ウフフ…どんな味がするのかな~♡」

「アッーーーーー!!」




 アルトは元気なく椅子に座っていた。

  首が艶々だ。首だけ無駄に光沢してる。


「おはようございます。」


  挨拶して向かい側の椅子に座るのはルナだ。朝早くから装備を身に付けていて、髪は整っており身だしなみはバッチリだ。


「…おあよう。」

「朝早くから賑やかでパーティーって楽しいですね♪」


  賑やかってよりシーナが危険なだけだ。


「もう…、師匠は寝ぼけてないでちゃんと起きてくださいよ…。」

「申し訳ございませんでした。」


  余談だけどミルスは味も香りも甘かった。


「アルトきゅんって男の子の味がするんだね☆」


  …どんな味だ。


 そんなこんなで会話や食事を準備ができるまで楽しんだ。




「うぃーす」


 僕たちはクエストを受けるためギルドに来ていた。クエストの受付はここでしかやっていない。


「はぁーい!!今回は何をし…ちっ。」


  おい。この受付嬢は人の顔みて舌打ちするのか?


「どうも。この間はお世話になりました。」

「あらすっかり冒険者って感じになりましたね♪」


  ミルスはこの女の本当の怖さを知らないから話せるんだ。


「ミルスの訓練のため簡単なクエスト頼みたいんだけど。」

「スライムでも殺しとけ。」


  …お前今なんつった?


「何もいってません♪」

「……」


 裏表の激しい人だ。(僕限定)


「そうですね~。森のコボルトの討伐要請がありますね。」


  コボルト。簡単に言うと2足歩行の狼だ。攻撃は剣を使う。対して強いわけでもないが、初心者のミルスにとっては弱すぎる相手でもない。むしろ丁度いい。


「んじゃそれで。」

「かしこまりました~♪」


  受付嬢は絶対に裏がある笑顔で返事をすると、契約書を持ってきた。


  この世界ではクエストを受ける際に契約書にサインしなければならない。理由は1つ。死んでも責任を取らないこと。とあるゲームみたいに死んだら目の前が真っ白になって、気がつくと家にいるみたいなことにならない。死んだら当然そのまんま死ぬ。それでもいいと言う人が契約書にサインをするのだ。


「OKです。」


 4人のサインが終わると


「はい♪4人ですね。今支給品をお持ちしますね。」


 受付嬢は後ろのスタッフルームへ入っていく。


「師匠…」


  ミルスがアルトの腕を掴んでいた。


「どうしたんだい?」

「すごく…緊張します…。」


  そりゃそうだろう。初めてのクエストなのだから。


  アルトは不安そうな顔のミルスの頭に手を置いて

「大丈夫。ミルスは魔法の才能があるから心配要らないよ。」


「…ありがとうございます…。…がんばります!!」


 ミルス可愛いよ。


「はーい♪お待たせしました♪ポーション4つです。」


  そこに支給品を持ってきた受付嬢。しかし、アルトは受けとる前に渡されたポーションを凝視した。


「ねぇ…。僕のに毒いれたね?」

「………ちっ。」


 マジで訴えたろか?

 そんなこんなでギルドを後にする。





 森にたどり着いて数分後。早速コボルト3匹とエンカウントした。


「とうりゃぁ!!」

「はっ!!」


  シーナとルナがそれぞれ1匹ずつ一撃で仕留める。


  残った一匹は逃げだそうとしたがそうはさせない。アルトが魔法の壁を四方に作り出した。


「さぁミルス!!実戦だ!!」


  中にいるのはミルスとコボルト。


「は、はい!!」


  逃げられないことを覚ったコボルトは剣を抜いてミルスと向かい合う。


「いいかい?落ち着いて魔法を確実に当てれば大丈夫だ。」


  とはいってもミルスの足はずっと震えっぱなしだ。


 アルトはミルスに戦い方を教えていない。教えたのは魔法の使い方だけ。実戦は誰かに言われた通りやるより、自分の感覚で身に付けた方が良いことをアルトは誰よりも知っている。今回の戦いはミルス1人に全て委ねられている。


「ぐぁうぁぁぁぁっ!!」


  コボルトがミルス目がけて突進する。


「っ!!」


 ミルスはそれをかわすと杖を構えた。


「よし…!!『フレイム』!!」

「ギャウァァァッ!!」


  ミルスが放ったのは初級魔法の1つ『フレイム』。名前の通り炎を出す魔法だ。火炎放射なだけなので対して威力はないため、家で暖炉や料理の火にしか使っていない。


 考えたな…。『フレイム』は威力は無いが動物は炎自体を嫌う。それにコボルトの毛はコボルトの油がついているから燃える。時間さえ経てば炭になる。まぁ、模範解答だね。


 アルトは一般的な倒し方で終わると思っていた。が、才能の塊であるミルスはその上をいった。


「『トルネイドウィンドウ』!!」

「なっ!?」


 ミルスが使ったのは『トルネイドウィンドウ』。初級魔法でそこそこ扱いが難しい魔法だ。それは場所を指定して、そこに小さな下降気流の竜巻を作り出す魔法だ。


 ミルスが考えたのは『フレイム』と『トルネイドウィンドウ』の合わせ技。炎は常に酸素を必要とする。だから、絶え間無く酸素を送り炎の流れを作ればより早く倒せると考えたからだ。


