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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
冒険中断 ~それぞれのすべきこと~
79/127

時間だよ 全員集合

遂に集結となりました


まだ彼が帰ってくるまでは少しばかりかかりますが、変わったみんなを見てもらえればと思います。


これは誰視点なのか分からない部分がありますが、一体誰なのか考えながら楽しみながら読み進んでいただけると、嬉しいです

『ガガガ…ガガ……』


 それは身を潜めていた。何故ならそうプログラムされているからだ。

 平地の下、つまり地面の中を大地と平行に掘り進んでいた。


 それは標的を探していた。何故ならそうプログラムされているからだ。

 標的はある場所に集まっていることが多く、そこを目指して進んでいた。


『ガガガ…ガガガ?』


 それは動きを止めた。何故なら標的のいる場所を発見したからだ。

 

『ターゲット…補足。ターゲット ノ 熱源…確認…』


 それの目にはそこにたくさんの標的がいることが映し出されていた。


『コノ量ヨリ、タダチニ殲滅ト判断…』


 そしてそれは動き出した。


 それのプログラムにはこうある。


人間(・ ・)を状況によって適切な行動を導いて排除しろ』と…。


 そしてジェノサイドスコーピオンは起動された。機械の目に映るたくさんの標的を、残らず排除するために。



 標的がたくさんいるとされた町、リブラントに2度目の悲劇が巻き起こる。 









 彼女は歩いていた。久しぶりに戻ってきたリブラントの通りを一人で。


 仮に彼女をヒロインXとしよう。

 ヒロインXは強くなるためにしばらく仲間の元を離れていた。

 目的は強くなってみんなと仲間に謝るため。自分の今までの行動を見返して、みんなともう一人のある人物に。


 そのためヒロインXは強くなった。今までの自分とは全く違い、2度とみんなとバラバラにならないことを証明しに。


「みんな…どこにいるのかな…?」


 ヒロインXはどこかで会おうと言う約束はしていなかった。だから今は歩くしかない。


 ここで不安に思うのが自分がどう思われているかや、みんな集まってくれているのかだ。

 もしかしたら戻ってこないなんてことも考える。今のヒロインXは何よりそれが心配だった。


 折角、自分が変わってもその前にみんなに嫌われてしまったとか考えると怖かった。


 だから自信を持つ。そして一言目が『ただいま』。二言目が『ごめんなさい』と伝える。

 もう自分は自分の弱さを捨てて、皆のために強くなったことを伝える。


 しかしヒロインXが自信を持とうにも、強く持てないのは自分が変ではないかと思われないかだ。その理由も色々あるのだが、ヒロインXはどうすれば違和感が無くなるのか考えていた。


「……それにしても平和だなぁ…」


 リブラントは自分達がバラバラになる前に、破壊の悪魔のデスタと言うやつに壊滅させられた。

 だが通りすがりの魔法使いの力と、自分が謝らなければならない男性のおかげで人々は平和な日々を過ごしているのだ。

 その男性を心から尊敬している。

 だったら尚更、自分の気持ちを伝えないといけない。許してもらえるまで何度も。暴力だって振られたって構わない。自業自得で、その人の与えた心の傷をよりは軽いはずだ。


「……よし、みんなを探そう!!」


 ヒロインXは駆け出した。気持ちを改めて、早く仲を取り戻したいと心に刻んだ…………、


 矢先だった。


    ドオオオオオォォォォォンッ!!!!


 後ろの方から物凄い音が聞こえた。

 まるで地面から巨大な何かが飛び出したような……、いや、実際そうだった。

 ヒロインXが足を止めて、振り返ると


「キャーーーーッ!!!!」

「逃げろぉぉぉぉぉ!!!!」

「クソッ!?何なんだあいつは!?」


 さっきまで平和な時間を過ごしていた人々が、砂煙をあげてこちらへ向かってくる巨大な何かから逃げていた。

 何かは建物を破壊しながらどんどんこちらへ向かってくる。

 倒れた建物の人は無事なのか?あの何かに誰か追いつかれてはしないか?


 ヒロインXにそんなことを考えている暇はなく、何かをずっと見ていた。


 それは銀色に光を反射する頭だった。

 それは足が左右対称で20本くらいはあった。

 それは鋭く長い蠍の尻尾のようなモノが延びていた。


 自動魔物排除用起動兵器、『ジェノサイドスコーピオン』がその巨体で建物をなぎ倒しながら、物凄いスピードでこちらへと向かってきていた。


「あれは何!?機械の魔物!?」


 ジェノサイドスコーピオンを知らないヒロインXは、その姿に驚いていた。


 蠍と言うよりは全長100メートル程のシャコのような体だった。

 大きなハサミを延ばしながら、20本の足を気色が悪く見える動きで進んでいた。




 このままではこちらに来る。とりあえず他の人に危険を叫びながら、身を潜めた方がよい。


 そう考えるヒロインXだったが…


「キャアッ!!」


「っ!!」


 ヒロインXから10メートル程の所で、小さな女の子が転んでしまった。

 それに迫ってくるジェノサイドスコーピオンまでの距離は100メートル。

 

(あの機械のスピードなら、もう5秒くらいであの女の子に…!?)


