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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
冒険中断 ~それぞれのすべきこと~
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極み乙女

すみませんでした


いつかは来ると思っていましたが、案の定投稿のスピードが遅れてしまいました

急に、今までどんな風に書いていたか分からなくなってしまい、文字を打つのに時間がかかってしまいました


申し訳ありませんでした






話を変えて、今回の話について…。


前回、破壊兵器ジェノサイドスコーピオンがリブラントを襲って、それをラルファ、ルナ、シーナ、そしてミルスが応戦しました。


ダラダラとバトルをやるつもりは無いので、この回で終わらせるつもりなので、みんながどれくらい強くなったのかを感じていってください




「いたたた…」


 戦場、しかも敵の上はと降りた(正しくは落とされた)少女は、巨大機械蠍の背中でぶつけたお尻を撫でていた。

 あの、人の扱いが荒すぎる怪奇の悪魔に仕返しをしてやろうと見上げるが、既にそこにジョーカーはいなかった。


「全く…!!いくら色んな事を教えてくれたからって言っても、これは酷いよ!!」


 文句を呟きながら金髪の少女は立ち上がる。


「でもまずはこれをどうにかしないと…!!」


 足元の破壊兵器を見る。背中に乗っていることは気がつかれてはいないが、今もなお蠍兵器は他の仲間へ攻撃を続けている。


    「『ホーリーバインド 山縛り』!!」


 真下の兵器に向けて少女は右手を開き、魔法を詠唱する。

 すると蠍の足元から無数の光の触手が伸びて、機械の体を押さえつけるように巻き付き、機関銃が仕込まれている鋏を強制的に閉じさせた。勿論、厄介な尻尾も拘束していた。


『ガガ……ガガガガ?エラー、エラー、原因不明ノエラーニヨリ、移動フカノウ』


 ジェノサイドスコーピオンのカメラ、つまり目は前についている。そのため自分の体が縛られていることも背中にミルスが乗っていることも分からないのだ。


「ふぅ………、あ。みなさん!!お久し振りです!!!!」


 機械の動きを封じると、ミルスは隠れて銃弾を避けていた皆に叫んだ。そして巨大兵器の機体から飛び降りた。


「ミルスちゃん!!」

「ミルミル!!」


 ルナとシーナはすぐに陰から出てきて、ルナは少女を抱き締め、シーナも二人抱き合う二人を抱き寄せるように肩を開いた。


「おかえり……!!それと…ゴメンね…」

「私もです…。勝手にいなくなってしまった…」


 先に謝る言葉が口からでた。

 

