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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
冒険の途中~シーナ編~
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中身さえ良ければ…

外から月が差し込む、何度も見たことのある状況だ。白いカーテンごしに月の優しい光が差し込む。幻想的な淡い光で部屋が包まれていた。アルトはその部屋のベッドに起き上がって座っていた。足に痛みが少しある。それ以外は特に問題ない。剣を握って手にできた傷はもうない。怪我の様子が分かりやすい外傷だったため、魔法ですぐに直せた。足は昼のガルガデスとの戦いで負ったものだ。『ジャックナイフ』で無理して鎧を蹴ってしまいできてしまった。

よくよく考えるととても長く、事件たっぷりの1日だった。ガルガデスの奇襲、シーナの迫害、夜のあの出来事。アルトは疲労でいっぱいだった。






酷く不快で憎ったらしい村長を眠らせたあとのこと。生き残った村人は村長と同じようにシーナに罵声を飛ばした。当然、シーナの仲間と知られて村長を眠らせたりした僕達にも同じような言葉が飛んできた。だからあのあとは生き残りの村人全員眠らせて木に縛りつけた。酷いことをするとか言われるかもしれないが、少なくとも奴等みたいに人の道を踏み外した気はない。もうどれだけ説得しても聞く耳を持たないのはわかってる。だから眠らせた。殺さずに、明日の出発までに黙らせておきたかった。本心としてはディアスの『破滅の閃光』で村ごと消したかったが、流石にエグすぎる。

と言うことで、村の家を適当に使わせてもらうことにした。今、出発すれば自殺行為としか思えない。『スリープフラワー』の効果で、どうせ明日の9時までは全員ぐっすりしているのだから。

アルトは適当に入った家のベッドに入っていたミルスやシーナは別の家を使っている。この家にいるのはアルトだけだ。しかしアルトはなかなか眠ることができなかった。その理由はもうぐっすり寝ていたから。と言うことにした。確かにシーナに『スリープフラワー』で眠らされて、起きて落ちて気絶して、3時間程寝てしまった事が原因ではあるかもしれない。しかし、引きこもってた時はいくら寝ても寝足りないくらいだった。それなのに眠れないのはどうもおかしい。だからとりあえず寝過ぎと言う事にした。

「さて…、どう寝ますかね…。」


コンコンコン…


「っ?」

アルトが背伸びをすると、部屋のドアがノックされた。この家には誰もいないはずだから、誰かが来たのだろう。アルトは村人が来たのではないかと構えたが、それはあり得ないと思い返事をした。

