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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
冒険中断 ~それぞれのすべきこと~
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女子会 & 帰宅

 リブラントの昼間に起きた事件。

 エリクシティの暴走した大量破壊兵器が町を襲った。人を排除することをプログラムされた兵器は建物を壊し、人々を次々と襲った。


 本来なら町は悲しみと苦しみで溢れているはずだった。

 しかし1週間前の時のように、再びあちこちで今晩、今生きていることを人々があちこちで祝っていた。


 

 最初、一人の金髪の女剣士が現れ、柔らかそうな所はしっかりしていて、その華奢な体と比べ物にならない巨大な兵器の腕を抑えた。たった1本の剣で2本の剛腕を迎え撃ったと思ったら一瞬姿が消え、気がついたら兵器の後ろに立っていて兵器が足から崩れた。


 次に現れたのは武道家の女性。細くて綺麗な腕から放ったとは思えないくらいの、巨大なエネルギーの塊を兵器にぶつけて吹き飛ばした。道は壊れたが、建物の被害が比較的少なくて済むように広場に落ちることを予想して、兵器を引っくり返したのだ。


 それでも止まらない兵器がその二人の女性を機関銃で襲っているとき、建物から飛び降りた銀色の長い髪を風に預けている少女が兵器に強力なスキルをお見舞いした。スキルによって現れた巨大な岩が兵器にのしかかっている内に、少女は錆びた剣を天に向けると、錆びた剣が光を放ち錆びが剥がれた。そして少女が銀色の輝きを放つ剣を地面に突き刺すと、火柱が上がり兵器を飲み込んだ。


 その3人の冒険者は知り合いらしく、姿を消した兵器を警戒して背中を会わせた。


 それから4人目が現れた。


 ミディアムの金髪の少女は、魔法で作り出した縄のようなもので兵器を拘束すると、3人に親しげに駆け寄った。

 少女も知り合いのようで、少しだけ話すと、すぐに拘束から逃れた兵器を揃って見た。


 魔法使いの少女が地面に膝をついて、何か魔法を詠唱し始めると、他の3人は時間を稼ぐべく兵器に向かっていった。


 そして数分後に兵器は暴走を開始した。

 どうしようもなくなった3人の背中を押すように、町中から集まった冒険者が参戦を始めた。


 そして魔法使いの少女の詠唱が終わると、兵器の暴走も終わった。


 蠍型の兵器はただの鉄屑になり、被害も指で数えられる程度でしかなかった。怪我人はいたものの重傷や後遺症が残る者はおらず、被害は本当に小規模なものとなった。


 何より人々が驚いたのは、その4人の少女達に関して。まだまだ未成年で見た目は強そうにも見えない子達なのに、兵器を相手にして怪我の一つすら無いというのが、理解できなかった。