「いえ…。私もどうかしてました…。抱え込みすぎて自暴自棄になって…、皆さんに多大なご迷惑を…」


 バラバラになってしまったパーティーの欠片を繋ぎ会わせるように、まず3つが繋がった。


「……ミルス…さん…」

「……え?も、もしかしてラルファ…さん!?」


 後からゆっくりと出てきたのはラルファだった。その行動も気にはなったが、まず見た目からミルスは驚いた。

 確かにラルファなのだが、髪が結ばれていないため最初は気がつかなかった。


「へ……変かな……?」

「いいえ……。すごく可愛いです」

「……ごめんなさい…。私も皆さんを信用してなくて…」


 ラルファは頭を下げた。

 それはもう彼女を縛る影のようなものが無くなったから。恐れや不安が胸の内から消え、心の底から謝るのだった。


「でも…こうしてまた集結できたのなら……」

「うん…。僕たちは最初から、」

「誰一人も嫌ったりしていなかったんですね…」

「まだ1人……、帰ってきてはいないけど…」


 四人は互いの顔を見つめ会うと、全員1つの方向を向く。


「先に、おっ始めちゃいましょう!!」

「僕達のパーリィーーを!!」

「喋ってる暇なんてありませんね…!!」

「町を壊される前に…!!」


      「「「「守る!!!!」」」」


 全員の心が一致した。


 1人、黒い魔法使いが未だ戻ってきてはいないが、その人物の帰る場所を作るため少女らは心を1つにする。


 破壊を産み出す殺戮兵器ジェノサイドスコーピオンを止めるために。

 彼が帰ってくる場所に惨劇を起こさせないために。


 巨大蠍を見上げて、1人は胸を掴み、1人は白銀の剣を握り、1人は拳に力を入れ、1人は剣をもって構える。


『ガガガ…ガガガガガガガガガァァァァァ!!!!』


 同時に蠍の枷となっていた光の拘束が千切られた。

 蠍は巨大な鋏で少女達を切り裂く、あるいは潰すつもりで襲いかかった。


        キィンッ


「残・念!!」

「この程度の力では、私達は破れないよ!!」


 2本の鋏をそれぞれ、シーナとラルファが剣1本で抑える。

 腕が押さえられると次は尻尾。ジェノサイドスコーピオンの甲部から尻尾が延びて、2人を薙ぎ払おうと振られる。


「やらせない…!!!!『アイシクルフラワー』!!!!」


 それを阻止しようと魔法を放ったのはミルス。

 右手が薄紫の光を放つと、スコーピオンのちょうど腹の下を中心とした周りに凍おりついた。

 四方八方に尖るその形は花のようで、その花の中心にスコーピオンの体は捕らわれていた。勿論、尻尾も氷の中に封じ込められ反撃できない。


『ガァ…!!』


 手も尻尾も使えず、逃げることもできないスコーピオンは口をカパ、と開いた。鋭い牙の山々が並んでおり、標的を金髪の少女へと変え首を向ける。


「舌噛まないように気を付けてください!!」


 その視界に割り込んだのはルナ。スコーピオンに向かって駆けて、その顎の舌に潜り込むようにジャンプすると、


「『サイクロンアッパー』!!!!」


 少女の拳が巨大な竜巻を纏って、その手の何十倍は面積がありそうな蠍の大顎へと直撃する。

 

 本当に竜巻に吹き飛ばされたように、スコーピオンの巨体は氷の花から引き剥がされて、その質量を無視したかのように宙に舞った。


『ガガガギャギャ…!!』


 破壊兵器は何かが壊れて擦れるような金属を発して、50m程遠くへ飛んだ。


 だが地面へ落下しても、まだ動き出そうとスコーピオンは足を動かしていた。


「結構……壊れないものですね」

「あれは特殊な製法で作られたらしくて、まず壊れないのが特長らしいよ……。それに新技術『マジックジャマー』の力で、魔法が聞きにくいんだって」

「だからバインドからも逃れられたんですね…。何か弱点とかはあるんですか?例えば電池切れとか…?」

「ん~、無いね…。あれは自分で発電機を持ってるらしいからは半永久的に動くとは言われてるらしいけど…。機械だから中の導線を数本切れば、動きは止まると思うよ」

「つまり…真っ二つにすればいいってことですよね?」

「まあ発電機ごと斬るのが確実だね。でも、それなら僕とラルファたんが切ることになるけど、あいにくあれを両断できるほどのスキルはないよ……」


 シーナが他の手を考えようとする。

 その間にもジェノサイドスコーピオンはひっくり返った巨体を戻そうと足を動かす。


「だったら私がやります」

「っ!!ミルスちゃんが…ですか?」


 挙手したのはもっとも意外な人物。魔法使いであるミルスだった。


「私の持つある魔法をスキル化させれば、あの堅い体も三枚おろしにだってできます!!ただ…」

「ただ…?」


 付け加えたミルスをラルファが聞き返す。


「魔力をかなり要するので、時間が必要になるんです」

「どんくらい?」

「え…っと……。大体10分…かと」

「ふむ…ふむ…」


 シーナは顎に手をつけて頷く。


「1分につき10秒間、ミルミルの胸を好き放題ね」


  「「「……………………へ?」」」


 シーナの予想外の言葉で全員が気の抜けた声で呟く。何より驚いてるのは名前をあげられたミルスだった。


「揉む、吸う、舐める、ぱふぱふ…、それ以外にもたくさん含めての自由を、許可して貰えるなら何分、いや何時間何日何ヵ月何年だって!!時間を稼ぐよ!!」

「なんでそんな理不尽な条件が!?そ、そんなの許可できません!!」


 顔を真っ赤にして反抗するミルス。


「チッチッチ…。ミルミル~、僕たちは命をかけてまで君を守るんだ。だからその程度簡単なものじゃないか?」

「だからって!!わ、私なんかより爆発してるルナさんやラルファさんの方がいいじゃないですか!?」

「バカヤロ!!!!!!」


 しゃくれてシーナが大声を発する。


「僕は大きなおっぱいが好きなんじゃなくて、おっぱいが好きなんだ!!!!そう……おっぱいなら、アルトきゅんのだって愛してるんだ!!だから揉ませろ吸わせろ、食べさせろ!!!!」

