表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
冒険中断 ~それぞれのすべきこと~
64/127

心配性の歌姫

 今ヒロインは一人しかいないようなものなので、作者側としてはハルキィアを全力応援します。最終的に一番のヒロインは誰なのか分かると思いますが、それまで出てくる女の子の株は全体的にちゃんと上げておきます。(作者が女の子大好きだから)


 ちなみに、ハルキィアは歌姫ではありますがアイドルではないので『キラッ☆』とかはしません(謝)

18:00

宿 部屋の中


「…………、……」


 アルトがバスルームに籠ってから、もう少しで3時間が経過しようとしていた。


 ハルキィアは落ち着きなく、ベッドの上で体育座りをしていた。


 

 時間になるのに、一向にアルトがバスルームから出てくる気配がないのだ。


 集中したいから、絶対に声をかけないでほしいと頼まれたため、ハルキィアはずっと少年の無事を祈るだけだった。

 だがそれも、もう限界に近かった。


「……アルト君!!アルト君ってば!!」


 ハルキィアはベッドから飛び降りて、バスルームのドアの前まで駆けていった。

 バスルームの中にいるはずのアルトの名をドアの前から呼び続けた。


「大丈夫!?アルト君!!返事してよ!!」


 何度叫んでも返事はなかった。

 叫びに対して返事がない静寂の間、ハルキィアは泣きそうになる。


 仕方がないので、ハルキィアはバスルームへの突入を試みる。


 ハルキィアは思いきってドアノブを握った。

 と、そこで気がついた。

 ドアノブは金属。そして中は高温のサウナ。このドアノブは素手で掴もうものなら、火傷どころか焼き肉になってしまう。


 しかし、それに気がついたと同時に、か細い白い手は高熱である金属に触れてしまった。


「っ!!」


 触れた瞬間、指先からトゲを刺されたような痛みが広がり、ハルキィアはドアノブから手を放した。


「なんで…?どういうこと…!?」


 ところが数秒後、ハルキィアはその痛みがおかしいことに気がついた。


 ハルキィアが痛みを感じたのは、ドアノブが熱かったからではない。

 むしろその逆。ドアノブが触れたところを一瞬で霜焼けにしてしまうくらい冷たかったのだ。


「どうなってるんですか!?アルト君!!」


 今度は1度タオルを巻き付けてからドアノブを掴む。これなら直接触らずに開けることができる。


「アルト君!!」


 ハルキィアが勢い良くドアを開けると、冷気がバスルームから溢れ出てきた。

 まるで冷蔵庫を開けたような感覚だ。バスルームからの冷気が部屋に流れ込んできて、足元を冷やす。


「…………!!」


 しかし、ハルキィアは声をあげることもできないくらい驚いた。


 極寒のバスルームの中、裸のアルトが倒れていた。


「アルト君!!」


 急いでアルトに駆け寄り、その体を揺する。

 こういう時はあまり体を揺さぶるのは良くないと言うのは知っているが、ハルキィアにそんなことを気にできる心の余裕は無かった。


「嘘…冷たい…」


 ハルキィアは室温の低さ関係無しに、背筋を凍らせた。

 アルトオーエンが死体か何かのように冷たいのだ。


 訳が分からなくなる。

 どうして浴室が凍りつくくらい寒いのか。

 どうしてアルト君がこんなことになってしまっているのか。


 こんがらがった頭の中を『どうして』と言う言葉ばかりが泳ぎ回る。


「そんな……嫌だよアルト君……」


 目頭に液体が溜まる。

 部屋の冷気で涙が凍りつきそうになるが、その熱は凍らなかった。


「起きてよ……ねぇ…。……起きてよアルト君……!!」


 やけになって、ハルキィアは目を閉じたアルトの胸に、やるせなさから自分の手の鉄槌を落とした。


ドンッ!!