 彼女らの事はすぐに広まり、冒険者の間で騒がれるようになった。




 そしてその日の夜。少女達は宿の一室に集まり、パジャマで楽しく話し合っていた。


「にしてもミルミル強くなったね~。僕達もう越されたよ~」

「色々ありました…。どこぞの山でジョーカーと命がけの鬼ごっこをしたり…、サバイバルさせられたり…」

「でも。ミルスちゃんが強くなったのにも驚いたけど、ラルファちゃんの変わり様にも驚きましたね」

「うぅ~。シーナちゃんとルナちゃんはそんな驚いて無かったような気がしたけど…」


 魔法使いはクッションを抱きながら、銀髪剣士は武道家の膝枕を堪能して、武道家はその頭を撫でて、金髪の剣士は体育座りして、それぞれの感想を述べていた。


 1週間前のあの空気と比べると、同じ人物とは思えないくらいの明るさだった。

 人は変わっていない。変わったのは彼女達の中身の心だった。


 みんなそれぞれ自分の1週間について話した。怪奇の悪魔との1週間についてだったり、あっち系な鍛冶職人との話だったり。

 そこから何故か発展してガールズトークになった。


「ラルファちゃん何されたらそうなったの?」

「えっ!?えっと…その…」


 SとMにされたなんて恥ずかしくて言えないラルファは戸惑う。


「椅子に…縛られて…」

「っ!?」

「拘束プレイしてたの!?」

「ち、違うよ!!!?いや…違くないけど…!!」

「違くない!?」

「ラルファたん…SMに目覚めたのか…」

「もう!!!!話を聞いてください!!」


 話がすごく面倒な方向に進んでしまい、そこから数十分かけてラルファは誤解を解くことになった。



「SとMにするだけで…人ってこんなに変わるんだね…」

「ぅぅぅ……」


 子犬のような声でラルファは嘆いた。


「で、でも!!結果オーライじゃないですか!?わ、私は今のラルファさんも好きですよ!!」


 必死にフォローに入るミルス。


「あの?SMって何ですか?」


 何に関しても知識が乏しいため、話についていけてないルナ。


「蝋燭と荒縄どっちがいい?」


 変態誠心丸出しのシーナ。


 お互いを知り合ったためか、以前より仲が良くなっているようだった。




「ふぅ…。とりあえず今日は寝ましょう。私達は待たないといけないんですから、休まないと…」


 ミルスが提案した。


「そうだね。明日には僕からのプレゼントも来るし」

「私も見せたいものがあります♪」

「アルト君……帰ってきてくれるかな…?」


 少女達は今、ある人物の帰りを待っていた。全員が申し訳無い気持ちを早く伝えたい、黒髪の魔法使いが。


 ただし、その人物が必ずしも帰ってくるとは限らない。愛想をつかしたため帰ってこないかもしれない。


 だが彼女達はそれを考えた上で待っている。


 今日帰ってくるとは誰も言っていない。ただ『1週間後に帰ってくる』と言われただけで、いつなのか分からない。

 それでも彼女達は待つと決めた。

 何日でも、何ヵ月でも、何十年でも。その人が帰ってくるまで待ち続けると。


 遅れてきたとしても文句は何も言わず、こちらが謝るのだ。信頼を取り戻せるのなら何だってやる覚悟があった。








 ―――――――そして翌日の昼……


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「………………」

「………………」

「………………」

「………………」


 少女達はリブラントの外れでただひたすら待っていた。

 朝早くからずっと待っているが、リブラントに来た冒険者や商人どころか、誰も来ない。

 


「……これは今日も来ないのではないだろうか?」


 長時間の待つという行動に疲れたディアスが、ミルスの肩に乗りながら呟いた。


「そんなことはないよ。必ず帰ってくるから…。師匠は約束を破らないもん…」


 そっとディアスの頭を撫でながら、ミルスは返した。


「暇だからお話でもしようか」

「そうだね」


 シーナの提案にラルファが賛同した。


「……ねぇ、前から聞きたかったんだけど…。みんなアルトきゅん事…好き?」

「っ…!!」


 その質問に目を開いたのはミルスだった。何故なら少しはあるが、自分もそれについて考えたことがあるからだ。


「……好きです」

「うん。ミルミルは見れば分かるよ」


 シーナは優しく微笑んだ。

 ミルスがアルトに好意を抱いていることは誰がどう見ても分かるものだった。


「私も好きです♪」

「だよね」


 次に答えたのはルナ。満面の笑みで、子供のように無邪気な笑顔を見せて口を開いた。


 しかしシーナは分かっている。

 ミルスの好きとルナの好きは違っているのだ。

 簡単に言えばミルスの好きは恋心から来ているものであり、ルナの好きは人として仲間として好きということだった。


「私は…分からないな。でも、嫌いな訳が無いよ。そう考えれば…好きなんだと思う」

「ラルファたんは複雑だね…。でも…そうだよね」


 ラルファのよく分からない答えを聞くと、シーナは立ち上がった。


「嫌いなわけがないよ!!だって仲間だもん!!何百、いや何千時間も一緒にいたんだから…嫌いなはずがないんだ!!それはアルトきゅんからしても同じはずだよ……。気休めなのかもしれないけど…、帰ってこないわけがない!!僕も好きだよ…、アルトきゅんが…。だから帰ってくる…、いや帰って来てほしいんだ!!」


 シーナのそれは理由ではなく、ただの本心だった。アルトに対する想いと言うものは、シーナにとっても大きかった。


 シーナの好きはミルスの好きと同じモノ。アルトへの恋がシーナにも存在していた。

 だからこそ帰ってこないなんてあり得ない、そもそも想像したくない。


「それでは待ちましょう♪みんな好きなんですから、待たない理由なんてありません。そもそも待たないなんて選択肢はありません…。私達は必ず帰ってくる日とを待つだけなんですから」


 今度はルナが立ち上がった。笑顔をみんなに向けながら、明るく笑う。


「私は…謝らないといけない…。今までの事全部を、何とかしてでも謝罪しないといけない…。私は主人公でもなければ、語り手でもない……。私が許してもらえない可能性だってありえる…。それでも、私は一緒にいたい!!みんなと、冒険したい!!」