「食べる!!!?それは止めてください!!」


 胸を抑えながら恥ずかしそうにミルスは叫ぶ。


――――――――――――――――――――


「うっ…!?」


 ガイルを呑み込み、1人でに暴れ始めたベルザードを止めるべく応戦していたアルトは、黒い翼で羽ばたきをしたまま動きを止めた。


(なんだ…?いま乳首に痛みが?しかも両方同時なんて…、ベルザードの攻撃か…?)


「アルト君!!前!!」

「っ!?おっと!?」


 乳首を押さえながら気にしていると、歌姫のハルキィアに助けられて、ベルザードの腕をかわした。


(気のせいか…。とにかく早く奴を、!!)


 その時、遠くの仲間が自分の乳首について語っていることなんて当然思わず、アルトは八ツ手の巨人へと向かっていく。


――――――――――――――――――――


「………………ふふ……」

「……あはは…ははは……!!」

「?」


 不意にルナとラルファが笑いだした。


「ご、ごめんなさい…。なんか…楽しくて…クスクス…」

「なんだか…やっぱり皆と一緒が一番だねって思って……ふふふ」


 二人とも堪えるようにお腹を押さえているが、どうにも押さえきれず、笑い泣きしていた。


「アハハ。確かに…そうだね」

「…………はい…。みんなといるととっても楽しいです…。でもまだ足りません…」


 3人がミルスを見た。


「まだ……ここにはなければならない笑顔がありません…。それを戻すためにも、あの兵器を壊さなければなりません!!!!」


 ミルスの言葉に「うん♪」「はい!!」「やりましょう!!」と、返事が返ってきた。


「なら…やりましょう!!時間稼ぎをお願いします!!」


「任せて!!ミルスちゃん!!」


 胸に手をおいて頭を少し下げるラルファ。


「何度でも殴り飛ばしてやります!!」


 指をパキパキ鳴らしながら、やる気に満ち溢れるルナ。


「前金だ!!パンツを寄越せ!!!!」


 剣を片手に、もう片方の手でこちらに手を伸ばすシーナ。(彼女としてはやる気100%)


「では………、勝ちましょう!!!!」


 両手を合わせてミルスが叫ぶと、3人はジェノサイドスコーピオンの気を引くために、巨大蠍に向かっていった。


 ミルスは詠唱に入り、魔力が溜まるまで皆が無事であることを祈るように願っていた。






「尻尾!!来るよ!!」

「任せてください!!『サンダーインパクト・破』!!!」


 巨大な蛇のようにしなって飛んでくる尖った尻尾に向かって、ルナの拳が雷を集めたように光を放ち、彼女は正面から尻尾にパンチを入れた。


 バリバリバリバリィ!!


 敵が金属なのと、前より威力が上がっているのとで、体の大きさの差がありすぎる尻尾を弾いた。


「腕が来るよ!!」

「私が止めます!!『剛力斬』!!」


 尻尾の次は腕の鋏と言う、そろそろワンパターンと気づく攻撃に、ラルファが受け堪える。

 バーサーカーのラルファの腕にその見た目、動作に似合わないくらいの力が入り、まずは右鋏と激闘した。


 すると軽く蠍の腕を跳ね返し、その反作用を利用して左鋏も同じように弾き返す。


 ノーガードになった蠍は、威嚇するザリガニのような姿で口を開けた。


「そこだね!!」


 それを確認したシーナが口の前に飛び、剣を向ける。


     「『マグナムブレード』!!!!」


 スキル名を叫ぶと、剣の先に光が集まり、蠍の咽へ向けて放たれる。

 

