結果は?
短いのであまりそこまで深く読む必要はないかと…
「大丈夫かいミルス」
アルトは横になってこっちを見たまま動かない、弟子の顔を覗きこんだ。
ミルスは驚きを隠せない。アルトとジョーカーの戦い。アルトはジョーカーの技を全て習得かつ攻略し、ジョーカーを倒したのだ。ジョーカーを包み込む爆発があった場所には、人影もない。あるのはジョーカーのつけていた仮面と、炭の山。ジョーカーを倒したことを語っていた。
ミルスは感動していた。師の強さに感服していたのだ。そのため左肩の脱臼の痛みも気にしない。
「し、し、師匠!!」
「うぉわっ!?」
ミルスは使える片腕で、アルトに抱きついた。とりあえずアルトがかっこよすぎで仕方がなかった。いわゆる惚れ直したというやつだ。何も考えずにミルスは抱きついたのだ。
「一体どうやったんですか!?どうしてあの光線は師匠に当たらなかったんですか!?」
目を輝かせながらアルトに問い詰めるミルス。かなり顔が近く、ミルス本人は気づいていないが、アルトは鼻が触れてしまいそうな距離になると頬が赤くなった。
とそこに、
「おやおやぁ…?お熱いですなぁ~」
「そう言うことは人目を避けないように…、あれ?避けてだっけ?」
「そう言えば肩が抜けているんだろう?俺が治してやる」
「ラルファ、まず医者だ…」
シーナ、ルナ、ラルファの3人とディアスが元の姿で来た。
「みんな!!よかった…。もとに戻ったんだね!!」
ミルスは起き上がった。
「っ、痛た……」
やはり肩は安静にしてないとダメそうだ。
「はぁー…、カードになってたら肩こっちゃったよ…」
「ですね~」
「嘘をつくな…、だが俺は日頃から疲れている。アルト、今晩当たりにマッサージをしてくれ」
どこの女王様だよ。とアルトはつっこもうとしたが、歯向かうだけで問答無用に切り殺されそうなので止めた。
「それで師匠!!教えてください!!」
ミルスは手を離さない。
アルトは頭をかいて答える。
「見たまんまだよ。防御魔法だ」
アルトはミルスに右手を突き出す。
「よく見てて」
アルトの手に魔力が集まる。
「………?」
何もおきない。いつも通りの壁すらない。ミルスの頭の上には?が浮かび上がる。
しかし
コンコン…
アルトが戸をノックするかのような仕草で、目の前の空間を叩くと、見えない何かがあるように音がした。
「っえ!?」
「これが上級の防御魔法
『ラウンドバリア インビジブル』だ」
何故ジョーカーの攻撃が当たらなかったのか。この見えないバリアがアルトを包んでいたからだ。
「魔力って言うのはまだまだ謎に満ちている。色んなエネルギーに変換することもできるし、召喚魔法を使うときに異空間との門を開くための通貨にもできる。ジョーカーの最後の技。あれの原理は謎だけど、あんな無茶苦茶な事も可能なんだ。『ラウンドバリア』なら中級魔法の上辺りだけど、それに追加効果で上級魔法『インビジブル』を使用する。そうすれば、目に見えない丸いバリアが完成する。」
アルトの言っている事は理解することは簡単。しかしそれを実演できるのは、アルト程の努力、もしくはそれに相当する才能が必要だった。
「とりあえず『クリスタルウォール』で砕かれるもの数秒は耐えきれることが分かったからね。最初に『クリスタルウォール』を張ったのはあの光線の特徴を知るため。中央のジョーカーのカードが魔法の核と分かったからそれを破壊しただけさ」
ドォンッ!!
「っ!?」
アルトが話終えると同時に、ジョーカーの仮面があった場所で爆発が起きた。全員が爆発の方向を見る。
「ハハハハハッ!!」
ついさっきまで何回も聞いていた耳障りな笑い声。黒いスーツに身を包んだ長身のカジノのディーラーのような姿。そして銀色の仮面。
「何っ!?」
ジョーカーがそこにいた。
「馬鹿なっ!?確かにやつの魔力は消えている!?」
アルトは目を見張った。先程までの禍々しい闇の魔力は感じない。しかし目の前にいるのは悪魔ジョーカー。自分は悪い夢を見ているのではないかと思った。
パチパチパチ
「なっ!?」
ジョーカーは手を広げて笑っていたかと思うと、急に小さく拍手をし始めた。いきなりの地味な光景に、アルトは少しずっこけた。
「いやー、見事だ!!まさか我を倒すとは…和風に言う『あっぱれ』と言ったところだ!!」
ウニのトゲの先端を全て丸くしたかのような性格の、明るくて逆に気持ちの悪いジョーカーが明るすぎて気持ち悪い事を言っている。
「何故お前が生きている!?」
アルトは横になっているミルスをかばうかのようにジョーカーの前に立つ。
「我は怪奇の悪魔なり!!その真髄はこれだ!!殺しても死なないのだ!!」
笑いながらジョーカーは額に手を当て、ポーズをとる。
「そんな貴様に、我からのpresentだ!!」