 拳が胸板に強く降り下ろされた。ゴムのような人間の胸筋に当たると…



「ギャァァァァァァァァッーーーーーーッ!!」

「キャァァァァァァァァッ!?」


 目玉が飛び出そうなくらい目を大きく開いて、死んだと思っていたアルトが飛び上がった。

 殴っても反応がないと思っていたハルキィアは不意を突かれ、驚き叫び上がった。


「ア、アルト君がゾ、ゾンビに!!」

「何をするんだハルキィア!?心臓を止めるつもりか!?確かに眠ってたけど、永眠するよ!?」


 どちらもお互いの予想外の行動に驚く。

 あり得なくとも心臓が動く奇跡を願っていたのだが、逆に止めるつもりなのかと怒鳴られ、ハルキィアは何がなんだか分からなくなった。

 それに対しアルトは、バスルームに籠って絶対に開けるなと言ったのに、開けられたあげく眠っている最中に胸を殴られると言うハルキィアの行動が信じられなかった。


「ね、眠っていたんですか!?こ、こんな寒いところで寝てるので、て、てっきり死んでるのかと思って」

「寒いって!?何のことだよ!!気がついたら眠っちゃったけど、ここは暑いはず…」


 そこで言葉を続けようとしたアルトだったが、突如、今まで感じてなかった凍てつくような寒気を感じた。


「何これ!?寒っ!!」

「寒っ…て、アルト君がやったんじゃないんですか!?」


 アルトにはこの寒さの理由が全くわからなかった。


「と、とりあえずこの部屋出よう!!」


 何も着ていないアルトは、ハルキィアと違って寒さを直に感じてしまう。


 と、急いで立ち上がったアルトだったが。


パサ……


「へ?」

「ん?」


 何かが足元に落ちたようだ。ひらりと軽くて布のようなもの。


 見てみるとタオルだった。ちょうど腰に巻くようなサイズの。


 しかしどこから落ちたのだろうか。アルトが 考えるが、答えはすぐに分かった。


 ハルキィアは座っている。

 アルトはその前に立っている。


 そしてアルトの身を隠すものなど何もない。

 落ちたタオルは、アルトの男の子を包む唯一の物だったのだ。


「い…い……っ!!」


 目の前の男子を見て、ハルキィアは


「イヤァァァァァァァァァァッ!!!!」


 初めて見た生命の神秘に、冗談ではなく号泣した。







「ご、ごめんなさい!!」

「すいません…でした…」


 互いを見合って土下座をするアルトとハルキィア。

 ハルキィアは申し訳なさそうに、アルトはすごく暗く謝っていた。


「い、いくらアルト君の…、ぉ、ぉ………を見たからって…、叫ぶのはやりすぎでした」


 恥ずかしそうにして一部声が聞こえなかったがハルキィアが謝っているのはアルトの怪我について。アルトのほっぺには湿布、頭には包帯が巻かれていた。

 その原因はバスルームでの悲鳴。

 ハルキィアは声に魔力を乗せる。魔力の乗ったその声は、魔法と同じ効果をもたらし得るし、攻撃にもなる。

 ただ魔力を乗せるだけなら、音は周りに波のように伝わっていくため、普通の生活上問題はない。しかし今回二人がいたのはバスルーム。ハルキィアの叫びは壁に反響して、アルトの身体中をボコボコに殴って吹き飛ばすようなダメージを与えてしまったのだ。