『バガガギャギャゴゴ!!』


 シーナが目をつけたのは口の中と言うこと。

 おそらくジェノサイドスコーピオンの口は攻撃用ではなく、内部の機械の放熱のため。と言うことは中は繋がっていると考えれる。

 そのため遠距離攻撃のスキルを口が開けるときを狙って放ったのだ。


『ギャリギャリガガガガガ!!』


 吹き飛ばされはしなかったものの、シーナのスキルに押されて、ジェノサイドスコーピオンは何メートルか後方へ押し出された。

 中の機械が壊れたのか、音が変になっていた。



『ガギャガャ…ガ?』


「ん?」


 巨大蠍の動きが止まり、みんな動きをやめて様子を見る。


『ビー!!ビー!!ビー!!ビー!!』

「「「っ!?」」」


 大蠍の喉からではなく、背中辺りからその音は発されていた。


『異常発生、異常発生。敵ノ危険度ヲSト判断。ヨッテ「ラストプログラム」起動』

「『ラストプログラム』?」


 妙な単語が聞こえたため構えると、蠍に動きがあった。


 バゴン!!と言う音と共に、その巨大な尻尾が3つに別れた。そして背中が開き、中から左右で3対の、計6つの銃火器が姿を表した。

 それだけに終わらず、大きな鋏が割れるとその中から巨大な大砲のような丸い口が現れた。


「まさか……これって……!?」

「っ、避けてください!!」

「嘘だよね!?」


 少女達は同じことを思ったらしく、3人とも散り散りに建物の陰などに退散していく。


          『殲滅』


 その渇いた2文字だけが響くと、ジェノサイドは起きた。


  ゴォォォォォォォォンッ!!!!

  ズガガガガガガガガガッ!!!!

 

 腕の鋏から姿を現した砲筒から、レーザービームがバラバラに走り出した少女らを追いかけながら放たれ、背中の6つの機関銃からはさらにおまけと言った感じで少女らを追いかけながら、無数の弾丸が発車される。