 ラルファが叫びながら立つ。強い意思の籠った瞳でまっすぐ向いていた。


「……私は師匠が大好きです…。この1週間だって、片時も師匠の事を忘れたことなんてありません…。四六時中焦がれてました。でも、私もラルファさんみたいに謝らないといけないことがあります……。だから師匠が帰ってきた時は、嫌われたくないとか、好かれたいとかって気持ちじゃなくて、一人の人間として…、同じ人間として謝ります!!」


 最後にミルスが立ち上がって、4人とも立ち上がった。


(アルト オーエン…。奴が帰ってこないなんてあり得ない…か…。ジョーカーが言っていたな)


 ディアスは心のなかで呟いて、空を見上げた。






        「ただいま」


「……では、待ちましょうか」

「そうだね」

「お腹が空いてきましたけど我慢します」

「空腹のせいかな?私、今アルト君の声が聞こえた気がしたよ」

「あれ?僕もだよ」

「私もです」

「え?私も今…」


 少女達は気がついていなかった。

 一瞬で起きた予想外の出来事を認識できなかった。


 そしてミルスがようやく気づいた。


「……師……匠……?」


 震える声で4人の目の前に現れた人物を呼んだ。


「あれ?何これ?なんか反応が…薄い気が…」

「もう。アルト君は女心が分かってないんですよ。みんな感動してるだけですから」


 その人物はピンクの髪の女性と一緒にいた。黒い翼の背後に、その少女が立っていて呆れていた。


「あ…あ…!!」

「い、いつから…!?」

「あわわわ…ご、ごめんなさい……!!」


 他の3人も状況を確認して、動揺し始めた。


「んじゃあ改めて…」


 黒い魔法使いが咳払いをして、息を吸った。


      「ただいま帰ったっス」


「師匠ぉぉぉ~~~!!!!!!!!」


 ふざけた挨拶をしたアルトに、ミルスが涙腺を決壊させて抱きついた。


「おかえりなさい…おかえりなさい…おかえりなさい!!!!」

「え…えぇ!?な、何で泣いてるんだい!?」


 急に抱きついて泣き出した弟子に、アルトは戸惑う。


「アルトきゅぅぅぅぅぅん!!!!」

「ちょ!?シーナまで泣いて何!?……ワタクシ何かしました!?」


 シーナが腕に絡み付いて大泣きした。

 まるで双子の父親のように、抱きついているミルスとシーナの頭を、とりあえず優しく撫でようとする。

 つもりが、


「お帰りなさい…。アルトさん…」

「ルナもか!?それより……何か!!何か当たってる!?」


 少し涙ぐみながら、ルナが片方の腕に絡み付いたため、手の使用が不可能になった。おまけにルナの柔らかくて豊満な胸がしっかりと腕を挟むため、逃れる事もできない思春期少年の心を乱す。


「……アルト…さん」

「……え…?どちら様!?」

「ひ、酷い!?」


 胸を抑えながら前に立つラルファを見ても、言動の変わり具合からアルトはそれが来週だと判断できなかった。


「あーあ。アルト君、一体何をしたんですか?」

「いやいやいや!?何もしてないからね!?と、とりあえずみんな離れて…、っ!?」


 何かをとがめるようにこちらを見るハルキィアに叫んだときだった。

 アルトの胸のなかで何かが、ドクンと動いた。


 闇が脈動した。


(この感覚…まさか!?何で今…、みんながいるときに…!?止めろ…止めロォォォォォォォォォォォォォ!!!!)




「離れよ小娘ども」

「「「「…………………………………え?」」」」


 聞き間違いではと思う発言に、全員が泣くのを止めた。


「早く離れよと言っているのだ。我が魔法で眠りに落ちたくなければな…」

「……は、はい…」

「…………あ…」



 よく分からないミルスは言われた通りにアルトから離れた。他のみんなも距離をおいた。ハルキィアだけはこの情態を察し、眺めていた。


「我が名は『永遠の眠りから―――――


(アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!)


