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私は師匠がこんなに恋しいわけないと思ったけどやっぱり好き

アルトとミルスが家に入ってから数時間後。村人達も疲れて、すっかり静かになっていた。みんな幸せそうな顔で寝ていたり、寝言を呟いていた。

その中でシーナとルナは、椅子に腰掛け、二人だけでまだ酒を飲んでいた。ルナはもう少しで20歳だが、シーナはまだ栄養ドリンク位しか飲めない歳だ。どちらも未成年であるが、すっかり酒の味を覚えてしまっていた。


「ねぇねぇ~♪ルナぴょん?」

顔が赤くなったシーナがルナを見る。意識はあるが、確実に酔っている。

「はい?なんですか?」

ルナはアルコールに強いようだ。全く酔っているように見えない。

「気づいたんだけどさ~…、町を出たらミルミル、なんだかアルトきゅんに積極的だよね~♡」

シーナが聞いているのはミルスのこと。

「アルトきゅんと一緒に祭りにいたいとか、さっきだってアルトきゅんについてって寝ちゃったし。」

シーナはジョッキを手に取ると、酒をまた飲む。酔っていても、顔は無表情だ。

「あら?シーナちゃんも気づいてたんですか?そうですね…、確かにミルスちゃんはアルトさんに積極的ですよね。」

ルナはその質問に同調するかのようにうなずく。

「これってやっぱり…?」

「恋…ですかね…?」

すこしニヤつきながらルナが酒を飲む。

「アハハハ♡ミルミルも大人になるんだね~♡」

「それってどういうことですか?」

顔が赤いシーナにルナが聞く。

「わかるでしょ?ミルミルは今、アルトきゅんと一緒なんだよ?」

シーナは揺り椅子を始める。

「何してると思う?」

「………?私にはわからないんですが?」

シーナの言っていることが理解できずに、ルナがグラスを置く。

「そんなの決まってるじゃないか♡………うりゃっ!!」

すると、シーナがルナの豊満な胸に飛び付いた。

「ミルミルが誘惑…、もしくは夜這いしてるに決まってるよ♡」

息を荒立てながらシーナがルナの胸を揉む。

しかし、ルナは何も感じていないようだ。

「あぁ~♪そう言うことですね♪」

シーナの言いたいことを理解したルナは、『なるほど』と言った感じで手を叩く。

「フフフ…♪明日ミルミルに今晩のことを聞くのが楽しみだよ♡」

「あまり拒否するなら、聞くのはやめましょうか♪」

互いを見合って、シーナとルナは再びグラスに口をつける。







その頃、アルトとミルスは村長の用意してくれた家で休んでいた。

家の中は何も無く、生活に必要な部屋とそれ以外は何もない。寝室はベッドが2つあるだけ。部屋だけ見ると、アルト達の家とは何も変わらない。


寝室に入るなり、アルトはすぐ寝てしまった。静かな寝息をたてながら、ミルスのいるベッドとは反対側を向いて眠っている。

「スゥー…スゥー…スゥー…。」

それを布団の中からミルスが見つめていた。ミルスはなかなか寝つけれないでいた。その理由はアルトと二人だけだからだ。いつもならこんなことにはならない。しかし、今回は違う。誰の邪魔も入らない、完璧な二人だけの空間。そう考えると、ミルスの胸は収まらなかった。




「………。」

師匠…寝てるのかな?

