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奇襲

辺り一面のどかな自然。


目の前を流れるは透明な川。

聞こえてくるのは鳥達のさえずり。

自分を覆うのは木陰。


すごく快適だ。ここで1日中昼寝をしてみたい。




そんなことを考えながら、アルトは横になっていた。

「アルトさん…。果物…どうですか…?」

その横に蒼い髪の幼女が顔を覗く。その手にはリンゴが握られていた。

「ありがとうラルファ。」

アルトはリンゴを受け取ると、ラルファの頭を撫でてやる。

「…♪」

ラルファは照れくさくて、暖かい気持ちになった。


アルトの隣ではミルスが寝ていて、川の中ではシーナとルナが魚を取っていた。ディアスはミルスのお腹の上で丸くなって寝ていた。







新たな旅の仲間ラルファを連れて町を出たアルトたちは、再び森を歩きこの川に辿り着いた。

出発から1時間、地図通り進んで、本来は昼に着く予定だったが、まだ10時頃だ。

アルトは、旅に出て初日のラルファを連れてなら、正直時間が掛かると思っていた。しかし、その地図はあまり正確でないところがある。距離や位置にも所々狂いがある。そのためこんなに早く川に着くことができた。


早く着いたが、昼食はここで取るつもりなので、アルト達は休んでいた。

「はぁー…、のどかだなぁ…。」

アルトは貰ったリンゴをかじる。

とても気分がよい。寝不足でもなく、問題も起こっていない。旅が順調すぎて恐ろしいほどだ。

「あぁぁ~…。いつか魔王を倒すなんて、実感が沸かないな…。」

そんなことを呟きながら、寝不足でもないアルトは夢の世界へと堕ちていった。











「……っ…!?またここか…。」

目が覚めたアルトは3日前と同じ夢の空間にいた。

「…今度は何だ…。」

今回は冷静に考えることができた。何か悪いことが起きると知っているからだ。

前回は、

泣くミルス

手が血で染まったルナ

自分を殺そうとするシーナ

が出てきた。

シーナに腹を貫かれ『殺す』と言われたところで目が覚めた。

今度は何が起きるのか。

アルトがそう考えていると、早速異変が起きた。

「っ…?…シーナ?」

また後ろにシーナが立っていた。しかし今度は手に何も握ってはいない。ただうつむいているだけで表情は見えない。

が、明らかに様子がおかしかった。目は見えないが、頬を水晶のように透明な液体が流れ落ちた。

シーナが泣いていた。その理由など見当もつかない。

「どうしたんだい…?シー…ナッ…?」

アルトはシーナに駆け寄った。

なぜならその足元に血の溜まりができていたからだ。それに気づいたアルトは、シーナを後ろから見た。

前から見ると、何故血の池ができているのかがわからないため、足を伝って流れているものだと考え、後ろから見ればわかると思ったからだ。

「っ!!」

案の定それはシーナから流れ出た血だった。

「なんだ…これ…!?」

その血が流れ出る所を見ると、アルトは絶句した。

シーナの背中に、何度も刃物で引き裂かれたような傷があった。見てるだけで自分の背中も痛くなってきそうな程酷い。

「なっ…!?」

そしてアルトは言葉を失う。

顔を上げてこちらを見るシーナ。


その顔が笑っていた。


それは夢の中でも初めて見る、シーナの笑顏だった。






「シーナ!!」

アルトは飛び起きた。夢の中でしばらく、唇を動かせなかったが、シーナの名前を叫びながら目覚めた。

視界に映るのは心配そうに見つめるみんなだった。

「師匠…。大丈夫ですか?」

「すごくうなされてましたよ?」

「僕の名前呼んでた?」

「具合…悪いんですか…?」

体が汗でぐっしょりだ。

最近見る夢。一体これは何なのだろうか…。

「大丈夫だよ…。悪い夢見ちゃっただけだから。」




そのとき、視界の右半分にシーナの顔が映っている事が気づいた。

今の夢。シーナの背中にあった大きな怪我。

アルトはそれがどうしても気になってしまい、シーナを呼んだ。

「シーナ…。ちょっと後ろ見てくれる…?」

「え?後ろ…?ってこんな感じ?」

シーナは立ち膝で背を向けた。

その細い背中にあの傷があるか確認するため、アルトはシーナの服に手を触れた。そしてそれを捲ろうとしたときだった、

「っ!!触らないで!!」

「うわ!?」

シーナが今まで見せたことのない新しい表情。

怯えと怒り

を見せて、アルトを押しのけた。アルトはそのまま地面に尻餅をついた。

シーナの表情は2通りしかない。いつも通りの感情がないような顔とチョップをしたときに見せる顔だけだ。

そのシーナが表情を変えて、背中に触れられる事を拒んだ。

アルトには自分のした、それが拒まれるとは思わなかった。確認するためのこの手を、シーナが必死になって振り払うとは思わなかった。

「…あ。…ごめん、アルトきゅん…。」

「…いや、構わないよ…。」

アルトを押しのけた事に気づいたシーナが、申し訳なさそうに謝る。その顔は再び感情の色を失っていた。

「僕も悪かった…。背中…何かあるのかい?」

予想外の出来事がアルトを余計に不安にさせる。だからアルトは見なくても、背中の事を確認しようとした。

「ううん…。いきなりでびっくりしちゃっただけだよ…。何もない。」


どん…。

シーナの最後の言葉が、アルトの胸に響いた。

何もない訳がない。あの反応をしてまで、背中を見せようとしなかった。何より、シーナが仲間である僕たちに嘘をついたのがショックだった。

「…そうか。」

シーナは何か問題を抱えている。それを誰の協力も得ずに、1人で背負っている。それを問い詰めるつもりはない。が、見過ごす訳にもいかない。それでも口に出てしまった言葉は自分の意思とは逆のもの…。いや、自分の意思なのかもしれない。