「いや…、僕が急に立ち上がったのが悪かったんだよ。……謝ります」


 アルトが謝っているのはハルキィアの目の前で、全裸で立ってしまったこと。

 彼女を不快にしてしまった申し訳なさと、音に殴られたダメージが効いていた。


「ごめんなさい…。もっと驚いて叫ばないように、無意識の内に魔力を声に乗せないように頑張ります……」

「構わないよ…。僕だって心配かけちゃったみたいだし…。それにこれで裸に関してはお会い子だ…」


 両者とも顔をあげる。


「ところで、どうしてバスルームがサウナじゃなくて冷凍庫に?」

「それが分からないんだ…」


 口元に手をあて、アルトは考え込んだ。


 確かにサウナ状態のバスルームには入って、精神を落ち着かせていた。


「入って10分も経たない内に、寝ちゃったんだよね…」

「それじゃあ…原因は分からないんですか?」

「そうなんだよね……。でも、1つだけ分かったことがある」


 睡魔に引き込まれている間も、炎は燃えていた。


「僕が起きたときも炎は燃えていたんだよ」

「え!?」


 ハルキィアがそんなわけないと驚く。

 あの凍てついたバスルームに入ったとき、炎は無かったはずだ。なのにアルトはどこで炎が燃えていたと言うのか。


「ハルキィアは気づいてなかっただろうね。だってドアの真上のところにあったから」


 つまり死角だったからハルキィアは気づかなかったのだ。

 しかし一番気になるのはそこではない。

 本当に謎なのはあの冷たさ。アルトが言う通り寝ている間ずっと炎が燃えたままなのだったら、あんなに寒くなったりはならないはずだ。


 とハルキィアが謎に思うと、


「ホラ」

「っ!!」


 アルトが右手から炎を出した。

 しかしただの炎ではない。黒い炎だった。墨のような真っ黒い炎がメラメラと手の上で燃えていた。


「この火…、冷たい!?」


 離れていてもハルキィアには分かった。炎から放たれているのは熱気ではなく冷気だった。


「そうだよ。この炎があの寒さの原因だろうね。この火は闇を使った魔法だ」

「闇!?アルト君…使いこなせるようになったんですか?」

「いや…。この炎が出せるようになっただけだ」


 悔しそうにアルトは炎を握る。指の隙間から黒い炎がチラチラと溢れるが、やがて消えた。


「やっぱり、闇ってのは良く分からない」


 炎を出していた手の平をそのまま額に当てた。


「魔法ってさ、色々ルールが決まってるんだよね」

「ルール?」

「そう。例えば、魔法で出せるものは一般的であるとか、生命活動をしているモノは出せないとか」

「生き物が出せないのは分かりますが、一般的ってどういうことですか?」


 ハルキィアが首をかしげる。


「一般的って言うのは、主にこの世界のルールってことだよ」


 ハルキィアがさらに首を曲げる。


 魔法にあまり詳しくないハルキィアにもわかるようにアルトは説明を始めた。


「僕らは魔法で炎を出せる」


 右手でアルトはオレンジの普通の炎を出した。


「炎は僕らも料理する時とかお湯を沸かす時とか、生活によく使うよね」

「そうですね」

「炎って言うのは科学的に現象であることが分かっている。つまり、魔法で出せるのは科学的な現象の炎なんだ」

「???」


 ハルキィアの頭から?が複数本飛び出てくる。


「簡単に言えば、魔法で出せるのは熱くてメラメラ燃えてる火ってことだよ」

「あ、それが一般的。つまり私達が頭で熱いものって認識している炎ってことですね」

「まぁそう言うことだよ。魔法で炎を出す際、魔力が炎って言う現象を引き起こす力になっているんだ」


 焚き火で考えると、魔力が薪の役割とマッチの役割、両方を果たしているようなものだ。


「それで問題はここ。料理にも湯沸かしに使える魔法で出した炎。もしこの炎の元となった魔力。それを闇にするとどうなるのか……、こうなるんだ」


 アルトが左手を出す。すると先程も出した黒い炎が手の上で踊るように燃えていた。


「これが、闇を元にした炎……。闇の炎だ」

「まさか…!?」


 そこまで来てハルキィアはようやく理解した。

 アルトが闇の何を語ろうとしているのか。一体、最終的に何を伝えたいのか。


 普通の炎は熱い。肉や魚を焼いたりすることができる。物を温めたり、火傷をしたりと加熱に関してなら何でもできる。


 対して、闇の炎は冷たい。水や物を凍らせることができる。炎であるのに冷たいのが問題だ。第一冷たい炎なんてこの世に存在しない。


 つまり、アルトが言いたいのは


「闇の力は、この世の原理なんて知ったこっちゃないってことだね」


 闇はこの世界のどんなルールをも変えてしまうと言うことだった。


「今回は炎だったけど、もし他のもので試してみると様々な結果が得られるかもしれない。例えば雷を当てたら怪我が回復するとか、水を作り出したら燃えるとか。魔法でもあり得ないことを闇は起こしかねない」


