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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
五悪魔復活 ~崩れゆく関係~
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黒い鳥は1羽で飛び去る

今後どのようにするか考えすぎて時間を使いすぎました。

不定期の投稿にならないように、努力します

「………平和な夜だ…」


 アルトが呟くと、グラスの中の氷がカランと音を立てた。灯りとなるものがベランダから見える月位しかないため、水晶のようなグラスの中で氷と共に揺れる紫色の液体が、月の光が当たることで少し怪しい色を反射させる。

 ベランダの前の色に腰かければ、夜の静かさの前に外から聞こえる騒がしさに先に気づく。人々の笑う声のようなものや、楽しそうな楽器のメロディーがかなり小さくだが聞こえてくる。


 街の中央で宴、もしくはパーティーでも開いているのだろうか。その騒がしい音とは対称的に、今アルトがいる場所の周りからは一才、音も人も感じられない。街の人全員が噴水の印象的な中央広場に集まっているのだろう。取り残されたと言う感覚に捕らわれてしまいそうだが、そうは思わない。休むのにぴったしな状況だ。



 アルトは今、リブラントのホテルの部屋にいる。時刻は夜10時頃。黒い空には真っ白な月がぽっかりと出っ張るように浮いている。悪魔が襲ってきたとは思えないくらい明るい夜だった。


 それは数時間前に遡る。






「…………」


 アルトは翼を動かしながら街の後に降りる。何かが落下したように瓦礫から砂煙が立ち込めている。そこに落ちたものが何かは分かる。しかしそこに先程まであった凶暴な魔力がなかった。


「ししょ…う…さん……!!」


 ミルスも地面に飛び降りて師に駆け寄ろうとしたが、砂煙を見上げる凛々しいような清々しいようないつもと違う雰囲気のアルトを見ると、別人のように感じられてかしこまってしまった。もしくは理性を取り戻したアルトの前で罪悪感が甦ってしまったと言うこともあるのかもしれない。