 インフィニティ スリーパーが目覚めて発狂したアルトの叫びは、誰の耳にも届かなかった。










「と言うわけで、私は中二は卒業してます」


 宿の部屋でアルトは頭を軽く下げた。

 アルト、ミルス、シーナ、ルナ、ラルファの5人で輪になって正座をしていた。

 アルトの後ろでは面白トカゲに見えたディアスを撫でながら、ハルキィアが座っている。


 インフィニティ スリーパーと言う痴態を見せてしまったアルトは、誤解を招かないように説明して終えたところだった。


「…………」

「「「「「……………………」」」」」


 アルトが頭を下げて数秒間。誰も何も発さない不気味な空気になった。自分の説明を聞いて無反応だったため、理解してもらえてないのではないかと不安になる。


「え…?ちょっ!?何でこんな空気重たいの!?何かあった!?」

「……あ。いえ…そうではなくて…」

「…あの…その…」

「えー…っと…」

「……、っ…、あのね」


 全員が中々言いたいことを言い出せない空気の中で、勇気を出したのはラルファだった。


「私がすごく変わったことは置いておいて、話を聞いてもらえますか?」

「………うん…、」


 真剣な口調になって、ラルファはアルトをじっと見つめる。その空気の変化に気づいたアルトもラルファを見つめる。


「すーー……、はぁーー……」


 ラルファは小さく深呼吸をして、目を大きく開くと、


     「申し訳ありませんでした」


 正座の状態からそのまま手を床につけて、頭をつける。

 土下座の形を取った。


「アルトさんにどれだけ酷い想いをさせたか、おそらく私はその気持ちを100%理解できていません。だから今さら謝ったところで、許されるなんて思っていません。ですがこれだけは絶対に伝えなければ、私自身が許せないんです」


 頭を下げたまま、噛まず、動かずにラルファはずっと伝えたかった事を告げる。


「私は性格がとても悪かった。だからアルト君のためにこの1週間で人柄を根っから変えてきました。これからも一緒に旅をすると言うのに、このままだと絶対にダメだって思って、私は変わってきました。この想いを受け取っていただけるかどうかは、アルトさんの自由です。だから……、だから今まで、申し訳ありませんでした!!!!」


 謝罪の言葉が部屋の中に響いた。

 全員が頭を床につけるラルファの姿を見守っていた。


「……私もです」

「ルナ……」


 静寂の中、次に口を開いたのはルナ。 


「私はただ傍観することしかできませんでした。フォローなり何なりができたはずなのに、私はそれをしていなかった。『ここまでパーティーの仲が悪くなるまで私は何をしていたんだ?』って、ずっと悔やんでいます」


 目を閉じながらルナも頭を下げる。


「強い敵が来たら全てアルトさんに任せて、そんなときも傍観しかしていませんでした。戦力外なら戦力外でやれることがあったはずです。そう思ったとき、私はここにいる意味があるのかって思ってしまいました」


 そして手をつけてラルファと同じ姿勢になる。


「だからこの1週間で強くなったつもりです。私はアルトさんと一緒に、傍にいられる事を望んでいます。だから…ごめんなさい…。せめて……、せめて言わせてください…」


 そっと、2つの頭が謝罪の意を訴えながら並んだ。


「バカだよね…。自意識過剰もいいところだよ……」


 自分を責めるような事を言い始めたのは、銀髪剣士シーナ。


「馴れ馴れしかったよ…。僕の勝手な判断で、みんなすごく仲が良いとか思っちゃって…。それのせいでみんながバラバラになっちゃったのに、僕は最低な人間だ…」


 彼女の拳に力が入るのを、黒い魔法使いは見ていた。


「許してもらえるのならどんなことだってやる。永遠に許してもらえないなら、それはそれで自業自得だ、って納得するだけだよ…」


 うつむいてシーナもすぐに同じ格好になった。


「僕の本心は、みんなと…、当然アルトきゅんがいて、冒険したいんだ…。僕の評価なんてどうでもいいから、一緒に…、ずっと一緒がいいよ…。だから仲間同士腹を割れるように………」