 ハルキィアはアルトの左手の黒い炎を黙って見つめていた。


「黒い炎はおよそ860万℃。それを闇はマイナス何百℃の炎に変えることができる」


 炎の色は温度、もしくは燃える物体で決まる。それにいっさい関係なく闇の力は、冷たい黒い炎を作り出すことができる。


「でも、それじゃあどうしてアルト君は無事だったんですか!?あんな死体みたいに冷たくなって!!」

「それも闇の不思議なところだろうけど、おそらく僕はコールドスリープと冬眠の間辺りだったんじゃないかな」

「コールドスリープ?冬眠?」


 話がSFっぽくなってきたため、ハルキィアには理解できそうになかった。


「まぁ、僕の場合は冬眠でいいんだろうけど」

「つまり、インフィニティスリープするところだったんですね?」

「その言い方は勘弁してほしいかな…」


 昨晩のいやーな記憶が蘇ってくる。


「体の機能は生命活動に必要なもの以外停止して、冷たい中眠ってたんだろうね。そのおかげで、三時間寝ただけなのに三日寝た気分だ」


 ぐーっとアルトは背伸びをした。


「本当にごめん。自分でもこうなるとは分からなかったから…。すごく心配かけちゃったみたいで」

「いえ、もういいんです♪アルト君が無事、むしろ具合が良いのてしたら安心しました♪」


 ほっとしたようにハルキィアは笑顔を見せた。純粋な、不安の晴れた笑顔だった。


「それより、もうそろそろ夜ですけど夕飯はどうしますか?確かこの宿でごちそうになれますよね?」


 ハルキィアが窓の外を覗くと、空は紺碧に染まりかけ夕陽が地平線からちょこんと頭を出していた。


「いや。僕は昼と同じカフェに行く。今度はナポリタンでも食べるよ」

「なら私もそうします。アルト君は危険なので一人にしておけません」

「…それって闇のこと?」

「無鉄砲さですよ!!」


 頬を膨らましながらハルキィアが目をそらす。何かに怒っているというのは分かったが、何にたいしてなのかはアルトに理解できなかった。








「いらっしゃいませ~……、あ…」

「どーも♪また来ましたよ」


 カランとカフェのドアを開ける乾いた音が響くと、ウェイトレスさんが迎えようとするが、1日に2人目の客と言う事より、1日に2回も同じ人が来てくれたことに驚いた。


「あ、ありがとうございます!!」

「頭下げないでください。今日初めて来た客と思って大丈夫ですから」


 ペコリとお辞儀する若いウェイトレスさんにハルキィアはそう告げた。


「ナポリタンのコーヒーのセットで」

「私もそれで♪」

「はい!!かしこまりました!!」


 嬉しそうに答えるとウェイトレスさんは注文を伝えるため厨房に走っていた。


 アルトとハルキィアはてきとーに空いてるテーブル席へ座る。


「すごく嬉しそうだったね。シューラにいる間は毎日ここに来ようかな」

「でも1日置きに定休日じゃなかった?」

「そんな!?あの味が1日ごとなんですか!?」


 ショックな様子でハルキィアが落ち込む。


「その日は自炊するしかないね」

「あ!!アルト君って料理できる!?食べてみたいな~、アルト君の作った料理」

「料理はできるけど期待はしないで欲しいな」


 そんな風に楽しく話をしていると。


カランカラン


「えっ…」


 店に入ってきた3人の中年の客。その姿を見てハルキィアは口を開けた。


「だー……ちっくしょう…。眠気が消えねぇ」

「まさか…17時間も眠っちまってたなんてなぁ……」

「あのインフィニティスリーパーとか言うやつ…今度会ったらただじゃおかねぇ」


 入ってきたのは昨晩、湖で襲ってきた3人の男達だった。3人ともすごく眠そうで、目が閉じそうなくらい細目で、何度もあくびをしていた。


「ア……ア……アルト君……!?」

「ん?どうかしたのかい?」


 座っている向き的にアルトには背後の方にいる男達が見えていないので、ハルキィアはあの男達が入ってきたことを伝えようとする。


「ん?……あ!!」

「しまった!?」


 魔法使いの男に気づかれてしまった。すると他の二人も気づいたようで、こちらに向かってにやにやと笑いながら歩いてくる。


「へっへっへ。奇遇だなぁお姫様と…イン…イン何だっけ?」


 3人が座るアルトの背後に立ち、挑発的に話しかけてくる。するとアルトも振り向かなくともハルキィアが何を驚いていたのか気がついたようだ。


「インスタント ストーカーじゃなかったか?」

「ハッハッハ!!それ最高だな!!」


 下品な大声の笑いでアルトを挑発する。

 