 女の子が立ち上がって、あの兵器の予想される進路から逸れるまで充分な時間はないと考えた。


 気がつけばヒロインXは走り出していた。

 迫り来るジェノサイドスコーピオンの大鋏を迎え撃つように、腰の剣を掴みながら……。





「キャーーーーーーーッ!!」


 女の子は叫んだ。もうダメだと覚悟しながら、その場にうずくまり。

 物凄いスピードの機械の怪物の足がもう真後ろに………………………………………



       「早く逃げて!!!!!」


 女の子の後ろギリギリで止まっていた。


 少女は顔を上げる。

 そこにいたのは長身の女性だった。

 腰ほどまで延びている金色の髪を結ばずに、風に揺らしながら、剣1本で蠍の2本の鋏を受け止めていた。


 ヒロインX、もといラルファがジェノサイドスコーピオンの赤いランプの目と向かい合いながら、女の子に叫んでいた。


「早く!!通りから逸れるように逃げて!!」

「う…うん…!!」


 女の子はラルファの言う通りに横に逸れて逃げ出した。


「何なのかは分からないけど………、」


 蠍の鋏を支える腕に更に力が入る。


「みんなが逃げれるまでは、()が相手になる!!」


 そう叫ぶと剣を振り、全長100メートルのジェノサイドスコーピオンを押し返した。




 見た目や喋り方は変わっているがラルファだ。

 バーサーカーの、覚醒した青髪幼女ではない方の、金髪の男らしかったラルファ。


 もっと血の気の強くて、一人称は『俺』、そしてその力をうまくコントロールできずに周りに迷惑をかけたラルファだ。

 何故彼女がここまでの変貌を遂げたか。

 それは時間を遡ってのこと――――――――――――――……



『そい、っと!!』


 眼鏡の修道服の女性が眠っている金髪の女性に、バケツに並々に注がれた紫色の液体をかけた。

 主に顔を中心に薬を浴びせて、それを小さい幼女ラルファは見ていた。


『あわわわ…。これ息してないのですよ!?』


 眠っているときに液体を溺れるくらいに顔へ流されたラルファは呼吸をしていない。だがシスターは心配要らないと言う顔で空のバケツを置いた。


『これでうちの修行は完璧ね』

『えっ!?これでですか!?私ラルファが何をされたかしばらく見てないから分からないのですよ!?』


 青髪ラルファは自力で瓶から出られないため、シスターに置き去りにされたまま、金髪がドMになったのを見て以来の状態を見たことが無いのだ。

 それも今日が修行の最終日だ。不安で胸が詰まりそうだった。


『だって幼女ちゃんに見せたらうるさいと思ってさぁ~。口答えされるの面倒になった』


 なははは、とシスターは笑った。


『まあ簡単な今までの手順を言うと、ドMにしてドSにして、「無の部屋」に1日ぶちこんで、後は女の仕草とか教えてやった』

『だからその「無の部屋」とは何なんですか!?』


 今までラルファがずっと気になっていたこと。『無の部屋』とは何なのかがずっと引っ掛かっていた。


 するとシスターは答えた。今までと違う真剣な顔で。


『「無の部屋」ってのは、本当に「無」なんだよ。魔法が部屋にかかってて五感…、すなわち「視覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」「聴覚」の全てを感じなくなる。そしてその部屋にいると、自分の心も記憶も全てを1度消される。つまり、闇と同化するのさ……』

『……、…………』


 ラルファは何も言えなかった。今までふざけたシスターが真面目に話したのもそうだが、話していることがスゴすぎた。


『1日だけ入れたなら、出してやれば記憶は戻ってくる……。でも、もし長く入れすぎればやがて呼吸も忘れてただの人の形をした人形になっちまう訳だ……』


 シスターはポケットから缶ビールを取り出すと、蓋を開けて飲み始める。しかし真剣な口調は変わらなかった。


『でもって記憶だけもった人間ができるわけだが、人格は赤ん坊みたいに泣くことしかできなくなってる訳だ……』


 けどな、とシスターは付け加える。


『神経と脳はもう成長してるわけだから、躾と学習さえさせれば1時間足らずで大人には戻れんのよ。だから人格をあの尖った奴から変えるために、学習内容を変えた。道徳をどんどん詰め込んでやったんだ』

『で、でも、それって!?記憶があれば変わらないのでは!?』

『そう思うだろ?お前、心と頭って、違うもんと思うか?』

『っ!!!!』

『心って、寝てるとき以外は常に変化するアナログなもんだろ?でも頭にたまった知識ってのは違ってねぇか?学んだ事とかを指してて心みたいに変わり続けない、云わば情報を平均したデジタルみたいなもんだ』

