旅へ
「師匠!!起きてください!!朝ですよ!!」
「う~ん…。」
朝…?
「いや…まだ眠いから…。」
「今日からじゃないですか!?そんな…起きてくださいよ!!」
今日から…?何だっけ?なんかあったっけ?
「いや、だって…、朝だから…、眠いから…。」
「今日から出発じゃないですか!?起きないなら…シ、シーナさんみたいなことしますよ!?」
出発ってなんだっけ?
「構わないよ…寝る…。」
「もーう!!や、やりますよ!?」
ペロ…。
「っ………!?」
何この首の感触…?何だこれ…!?なんかトラウマが…!?
ペロッ…ペロッ…
シーナか!?シーナなのか!?
「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「キャ!?」
僕が飛び起きると、首を舐めていた者が跳ばされた。
「し、師匠…。やっと起きた…。」
え…ミルス?寝ぼけてるのか?
「あれ?夢?」
「夢じゃないです!!早く準備してください!!今日から旅ですよ!?」
「あ…。」
思い出した。
今日から魔王を倒すための旅に出るんだった。
「アルトきゅんおっはよ~♪」
「おはようございます♪」
ドアの所にシーナとルナが立っている。
「それにしてもミルミル…、まさかアルトきゅんにペロペロしちゃうなんて…♡」
「フフ♪カワイーですよ♪」
「み、見てたんですか!?ってきゃあっ!?」
シーナがミルスに飛び付いた。
「かあいーよミルミル♡でも本当のペロペロを教えてあげるよ♡」
「や、やめてください!!し、シーナさん!?」
目の前でバタバタしているのをアルトはボーッと見ていた。
最近やっとこの町を好きになれたのに、しばらく離れるのは残念だな…。でもみんながいる…。昔の僕とは違って、今の僕には弟子がいる。友がいる。みんな個性が豊か過ぎるけど、飽きない。みんないい奴らだ。
旅に出るからにはそれなりの覚悟が必要だ。特にこのパーティーのリーダーである僕にそれが要される。誰も失いたくない…。最初からこんな後ろ向きだけど、行かなければならない。いや、行くんだ。自分のためではない。ミルスのためなんだ。魔王と和解し、平和な世界にするには動き出さないと。
なんか新鮮だな…、僕が誰かのために頑張るなんて…。
「それでは行きましょう師匠。」
「いざ魔王城へ!!」
「辛い道のりですが頑張りましょう!!」
準備を済ませ家を出るとみんなが待っていた。
「ああ。行こうか。僕たちなら行ける…。たどり着ける…。」
僕は家のドアを閉めた。そして魔王が住む魔王城のある方向、東へと歩き始めた。




