最高レベルの最低なパーティー間
始めに言うと過去最高レベルの重さです
文字数も少ないです
辛すぎてあまり書きたくはなかったのが本音です
まず後書きまで読んで貰いたいです
「………………」
今までで一番静かな朝だった。何かの物音や誰かの目覚ましで起きたわけでもなく、金髪少女の目が覚めた。
「着替えて…みんな起こさないと…」
ベッドから降りるとすぐに顔を洗いに向かった。
「ディアス…帰ってきてないんだ…」
小さなバハムートは昨晩から帰ってきていない。と言うよりデスタと戦ってるときに、いつのまにかいなくなってしまっていた。
「……」
心配ではあるが、もしかしたらこんな主人に愛想をつかしてしまい、出ていったのかもしれない。
「……、」
ミルスは冷水の入ったバケツに頭から突っ込んだ。
その後、ミルスは皆を起こして部屋に集めた。とある重要な事を告げるために。
ラルファとルナはすでに起きていて、シーナだけが昨晩飲んだアルコール入りの飲み物のせいで、目覚めが悪かった。二日酔いしているみたいにぐでぐでだったがなんとか起こした。
「それでー……。話ってー……何?」
具合の悪そうなシーナはベッドに横になりながら尋ねた。
「…………えっと…」
ミルスは中々言い出せないでいた。
「どうかしたんですか?」
何か暗い顔している少女にルナが優しく寄りながら聞いた。
「……て言うかアルトきゅんは~……?昨晩から見てないんだけど……」
リーダーが欠けていることに気づいたシーナが呟いた。
「……実は…」
「オーエンは…いなくなったのだろう……?」
「「っ!!!?」」
ミルスの代わりにラルファがそれを告げた。驚きのあまりシーナとルナは立ち上がった。
「それって…!?」
「どう言うことですか!?」
具合が悪いのも忘れてシーナは目を開き、マイペースなルナも顔を驚愕に染めていた。
「ラルファさん…、知ってたんですか?」
「…………。昨晩、考え事をしていたのだ…。そしたら窓の外に黒い翼の生えた人間が羽ばたいていた……」
「…………、」
「どうしてアルトきゅんはいなくなったの!?」
シーナがミルスに飛びかかる。
「……師匠は、闇を使いこなす為に時間をくれと言いました……」
「っ…、」
「それに今の私達との状態があまりよくない…って…。私以外のみんなの考えていることが分からない…怖いと言っていました…」
「……アルト……さん…」
空気が一気に重くなった。それもそうだろう。
急に大切な仲間がいなくなったのだ。
そうだ。みんな心配しているんだ。なら、みんな師匠の事が好きなんだ…。これが伝われば、きっと…分かってくれる……、とは思わない…。
本当にあの人の心を動かすにはまだ足りない。責任感に囚われすぎてしまうアルトなら、多分罪悪感を消す必要があるのではないだろうか。
「師匠が帰ってくるのは1週間後です…」
「っ!!パーティーから抜けた訳じゃないんだね!?」
「はい。だから私、師匠と約束したんです…。師匠が帰ってくるまでにより良いパーティーになって待っていると!!なのでどうすればいいか話し合い…」
「……残念だが…俺はそんな簡単に済むとは思ってはいない」
「っ…!!」
ラルファがミルスの話を止めた。
「ラルファたん、何でそう思うの?」
震える声でシーナは言う。
「俺たちは弱すぎる…。あいつの近くにいるだけで足手まといになる。今まで敵をほとんどアイツに任せて…俺たちは見物…。この状況を打破することがまず1つ目の鍵だ」
全員がなにも言えなくなり、ラルファが立て続けに述べる。
「それに俺達はまだ互いを知らなすぎる…。あいつが苦しんでるときに俺らは気づいてやれなかった…。互いを知ることこれが二つ目…」
「互いを知らないから…何なの……?」
シーナの声が震えていた。珍しく怒っていた。
「普通パーティーなら各自がやることを担当して戦うものだ…。攻め、守り、サポート…。だが俺らはそれができない。仲間の事を知らないから。もし俺らにその戦い方ができれば、アルト オーエンに全て任せなくても済んだのではないか?」
その正論を聞いてシーナはなにも言えなかった。
「そして3つ目……。これは主に俺のことだ…。俺達はパーティー内唯一の男であるオーエンとの接し方になれていない…」
「「……っ」」
全員が息を飲んだ。飲んだ息の代わりに罪悪感が登ってきた。
「ラルファたんは…自覚があったの?」
「自覚がなければ…こんなこと言えない…」
「……僕だってあったさ…」
「シーナ…さん…?」
「僕だって同じだ!!自覚があったのに…アルトきゅんの前だと変なことばかりしちゃう…」