『……よく分からないのです……』

『まぁ簡単に、人の性格と知識は違うって考えとけばいいんだけど…。性格をリセットしただけで、やつの頭には知識がある。SMで学んだ知識がね』

『!!??』

『幼女ちゃんは私が意味もなく極端にSとMにしたと思ってたのかい?残念だけどそれは違うよん』


 シスターがビールを一気に飲み干す。


『Sって言うのは人がどうされれば嬉しいか考えることを学べるんだよ。チミの相方をドSにした時、うちの修験者をバシバシ叩かせたんだけど…』

『初耳なのです!?』

『まあ聞いてよ。チミの相方はどんどん相手が嬉しいかどうかの意見を求めるようになったんだ。その時点で彼女は相手の望むことをすると言うのを学んだ』

『なんか…深そうで深くない話なのです…』


 ラルファの言葉を無視してシスターは続ける。


『つまりそれは優しさとか思いやりだよね』

『サディスティックなだけなのです!!』

『確かに相手に痛みを与えてればそれは違うよね。だからそこで必要になるのがMの経験。自分が叩かれる側になっての事を学んでれば、どうされれば100パーセントの喜びを得られるか知ってるよね?つまりある意味では優しさだ』

『こっちはそんなことを言われても知らないのです……』

『まぁ幼女ちゃんには分からないよね。とりあえず100歩譲って、彼女は優しさと言うものを学んだのだよ。それを記憶として残した状態で「無の部屋」に入れる。この修行で彼女は知識と記憶を残した状態で、人格とか性格と言った類いを綺麗サッパリリセットされるわけだ』

『……それでどうなるのですか?』

『でもって、ここで一旦魔法の薬を使うのだね。その薬の効果は「言葉の使い方以外の記憶を封じる」と言ったものだ。彼女は優しさを知った赤ちゃんみたいな感じになるから、そこにその優しさを更に広げるための教育を施すことによって、彼女は優しさで溢れた人間となる。勿論、記憶とか知識は箱に入れられて鍵をかけられたような状態だから、今私のかけた薬でそれをもとに戻すのさ』

『…………………………てことは?』

『この娘が目を覚ましたとき、そこにいるのはバーサーカーの強さと優しさを兼ね備えた、大和撫子がいるわけだ!!』


 指をビシッ、と立ててシスターが言い放つ。


『それってほとんど薬の力なのですよ!?』

『そうだけど~、大体魔法の力だし~』

『て言うか話も筋が通ってそうで以外と無理があるのですよ!?』

『まあ、後は成功を祈るだけだね♪』

『はぁ……。ラルファが目を覚ましたときすごく心配で…………、え…?』


 シスターが聞き捨てならないことを言ったのをラルファは危機逃さなかった。


『今…なんて…?』

『え?彼女が目を覚まし時どうなるか、成功を祈るだけ』

『それって失敗もあるってことなのですかぁ!?』


 確かシスターは自分に任せれば完璧だから大丈夫みたいなことを言っていたはず……。なのに成功を祈ると言うことは、完璧ではないと言うことになる。


『だってそうでしょ』

『完璧と言ったではないですか!?』

『幼女ちゃん。よ~く聞きなさい。私達は人格とかSMどうとか言う前に生き物だ』

『……っ、……』


 ラルファの胸でその言葉が鳴り響く。


『神に仕えるものとして言うけど、命って言うのはどうなるかわからない。それを人間が理解しようなんて不可能なんだよ』

『確かに…そうですけど…』

『確かに私は嘘をついた。それは謝るけど、ああでも言わないときっと君たちは試さずに帰ると思ったからだよ。それにこれから言うことはちゃんと覚えといてね』


 シスターが再び真面目になる。


『この世界には100パーセントの可能性なんて存在しなければ、0パーセントも存在しない』

『っ!!!!』

『つまり絶対と言うことはあり得ないんだよ。絶対そうなるとか絶対あり得ないがない……。何故だかわかる?』


 ラルファは無言で首を横に振る。


『見方を変えれるからだよ』

『見方……?』

『そう。例えば「1+1=2」って君は思うかい?』

『え?あ、はい…』

『ふむ。確かに1個のリンゴと1個のリンゴを合わせれば、リンゴは2個だ。そう考えればこれは常識だね。でも見方を変えて…、これをコップ1杯で考えればどうなる?』

『あ…!!』

『分かったかな?水ってのは合わせればまとまっちゃうよね?つまりそういうこと。「1+1=1」が成り立つんだよね。だからこの世界は100パーセントじゃないんだよ』

『た、確かにそうです…!!』

『まぁこれを合わせて原子何個とか、超科学的に考えられちゃうとダメなんだけど……、他にも炎とか風とかの現象で考えれば成り立つよね?』


 そこでシスターはニィ、と微笑んだ。


『だから全部ギャンブルだ!!日常生活にしろ、常にギャンブルだ!!もしかすれば歩いていると隕石が降ってきて死ぬかもしれないとか、歩いていると美女が降ってくるかもしれないとか、もしかすればって可能性はあるんだよ!!』

