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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
五悪魔復活 ~崩れゆく関係~
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アルトvsジョーカー

「「ぶっ潰す!!」」

アルトとジョーカーの声が重なり、それと同時に荒野に粉塵が舞った。

「『ロイヤルショット』!!」

先手を取ったのはジョーカー。4枚のカードを放ち、そこからさらにエネルギー弾を撃つ。

しかしアルトは動かない。かなりの速さで飛んでくる弾を、いつもとは違い真剣な眼差しで見ていた。

「『クリスタルウォール』」

アルトは壁を作り出し、攻撃から身を守る。しかしそれはいつも通りのパターン。ジョーカーの予測通りだった。

弾が壁に当たってか火花が弾けると、ジョーカーはアルトの後ろに一瞬で動き、足を降り下ろす。

「当たるか馬鹿」

アルトは振り返りもせずに、ジョーカーの位置を把握して、壁を作り攻撃を防ぐ。

「ちっ…」

蹴りを止められると、ジョーカーは舌打ちをして距離をとる。

「どうした?僕はまだ一歩も動いていないよ?」

アルトは振り返ってジョーカーを見ると、挑発的な態度で手招きする。

「図に乗るなよ人間!!」

怒ったジョーカーはカードを放つ。

1、1、1、1

1は素数でないため、この数に素数はない。しかしミルスの時は1があることで、ジョーカーの『ブラックブラスト』が発動した。

が、まだジョーカーの攻撃には秘密があった。

「『デモンズトルネイド』!!」

ジョーカーの攻撃は、ミルスに見せたときのものではなかった。宙に浮いた4枚のカードが束になって回転を始め、その回転が粉塵や闇の魔力を巻き込み真っ黒な竜巻を作り出した。

「ナノサイズまでバラバラになるがよい!!」

黒い竜巻はゆっくりとアルトに迫っていく。動きは遅いため避けれそうではあるが、規模が大きすぎるため逃げ切ることはできない。

ジョーカーは本のわずかに勝利を確信した。

「『クリスタルウォール』」

しかし、そんな竜巻を見てもアルトは何一つ表情を変えずに、右手を出し、魔法を唱えるだけだった。

「無駄だ!!貴様の壁でこの技を受けきれるとでも!?さぁ、散り様を我が網膜に焼き付けよ!!」

ジョーカーの確信はより大きくなる。

アルトは『クリスタルウォール』を作り出した。作り出したものの、どこにも壁が無かった。何も変化は起きず、ジョーカーはアルトの魔法が不発だと思った。

「残念」

「なっ!?」

ジョーカーの勝利の確信は消えた。

そう、今消えた竜巻のように。

黒い竜巻は消滅したのだ。アルトに近づくいていくと同時に、ただの風になって。

「馬鹿なっ!?一体何故だ!!」

ジョーカーは叫び、理由を考える。が、考えずとも原因はすぐそこにあった。

「そうか…。カードの回転を止めたのだな…?」

ジョーカーはすぐに理解した。アルトの防御魔法は、自分を守ろうとしたのではなく、カードに引っ掛かる形で、竜巻の中心に作り出されたのだ。

「早い理解どうもどうも。お前のこの竜巻は、別にカードが風を動かして、気流を作ってる訳じゃない。カードの放つ魔力が、カードの回転により渦を作り、魔力の気流を作っているんだ」

アルトの説明はジョーカーの魔法の詳しく正しい解答だった。

つまり竜巻を作るエネルギーはカードの出す魔力の回転。だったらカードを止めれば魔力はただ流れ出るだけで、竜巻を形成することができない。

「だが何故だ!!何故貴様が我が技の秘密を知っている!?」

ジョーカーにとって気がかりなのは、技を止められたこともあるが、アルトが技を知っているかのようだったからだ。

「お前は1つミスを犯した」

「ミス…?」

腰に手を当て、アルトがジョーカーを指を指す。

「お前が僕の体を乗っ取るときに、脳を共有した事だ。」

「……!!まさか貴様…、我が頭を覗いたのか!?」

ジョーカーは頭を抑える。

「いやそうじゃなくて…。お前は僕の体を動かすときに、当然脳を使う。人の体を乗っ取るっていっても、これは僕の体。動かすためには脳からの信号が必要になる」

アルトは人差し指で自分のこめかみをトントンと突く。

「覚えちゃってるんだよ。お前が僕の脳で考えたこと、動作とか」

「っ…そういうことか…!」

ジョーカーは自分の致命的なミスを呪った。アルトの言った通り、ジョーカーは乗り移ってるときに、アルトの脳を使い物事を考えた。記憶を残している。つまりアルトの頭には、自分が考えてしまった技の使い方を全て覚えている。ジョーカーの考えた全ての技が、アルトには攻略可能なのだ。