 変な呼び方をされたアルトも1度ミルスを見たが、すぐに目を戻した。


「……悪魔のままではあるか…」

「え…?」


 アルトはいきなり呟くと、ゆっくりと何かが落ちたところへと歩き始めた。




「……デスタ…」

「……!?」


 その落下物を見おろすとアルトはその名前を悲しそうに囁き、ミルスは一瞬驚きの表情を作りすぐに悲しげに目を閉じた。


 そこにいるのはデスタだった。『ホーリーバインド』で拘束され『黒流星』で撃ち落とされた、元の姿に戻った上半身裸の破壊の悪魔がいた。

 だがそれだけではなかった。それだけでアルトとミルスを同情させられる訳ではなかった。


 腕を大の字に広げ、右手で目を隠すように泣いていた。


「グガ…、ァァァ…チク……ショウ……」


 デスタは自分の不幸を嘆いているのだ。それは負けたことなどではない。負けたのに悪魔のままであったからだ。今の感情がスッキリしているからこそ心から泣いていた。


 「確かによぉ…、暴走した闇は消えた…。負の感情も吹き飛ばされてむしろ嬉しいくらいだ…。けどよぉ…、何も変わってねぇんだ…」


 辛すぎる人間の言葉だった。なんと不幸なのだろうか。1度悪魔になっては、もう戻ることができないのだ。

 現実がそれを証明していた。


「感謝はするぜ…。やっぱジョーカー倒したのは本当みてぇだな…」


 デスタは顔の前から腕を退けると、スッキリしたような顔で雲の晴れた空を見上げながら呟いた。


「デスタ……、君はこれからどうする?」

「そーだなぁ…俺もまだまだ強くなりてぇしな…。お前みたいに強い存在知っちまったら余計そう思っちまう……」


 友のように語り合うアルトとデスタをミルスは不思議そうに見ていた。闇があることには変わりないが、二人とも人が変わったように話していた。

 闇に1度飲まれた者同士だからなのか、それとも二人の気が合うからなのか、浮かび上がった様々な疑問からミルスは答えを選び出すことができなかった。


「デスタ……。良ければ内のパーティーと一緒に行動しないか?」

「えっ!!!?」

「……っ………」


 最初に大きく驚いたのはミルスだった。デスタはただ無言でアルトを見ていた。


「デスタを………仲間に…!?」


 ミルスは師のいった言葉が信じられなかった。


 デスタがパーティーに加わるのが嫌なわけではない。問題は暴走したときの事だった。

 ミルスはデスタが嫌いだったり、敵だとかは思っていない。だがこの破壊の悪魔は感情がぐらつき安く、すぐに暴走を起こす。闇が暴走するのならば、光の力を持つ自分が止める必要がある。しかし、もしもデスタの闇の力に当てられてアルトまでも暴走したら、おそらく止めることができない。今は普通だが、アルトが本当に闇を抑え込めているのか分からない。

 そう考えると自分の未熟さが不安だった。


「残念だが断る」


 吐き捨てるようにデスタは返事をした。


「お前の気持ちは嬉しいが、俺は破壊の悪魔だ…。友好関係とか新しく作るの性に合わネェ……」


 そっぽを向きながらデスタの姿は消えた。全てが幻影だったかのように、その時だけ呆気なく煙のようだった。濃い闇の気配が数秒の出来事で消えた。


「………………」


 無情。

 それによく似た感情しか、デスタは残していかなかった。心残りではあるがアルトはゆっくりと顔を上げた。そして周囲の様子を見回す。

 割れた地面、砂と瓦礫の海。何十年も経過して廃れたような街にしか見えなかった。つい先程までは人々が行き交っていたはずの広場。噴水の水も干からびてしまっていた。


「アルト……さん…」


 名前の呼ぶことさえも恐れながら、舌先に力を入れて言葉を後ろの少女は発する。


「悪いけど…今話してる暇はない…」

「……」


 素っ気ない言葉だった。ミルスは感じている。師の闇は決して消えたわけではない。


 目覚めてからはアルトから闇が消えたわけではなく、ただ使いこなしていただけだった。つまりアルトは闇を消費する術を知っただけだ。人間はストレスが溜まったら、趣味やスポーツなどで解消する。それと同じで、アルトは闇の使い方は分かったものの湧いてくる闇の力の断ち切り方が分からないのだ。


 しかしミルスは師がどんな冷たい反応をしようとも、受け入れようと決めていた。


「黒式魔法 『黒穴(クロアナ)』」


 アルトは後ろの少女に無関心で宙に指で円を描いた。すると紙をカッターで切り抜いたように、空間に穴が空いた。そしてアルトはそこに肩まで手を突っ込むと、何かをかき回すように腕を動かした。


「…………いた」


 そして何かを掴んだ様子で腕を穴から抜いた。その手に掴んでいたのは人。小さな魔法使いのような少女だった。


「な…何!?何で急にここに!?」


 自分の状況が理解できない様子で少女は動揺する。


「レムナ…手を貸せ」

「なっ!!レベル100!?まさか君の仕業かミャー!?」


 レムナと言う名の少女はようやくそこで、自分が無理矢理引っ張り出されたという事に気がついた。ミルスにはその少女が何者なのか、アルトとどういう関係なのか分からなかった。


「俺の魔力も使って、範囲魔法で街囲んで戻せ」

「ちょ!?一方的だし早いし何言ってるか分かんないし!!」


 要求ばかり押し付けられたレムナは唇を尖らせて抗議する。


「いいから頼む」

「……ズキュンッ……!?」


 そのアルトの一言で、何かを撃ち抜かれたような音を発するレムナを、何か不安そうにミルスは見ていた。レムナは顔を赤く染めていた。


(もしかしてあの子……。)


「し、しょうがないなぁ!!そそ、そんな渋くて凛々しい顔で言われたら、答えはyesに決まってるミャー!!」


 レムナの行動から、その心がミルスには解った。同時に、少し複雑な気持ちになるがあまりその気持ちを思わないようにした。今の自分には何かする権利がない気がしてならない。師に対する罪の意識、その罪への謝りの気持ち、それだけが胸の中だけで渦巻いている。