「うぉわぁっ!?」

「……っ!!」

「暴走…!?」


 それぞれ必死に逃げることはできたが、また手出しができなくなった。その上今回は攻撃が激しすぎるため、自分達のいる場所がいつ危なくなるのかも分からない。


「攻撃範囲が広すぎる…!!」

「早く気を引かないと…!!」


 しかしジェノサイドスコーピオンの容赦ない攻撃により、迂闊に動くことも自分らの安全を確保することもできない。


 どうしようもない状況に為す術がない少女達。


 が、その時激しい光と共にスコーピオンに雷が落とされた。


『ガガガガガガギャギャギャギャ!!!!』


「っ!?」

「何がっ!?」


 何が起きたのか分からない3人は雷が落ちてきて、動きをピタリと止めた大蠍を見ていた。

 するとまだまだ蠍に異変が起きる。


 今度は無数の火の玉が蠍の周りに現れて、袋叩きにしていく。


『ガ……ガ……ガガ……!?』


 身動きが取れない蠍に、横から何者かが駆け出していった。

 戦士風の大剣を背負った男はゴツい体格をしていて、大蠍にその武器を振り下ろす。




 そこでようやく3人は気づいた。


 周りを見渡すと、蠍兵器を取り囲むようにたくさんの冒険者が集まっていたことを。


「俺らも手伝うぜ!!」

「できる限り支援します!!」

「前回の悪魔が来たときみたいに、逃げてられるかよ!!」


 重そうな鎧と兜を被った剣士の男、黒い衣に身を包んだ魔法使いの女性、ボクサーのような姿の武道家等々、その他数え切れないくらいの冒険者が建物の上で列を成していた。


「これは!?」

「もしかしてリブラント中から冒険者が!?」

「みなさん…!!」


「てめぇらぁ!!女ばっかりに戦わせてそれでいいのかぁ!?もっと魂見せろやぁ!!」

「うっす!!」

「おいっす!!」

「了解っす!!」


 おそらく中にはパーティー単位で行動しているものもいる。

 上半身裸のガチムチボディの武道家パーティーらしき男達が、揃って華麗にマッスルポーズを決めていた。


「回復が使えるもの達は主にあの子達の支援、それ以外は被害を押さえるために結界を!!」

「はい!!」

「ヒーリング開始します!!」

「鋼鉄蠍は地獄行きにしてね!!」


 今度は魔法使いのパーティー。巫女さんや身長の2倍くらいはありそうな杖をもつ魔法使い達が、各々魔法を使用している。


 リーダーらしき人物や、最後の人の言葉からすると、おそらく自分達にジェノサイドスコーピオンの破壊を任せられているのが、3人は理解した。


「……っ…。こんなにたくさんの人に後押しされたら…」

「強いなんて…もんじゃありませんね」

「……絶対に…倒す!!」


 3人は再び飛び出た。


 ジェノサイドスコーピオンは今、たくさんの冒険者の魔法やスキル名をやらを豪雨のごとく浴びせられて、動くことはおろか反撃もできない。

 恐ろしいのはそれでも一切の傷すらつかないこと。どこか凹んだりしてもおかしくないくらい攻撃を受けたはずなのに、シーナが口に放ったスキル以外が聞いていないのだ。


 その機体の堅さから判断するに、やはりミルスの一撃にかけるしかない、誰しもがそう判断した。

 おそらく今まででまだ3分程くらいしか時間が経っていない。


 それでも勝ちを確信したのはこの仲間の数を目の当たりにしてだった。

 時間をあと7分稼げば、この大蠍は沈められる。そう思えば7分など、たった420秒。


 冒険者およそ数百人vs人間殲滅兵器の戦いが始まった。








(感じる………)


 精神を胸を押さえる右手に集中させながら、ミルスは聞いていた。


 ひっきりなしに聞こえる大蠍に浴びせられるスキルや魔法の爆風、たくさんの冒険者の叫ぶ声。

 自分達と同じように何かを守ろうとその力を発揮する冒険者達。しかもその全員が自分のために時間を稼いでくれている。


(何だか…楽しくなってきちゃった…)