「攻略法がわかるだけじゃない」

「っ!!」

アルトは魔法を使い、ジョーカーの四方を『クリスタルウォール』で囲んだ。

「まさか!?」

ジョーカーは絶句した。その理由は1つ。

「『ブラックブラスト』!!」

アルトが指パッチンすると、ジョーカーを囲む壁から爆発が起きた。

ボォンッ!!

周りを囲まれた空間で起きた爆発は、衝撃が壁により空気へと伝わらず、ジョーカーに直撃以上のダメージを与えた。

「ぐぁっ…!!」

爆風の中でジョーカーが暴れる。しかし壁が壊れることはなかった。

「ただ攻略可能な訳じゃない。やり方、原理、パターンは全てわかっている。だからお前の技は『クリスタルウォール』をトランプ代わりにすることで、僕にも使えるんだ」

アルトはジョーカーの攻撃を使用可能になった。つまりもう、ジョーカーはアルトに勝つことができない。それを無言で呈示していた。

「調子に乗るなぁぁぁ!!」

激昂したジョーカーが魔力を爆発させた。

「おのれ!!こんな壁など!!」

ジョーカーの爆発した魔力が、4枚の壁を破壊した。

「っ…やるね。」

壁を割られたことは驚いた。しかしアルトは全然余裕だった。ジョーカーは人間が勝てなかった5人の悪魔の一匹。ということは順位は悪魔のなかで5位以内に入る。いくらなんでもそんな悪魔が自分の防御魔法を割れないほど弱いわけがないと予想していたからだ。だが壁を割ったところでジョーカーはアルトに全ての攻撃が通用しないのを承知だ。アルトの方が断然有利だ。

「フッ…ハハハ!!」

ボロボロのジョーカーが突然笑い出す。理性が飛んでしまったかのように、ストッパーが外れてしまったかのように笑い続ける。

「確かに!!我の攻撃は全て効かない。だがそれはさっきまで頭に合ったパターンの攻撃のみ!!」

ジョーカーは空中に4枚ではなく、52枚


+1枚(●●●)、全てのカードを放った。

「…野郎…、新しい技を…」

その様子を見てアルトは面倒くささがより一層ましたと思った。

「その通り!!!!我が攻撃の原理は理解しているだろう!?」

ジョーカーはアルトに叫ぶ。


ジョーカーの攻撃は、4枚のカードのパターンにより決まる。しかしその原理はより複雑だった。

カードそれぞれが式を持っているのだ。

魔法というのは、式や記号に表すことができる。例えば、コンピュータや進数。コンピュータの世界ではアルファベット1文字、aやbはデータにすれば1ビットとされている。漢字は1文字で2ビットのデータに相当する。

つまり魔法も何B、MB、GBとデータに表すことができる。そのデータに魔力が流れることにより魔法が発動するのだ。


ジョーカーの攻撃は、言わばネットワーク。それぞれデータを持った4枚のカードに魔力を流すことにより、カードの持つ式がつながり、四つの式を合わせた大きな式が完成する。その式が魔力を攻撃へと変換し、エネルギー弾、黒い雷様々な攻撃となり相手を襲うのだ。それが怪奇の悪魔の名の1つ。普通の頭脳なら絶対に考えもつかない魔法式を作り出し、自在に操るのだ。その気色の悪い頭脳が、怪奇の悪魔と呼ばれる1つの理由だ。