顔をしたに向けてシーナは叫んでいた。その表情は見えないが、とても辛そうな声だった。
「あの……、皆さん?い、1度話止めてお茶にでもし、しませんか…?」
「ルナさん…」
嫌悪な空気の1度換気したいと思ってのことだろう。ルナが無理のある作り笑顔をしながら動揺して提案する。
「いや…いい。俺は出ていく…」
加部に背中を預けていたラルファがドアから出ていこうとする。
「ら、ラルファさん!?ど、どこへ行くつもりですか!?」
「オーエンが帰ってくるのは1週間後……。それまで一人にしてほしい…」
「そ、そんな!!今この状況を何とかしないといけないのに!!」
「この状況を何とかするためだ!!」
「っ!!」
ラルファが叫んだ。いつもちょっと怖めの雰囲気を出している男勝りなラルファだが、叫べば本当に成人男性でもビビるくらいだった。
「一応ある可能性の話をしておく…。オーエンは1週間後に帰ると言っていたが…」
「自分の意思で帰ってこない可能性もあるからな?」
「「!!!!」」
ドアの前のラルファと向かい合うようにいた3人は雷に打たれたように固まった。
「……1週間後にはちゃんと帰ってくる………。それまで…自分を見つめ直したいんだ…」
「……、」
今まで聞いたこともないようなラルファの泣き声をミルスは聞いた。
バタンッ
そしてラルファは出ていった。
「……どうして…。どうして…!!」
どうして自分はもっとアルトに優しくなれなかったのか。
『……ねぇ…。ねぇ』
「うるさい!!聞こえている!!」
『……っ!!ご、ごめん…』
ラルファに語りかけるのはラルファだった。といっても今入れ替わっていない少女の方だった。
誰にも聞こえない声が語りかけていた。
「……、用はなんだ…」
八つ当たりしてもしょうがないと思い、ラルファは息を吸って返事をした。
あっちのラルファとは常に繋がっている。だから怒鳴って申し訳ないと言う心は分かっているだろう。
『苦しそうだったから…。うまくみんなとやれてなくて…』
「もうそんなレベルではないだろ…。もっとまずい状況だ…」
『だから言おうと思ったの…。あなたがどうしてアルトさんやみんなにあんな感じになっちゃうのか……』
『まだ…。人間への憎しみが消えてないんだよね?』
「っ!!!!」
ラルファ。バーサーカーである彼女は人間に故郷を追いやられた。危害になるような事はなにもしていないのに、勝手に危険と決めつけられ、人間に襲われた。
ラルファにはその記憶がないはずなのだがここ最近、夜に夢を見る。ちょうどアルトと会ったとき辺りからだ。
青髪ロリのラルファがたくさんの子供たちと一緒に集められ、銃をもったたくさんの人間に囲まれている夢だ。
そして目の前ではたくさんの家が燃えていくのだ。周りの人間の顔は黒。そして裂けたような目と口だけが映っていてケタケタと笑っている。
少しずつ記憶が戻っていっているのだ。短くて鮮明でもないし、あまり夢など気にしないラルファではあるが、妙にそれがリアルすぎる。それに最近その夢しか見ない。
それが自分の記憶以外に考えられない。
「分かっているんだ……。オーエンも、他のやつらは悪くない…。なのに…怖いんだ…。自分で一緒に行くと言っておいて……あんな化け物どもと戦って…」
化け物とはガルガデスやベルザーグ、悪魔たちの事だ。
「よく分からない…。人間であるみんなを失ってしまうのが怖いんだ…」
自分で自分が分からなくなったラルファの言うことは矛盾していた。
人間だから憎む対象になっているみんなを、強敵との戦いで失うのが怖い。
自分の心が分からなくなっているのだ。
「こんなのはどうせ綺麗事になりかねない…。たぶん、俺が本当に怖いのは自分が分からなくなっていることなんだろうな…」
沈んだような声でラルファは呟く。
『……だったら自分を見つけようラルファ』
強い声でそう言ったのは幼女ラルファだった。
『私はアルトさんも…みんなも好きだよ…。私はラルファだって分かってる…。でもラルファは?バーサーカーの、裏の私であるラルファは?』
「俺は………分からない…」
『だったら…今から探そう。アルトさんが来る1週間後までに…』
「ラルファ……」
普段、覚醒後のラルファは大人である。強くていろんな事を知っている。
が、覚醒前のラルファと対面すると子供なのは覚醒後だ。
むしろ覚醒前はもう心が大人なのだ。強さとかは無くても自分の事はよく知っている。
『ごめんね…。私が今までラルファに人と接させなかったのが悪かった…』
「いや…。そんなことないさ…。俺がまだまだガキだったんだ…」