アルトは、無力感にただ呆然とするだけだった。

「………あ。師匠…。昼食ができたそうなので起こしました…。」

アルト達のやり取りを横で眺めていた人を代表して、ミルスが囁いた。

「…わかった…。ありがとう。」

僕にその事を伝えると、みんなそれぞれが見つけた椅子の代わりのものに座っていく。


「………。」

その間アルトはずっとシーナを見ていた。もうそこにはいつも通りのシーナがいた。

「…夢だもん…。現実な訳ない…。」

アルトはこの事を忘れることにした。ただし、シーナの背中には触れないことだけを覚えて。
















アルト達は昼食を終えると、再び森を歩いていた。

次に着く村で森ともサヨナラのつもりだったが、なかなか村が見えない。

「………っ…。」

「大丈夫かい?ラルファ。」

アルトはラルファの苦しそうな顔を見てすぐ察した。

「足…痛いんだよね…?」

ラルファの歩き方が少し変だった。右足を出す度に辛そうな表情になる。

「…大丈夫…です。」

ラルファは痛そうに言った。

「無理しなくていいよ。ラルファにとって、こんなに歩くのは初めてかもしれないから。」

そう言ってアルトは背中を向けてしゃがんだ。

「ほら。」

「…え?」

アルトはラルファをおんぶしようと思っていた。

「でも…。」

ラルファは申し訳なさでためらった。

「いいからいいから。」

「………///」

ラルファはゆっくりとアルトの背中に乗った。

「よし。行こうか。」

ラルファを持ち上げると、また森を歩き始めた。












そしてしばらく歩いた頃。アルトは感じた。

「…………………。」

アルトはラルファを背負ったまま、後ろを振り返り立ち止まった。

「…師匠?」

アルトが止まったことで、みんな後ろを振り返る。


何もない。ただ歩いてきた道があるだけだ。

「…ラルファ。ちょっと降りて。」

「…あ。はい。」

ラルファが降りても、アルトはずっと後ろを見ていた。

「あの…、師匠?何かあるんですか?」

ミルスが尋ねる。

「…何かがくる…。」

「え!?」





大体、1分前頃か…。確実にどこからか誰かに見られている感覚を感じた。殺気が剥き出しですぐにわかる。だがどこだ?急に近づき始めている。



アルトは手を横に突き出す。すると、手に光の電子が粉塵が集まり、その固まりがアルトの杖を形成した。

「みんな…構えろ…。」

「っ…。」

アルトの言葉で、ミルスとシーナとルナが戦闘の体制に入る。ラルファは少し離れて、いつでも指を噛んで変身する用意をしていた。

「…どんどん近づいてくる…。」

アルトの野生の勘によると。およそ70メートル程の距離がある。

しかし、道には何も見えない。

「………。」

妙だ。

アルトは異常に気づいた。相手が近づいてくるスピードは明らかに、人間の走るときの速度と同じだ。それなのに、感じられるのが第六感しかない。相手の姿が見えないのだ。森の中を走っていれば余計に分かりやすい。人間が森を走れば、鳥や他の生き物たちが必ず逃げ出すからだ。


「………。」

それでもアルトは、じっ、と道の先を睨んでいた。

その上から太陽がギンギンに照らし出す。黒い髪の毛は光を吸収する。アルトの頭の温度は、こたつと同じ程にまで達していた。熱い肌に触れて温まった汗が、アルトの頬をつたる。


「っ…。」

瞬間、アルトを照らす光が遮られた。

視覚に集中力を注ぐアルトは、おそらく鳥だと思い、気にしないことにしようとした。

が、わすか0.76秒。アルトの経験と勘が頭を光速で廻り、上を見上げさせる指令を出した。

「上だ!!!!」

「えっ!?」

「なっ!!」

「っ!!」

アルトは理解した。何が光を遮ったのか。


「OHHHH RHAAAAAAA!!!!」

「っ!?」

ドォォォォォンッ!!

視界に動くものを確認したと同時に、アルトは体を後ろに跳んだ。

上から降ってきた動く何かのもつ何かが地面を叩きつけ、砂埃を巻き上げる。





「師匠!!」

「構えろ!!」

バックステップで攻撃をかわしたアルトは、土煙の中の何かに対して杖を構える。



アルトがわずか1.73秒で確認したのは大きな鎧の男だった。地面を割ったのは、男の持っていた、男と同じ身長の大きさの大剣だった。その柄には、何か怪しい赤さを放つ宝玉が埋め込まれていた。




モクモクと立ち込める土煙は、横から吹く風で薄くなっていった。そしてその中にいる男の姿が露になった。

「ほぉ…。よく俺の一撃を避けたなぁ。久しぶりに楽しめそうな奴が来たぜ…。」

男の体には分厚い、甲冑と鎧兜を合わせたような朱色の鎧。その手には、アルトが一瞬みたとおり、巨大な大剣が握られていた。


「じゃあ…、始めようじゃねぇかぁっ!!!!」

男の咆哮が森を揺らす。

鎧の隙間から見えた男の目は、血に飢え、力に肥えた百獣の王のような目をしていた。

どうもです

今回は新しい人物を登場させました。

鎧の男です。

それで少し迷ってしまったんですが、

男が剣を振り下ろす時の声を、


「おぉぉぉぉう らぁぁぁぁぁっ!!!!」



本文のように、ある漫画の人間やめた吸血鬼みたいにするか。


どちらが良い感じなのでしょうか?

作った作者から見ると、あまりよくわからないもので…。

なので、意見があったら教えていただきたいと思います。何もなけれ鎧の男のかけ声は英文字になります。


読者の方々の意見も是非聞いてみたいので、お願いします。

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