『おー…!!』


 ラルファにはシスターがはじめて輝いて、スゴい人なのだと感じた。


『だからまずは行動が大切なのさ!!可能性を掴むためには動かないと!!……お、目覚めたようだね?』

『えっ?』


 シスターが言い終えると、金髪のラルファが目を覚ました。


『う…う~ん…。あれ?()一体何をしてたの?』


 別人だった。喋り方も動作も、乙女だった。


『ラ、ラルファが女になった!!!!』

『あれ?ラルファ?そういえば私…どうしてここに……、…っ!?』


 急に金髪の女の子が胸を押さえた。


『ど、どうしたのラルファ!?どこか痛むの!?』

『……ぐすっ…ひっく…痛むには痛むの…でも、違うの…』


 金髪ラルファが泣いていた。胸を強く掴みながら、ポロポロと涙を膝の上に落としていた。


『私…オーエン君に酷いことしちゃった…。だから…悲しくて…、自分が許せなくて…胸が痛いの…』

『っ!!』


 金髪ラルファの言葉は青髪のもう一人の胸に刺さった。


『絶対…嫌われちゃってるよね……?口も聞きたくないに……引かれちゃってるよね…?』

『……だから…だから変わったのですよ!!』

『……ラル……ファ?』


 瓶から抜け出そうと青髪ラルファはガラスの壁にタックルをし始める。


『変わって、謝るためにラルファは変わったんだよ!!だから…今のラルファにアルトさんは絶対に振り向いてくれる!!!!』

『そうだぞ~、新生純情乙女~』

『シスター…さん…?』

『おお!!呼び方まで可憐に!!これは大成功だぞ♪』


 ラルファに向けてシスターは親指を立てた。それはラルファの努力を称えた、シスターからの祝いだった。


『ごめんね。変な薬使って苦しめて…。でも嬢ちゃんは勝ったんだ。自分にね。だからその男も絶対に変わったアンタを見てくれる。神に仕えるシスターちゃんが保証する!!』

『シスター…さん……!!』


 生まれ変わったラルファは二人の優しさに、しばらく声をあげて泣いていた。







「私は…私はもう負けない!!人間を恐れていた過去の自分に!!みんなを傷つけてしまう自分に!!」


 機械の蠍に力で勝利したラルファは叫んだ。


『ガガガ…ガガ……。標的ヲ、殲滅シマス』


 ジェノサイドスコーピオンはたくさんの足を動かしながら再びラルファに突っ込んでいく。


「ハァァァァァァ………………………!!」


 対するラルファは剣を顔の横で構えて腰を下ろす。真っ向からまたジェノサイドスコーピオンとぶつかろうとするフォームだった。


『ガガガガガガ!!』


 蠍のノイズ音が目の前まで迫ったとき、彼女は風になった(・ ・ ・ ・ ・)