「…どうぞ?」

ギィ…

「こんばんは…、アルト……くん…。」

ドアを開けたのはシーナだった。口調がどうも変だ。その手には何故か枕が抱かれていた。

「シーナ…?どうしたんだい?」

どこからどう見てもこの部屋に寝に来たのはわかるが、アルトはあえて聞いてみた。

「いや…、一緒に寝たいな~……って…。」

いつもなら見せない恥ずかしそうな身振りでシーナが答えた。部屋にはいっていいのか、許可を待っているようだった。

「…構わないよ。おいで…。」

いつもなら『夜這いしに来たのか!?』とつっこむところだが、今のシーナの願いは受け止めてあげようとアルトは優しく喋った。

「っ…♪ありがとう♪」

シーナは嬉しそうに部屋にはいり、ベッドまで歩いてきた。今のシーナには表情と言うなの最強の武器がある。手招きしたときの顔がすごく輝いた。





シーナはアルトの隣に入ると、反対側を向いて横になった。シーナにしっかり毛布がかかるように、アルト眠くなくても座るのではなく、天井を見るように横になった。

「………。」

「………。」

何も言葉が飛び交わない。何か言わないと気まずいが、何を言えばよいのだろうか。

「………ねぇ、アルト…くん…。」

と思っていると先にシーナが声を出した。

「ちょっと待って。その、『アルトくん』。別に無理して言い直さなくてもいいよ。」

ずっと気になっていたが、シーナを抱いてからずっと『きゅん』が『くん』になっている。それにアルトの後に間が空いてるし…、無理して言い直している。

「呼びやすい方でいいさ。別に僕はいつものシーナの方がしっくり来るし…。」

「わかった。んじゃあ…、アルトきゅん…。」

「どうしたんだい?」

シーナの呼びかけに普通に答えるアルト。

「僕の笑顔…変じゃない…?」

そんな質問が来た。

「っ。」

「なんか…気になっちゃって…。久しぶりだから。」

シーナはアルトを見て微笑んでいた。

アルトからすれば全然変じゃない。むしろ反則レベルで可愛い。いつもの無表情とは違い、ここまで違いが出るほどに可愛すぎる。もはや直視すると、つい目を反らしてしまうほど思春期の男性の心を揺さぶる。

(一応、17歳だから僕は思春期ではないと、昔読んだ本から学んだ…。)

「変じゃない。むしろ可愛い。」

あ。そのまま返しちゃった…。

「え…///ほ、本当に!?か、か、可愛い!?」

返事を聞くと、シーナは顔を思いっきりよせて問い詰めてきた。顔が赤い。

「う、うん…。笑顔が可愛いよ。」

顔が近い。すごくドキドキする。

アルトはもはやシーナを直視できない。何故ならドキドキが止まらないからだ。別に顔が近いだけならいつものこと。ただし今回は特別だ。鼻に香る、ドキドキのスパイス。

シーナからシャンプーの良い香りがした。おそらくここに来る前にシャワーでも浴びたのだろう。ここまで近いと呼吸の度に香る。順潔癖性の自分もシャワーを浴びてはいた。しかしそんな良い香りはしないだろう。

「…///もう…。アルトきゅんは…///」

何故かシーナはツンとしてあっちを向いてしまった。何かいけない回答だったろうか?

また音がなくなってしまった。



「………。」

「………。」

また気まずくなり始めた。幸い、眠くないのが吉と出た。ここで寝てしまえば、異性として最悪だ。

「アルトきゅん…。」

今度もまたシーナが口を開いた。

「起きてあっち向いてくれない?」

シーナは起き上がり、胸元のボタンを片手で掴んでいた。大体、察しはついたがこのままでいいのだろうか?

「わ、わかった。」

とりあえず言う通りに起き上がって、月明かりが差し込む窓の方を向いた。

モソモソ…フワッ…モソモソ…

後ろでシーナが動いているのがわかる。また、首筋に何度か風が当たる。まさかとは思うが…、脱いでる?

「…いいよ…。」

シーナがOKを出したから、後ろを振り向く。


そこにいたのは美しい天女のような女性だった。


すごく妖艶な姿でシーナが座っている。上半身を全て脱いで、背をこちらに向けている。また、Cカップの胸を毛布で隠しながら、恥ずかしそうにこちらを見ている。白い肌に月の光が綺麗に重なり、属に言う『抱いたら折れてしまいそうな華奢な体』とはこれのことだ。

「…どう…?」

どう?と言われましても…。鼻血が…出てしまうかも知れない。

「あんまりジロジロ見ないでよ…。体じゃなくて背中のこと…。」

背中…?と言われてシーナの背中に目を当てる。するとそこにはたくさんの傷跡があった。肉がえぐりとられたような丸い傷に、その上からやられたと思われる刃物で切られたような、長い傷。これが村にやられた傷なのだろう。ずっと体(主にCカップの横乳)ばかり見ていたため、背中の傷が気にならなかった。

「………。」

そっと指で傷跡に触れてみた。

「ァ…。」

シーナはくすぐったいのか、目を瞑って震えていた。傷跡は視界で目で見てるのよりも深かった。本当に凹んでいる。背骨はぎりぎり傷ついてないようだ。これを7歳で受けたのか。

「……かっこいいよ…。」

「え…!」

予想外の答えだったのだろう。シーナは信じられないと言うような声を出した。だがかっこいいと思ったのは本当だ。何故ならシーナはこんな辛い事を耐え抜いたのだから。まさに勇者だ。