ラルファは目を閉じた。
自分が今までアルトにしてきた事を考えれば、腹を斬りたくなるほど腹立たしい。
だからもうそんなことをしないように自分を見つけなければならない。
ラルファはある場所へと向かうことにした。
「…………」
「…………」
「…………あの?」
ラルファが出ていった後の部屋は息ができそうにないくらい重かった。
ドアの閉まる音から1分程が経過して、ようやくルナが静寂を破ってくれた。
「と、とにかく、どうすればいいか考えましょう?」
「……ごめんルナぴょん…ミルミル…。僕も1週間、一人にしてもらっていいかな?」
しかし場の空気を何とか変えようとしたルナの考えは不発だった。
シーナの発言がそれを示している。
「……ごめん…。一回気持ちを整理したい…」
バタン
誰も止めることができず、シーナの退出を扉の音が見送った。
「えと…。その…。ミルスちゃん……?」
「……………………か…」
「え…?」
小さく何かを呟いたミルスだったが、ルナには聞き取れなかった。
「どうすればいいって言うんですか!?」
ミルスの感情が遂に爆発した。
「私は…師匠がより帰ってきやすい居場所を作ろうと思ったのに…!!どうしてみんな自分勝手なんですか!?」
下を向いたまま立ち上がったミルスは、誰に対するものでもない無茶苦茶な怒りを叫んでいた。
「ミ、ミルスちゃん…。落ち着いて_____」
「落ち着いてなんかいられますか!?」
純粋に慰めようと思ったルナだったが、むしろ逆となってしまった。
本当の本当の本当に、ミルスは歯止めを効かせられないくらい感情的になっていた。
「……だから…。こんなんだから私達は師匠に嫌われちゃうんですよ!!」
「っ!!」
とうとう言ってしまった。
最低だ。一番自分勝手なのは自分だ。自分でなんの努力もしないで、怒りだけ人にぶつけるなんて。自分が嫌われたくないから、自分が好かれたいと言う私欲だけで動いての結果なのに……。
「……えぐっ…ぐすっ…」
自分への怒りが、悲しみとなって目から溢れ落ちた。両手で顔を隠してミルスは泣いた。
その涙を洗い流してくれる師匠はもうここにはいない。
「ごめんなさい…ミルスちゃん…」
「……っ…、ル……ナ……さん…?」
泣いているミルスをルナは優しく抱いた。
「……ミルスちゃんは頑張ってる…。なのにそれに気づかないで、なにもしてない私はそれを傍観してるだけだった…」
泣くミルスの耳元で優しくルナが囁いた。
「ダメだね…。本当に私は何もできない…。ダメ人間だね…」
ダメ人間と言う言葉に心が揺れた。あの人もそう呼ばれていた。本当はすごい人なのにそう呼ばれてしまっていた。私も1度言ってしまったことがある。
でも、あの人はそれで怒ったりはするけど、本気で起こってはいなかった。
それは本人が本当にそう思っていないから。気になどしていないのだ。本当はすごいから。
「ミルスちゃんは疲れてるんですよ…。ゆっくり休んでください…」
なのに自分は本当のダメ人間だ。人の心を知らない、何もできない……。ダメを通り越してクズ人間。
「よいしょ…」
「え…?」
ルナがミルスを抱いて、そのままベッドに連れていき仰向けにした。
「私が…。私が代わりに頑張ります……。アルトさんが帰ってこれるように…、みんなを繋ぎ会わせてみせます」
「……ルナさん…?」
ルナは背を向けてドアの前まで歩いていく。そのままドアノブに手をかけたが、1度止まった。
「……ミルスちゃん。これだけは…これだけは覚えててください…」
ルナが振り向いた。
辛そうな笑顔がこちらを見ていた。
「ミルスちゃんも、シーナちゃんも、ラルファちゃんも、そして私も……、みんなアルトさんが好きなんですよ」
そう告げてルナは出ていった 。
「…………ぅ…」
耐えられない現状にミルスの心が遂に壊れた。
ベッドの上でうずくまりながら、少女は1日を泣いて過ごした。
睡眠も、食事も摂らず。
言い換えれば、生きようとすることもなく、ただ泣くだけだった。
とりあえず落ちるところまで落ちたと言う感じですが、あとは上昇していくだけです
バラバラになってからの話は個々で行きます
見苦しいと言うのは分かっていますが、せめてもう少しお付き合いください
『これもう解散じゃん』と思える状況から元に戻してみせます
挫折なしで、気を引き締めて書いていきます
なのでどうか、昔と変わった文章を読んでいただけたら幸いです
1度みんなに対する評価ををリセットしてもらって、次話からを読み進めてもらえれば一番良いと思います