「っ!!!!!!」


 バーサーカーの特殊スキル『神速』。

 まさに神の速さを誇る風となり、時間が止まったようにラルファの視界は白に変わる。

 止まった世界の中で目の前の兵器の真下に潜り込むと、その足を順に1本ずつ剣で叩いていく。

 音はなく、兵器の隙間を縫うように流れるその姿は、まさに風の如し。

 そして巨大蠍とちょうどすれ違ったような位置に抜けると、時は動き出した。


『ガガ……ガガガガガガガガガ…?』


 スコーピオンの足が全て見えない力で抑えられたように制止する。

 そしてバランスが崩れたのか、その何トンはあろう100メートルの巨体が重力に引っ張られるように、崩れた。


「やりました…」

『すごいよラルファ!!』


 金髪の剣士が呟くと、胸の中で喜ぶ誰かがいた。青髪ラルファだ。


 ラルファが目覚めて泣き止んだ後、シスターが返してくれたのだ。


『前より強くなったんじゃない!?』

「確かに…体が前より軽い気がする……」


 気持ちの問題だろう。今は胸がスッキリしているため、動きに迷いがなく剣を振れた。それに無駄な力が省かれたせいもあるだろう。前より明らかに強い。


『これならみんな驚くね!!』

「うん!!」


 ラルファが元気よく頷いた時だった。


     『ガガガガガガガガガ!!!!』


「……え?」

『危ないラルファ!?』


 神速で全ての足にバーサーカーの一撃を食らわせたと言うのに、ジェノサイドスコーピオンはまだ動いた。

 だが普通に立ち上がろうとしているだけならラルファも剣をとって、再びぶつかり合えていた。


 不意打ちだった。

 スコーピオンの巨大で鋭い尻尾は機能したままで、そのままラルファを真上から突き刺そうと襲ったのだ。


 剣を抜いて受け止めようにも、神速で逃げようにも、もう遅かった。ラルファが振り向いた時に既には、銀色の兵器の表面に自分の顔が映っていた。



      「『波動拳・改』!!!!」


 尻尾はラルファを貫かなかった。その前に突如現れた誰かの拳がぶつかり受け止めていた。


 それは黒いグローブを装着した、茶髪の長い髪が美しい女性だった。その腰にはウェストポーチのようなものがついている。


「ルナさん!?」


 武道家、ルナが光る右拳で蠍の尻尾を受け止めていた。


「ぶっ……飛べ、シャオラァァァァァァ!!!!」


 ルナが叫ぶとその拳の光が、蒼いエネルギーの弾丸となり尻尾を弾いた。

 その衝撃が巨大なもので、打ち返された尻尾に引っ張られるようにスコーピオンが空を舞った。


「あぁっ!!建物壊しちゃいました!?」


 吹っ飛んだスコーピオンはおそらく50mくらい飛んで、ひっくり返って足を気持ち悪く動かしていた。

 その際いくらかの建物を潰してしまったため、ルナはやっちゃったと言う顔で口元を抑えた。


「ところでラルファちゃん大丈夫ですか!?」

「え?あぁうん!!ありがとうございます!!」




 武道家の少女はたくましくなっていた。以前より頼もしいと言うか、強いと言うか。

 前からではあるが、大人な感じがした。


 この数日間、彼女には色んな事が巻き起こった。

 どっかの城へ連れていかれたり、ヤクザのボスになりそうになったりと、毎日が変わって何か起きた。

 その間少女が学んだのは色んな人がいることと世界を生き抜くための強さ。


 巨大蛙を打ちのめしたり、怪鳥に雷を落としたり、血風の中で熱い男達と殴りあったり、全身火傷で包帯だらけの人切りと戦ったり、たくさんの敵と人を見てきた。


 その中で必要だと感じたのは優しさと強さだった。

 誰かに手を差し伸べる優しさだけではなく、誰かを守れる強さ。つまり強さもまた優しさの1つだった。

 今回の独り旅でそれを学んだルナは、次々襲い来る暴風、雷雨、その他の障壁となる出来事の中で自分を磨いた。強さとは何なのか、何をすれば強くなるのかを、出会った人々の様々な意見を聞きながらを考えた。


 そして決めた。

 今まで気にも止めていなかった職業、武道家の最高職、『マスターハンド』になると。

 武道家の頂点の職業と言うだけあって、使えるスキルの威力が跳ね上がったり、更に強力なスキルも修得した。


 自分でなる方法を調べて、必死に努力した。道中人々の協力を得ながら、1日が何年にも感じられるくらいに。

 そして到達して戻ってきた。


 別に強くなった事を自慢したいとかじゃない。

 ただある人に、もう一人で頑張らなくていいと伝えるために強くなった。独りにしないために優しくなった。

 それがルナの1週間だった。





「気を付けてください!!まだ壊れてないみたいですよ!!」

「………………そ、そうだね…」


(あれ!?ルナちゃん気づいてくれない!?もしかして変わってると思ってるのって…、私の自己満足!?)


 鈍感なルナはラルファの見た目の変化にも何一つ気づかないため、ラルファは皆に会うことが不安になった。


 そうこうしている間にジェノサイドスコーピオンが起き上がって、こちらを向いた。


「とにかく…堅いみたいですね…。何回も吹っ飛ばしてみましょう!!」

「ま、待って!!何か、様子が変だよ!?」


 スコーピオンはそのままこっちを向いて、走っては来なかった。こっちをじっ、と見ているだけで止まっていた。


「壊れちゃったんでしょうか?」

「……っ!!違う!!あれは、!?」


 ラルファが自慢のバーサーカーの視力で確認する。

 スコーピオンは止まってはいない。

 その背中が開いて中から何かが、姿を現した。


「マシンガン!?」


 太い筒のようなものがアームのようなモノに取り付けられていて、こっちを向いていた。

 ラルファはそれがすぐさま銃弾を連続して発射するものだと察して、ルナの手を掴んだ。


 そして路地裏に駆け込む瞬間、殲滅するための銃弾の雨が降り注いだ。


「キャッ!?」


 間一髪、蜂の巣になる前に逃げ込むことはできたが、鉛の雨あられはしばらく止まない。


「どうしましょう…。これでは近づけません…」

「それに意外と堅い…。近づけたとしても、ダメージを与えれずに蜂の巣にされちゃう…」


 スコーピオンとの距離は50m程。気づかれても一撃で仕留められなくても、銃器はこちらを向いて穴だらけにされる。まずマシンガンをどうにかしなければ太刀打ちできなかった。


「相手は近づいてこないにしろ、このままでは町が壊されるだけです」

「弾切れなんてする気配も無さそうだし…。これ…詰んでるよ…」


 ルナとラルファがどうしようもできなくなった時だった。


「みんなお待た!!!!」


 頭上から声がした。


「っ!!」

「この声は!?」


 声の招待を予想しながら二人が上を見上げるとそこには…


「シーナちゃん!!」


 背中に小柄な彼女と同じくらいの剣を背負った、白銀色の長髪をなびかせている、両目の色が違う少女。


 シーナが建物の上に立っていた。


 以前と服装が変わっていて、貴族出身の剣士のような服装で、彼女の髪と同じような銀色に近い新しい装備だった。

 