そしてジョーカーが今しようとしているのは、新たな魔法式の作成。それが今まで使ったことのない今回のイレギュラーである新しい1枚。

『ジョーカー』だった。


「我が力にひれ伏せ!!アルト オーエン!!!!」

宙に浮く数多のカードが、ジョーカーの前で輪を形成して並ぶ。そのぽっかりと空いた真ん中に1枚、笑う死神のカードがあった。

ジョーカーはこれで終わらせるつもりだった。全ての魔力を52枚と1枚が作り出した魔法式に流し込む。

「残念だが…」

「っ!?」

カードの輪にバチバチと黒い電気が走り、火花が散る。

その膨大な悪魔の力を目にしても、アルトは冷静に笑った。

「守り抜いて素顔曝け出してやるよジョーカー!!!!」

アルトが叫ぶと同時に両者の攻防が始まる。

カードの輪から見えていたジョーカーの姿が歪んだかと思うと、『ジョーカー』のカードを中心に半径1m程の黒い光線が空気をびりびり震わせながら放たれた。

放たれたのが光線であると確認すると同時に、アルトは10歩分くらい先に1枚の壁を張った。それは光を弾くように作り出した『ダイヤモンドウォール』だ。大きさは地面から縦横3mの大きさ。ジョーカーの身長より少し大きめの輪から放たれるなら、3mあれば充分に、掠り傷すら負わず守れるとアルトは考えたのだ。光を弾くように当たったが、反射ではない。第一物理的に光は透明な物体に垂直に当たれば、反射せずに通り抜ける。弾くというのは、平たいものに水鉄砲を当てるような感じだ。つまりジョーカーの光線を通さないし、壁の端に溢れて飛んできてもアルトには当たらない。


ドゥンッ!!

黒い光線が『ダイヤモンドウォール』にぶつかる。

「っ………!!!!」

アルトは恐ろしい集中力で『ダイヤモンドウォール』に力を注いでいた。

壁は光線を受けきっていた。

巨大な力のぶつかり合いは、周りの砂を弾き飛ばし、小さくだが地面にも亀裂が入る。


が、

ピキッ…

「ちっ…、この光線…ただの光じゃない…!!」

『ダイヤモンドウォール』に縦の細いヒビが入った。


その理由をアルトは気づいている。

ジョーカーの最後の一撃。それはただの黒い光線なんてものじゃない。少し特殊だった。光線は2重の構造だった。外側と内側で種類が違うのだ。外側は普通に当たったものを吹き飛ばす光線だ。しかし内側は、力の原理が全くわからないが、当たったものを引き寄せる力だった。外側と内側の光線が1つになって当たる、その時当たったものの動きのベクトルはどうなるのか?押し出す力と引っ張られる力が同時に働く。普通に考えれば外側が当たった部分だけ押し出され、内側が当たった部分は引っ張られるなら体をバラバラにされる。しかし魔法の世界では、物理は変えられてしまう場合がある。


あの光線に当たったものは、ぺしゃんこになるのだ


「畜生が…」

ジョーカーの放った一撃はむちゃくちゃだった。当たったものの厚さを0にしようとする力が働く。そんな技が存在すること事態不思議で怪しかった。


だから怪奇の悪魔なのだ。だから切り札(ジョーカー)なのだ。

そして…

パリィィィンッ!!

遂にアルトの『ダイヤモンドウォール』がくだけ散ってしまった。

「我の勝ちだ!!!!」

それを見て、ジョーカーは確信した。自分の勝利を。光線がアルトへと伸びていく。

が、

「っ!?」

ジョーカーの勝利の確信が揺らいだ。その理由はアルト。アルトがニヤリと笑ったのだ。

そして光線は当たらなかった。何もないのに、アルトを避けるように光は進む。いや、避けているのではない。見えない何かに弾かれているのだ。

「残念だったけど、やっぱり僕の勝ちだ」

アルトは腰に手を当て、言い放った。そして人差し指を突きだして、

「『フラグシュート 』」

指から光の銃弾が放たれる。銃弾は、光線のど真ん中に当たり、消滅したかと思うと、ジョーカーの黒い光線が消滅した。

「なっ!?」

光線が無くなったことで、ジョーカーとアルトの目が合う。その瞬間

「『パーフェクト ロック』」

アルトが魔法を唱えると、ジョーカーの手、足、肩、腹部、何もかもがガラスの板のようなもので固定された。

「『クリスタルウォール』」

アルトはさらに、ジョーカーの回りに4枚の壁を出現させる。

本当に短かった。

ジョーカーが勝利を確信してから敗北を感じるまで15秒も経っていない。

ジョーカーはもう言葉が出なかった。自分は完全敗北したのだ。魔法使いアルト オーエンに。

「『ブラックブラスト』!!!!」

アルトが叫ぶとジョーカーを隠すように爆発が、先程より激しく多く巻き起こった。 爆発は1分間連続して続いた。

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