 少し震え始めた声で


「ごめんなさい!!足りなかったら何度も謝る!!…だから、一緒にいさせてください…!!」


 叫んで3人が並んだ。



「………………私なんです」


 3人の謝る姿を見つめていると、横からすごく小さなそんな声が聞こえた。


「私が一番悪いんです…。使えない弟子で、弱くて、逃げ隠れることしかできない。こんなんじゃ誰からだって嫌われます」


 ミルスの表情は見えない。見えなくとも、どんな気持ちなのかは分かる。手も足の先も震えている。声が少し涙を含んでいて、ちょっとでも何かあれば泣き出しそうだった。


「暴慢ではあると思います。ですが、今までの全ての行いに関して、謝ります。すいませんでした」


 そして4つの頭がアルトを向いた。


「だから、私達は強くなりました。もう誰にも辛い想いなんてさせないように、みんな強くなったんです。これから絶対に同じような事をしないために、師匠のために……」


      「もういいよ」


 一瞬、その場の空気と温度がひっくり返った感覚が波のように伝わった。

 アルトの一言で、予想はしてはいたものの受け止められない辛い答えに、4人は耳を疑うことになった。


「もう…いい…?」


 許されないとか嫌われたとかのレベルではなく仲間としてもう見られない、少女達はそう痛感した。

 しかし、


「うん。だってみんな反省してるのも、成長したのも、分かったから、これ以上悲しんで謝る必要がないってこと」

「「「「…………え………………?」」」」


 何を言われているのか理解できなくなった4人は顔を上げる。


「逆に。僕はそんな昔の事に対して、悲しいんじゃないよ。帰ってきたらみんなが泣いて迎えるもんだから、正直驚いてるんだよ」


 微笑みながらアルトは続ける。


「僕がそんな過去の事をぐちぐち言う人間だと思ってたのかい?自分から大切な仲間を切り捨てるような奴だと思ってたのかい?」


 4人の顔を見ていって、唇を尖らせて茶目っ気を含んで答えた。

 そして胸に手を当て瞳をゆっくり閉じる。


「僕はみんなが好きだ。魔法使いになってから孤独だった僕の心を暖かさで融かしてくれたのはみんなだ。だからみんな正直になろう。無理して自分の心に嘘をつかないで、言いたいことをどんどん言ってよ。だって僕らは家族みたいなものだからね」


 アルトは表情を変えない。優しく微笑んだまま目を開けて、揃って同じように震えてる4人を見る。


「……ぁ…、し、……師匠ーーーーー!!!!」

「アルトきゅん…!!」

「アルトさぁぁぁぁぁぁん!!」

「うぇぇぇぇぇぇん!!」

「ちょっ!?うわぁぁぁ!!!?」


 時が急に動き出したかのように、4人が泣いて黒髪の魔法使いへ飛び付く。

 1度にのしかかった4人の女子を受け止めきれず、魔法使いは後ろに倒れた。


「私は嫌われたくありません!!!!例え許してもらえたとしても、師匠から嫌われてしまっていたら耐えきれません!!」

「出会ったときみたいに…、いやそれより楽しくなりたいよ!!!!ずっとみんな一緒に笑っていたい!!!!」

「私達だってアルトさんと言う存在がなくなるのは嫌です!!だから一緒にいてください!!一人になろうとするなら私達はどこまでも勝手についていきます!!」

「一緒にいれればそれで本望だよ!!もうそれ以上何もいらない!!だから…、だからこれからもよろしくお願いしますぅ!!!!」


 心を抑えていた何かが外れ、それぞれの感情が言葉となり、ギャーギャーと騒ぐように部屋の中に響く。

 それを見守るように4人の体重を受けながら、アルトはホッとする。


「なんだ…安心したよ。みんな本当の気持ちが言えて…」

「安心できませんよ…」

「え?」


 後ろでハルキィアが小声で呟いた。アルトにはよく聞こえない程の声で。


「ハルキィア…今なんて?」

「何も言ってませんよ……」


(もしかして気づいてないんですか?おそらくここにいる方々みんな、あなたが『好き』なことを…)


「……鈍感すけこまし…」


 あまりにも信じられないアルトの鈍さに、ハルキィアは突き刺すように聞こえない声でいった。









 しばらくしてみんなが落ち着いた頃、アルトはしておかなければならない事を済ませていった。


「―――てことがあって、あたらしく仲間になります、こちら歌姫ハルキィアです」

「よろしくお願いします♪」


 みんな、誰なのか理解していないハルキィアを紹介した。

 ベルザードの事や怪しい女の事を含めて、全てを話した。


 彼女に対するみんなからの反応は良く、早くも紹介だけで打ち解ける事ができた。




「ハルキィー!!このパーティーにはとあるしきたりがあって、新人は1日ノーパンで過ごすと言う…」

「そんなしきたり無いわ!!」

「え?無いんですか?てっきりアルト君が作っているものかと…」


 驚きながらハルキィアがこちらを向く。


「あれえ?いつから僕のキャラはそうなったの!?」

「アルトきゅんは前からそんなんだよ。夜な夜な僕達のパンツでナニをしているのかな?」

「しねぇよ!!僕に限って絶対夜に起きるなんてあり得ない!!」

「アハハハハハ」


 シーナは積極的に話しかけて、ハルキィアと仲睦まじく笑っている。ちなみにあだ名が『ハルキィー』とシーナで定着したのは一瞬だった。

 だが何より、シーナがいつも通りの変態であるのが、懐かしくも微笑ましくも感じられた。




「へぇー。歌を歌う方なんですか」

「はい♪声に魔力を乗せて、色々できるんですよ♪」

「例えばどんな事ができるんですか?」

「大声だったら攻撃にもなりますし、歌によってはいろんな事をできます。癒しの歌だったり、仲間を応援するモノだったり…」

「すごいんですね~」

「………………少し失礼します」

「…………はい?」


 ハルキィアはルナの女性の柔らかさ、つまり胸へと手を当てる。


(わ…、私より大きい…!?)