「何だか分かんないけど、応戦した方が良さそうだね!!」


 シーナは大きく飛び上がると剣を抜いた。風に煽られ髪が後方に延びておでこが丸出しになる。スカートはヒラヒラとしているが、捲れて中が見えるようなことはなかった。

 

 そして落下地点でこちらには気づかずにマシンガンで前方へ火を噴いているスコーピオン、より正確にはそのマシンガンが延びている背中に剣を振り下ろした。


       「『メテオソード』!!!!」


 黒い剣だった。表面が錆びて切れ味がとても悪そうな、誰しもがそれを見て使い物にならないと判断しそうな。


 その剣が金属の蠍の背中に、良い音を響かせると少女の背後の空に赤く燃える岩が出現した。


 その燃える岩、もとい隕石はスコーピオンの背中へと物凄い速さで落下すると、蠍はそのまま隕石の下敷きとなり地面に埋もれた。


「う~ん…。威力は前より下がってる…か」


 錆びに覆われた剣を見ながらシーナは距離をとった。


『ガガガ…』


 背中に物凄い質量かつ膨大な運動量で隕石が落ちてきたと言うのに、蠍はまだ動いていた。

 しかしシーナの狙い通り機関銃の取り付けられたアームは折れ、背中に隕石を乗せたままなのでスコーピオンは立てなかった。


 シーナはその間真っ黒な剣を眺めていた。



――――――――――――――――――


カランッ………


「……な……っ…!?」


 目の前に置かれている剣を確認すると、ヒスイは口をあけて指で持っていたキセルを落とした。


「げほっ…げほっ…。ダメだったよ……ヒスイさん…」


 その後ろでシーナは泣いていた。


 シーナがヒスイを呼んだ理由はただひとつ。

 『アダマンタインメタル』で剣を作ることに失敗してしまったのだ。


 気合いを入れ直してシーナは、何回目にも及ぶ鉄うちの作業に入った。

 最初の時と比べると一回鎚で打つ度に、骨に振動が直接伝わるくらい堅くなっていた。しばらく手の神経が麻痺するくらいに、完成に近づいていたのだ。


 やっと完成だと思ったときに異変が起きた。

 ヒスイは『アダマンタインメタル』が縮まなくなれば完成と言っていた。

 打つ感覚が変化したのに気づいて、シーナは手を止めた。完成したのかと思ってそれを水につけて冷やした。剣で蒸発した水が蒸気となって視界を奪い、その熱でシーナの額に汗が垂れた。


 そして水から剣を抜いてみると、確かに剣はできていた。しかしそれを見たシーナは失敗したのだと感じ、胸から焦りにも不安にも悲しみにも似た思いが沸き上がってきた。


 剣は表面くまなく、錆びに覆われていた。


 恐る恐る触れてみると、まるで洗わずに何回も揚げ物をしたフライパンの縁の油汚れのように、ザラ……ザラと嫌な感触が体に響いた。

 どうすればいいか分からなくなった。


 ただ失敗したとしか考えられない状況に、涙を流すことができなかった。


 そしてヒスイを呼び、その反応で分かった。


 ああ、失敗したんだな…と。



「シーナ…ちゃん…」

「……ごめんなさい…ヒスイさん…。折角のレアな鉱物を…なまくらにしちゃって…」


 シーナは申し訳なさで一杯になった。自分に色んな事を教えてくれて、ただで剣の材料をくれたヒスイに対し、謝るための言葉しか口からでなかった。。


「違う…わよ…」

「……え…?」


 ヒスイの声音が変わった。

 先程まで暗かったものから、急に明るさを含んだ音になった。



    「これ…成功…してるわよ……!?」



「……っ!!!?」


 信じられない言葉だった。絶対に失望か同情のどちらかを言われると思ったのに、剣のゴツゴツした表面を指でなぞるヒスイは確かに『成功』と言った。


「……やった…じゃない…………。スゴいじゃない…!!シーナちゃん!!!!」


 呆然と立っていると、温かく柔らかな感覚が胸に広がった。

 それなのに魂を抜かれたように何も反応できない。

 だって信じられない。あんなサビのカタマリが…、自分の心の穢さを象徴したようなあんな醜い剣が成功だなんて。

 きっとヒスイさんが私のために誤魔化しているんだ。本当は失敗してて、私を慰めるために言っているんだ。そうに決まっている……。




 シーナは否定した。驚きのあまり信じられなかったのだ。遂に自分はやり遂げたなんて、信じられなかった。

 なのに、なのに彼女の目からは悲しみで流してたさっきまでのとは違う、温かい涙が頬を伝っていた。


「……僕…、僕は本当にやり遂げたの…?」


 震える声でヒスイの耳元で囁いた。


「ええ…。よく頑張ったわ…シーナちゃん…」


 ヒスイはシーナをさらに強く抱き、その左手で少女の銀髪をそっと撫でた…。


「う……ゎ………うわぁぁぁぁぁぁぁぁん……!!!」


 その手の温かさで胸が破裂した。


 それまで溜まっていた全ての感情が流れ出した。


 嬉しさ、苦しみ、悲しみ、罪悪感……、その他も含めた全てが、まだ幼い少女の成長を阻害していた者として、滝のような涙に洗い流された。


 その間ヒスイは親のように、少女を抱いていた。




――――――――――――――――――――


「でも…本当の完成はこれから…。だよね?ヒスイさん」


 泣き止んだ後、ヒスイはシーナにこう言った。


『「アダマンタインメタル」を使えばどんな剣もこんなサビサビのなまくらになるわ。本当に完成させるのはそれを使用する人…。あるものをこれに籠めるのよ……。それは―――――――』