「この規模を元通りにするとなると、火なりの力使うけど?」

「構わない。いくらでも使え」

「そいじゃあお言葉に甘えて…」


 レムナがしゃがむと、その足元に魔方陣を作り出した。右手のひらサイズの小さな円の魔方陣だ。それに連動するかのように、街の後を魔方陣が囲んだ。


「それじゃあ魔力。貰うミャー♪」


 そして胸が締め付けられるような苦しさを感じているミルスの前で、アルトがレムナの手を取った。

 その瞬間、視界が街の後が光に包まれた。








 ような事があり、リブラントの人々には平和な生活が戻った。建物も噴水も煙突の煙も元通り帰ってきたのだ。

 その後、町長が危機が去ったのを祝うため祭りなのだかパーティーなのだかを開いた。レムナはまた姿を眩まし、アルトの姿も元に戻った。


 しかし、姿が戻っても闇は消えてはいない。やはり自分の中から作り出されている。やはり何故なのかは分からない。カーテンを開けるとか、ワインを取り出すとかにして、消費してはいるもののそのくらいずつでしか消費できない。どうしてあの時、自由自在に扱えたのだろうか。それが今一番知りたい。


「どうしたもんか…」


 月を見上げながら、ゆっくりと水滴で濡れたグラスを手に取り、中の怪しい色の液体を飲む。

 ちなみに飲んでいるのは赤ワイン。未成年ではあるが構わず、慣れていない初めての味を楽しみながら飲んでいた。


コンコンコン…


 と、部屋のドアを叩く音が聞こえてきた。


「誰だ?」


 少しだけ警戒しながら、アルトは低めの声で来訪者を尋ねる。


「えっと…その…、ミルス…フィエル………です…」


 声だけから自然でない態度だと言うのは分かった。多分何かを不安に思っているのだろう。それが何なのか、思い当たる節が複数あるため分からない。


「どうぞ」


 アルトはワインに濡れた唇でアルコールの匂いを吐き出すと共に少女の入室を許可した。


「失礼します……」


 ガチャリとドアが開く音と同時に分かった。少女が何を気にしているのか。浮かない顔の少女がドアの向こうで手を前で組んで立っていた。

 ここへ来た目的が詫びだということが即座に分かった。


「何か用かい?」


 何の用なのかは分かっているがアルトは業と平然を装っていつも通りに尋ねてみた。


「えっと…そちらまで行ってもよい…ですか…?」

「構わない…」

「ありがとうございます…」


 まるで初対面なやり取りだ。今の少女は何に対しても気を使いすぎている。無理ないと言うのも分かるが、ここまでは初めてだ。


「えっと…」

「街の人達は元気だね」

「っ…、……そう…ですね…」


 アルトは意地悪をするように、あえて少女の言葉を遮るように目を窓に向けて、話題を反らしてみた。何故だかそうしたくなった。少女は言葉を塞き止められると、少し怯みながらもアルトの言葉に答えた。