ジョーカーはアルトの不意をつき4枚のカードを投げた。そのカードはミルスへと飛んでいった。
「えっ…」
「ミルス!!」
アルトは反応が一瞬遅れて、ミルスへと手を伸ばす。
が、
「何これ…?」
カードはミルスを襲うためのものではなかった。ミルスの抜けた肩にペタリと貼り付くと緑色の光を発した。
「あれっ!?」
数秒後に、カードが光を失い舞い落ちる。するとミルスが驚きの声をあげた。
「師匠…!?肩が…治ってます!!」
「っ!!」
ミルスの抜けた肩が元の形に戻り、腫れも引いて普通に動いていた。よく見ると肩だけではない。ジョーカーとの戦いで負った全ての怪我が治っていた。
「安心しろ!!治療してやったのだ!!」
ジョーカーは笑いながらカードを宙に浮かせる。
「どうしてだ?何故お前がミルスの肩を?」
アルトには目の前の悪魔の意図が全くつかめなかった。
「間違えるなよ?これは貴様へのプレゼントだ、アルト オーエン」
「俺への?」
「貴様は我を倒した!!それを称えてだ!!」
ジョーカーはただ笑う。その様は本当に奇妙だった。
「我は不死だ。しかし闇の魔力が全て消されてしまった今、貴様らとやり合おうなどと言う気はない。しかし覚えておけ!!我らは他の悪魔とテレパシーのような形で、会話することが可能!!そしてアルト オーエンと言う我を倒した魔法使いの名は他の悪魔に広まった。貴様はこれから全ての悪魔と戦わねばならぬ!!言わば悪魔の指名手配!!」
早すぎて全部は聞き取れないが、何が言いたいかは大体わかった。
「またいつか貴様と会うのを楽しみにしているぞ!!さらばだ!!」
ボンッ!!
ジョーカーは白い煙の爆発と同時に姿をくらました。なんかただの手品師に見えたしまったのは、明るくなったあの喋り方のせいだろう。
それにしても面倒なことになった、とアルトは頭をかく。
「なんだアルト。悪魔からモテモテじゃないか?」
皮肉そうにラルファが尖った八重歯を剥き出しにしながら笑う。
「最悪だね。………それより今気づいたんだけどさ…」
アルトはジョーカーの言葉をあまり気にせず、第1にあることが気にかかっていた。
あの人がいない。こんなことに巻き込まれてしまった第1の原因。
「ユガさんはどこに行ったんだ?」
アルトの言葉で全員がはっとした。ジョーカーが表れて色々あったせいで、ババ抜きの時から存在を忘れていた。て言うかいたっけか?と全員思い始めた。
『ここじゃ』
「?」
全員が互いに顔を見合わせる。確かに今ユガの声がした。しかし姿がない。
『上じゃ』
「上?」
声の通りに上を見上げる。すると半透明のユガがゆらゆらと浮いていた。
「「なっ!?」」
全員が驚く。ユガがお化けのようにそこにいた。半透明だから青い空が透けて見える。
『驚いたか…?実はワシは…』
ユガが喋り始めたところだった。奴はそれを見て黙っていなかった。
「実は魔物でしたオチだね!?成敗してやる!!」
シーナが剣を抜いて、小さな体で大きくジャンプしてふわふわ浮いているユガの腹部を貫く。
『ぎゃぁぁぁぁ!?』
「おいっ!?」
アルトがつっこむも、そんな心配いらなかった。
シーナの剣はユガの腹部を貫いた。貫いたが刺さることはなく、シーナはそのまま重力に引き戻され地に着地する。
『バカもん!?人が話してるときに剣で刺すやつがおるか!?死んでるのに死んだかと思ったぞい!?』
「死んでる!?」
ユガの発言でミルスが口元を抑えた。ユガの発言が何を言っているかと言うと、簡単に自分は幽霊だったと告げているのだ。
『すまんなぁ…。ワシは10年前に歳がきて死んでいるのじゃ…。しかし壺の未練があってなぁ…。霊となってこの世を旅してたのじゃ…』
ユガは白い髭を撫でながら話す。
『だがもう未練はない…。お前さんと言う強い男が悪魔を倒してくれるからじゃ…。アルトよ…、頼んだ…ぎゃぁぁぁぁ!?』
ユガが先程と同じような悲鳴をあげる。
今度はエネルギー弾がユガの腹部を貫通する。アルトの『フラグシュート』だった。
「お前ふざけんなよっ!?別に了承してねぇぞ!!勝手に人に未練を受け継ぐな!!」
アルトは怒っていた。その主な理由は悪魔に狙われる危険性ができたからではない。また、狙われることで旅が遅くなるからじゃない。
「睡眠の時間絶対減るだろ!?」
「「そこっ!?」」
ミルスとユガの声が重なる。他の3人と1匹はあきれていた。
「畜生っ!!結果的に防御魔法の城も作れなかったし…!!」
アルトはやはりそっちの意味での変態だった。と全員頭のなかで思った。
「まぁもう遅いことだよ!!悪魔と戦わないといけないのはもう変えられない…。だがユガァ!!」
目を真っ赤に光らせアルトが叫ぶ。
「『ブラックブラスト』!!」
『ぎゃぁぁぁぁ!!』
ユガの体がアルトが即座に作った透明な箱の中で爆発した。