「信念…だったよね?」


 『アダマンタインメタル』でできた武器は必ず錆びる。それはメタル自体が魔術的なモノだから避けようがない。

 だが魔法だからこそ完成させるための手がある。


 それが信念をその剣に込めること。

 剣は信念の象徴とヒスイは言っていた。何の目的でその剣を振るうのか定めることで、剣はその存在価値を示し、それを達成するための力を発揮する。


「……だったら…僕はこの剣を…」


 剣を空に向けて叫んだ。



    「誰かを守るために掴む!!!!」


 その瞬間、剣にシーナの信念が籠ったように輝き始めた。そして剣先から錆びが剥がれ始める。


 黒く淀んだ彼女の心に信念と言う光が差し込んだことを表すように、銀の光が中から放たれ、剣が姿を表した。


「それが僕の!!信念だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 シーナが銀に輝く剣を振り下ろす。

 その剣先は宙を斬るだけで地に突き刺さり何も起きないと思われた。しかしそれは起きた。


「ガガガ…ガガガ?」


 立ち上がろうとするジェノサイドスコーピオン。

 その足元から火柱が立ち上がり、巨大な機体を封じ込めるようにジェノサイドスコーピオンを呑み込んだ。


    「『フレイムピラープリズン』!!!!」


 スキル名を叫ぶと火柱はさらに高く燃え上がった。ジェノサイドスコーピオンの巨体は数ミリ足りとも外には出ていなかった。

 つまり完全に火柱の牢獄に閉じ込められたのだ。



「ス…スゴい…!!」

「シーナちゃん…!!」


 二人には分からなかった。当然だが、この1週間でシーナに何があったのか。何を学んで、何を強くなったのか。

 だが例えそれが分からなくとも感じることはできた。


    『彼女も彼女なりに強くなった』


 二人同時に同じことを思った。


 久しぶりの再開なのに自分達はまだ、落ち着いて話し合ったりしていない。

 話している暇が無いと言うのが現状だが、本来ならバラバラになってしまったことを詫びあって、それから全員である人物に謝らなければならない。


 だがそんなことをする前に既に心が通いあっていた。

 近すぎた存在から遠ざけることによって、ここしばらくの経験によって、むしろ皆が何を思っているのか言わなくても少しは分かるくらいまでに、成長していた。



「……どう……だ?」


 剣を納め、シーナは目の前の火柱を見つめていた。


 そして少しずつ焔が細くなっていったとき、


「っ!!!?」


 ジェノサイドスコーピオンの姿がなかった。

 機体は金属だから蒸発したとは考えられない。


 見れば地面に大きな穴が開いていた。ちょうどあの蠍くらいの幅の新しく掘られた穴が。


「どこに!?」


 周りを見回して、シーナは蠍を探す。しかしあの巨体なのに姿は見当たらず、地面に耳を当てても何も聞こえなかった。


「シーナちゃん!!」

「ルナぴょん!!それに…!?ラルファ…たんなのかい!?」

「う、うん!!久しぶりシーナちゃん…♪」

「…………えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」


 ラルファがルナの後ろから恥ずかしそうに微笑み手を振ると、シーナの絶叫が空に響いた。


「嘘!?嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!?イメチェンはともかくこれは…!!これは…!?」