「月も綺麗で、初経験のアルコールも中々良いものだね」

「お酒…ですか…?」


 丸テーブルの上にある紫の瓶を見ると、ミルスは少し驚きを見せた。


「…………師匠…」

「何か?」


 もう一度ミルスが語りかけてきた。今度はそのまま聞くことにした。


「………………ごめんなさい!!!!」

「……」


 いきなりミルスは声を張り上げて、立っている状態から、木目の床に頭を付けるような姿勢へと写った。かなり深い、土下座だ。


「何に関しての謝りかな?」


 知っていながらもアルトはあえて言わせようと言い、その目は少女ではなく月だけを捕らえていた。


「たくさんあります…!!」


 少女は頭をあげない。いや、あげれないのだろう。今まで溜まっていた自責の想いが、遂に支えきれなくなったというところだろうか。


「強くなるって言ったのに言葉だけ!!ジョーカーの時の数々の酷い仕打ち!!そしてそれをもっと早く詫びることができたのにしなかった事!!その上まだまだ!!」


 ミルスの声はいつもより高く、そして速かった。涙を堪えているのだ。

 斜めから見える。キラリと光を反射しながら液体が垂れるのを。だがそれは涙ではなかった。赤くて色の濃い、光を鈍く反射するもの。


 血が数滴、ミルスの下がった頭の下に垂れていた。おそらく、かなりの力で唇を噛んでいる。


「それで?」


 この時だけアルトは冷たかった。少女の心からの謝罪が、全く胸に響かせようとしなかった。

 心を鬼にするように、今回のアルトは冷たいかつ、彼女の真意をより強く理解していた。

 分かっている。分かっているからこそ、今は少女の心を成長させなければならないのだ。ここで決して甘くしてはならない。少女に今の現状を、彼女自信の力で乗り越えさせなければならないのだ。


「今更許しを得られるなんて、緩く考えてはいません!!でも……、数々の非礼を詫びなければと思い、謝罪の意を伝えました!!」

「……」


 アルトは遂に目を傾け、床に張り付く少女の姿を見下した。

 とても綺麗な姿だった。心を持つことが許された人間という生物が持つ、喜怒哀楽の内の哀がそこにいる。その哀の中に罪悪感が存在している。そんな気がした。


 少女は頭を上げない。代わりに小刻みに震えるばかりだった。頭を強く打ち付けている。表情こそ見えないが、その本意は見える。


「確かに僕は…、今の君は嫌い…」

「……っ、……」

「だった」

「……!!」


 アルトはやっと舌を動かし、少女を咎めるように言った。同時にミルスはやっぱりか、と思い体を硬直させる。が、その直後の言葉で今度は心が固まった。

 ミルスの頭の中で『だった』と言う言葉が頭の中に連続して響いていた。過去形だからこそなのだろうが、頭の中に引っ掛かっていた。


「でも、ミルスの本心が分かった今なら、可愛い可愛い大切な僕の弟子だよ」

「……師匠…………すいませんでした…」


 アルトの優しさを感じても、ミルスはやはり頭を上げることができなかった。嬉しいのか悲しいのか、もう分からない。それでも、このまま謝り続けるべきだと感じた。 


「それでさ…。1つ言わなきゃいけない事がある……」

「…………?」


 改まって、気楽に話すアルトにミルスは聞き逃さないよう、耳だけを向ける。


「今夜の内に、このパーティー抜ける」

「……っ!?」


 賑やかな夜に雷を連れてくるかのようなアルトの電撃発言に、ミルスは飛び起きた。アルトが言ったこと。つまり、ミルス達とは違う道を行くと言っているのだ。


「え……、っ…!?………!?」


 言葉の意味を理解するまでにミルスは混乱した。


「あ…、ごめん。言葉足りなかった」


 アルトはうっかりしたと言う感じで付け加える。


「別にさよならって言ってる訳じゃないよ?一週間程、時間をくれって意味だからね?」

「時間を…くれ…?」


 付け足された言葉でミルスは涙目に?を浮かばせた。


「僕はまだ、闇を制御できた訳じゃない…。デスタ戦の時は何故か分からないけど、感覚的に使いこなしてただけなんだ」


 自分の『アウトサイドマジック』と同じだとミルスは思った。


 『アウトサイドマジック』もミルスが、感覚だけで魔法からスキルに変更できるだけだ。原理は不明。それと同じだった。


「だから一週間の間、僕を一人にしてほしい。みんなが嫌いだからじゃない。僕に人生で2度目の努力をさせてほしいんだ。闇を使いこなすことができれば、僕は強くなれる…。もうジョーカーに乗っ取られたり、闇に蝕まれる事なんて無いくらいに、強くなれる気がするんだ」

「……」


 ミルスは何も言えなかった。それは、アルトを一人にしておくことが心配だからだ。レベル100のアルトが誰かにやられるなんて思わない。それでも、今の師は闇に苦しめられている。また暴走したりしたら、本人の身がとても危険だ。