「まぁ、何でもいいけどよインフィニティスリーパー。ちょっと…」


 プツン


 ハルキィアには何かが切れるような音がした。目の前の少年の頭から。


「「表へ出ろ(よ)」」


 顎鬚男とアルトの声が重なった。


「あぁ!?」


 カチンと来た男はアルトの胸ぐらを掴む。


「表に出ろって僕が言ったんだ」


 男の目を睨みながらアルトは普段と変わらない口調で告げた。


「いいじゃねぇか。そろそろ大人の怖さ教えてやらねぇとな」

「ほら立て」


 男がアルトを取り囲んで、そのまま店のドアを出ていく。


「アルト君!!」


 ハルキィアが立ち上がってアルトの名前を呼ぶ。しかしアルトはこちらを見て微笑んだだけだった。


 その顔を見て自然と不安がなくなり、ハルキィアはそのままゆっくりと座り直した。






数分後



「ただいま」

「アルト君!!」


 何もなかったように戻ってきたアルト。ハルキィアは椅子から飛び上がって駆け寄る。


「どこも怪我とかないですか!?」


 アルトの体のあちこちを見てどこも異常が無いことを確認する。


「大丈夫だよ。バハムートにすら大きな怪我無く勝ったんだ。あんなやつらにやられたり…、わっ!!」


 それ以上言葉を続けられなかった。

 アルトの体に柔らかな重さがのしかかり、鼻には暖かい薫りが流れてきた。


 ハルキィアが正面からアルトに抱きついた。


「ハル……キィア?」

「よかったです……。本当によかった…」


 息を吐きながら、強くアルトを抱き締めていた。


「だから心配なんですよ…。だから怖いんですよ…。いきなりアルト君がいなくなっちゃいそうで…。分からないからここまで心配するんですよ…」


 ハルキィアの体が震えているのが分かった。小さな震えではあるが、アルトの胸の奥深くまで、その想いが伝わってきた。


「ごめんね…。カッとなったのもあるけど、ハルキィアを守ろうと思ったから……。ハルキィアはもっと安心していい。僕はレベル100だよ?そんな簡単にやられるわけがない」


 アルトもハルキィアをそっと抱き締めた。


「お待たせしました!!」


バッ!!


 ちょうどそこへ来たウェイトレスの声で二人とも我に返り、素早く離れて何事も無かったかのように座る。

 感情的にしていたが、よくよく考えれば抱き合っているのも結構恥ずかしかった。


「どうぞ。ナポリタンとコーヒーです♪」

「ど、どうも」

「あ、ありがとうございます」


 両手に持ったトレーからそれぞれへ注文の品を置いていく。


「……ん?って、おい!!」


 アルトが大きくつっこんだ。


「なんだこの…コーヒーは!?」


 アルトはウェイトレスさんの置いたコーヒーを指差す。

 そこにあるのはコーヒーというより、カフェラテだった。しかもお洒落にラテアートが施されており、そのラテアートは大きなハートマークだ。しかもアルトのだけでなく、ハルキィアのも同じものだった。


「サービスです♪」


 ウェイトレスの娘がいたずらな笑顔でこちらを向くと、スキップを踏んで厨房の方に入ってあった。


 何か勘違いされてるようだが、面倒なのでアルトは諦めることにした。


「たべ…ようか」

「……はい」


 ゆっくり顔を見合って椅子に座る。そしてフォークを手にパスタを巻いていく。

 何故だかぎこちない空気だ。


「そ、そういえば。あの3人はどうしたんですか?」

「あの3人なら、多分改心すると思うよ…」


 それ以上はアルトは何も言わなかった。

 ハルキィアもアルトを見ると黙々と食べ始めた。


 


 二人の時間を表すかのように、トマトの甘酸っぱさが、二人のほっぺをきゅ~と刺激する。

 思ったより細かく書けているので、話はまだ続きます。

 あまりぐだぐだとやるのもあれなのでもう少ししたら日にちをいくらか飛ばして、7日目/8日目でアルト君サイドのストーリーに決着を着けたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