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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
魔法使いが存在しなかったやる気を出して旅に出るまで
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クロスウィザード ミルス フィエル

「師匠!!やりました!!勝ちました!!」

ハイテンションでディアスから降りたミルスが走ってくる。


目の前の光景に、言うことなど何もない。土煙が漂う森。ディアスの『破滅の閃光』がアークエンジェルに当たったのだ。そしてアークエンジェルは『バリアフォース』を消して、ただそこに存在しているだけだった。行動しないと言うことは、ミルスが勝ったのだ。


そして魔力を使い果たしたディアスが、また猫サイズに戻る。

『くっ…、貴様…よくも、よくも…。』

ふらふらとミルスの手までディアスが飛ぶ。

「ごめんよ。ジョークだよ。ディアスを怒らせればパワーが出ると思ったんだよ。」

ディアスはミルスに抱かれると大きなあくびをした。

『ぐっ…、我は疲れた…。少し眠りたいのだが…?』

「うん!!ありがとうディアス!!ゆっくり休んで。」

ミルスはディアスが寝やすいように抱いた。すると、ディアスは静かな寝息を立てて寝てしまった。

「じゃあミルス。魔導書の前に立つんだ。」

「はい!!」

アルトは落ち着いた様子でミルスに指示をした。アルトにとって、ミルスの魔導書がアークエンジェルだったことには驚いたが、勝つことはさほど心配してなかった。それはアルトのとある核心があったからだ。

ミルスは才能を持っており、努力家でもある。だから、いつかは自分を越える。

そんな核心があった。


ミルスがアークエンジェルの前に立つ。すると、アークエンジェルは目を開き、ミルスの頭に手を置いた。

『もう一度問います。あなたの願いは?』

最初と同じ質問をする。

「クロスウィザードです!!」

ミルスは堂々と答えた。その信念に輝く目を確認すると、アークエンジェルは優しくミルスを翼で抱いた。

『わかりました…。

ミルス フィエル。汝に光の力を授けましょう。どんな闇をも打ち払う光を。神よ…この者に光を…。』

「…!」

そしてアークエンジェルの翼が光輝いた。その光は辺りを照らし、何も見えなくした。




「っ…。」

光が消えると、アークエンジェルの姿はなかった。ただディアスを抱いているミルスが立っているだけだ。

「…?あれ?何か…変わりましたか…?」

ミルスに変化は見られない。

だが何か変化はあった。アークエンジェルのいたところに1冊の厚い本が置いてあった。

「ミルス。その本は君のものだ。」

アルトが本を指をさす。

「これ…がですか…?」

ミルスはしゃがんで、片手で本を開いた。

「っ!!これって!?」

「それはクロスウィザードの上級魔法の記された魔術書だ。」

アルトが説明した。

ミルスの開いた本にはたくさんの文字が書かれていた。そこそこボロボロだったが、読むことはできた。『光の魔法』、『闇を打ち消す方法』など、10ページごとにそんな大きな文字が書いてあり、長い説明つきで書かれていた。

「う…、文字ばかり…。」

流石のミルスも、その文字数にはげんなりした。

「とりあえず、使い方と効果だけピックアップして読めばいいよ。文の半分以上は『誕生の歴史』とか『名前の由来』みたいな知らなくてもいいことばかりだから。」

アルトがミルスにアドバイスをした。この文字量の分厚い本を全部読むとなったら、1ヶ月はかかってしまうからだ。

「とりあえずおめでとう。ミルスはクロスウィザードだ。」

「そっか!!私、もうクロスウィザードなんですよね!?」

ミルスはようやく実感した。遂に職業が進化したことを。

「おめでとミルミル~♪」

「おめでとうございます♪」

シーナとルナが祝う言葉をかけた。ディアスが寝ていることを配慮したのか、珍しくシーナは飛び付いていかなかった。

「ありがとうございます皆さん!!」

ミルスは頭を下げてお礼を言った。

「それじゃ帰ろうか…。ふぁ~…。帰って寝よう…。」

アルトがあくびをしながら、ポケットに手を突っ込んで猫背で歩く。

「はい師匠!!」

ミルスは走ってそれについていく。

「待ってよアルトきゅん♪僕が添い寝してあげるよ♡」

「もしかして今夜は赤飯ですか!?」

シーナとルナも走り出した。




それからミルスが本を読みきるのに3日かかった。アルトに言われた通り読むと、かなり時間が省略できた。


その間、シーナは全員の装備を整え、ルナは必要な物を揃えた。アルトは地図とにらめっこしていた。


パーティーの全員が魔王を倒すための旅の準備をしていた。

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