 あのひ弱だった自分と言う存在のために、見ず知らずの冒険者達が体を張っている。

 自分の成長と強さを実感できた。まだ兵器を止められた訳ではない。だが絶対的な自信をミルスは誇っていた。


 もう昔とは違う。自分は戦えるのだ。


 だから…。だからこれが終わったら、それをまずあの人に伝えたい。

 黒髪の魔法使いに何としても伝える。証明された強さがあれば、あの人だって信用してくれる。


 ミルスの心は光で溢れていた。そしてついにその時が来た。



「……見ていなくとも…、届いてますか……?」


 ミルスはゆっくりと立ち上がり、皆にとって名誉とも言える勇姿を眺めていた。


「私は…強くなりましたよ……、師匠……!!」


 そしてどこかにいるアルトへと告げた。



「皆さん離れてください!!!!!!」


 蠍へと攻撃を続ける冒険者達へ大声で叫んだ。


「……っ!!終わったか…!!」

「近接攻撃しているものは離れろ!!!!」

「遠距離が可能なものはそのままだ!!!!」


「ミルミル!!」

「お願いします!!ミルスちゃん!!」

「思いっきりやっちゃってぇっ!!!!」


 シーナ、ルナ、ラルファ、及び全ての冒険者がジェノサイドスコーピオンから離れた。

 ミルスが見つめる先には、動きを封じられた大蠍がもがいていた。


「『アウトサイドマジック』…………、」


 静かに呟くとその蠍に向けて右手を突き出す。


「『プラズマブレード』!!!!」


 そしてその手からまっすぐに細い光線がジェノサイドスコーピオンに当たり、その巨体の芯を撃ち抜くかのように貫通した。


「ハァァァ!!!!」


 少女がその手から伸びる光の光線を上に向けると、ジェノサイドスコーピオンの巨体が焼き切られる。


『ギガ…ガガガ…グゴ…?ゴゴガガゴ…?』


 今まで巨体を制御していたコンピューターが破壊されたのか、ジェノサイドスコーピオンは妙な音と動きをして、2つに割れた。

 その割れ目からは蒸気と、熔けた鉄が流れ出していた。


「「「「………………ハ……………?」」」」


 誰しもがその光景を見て口を開けていた。


 呆気なさ過ぎた。

 自分等がとっておきのスキルをぶち当てようと、たくさんの冒険者の力を合わせてでも、破壊には至らなかったジェノサイドスコーピオンを、一瞬で焼いたのだ。


「「「「「……ウォァァァアアアアア!!!!」」」」」


 次の瞬間起きたのは大歓声。

 少女がどんな手を使ってあの鋼鉄のボディを貫くほどの魔法を使ったのかなんて分からなくとも、自分達が敵わないくらい凄いことをしたのは理解できた。


「すごい!!すごいよぉ!!!!」

「何ですか今の!?何したんですか!?」

「カッコよかったよミルスちゃん!!」


 たった一撃で大蠍を仕留めたミルスに、シーナ、ルナ、ラルファの3人が抱きつく。


「み、皆さん苦しいです…!!……っ、ヒャワッ!?」


 照れながら3人に囲まれていると、臀部に妙な感触がした。


「だ、誰ですか!?お……、おしり揉んでるの!?」

「僕じゃないね、~♪」

「口笛吹いて知らんぷりしても分かりますよ!?」

「んじゃあ、おしり以外なら良いと申すか?」

「何言ってるんですか!?語尾が変わってます!!」

「まぁ…良いではないか。ほら言うでしょ。『頭隠して尻隠さず』。つまり触れってこと……」

「何でですか!?どっからその話出たんですか!?」


 シーナに揉まれながら体をくねらせるミルス。しかしルナとラルファの大きなOPIが邪魔して、避けることができない。


「強くなったんだね…ミルスちゃん…」

「私達も負けてられないなぁ…」

「ルナさん…ラルファさん…」


 温かい二人の顔を交互に見合わせた。



「おいおい嬢ちゃん!!!!」

「あなたスゴいわね!?何よ今の!?」

「名前は!?レベルは!?」

「わぁっ!?ちょっ……、!?」


 すると冒険者が一斉に少女の周りへと集まり、次々に思ったことを口にしていく。


「………………、」


 その時、あることを感じた。


 ワイバーンの群れを簡単に全滅させた師匠。

 もしかすると今の自分の立場が、それと同じようなものであることだった。


 仲間の数や凄さには違いはあるが、自分があの人のように町を救ったということは変わりない。

 それに気づいたら、胸の中が温かくなった。何だか少し、あの人に追い付き始めたような気がしたのだ。


 2つに割れた巨大な機械の怪物。千切れた複数の色鮮やかな回線から火花がバチバチと散るだけで、少しも動かなかった。

 それを自分が倒したと実感が湧いた頃には、ミルスも心の底から笑顔を見せた。








「すごいのね…。シーナちゃんの仲間って」


 歓声が巻き起こっている冒険者達を、煙草を吸いながら建物の上から眺めている、着物の女性がいた。


「それにしても…あの剣……。ふふ…、強い信念だわ♪」


 自分が鍛えあげた弟子のような存在のシーナを褒めるように、ヒスイは微笑んだ。


「おーおー。こいつは宴会かなんかありそうだね~」


 その横に缶ビール片手の聖女が現れた。


「あら?まさかあなたが来てるなんて、珍しいわね」

「まぁね~。内の門弟の勇姿が見るためにね」


 二人は顔見知りのように、自然に会話を交わした。


「町壊されないように、しばらく守ってた。これはもう完成だわ」

「あぁ…。あの金髪剣士ね。あなたの寺で修行して、よくまともね」

「うん。あの子は意思が強かったよ。性格を直したいって意思が強くて、それだけ『無の部屋』にぶちこんでも消えなかった…。彼女はすごい」


 缶ビールを飲みながらシスターは、本人に聞こえないのを知りながら称賛した。


「あなたがそこまで褒めるなんて…」

「何だよ~。なんかバカにしてんのかよ?」

「違うわよ。あなたが心から褒めるから、スゴいって言ってるの」


 一呼吸おいて、ヒスイは横目でシスターの姿を眺める。


「人界に降りて聖女やってる天使(・ ・)さんが褒めてるのだから…」

「ふっふ~。まぁシスターちゃんは完璧だからね」


 勝ち誇ったように腕を組んで胸を張るシスター(?)。


「悪徳な商売やってる、酒に溺れたダメ天使だけども…」

「失礼な事言うなよ~。酒に溺れてるんじゃなくて、酒の中を泳いでるんだよ」

「どっちでもいいけどね………、って…もう帰ったわね」


 ヒスイがそう告げたとき、すでにシスターの姿はそこになかった。


「さてさて…。あなた達の旅に祝福があらんことを…」

えーー…………、呆気ないと思われたりしてしまうかもしれませんが、一応ジェノサイドスコーピオンはとにかく硬すぎるつもりでしたので、焼き斬った事自体すごいと言うことです

マグマに落ちても、隕石がぶつかっても丈夫なくらい硬いと私の頭では設定していますので、どうか勝利を喜んでみてください


そして。


一段落が着きましたので、ようやく次回アルト オーエンまたの名をインフィニティ スリーパー、略してインスリが帰ってきます


それぞれがするべき事をしたら、後は楽しくしますので眠ったりしながらお待ちください

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