「…そう…かな?……フフ♪そうか。かっこいいのか♪」

疑ってようだが、本当だとわかるとシーナは嬉しそうだった。

「アルトきゅん…。」

「なんだい…?」

シーナはそのまま名前を呼んだ。

「僕、このパーティーにいてもいい?生きててもいいの?」

「っ………。」

シーナの質問に体が一瞬止まった。

「ハァ…。なんだ。まだそんなこと気にしてるのか…。」

シーナがまだ同じような事を心配しているとわかるとため息をついた。

「当たり前だろ。そんなこと聞かなくても、決まってるさ。お前はシーナだ。それに変わりはない。」

当然だ。というか必然。と答えた。

「…ありがとう…♪」

シーナはまた笑った。正直、何度見ても見足りない笑顔だ。

「よーし!!明日から僕は生まれ変わるよ!!」

突然元気になってシーナが拳に力をいれる。

「アルトきゅんを誘惑して、ミルミルの新しい大人の下着を作っていくんだ!!

どう聞いても今まで通りだ。生まれ変わっているわけではない。

「おっと!!生まれ変わっていないとか思ってるかもしれないけど…!!」

なんでわかった。

「僕にはもう表情があるんだよ?そこが大きな違いさ!!」

そうですか…。と心の中で思った。




「あ。そうだシーナ。シーナはいつもミルスに下着作ってるけど…」

アルトは少し気になった質問をした。

「自分は着ないの?」

「……え………。」

シーナの表情が色を失った。口を開けて目をぱちくりとさせている。心外だったのか、頭にそんな考えがなかったのか、シーナは停止した。

「…な、な、なっ!?」

数秒の後、シーナの白い顔が真っ赤に染まって、母音がNで子音がAの音を口から発し続けた。

「ア ア ア アルトきゅん!!み、見たいの!?」

胸を隠す毛布でよりいっそう体を隠すようにしてシーナが動揺し始める。

「うーん…、そうだね。見たいかな?」

「なっ!?」

アルトはふざけて答えた。いつも寝起きで首を舐められたり、卑猥なこと目的で追いかけられたりしているのだから、少しくらいからかってもバチが当たらないだろうと思った。というかシーナの反応が新鮮だった。

「そうだねぇ…。この間ミルスの鞄からはみ出てたんだけど…、なんだっけあれ?ベビードール…て言うんだっけ?それ着たシーナが見てみたいな。」

「え…、ちょっとそん、 なっ!?」

いつもならこんなことを言わないアルトを見て、シーナはどうすれば良いかわからなかった。ふざけたアルトにはわからないが、こんなベッド上でランジェリー下着を着ろと言われたら、女性からすればラブしようと言われているも同じだった。

「う、う、うわぁぁぁぁ!!」

バタンッ

頭と心臓がパンクしそうになったシーナは、耐えきれなくなり毛布で上半身を隠しながら、叫んで部屋を出ていった。

「あれ…。シーナも恥ずかしくなることがあるんだね。」

今までの発言と行動から、どう見ても痴女にしか見えなかった。でもピュアな1面もあるようだった。

部屋が静かになったので、アルトは眠ろうとベッドに身を沈める。どうせ寝れると決まった訳ではないが、とりあえずだった。







コンコンコン…

「ん?」

天井を見上げてしばらくボーッとしていた。どのくらいかはわからないが結構長かったと思う。いきなり部屋のドアがまたノックされた。

ギィ…

今回は返事をする前にドアが開いた。そこから入ってきたのは一人の少女。月の淡い光が彼女の露になった肌を照らす。なるべく肌を隠すように右腕で胸を抑え、左手を右足の太股に伸ばしている。そして足は内股。

ご希望通りに、下着姿のシーナが入ってきた。

「ど、どう?め、命令通りに着てきました…、御主人様…♡」

アルトの心臓から、鼻の奥と下半身の男の子に熱い血がジェットエンジンで流れ込む。

シーナはそのまま女豹の構えでベッドに上がってくる。なんで御主人様なんだ。どうして着てきたんだ。たくさんの疑問がフルスピードで働く頭に浮かぶが…、1つだけ結論を出した。


これは…反則ではないだろうか…?