「あの?歳はいくつですか…?」

「19ですね」

「つ!!!?」


(嘘…!?私より1歳上なのに!?)


 ハルキィアは胸が小さいわけではない。しかし自分より格が上の者を見てしまったことにより、自身が少し無くなった。


 二人のしている事ばかりに目が行ってしまうため目線を逸らしたが、マイペースなルナの様子がアルトは好きだった。




「え…っと…その…」


 何があったのかは知らないが、人が変わったラルファは人見知りのようにハルキィアの前でもじもじしていた。


「あ。あなたがラルファさん?」

「は、はい!?ど、どうして名前を!?」

「一応みんなの話はアルト君から聞いてるから…。でもアルト君の言っていたのとは違ってたから、驚きました」

「……どういう風に言っていたんですか?」

「フフ…♪」


 ハルキィアはラルファの耳元に近づき、小声で囁いた。


「力が強くてたまに怪我させられたりするけど、本当は子供みたいに構って欲しいだけの可愛い可愛い女の子だよ…、と」

「……あ、……あぁ…ァァァァァァァァァ!!!?」


 下から顔が見る見るうちに紅くなると、湯が沸騰したヤカンのように煙を吹き出して倒れてしまった。


「ラルファ…!?ラルファ!!ハルキィア、一体何をしたんだ!?」

「何でもありませんよ。ただ本当の事を伝えただけです」


 発熱しながら倒れているラルファに駆け寄ると、ハルキィアはイタズラな笑顔を見せた。





「あなたが弟子の少女ですか?初めまして。ハルキィアです♪」


 ミルスと向かい合ってハルキィアがにこやかに名前を名乗る。


「こちらこそ初めまして。ミルス フィエルです。よろしくお願いし―――――――」

「キャァァァァァァァァァ!!!?」


 ミルスが挨拶をすると、ハルキィアがいきなり発狂した。


「どうかしたのか!?」


 声に驚いて、まさか何かあったのではと思い、アルトが振り返る。


「私のタイプの可愛い声ですぅ♡」

「え…、え!?」


 頬に手を当てて身悶えしているハルキィアの言っていることが理解できず、ミルスは動揺した。


「ちょっと猫みたいな声だしてもらえますか!?『ニャー』って、『ニャー♡』って!!!!」

「ハ、ハルキィアさん!?落ち着いてください!!」

「あぁ!!その声で名前を呼ばれたら…!!ハァハァ……、もう…ダメです…♡」


 ハルキィアのその姿は変態とか声フェチと言うのも良かったが、防御魔法への想いが爆発したときのアルトにも似ていた。


「さぁ…!!早く!!泣いてください…!!でないと私は舌噛んで死にます!!」


 ……oh、何と言う脅迫…。それだけに命をかけるとは…、自分も見習おう。


「二、ニャー…、」

「ゴチソウサマデシタァァァァァァァァ!!!!」

「え!?キャッ!?ハルキィアさ…、イャァァァァァ!!」


 抱きつかれて、諸事情により言えないことをされまくったミルスはその後少し口数が少なくなってしまった。

やっと合流して6人になりました

アルトからすれば、もうあの事は気にもしていないので、むしろみんなその事ばかり謝っていたことが少し悲しかった感じです

やっぱりしばらく離れていた仲間と会ったときは、笑顔で迎え入れられたいものかと思いまして(私の場合ですが…)


インフィニティ スリーパーに関してはたまに出していきます

予想しているものでは、新しく人と出会った時や自分にとって気まずいことになったときに出すつもりです

もう一人はアルトの相談役のような者で、一人の時に出す想定であります


みんな許されるのが早いと思う方もいらっしゃるでしょう

元からアルトはパーティーどうのこうのの問題よりも、自分の闇をどうするかに関して悩んでいたので、ただみんな笑顔でいてほしいという事しか思っていません


ハルキィアが合わさって5人の少女達の可愛さはこれから徐々にあげていきます


もう2~3話したら、旅を再開します

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