「えっと…その…」


 「僕の性衝動を突き動かす可愛さだ!!!!」


「……へ?」


 てっきり別人とか言われると思ってたラルファだがその予想は外れ、シーナの考えはピンク脳の方に働いてしまったらしい。


「ねぇねぇラルファたん!!おっぱいに顔を埋めて深呼吸していいかな!!!?ハァハァ……!!」

「え!?ちょ…シーナちゃん!?何を言って……、ひゃあっ!?」


 動揺するラルファなど気にせず、シーナはそのまま彼女の柔らかな胸の谷間に顔を挟めて、「すーーはぁー……すーーーーーはぁー……」と呼吸を始めた。


「あのシーナちゃん?」


 暴走するシーナにルナが声をかけるが、当然先程までかっこよかった剣士は理性を失っている。


「ハ!?ルナぴょんの美味しそうな果実まで目の前に!?ぼ、僕はどうやってこんな果樹園で理性を失わず!!」

「シ、シーナちゃん!?頬擦りしないで…!!そ、それに今はこんな場合じゃ!?」


 と言うか性格とかの変化はノータッチですか、とラルファは心のなかで思った。


「ムハァ!!そうだった!!」


 ゴールにたどり着いたプロの水泳選手のように、シーナはラルファの胸から顔をあげた。


 そして剣を抜くと、3人背を会わせるように立った。


「ところで…、さっきからあのマシンは何なんですか?」

「あれは『ジェノサイドスコーピオン』とか言う兵器らしいよ。何でもエリクシティが対魔物用に開発したけど、暴走してるらしいね」

「でも、対魔物用なんだよね?だったらリブラントから離すためにてきとーに魔物を捕まえて誘き出せば、!!」

「いや…」


 二人よりは蠍マシンに詳しいシーナは、ラルファの提案を返す。

 剣が思ったより早く完成したため、装備を作る以外は暇な時間が多かった。そのためこれから度をするならと、ヒスイから『ジェノサイドスコーピオン』の暴走について注意を受けたのだ。


「プログラムから壊れてるらしいんだよ…。何でも本来なら『魔物殲滅』のところが『人間殲滅』に書き変わってるらしいよ」

「それって!?」

「うん…。変だよね?プログラムとかは人の手で加えられるモノだ。だから制作者が意図的にやったとギルドは睨んだけど外れ…。制作を命じた奴も知らんぷりらしいよ」

「無責任過ぎますね…」


 ルナが珍しく苛立った声をあげる。


「許せないさ…。だから被害が拡大する前に止めないと!!」


 と、シーナが叫んだ時だった。


『ガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!』


 巨大な蠍はルナの目の前に姿を表した。


「っ!!!!」


 ルナが応戦しようと拳に力を溜めたときだった。


「っ!!待ってください!!下からも来ます!!」

「「っ!?」」


 ラルファが叫ぶと3人の真ん中の地面が盛り上がり、少女たちをはね飛ばした。

 尻尾だった。ジェノサイドスコーピオンの長い尻尾が、まだ顔しか出してない巨大蠍にずっと繋がっていて攻撃を仕掛けたのだ。


 少女らは3人ともバラバラの方向に跳ばされ、それぞれ着地するとスコーピオンめがけて構える。


 だがスコーピオンの攻撃は空だけではなかった。


「殲滅…セヨ」


「「「っ!!!!」」」


 今度こそ3人の息が揃った。


 スコーピオンの鋏が開いて、中から姿を現したのはまたもや機関銃。しかも今度は片手に発射口が5はありそうなのがおまけで両手。


 ヤバイと察し少女らは身を隠す。


ズドドドドドドドドドドドドトドドドドド!!!!


 凄まじい音と威力の銃弾が降り注ぐ。先程の5倍はありそうだ。


 3人はバラバラに瓦礫の裏や路地裏に逃げ込んでやり過ごしていた。


 だがやはり機関銃の鳴らすメロディが止まる気配は無い。


(どうしましょう…。また手が出せなく…)

(今度はさっきみたいには行かなさそうだね…)

(メテオソードを放つにも隙がないし、鋏を切り落とさないと意味がない…)



 少女らは息詰まっていた。






「ほう…。あれが例の兵器か…」


 それを上から眺める影が1つ、そしてその隣に1つあった。建物の上の縁からジェノサイドスコーピオンの暴れ具合を見ていた。


「人間と言うのは愚かなものだな…。自分等を滅ぼす可能性のある兵器を自分等で作るとは。滑稽だ」

「確かに…これは酷い」


 その男はそのまま語っていた。


「さて…。これは人間の失態だ。ならば代表して貴様がスクラップにしてやれ」


 男は隣の人物に語りかける。


「我から教えることなどもう何もない…」

「分かったジョーカー……。今までありがとうございました!!」

「礼を言うな。これ以降はこの関係の事など全く無意味だ。我らは敵同士…、これからは忘れるな!!」

「へっ!?」


 男は隣にいた少女を足で蹴った。

 だがそれはダメージを与えるためとかではなく、今立っている場所から落とすため。

 予想外で受けた力に、少女の体はあっさりと建物の屋上と空中の境界線を越える。


「フハハハハハさらばだ!!!!アルト オーエンによろしく言うのだぞ!!」

「ちょーーーーっ!?いきなり落とすなんて酷すぎるぅぅぅぅぅーーー!!!!」


 少女は訴えるように男に叫ぶが、既にそこに怪奇の悪魔の姿は無かった。

 金髪少女はそのまま機械の蠍の背中へと向かって落ちていく。




「っ?」

「……何でしょうか?」

「……あれって!?」


 何か叫びながらジェノサイドスコーピオンの背中に落下したのは少女だった。

 見たことのある姿と聞いたことのある声。


 ミルス フィエルが舞い降りた(おちてきた)

最後にミルスが落とされて場に揃ったため、『全員集結』と言うことで一回区切らせてもらいます


戦いは長々とやるつもりはありませんので、次回でスコーピオンさんはさよならします


シーナ、ルナ、ラルファの1週間がどんなものかは分かっているかと思いますが、ミルスだけ全く分かりません

彼女に関しては少し先でやっていく予定なので、気楽にお待ちください

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