「………師匠…?」

私が呼んでも師匠は起きない。どうやら本当に寝ているようだ。

「………。」

………ちょっとくらい良いよね?そう思うと私はベッドから降りた。そしてアルト師匠のベッド前に立つ。

「スゥー…スゥー…。」

師匠はぐっすり眠っているようだ。

「……師匠…、お邪魔します…。」

私はそのまま師匠のベッドに入る。

自分でもなにがしたいのかわからない。ただ、師匠を近くに感じたい。それだけだった。

「…んぅ…。……。」

私はモゾモゾとベッドの中を動く。そして師匠の背中の前で丸まった。

「…師匠のベッド…、暖かい…。」

私にとっての暖かさはそれだけではない。師匠と一緒にいる、それだけで暖かい気持ちになれる。

「………。」

胸の鼓動が収まらない。私は何をしているのだろうか?これは理由のない行動なのかな?…いや、私は願っている。師匠にこのまま抱き締められたいなんて思ってる。

「スゥー…スゥー…。」

とは思っても師匠は寝ている。叶わない願いだ。それでも一緒にいたいのだ。




いつからだろう。アルト師匠を好きになったのは?初めて会ったとき?

違う。

だって、その時私はこう感じた。


なんだか、どこかで会った気がする…。


かなり昔に、私は師匠と会っている。そう思った。

しかし、何も思い出せないので結局、勘違いだと確信した。師匠は私のことを知っていたのだろうか?そんなはずはない。物知りで頼れる師匠だが、私と初対面だったとしか考えられない。

ならあの感覚は何だったのだろうか?その瞬間が恋だったのだろうか?

わからない。わからないのに私はこんなことをしている。師匠と一緒じゃなければ嫌だ。

「…アルト…オーエン師匠ぉ…。」

私は師匠の名前を小さく呼んだ。


「…ん…。」

「ビクッ!?」

その時、私は師匠が起きたものだと思った。しかし、実際はただの寝返りだった。

師匠の手が私を抱くように伸びる。起きはしないかと恐れたが、そのまま私は師匠の胸に寄った。

「…暖かい…。」

やはり師匠と一緒ならば暖かい。心が安らぐ…。師匠がどう思っているかはわからないが、私は師匠が好きだ。師匠としてではなく、異性として。いつからかこんな思いに変わってしまっていた。

「師匠…大好きです…♡」

私は胸に顔を埋めながら普通の声の大きさで呟いた。


「う~…。」

「!?」

師匠は再び唸った。今度こそ起きたものだと思った。しかし、師匠は寝むっている。寝たままこう呟いた。

「ミ…ル……ス…。」

私の名を呼んだ。

夢の中でも、私は師匠の弟子なのだろうか?師匠は私の師匠なのだろうか?なんにせよ嬉しい。現実だけでなく、夢の中まで私は師匠と一緒なのだから。




ムニ…

「!?」

寝かけた時、私の下半身に柔らかな感触が残る。


し、師匠に…、お尻触られてる…!?


師匠の手は私の背中と、その下に伸びている。師匠は寝ているようだ。これは腕の中に収まるように入ってしまったため起きてしまった事故だ。

ムニ…

「…///!?」

身動きもとれず、師匠の手は開閉を繰り返す。私は声を殺すのに必死だ。つい喘いでしまいそうだ。それでも師匠の手は止まらない。

かなりの気力をすり減らして耐えていると、師匠は私を抱き締めた。


どうしよう…。頭がクラクラしてきた…。


私は何を思っているのだろうか?こんな状況ですら尚、師匠を求めている。何をされてもいい。もうどうにでもなってしまえばいい。


そう思い始めたとき、ようやく私は解放された。再び寝返りをうった師匠は、私と反対方向、すなわち最初と同じ格好になる。

「!!」

それを確認すると私は飛び起きた。

「ハァ…ハァ…ハァ…。」

ずっと止めていた呼吸を整える。汗がぐっしょりだ。体が熱い。よくよく考えると、入浴またはシャワーを浴びていないためべたつきは、もはや気にならない。

「ハァ…ハァ…。」

私は静かに眠る師匠を見る。

少し惜しい感じがする。しかし、こんなことで師匠に近づけたとは思わない。必ず、自分の口で、意識のある行動で、いつか師匠と一緒になりたい。

「…フフ♪師匠…お休みなさい…。」

私は師匠の耳元でささやき、頬に優しくキスをした。

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