気がつけばシーナはもう目の前にいた。

「い、いいと思うよ…!!それはもう…。」

口がうまく動かない。少しでも気を抜けば鼻血が水鉄砲のごとく吹き出してしまいそうだ。頭がくらくらする。視界が暗くなってきた。

「フフ♪」

「え?」

意識が飛びそうな頭では反応が鈍くなり、シーナにそのまま肩を押し倒された。なんだろう。こんな感じのどこかで見たことあるような?

「アルトきゅんがいけないんだよ?こんなに体が火照っちゃったの♡」

そうだ。女豹だ。まさしくシーナは女豹になっている。獲物を喰らう際に、腕の力で強く地面に押さえつけるときの女豹だ。となると獲物はAm I?

「よかった…。アルトきゅんはちゃんと男の子だったね。てっきり本当に防御魔法の壁でしか興奮しないのかと思ってたよ♡」

シーナの右手が成長したアルトのアレに伸びる。体積が増えたくせに強度が増しているアレは収まることを知らない。

「あ、あの…シーナサン?」

動けないアルトは片言でシーナを呼んだ。どうしていいのかわからない。誘惑に負けてしまっていいのか?いや、流石にいけない。シーナは仲間なのだ。パーティーの大切な仲間だ。そんな関係になるわけにはいかない。それに、ミルスが…。 …なんでもない。なんてアルトは考え始める。

「アルトきゅん…。男性の性欲が最も強い時期って言うのはね、18~20歳って言われてるんだけど…。個人差があるから、アルトきゅん…。」

「それが!?待ってシーナ!!何をするつもりだ!?」

「ナニもしないよ?」

「嘘をつくな!!今『ナニ』を強調しただろ!?」

本当にまずい。このままだと確実に喰われる。

「ねぇアルトきゅん…。どうしてアルトきゅんのコレは大きくなってるのかな?」

シーナの右手に力が入る。

「どうして男の子のコレは興奮すると大きくなるの?それはね、本能的に『犯したい 犯したい』って体が反応してるからだよ♡」

「止めろ!!口を閉じろ!!」

「い や だ♡アルトきゅんの口、美味しそう…。」

ダメだ。シーナの頭は完全に逝っている。

「そう言えばアルトきゅん今、口内炎なんだって?」

シーナが悪戯に笑って、顔を近づける。

「じゃあディープキスしようか♡そして僕の舌でアルトきゅんの口内炎をぐりぐりしてあげる♡」

本気でシーナの目が怖い。

「し ま せ ん!!!!どんなSMプレイだ!!DKで口内炎を抉られるって!!それ以前に不潔だから止めなさい!!」

「構わないよ…、僕は早くアルトきゅんが…♡」

「アッーーーーー!!」

あれこれと攻防戦が続く。これでこんなにシーナが残念じゃなければ、負けていただろう。

そうしているうちに、事件が起きた。



「アルトさん!!シーナさんのところで、みんな一緒に寝まし…!!」

最悪だ。枕を持って、ルナとミルスとラルファが入ってきた。ミルスの肩には勿論眠ってるディアス。

さて、今入ってきた彼女らはこの状態をどう思うでしょうか?ベッドの上で取っ組み合っていて、しかもシーナは大人の下着。さぁ、どうなる?


1.「なんだ…。もう一緒に寝てたんですね♪」

と思って、そのままベッドに潜り込む。(ルナ限定)


2.「す、すいませんでした!!」

イチャラブしてると思われる。(ミルス限定)


3.「お、大人の世界です…!!」

と顔を赤くして、手で目を隠しながらも好奇心に負け、指の合間からつい見てしまう。(ラルファ限定)


正解は………全部です。


「シーナちゃん!!一緒に寝よう♪」

「し、師匠が…、シーナさんと…!!」

「ご、ごめんなさい!!わ、私見てしまって!!」

それぞれが答え通りに動く。




たった一瞬。網膜に焼きついてしまった像のことについて弁解をするために、2時間もかかるなんて、多大なコストだ。

寝不足だけは勘弁してほしい…。

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