 その考えは普通なら絶対に考えない。ましてや考えられても初心者が同時に2つの魔法を扱うなどできない。


 アルトはミルスに限りない可能性を感じた。自分とは違い最初からもった才能。

アルトの心の中で興奮が止まらなかった。それは魔王を倒せるという期待でも、最強の冒険者になれる期待でもなかった。


 ミルスが防御魔法を使ったらどれだけ美しいのだろうか?


 ただそれだけだった。あくまでもどんな防御魔法になるかが気になっていた。


「ハァ…ハァ…。考えただけでも疼きが止まらない…。」

「キャアッ!!」


 アルトが我を忘れているとミルスの悲鳴が聞こえた。


「っ!!ミルス!!どうしたんだってあぁぁぁぁぁ!!」


 顔を上げてみると壁で囲んだ1面が焼け野原だった。


  それは『トルネイドウィンドウ』が下降気流だったことに原因があった。炎が渦を作りながら地面に当たる。ここが森であるため、足元は草木で一杯。当然燃え広がる。


「熱いっ!!あ、アルト師匠~!!助けてください~!!」


 泣きながら炎から逃げるミルス。


「ヤバイ!!」




 ………危なかった。何が危ないかと言うとあのまま森が燃えそうだったからだ。たとえ魔物がいるとしても森1つまるごと燃やしたらギルドから呼び出しくらってしまう。


「うぅ…、ヒック…ごめんなさい…。」


  泣くのをやめないミルス。


  目の前には綺麗に長方形の焼け野原が完成していた。


「まぁ…しょうがないさ…。場所が悪かった。」

「そうだよ~、ミルミル~♪アルトきゅんの目的はこんな薄暗い所で、なんかエッチなことしようとしたに決まってるよ~♡」

「しねぇよ!!」


  誤解されたらどーする。


「そうですよミルスちゃん。初級魔法とはいえ、初心者が1度に2種類使うなんて前代未聞だったんですよ?」


 前代未聞だとちょっと言いたいことと違うんじゃルナ…?

「ん?ミルス。髪の毛ちょっと焦げちゃってるね。」


 そこで気づく。ミルスの横髪が黒く焦げていることに。


「ちょっとじっとしてて。」


  アルトは燃えた髪にそっと手を当てると、何かスペルを呟いた。


  するとミルスの髪の毛は元通りになっていた。


「これでよし。………え?」


  髪の再生が終わり顔を見上げるとみんな熊にあったような顔でこっちを見ていた。


「みんな、どうしたんだい?」

「し、師匠…!!う、後ろ!!」


  ビクビクしながらミルスが僕の後ろを指差す。


「なんだい?後ろにお化けでもいるってのか…?」


  残念。正解は後ろにムキムキの熊がいるでした。


「………逃げろぉっ!!!!」


 そして今に繋がる。

「一体なんなんですかあれ!?」

「知らない!!とりあえず走るんだ!!ヤバイ感じしかしない!!」

「とりあえずギルドに報告しなければなりませんね!!新種の魔物が出たと。」

「なんで追いかけてくるんですか~!?」

「ミルミル~理由なんてすぐわかるじゃないか♪見てごらんよ あの熊の下半身を。ガッチガチに勃ってるじゃないかぁ♡」

「はっ!?」


 アルトが振り返ると熊の下半身を見た。


  白ふんに包まれた局部ははち切れんばかりに膨らんでいた。


「ちょなんで!?」

「簡単だよ♪あの魔物はどうやって交尾すると思う~?」

「どうやってって、そりゃ人間みたいにあれするだけだろ!?」

「んじゃ…相手は誰だと思う?」

「決まってるだろ…、そりゃメスと…。…待てや!!」


 メスと言ってもあんな人間と同じ性器を持った魔物なら…


「人間のメスだって犯しちゃうよ♡」

「逃げろ!!あんなのに捕まったら人生狂うぞ!!」

「あぁ…、あの熊のあれに乱暴されたいよぅ~…♡」

「おい!!やめろ痴女!!」


  いくらシーナと言えど大切な仲間だ。失うわけにはいかない。


「もしかしたら目当てはアルトきゅんかもよ?」


 僕が目当てだって?冗談じゃない!!僕にそんな趣味はない!!


「何がなんでも逃げろっ!!!!」



 簡単なクエストだったはずだ。どうしてこうなった…。本当に今日は散々だ。

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