「私も…私も一緒に行きます!!」


 ミルスは自分の存在を主張するかのように前に強く出た。咄嗟だったため、アルトの返答がyesかnoかは考えていない。


「ありがとう…。でもダメだ…」


 アルトは目を残念そうに閉じた。


「ど……、どうしてですか!?今の師匠を一人にできません!!」


 納得のいかないアルトの返答にミルスは食い下がった。


「みんなを傷つけたくない…。ミルス……、その背中は誰にやられたものだ?」

「っ!!」


 答えることができない。暴走をしたアルトがその爪で付けたなど言うことができない。


「ほらね…。今の僕は、闇はとても危険だ。だから月とワインを楽しんだら、1度リブラントから離れる」

「何処へ…行くんですか…?」

「分からない……。取り合えず今の僕に足りないのは、闇に負けない気力。意思や経験。それが培える場所かな…」


 月を見上げてアルトは語る。


「そこでだよ。僕はミルスの気持ちは受け取った。でも許すかどうかは決めてないわけだ」


 意地悪く笑う。


「だから僕が帰ってくるまでに誠意を見せてもらいたい」

「誠意……ですか?例えば……どんな感じで?」

「反省文を500文字でどーぞ」

「……は、反省文…?」


 困ったような顔でアルトの真意を探ろうとその目を見るミルス。アルトはふざけてはいるが、ジョークを言っているように見えない。


「その文でどれだけ思いが伝わるかが勝負だね…」


 ディアスを召喚してしまったときの罰の時のように微笑むアルト。ミルスは下を向いていた。しかしそれは反省文の事へではなかった。


「……どうして今夜なんですか?」

「……っ…」


 不意にミルスが口にした言葉にアルトも一瞬硬直した。

 図星故、アルトは動きを止めた。


「もしかして、他のみんなとは会いたくないんですか…?」

「……そうなのかな…?そうなのかも…。ぶっちゃけ謝ったのはミルスだけ。みんなの気持ちが分からなくて怖いからだと思う…」

「師匠……」


 アルトがここまで気弱になってしまった。そこまで追い込んでしまったのだと、再び罪悪感に捕らわれてしまった。


「まぁでも…。きっとシーナもルナもラルファも、みんなミルスと同じ気持ちなんだろうね」

「……師匠…」

「背中…ごめん…。ミルスが助けに来てくれたと感じたとき、とても嬉しかった」


 アルトは立ち上がった。手に掴んでいるグラスは、いつのまにか氷しか残っていなかった。


「それじゃあ…、街のお祭り騒ぎも終盤に近付いてきたみたいだし、行くとしようかな…」


 黒いローブを翻しながらアルトは身をくるむ。そして再び闇の力を解放した。


「みんなにはミルスから伝えておいてよ…。明日からきっちり一週間後に、強くなって戻ってくる。だから待ってて…」

「……え…、師……!!」


 ミルスは叫ぼうとした。しかし、もうそこにアルトはいなかった。彼の姿は影のように消え、代わりに宙にヒラヒラと待っている数枚の黒い羽が窓から流れ込む風に揺られながら地に落ちていた。


「……」


 急すぎて声をかけれなかった。呆気なさ過ぎて呆然としてしまう。

 逃げられた、と言うより距離を置かれてたような気がする。


 それでもアルトは嘘を言わない。大切な弟子と言ってくれたのが、嬉しいのか申し訳無いのか自分のことなのに分からない。


「……謝る立場でこんな事言えた義理ではありませんが………信じてます師匠……。そしてもうこんなに師匠を追い込まないように…、師匠が帰ってくるまで私が皆さんとより良いパーティー造りを進めていきます…!!」


 それでも師のしようとしていることを心から応援した。少女は突如の師の不在に驚くより、強い決心を産み出して、周りに黒い鳥が飛んでいる月を見上げた。

 そしてアルトが帰ってくるまでに自分のすべきこと、考えればいくらでも出てくるが、帰りを暖かく迎えられるように、パーティーの仲を良くできるように。自分が人一倍行動することを誓った。

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