新たな魔法『信』
『無に帰せ!!愚かな人間よ!!』
ディアスの両手に集まった禍々しい魔力が『破滅の閃光』の恐ろしさをモノ語っていた。
「行くぞミルス!!」
「はい!!師匠!!」
アルトとミルスは互いに手を握った。
「『ダイヤモンドウォール サクセッション』!!」
アルトが叫ぶと、ディアスと自分達の間の空中におよそ10枚ほどの『ダイヤモンドウォール』が連なって張られる。
おそらくバハムート魔式はエネルギーをかなりまとめて放つ。なぜなら、ミルスを殺してしまったら消滅してしまうからだ。狙いは僕。なんとしてでも防御魔法で守り耐えてみせる!!
『ほう!!受け止める気か!!だが無意味だ!!』
その間、ミルスはアルトの手を強く握っていた。アルトもミルスの手をより強く握っていた。
『消え失せよ人間!!「破滅の閃光」ァァァ!!!!』
「アルトきゅん!!ミルミル!!」
「無茶です二人とも!!」
シーナとルナが叫ぶがバハムート魔式の手から絶望を表現したような色の魔力砲が放たれた。
信じろ!!ミルス!!
信じてます!!師匠!!
エネルギー砲が1枚目の壁に当たる。
しかし、光線はぶつかると透明な壁の真ん中を溶かすように貫いた。その時間、わずか1.0秒。
「やっぱり集束です!!師匠!!」
「OK!!詠み通りだ!!」
光線が2枚目にぶつかる。1枚目よりは耐えたものの貫かれた。その時間、2.68秒。
「2枚目破られました!!」
「大丈夫だ!!順調順調!!」
3枚目。4.37秒。
『なんだ!?破る度に強度が上がっている!?』
4枚目。6.44。
「まだまだぁ!!」
5枚目。9.02。
『小癪な!!時間はかかろうともいつまでももつか!!』
6枚目。4.46。
「くっ…。威力が上がった…。」
「師匠!!頑張ってください!!」
7枚目。10.76,
『おのれ…。愚かな人間が……!!』
8枚目。15.32。
「ハッハッハ!!どうだミルス!!すごいだろ!?やる気を出せば君の師匠はここまで強いぞ!!」
「流石です!!師匠!!」
9枚目。2.07。
『フハハハハハハハ!!手こずらせおって…!!これで終わりだ!!』
9枚目をあっさりと貫かれ、とうとう10枚目に光線が当たる。
「うぉっ…のぉれぇ!!」
「師匠!!頑張って!!師匠ならやれます!!ここで負けたりしません!!」
「どぉして…、…わかる!!……んだい…?」
「私は師匠を信じてるからです!!」
その言葉でアルトは不思議な感覚に包まれた。
ミルス…、これは…魔法なのか?
力が溢れてくるみたいだ…。
これなら………いける!!
そうか…魔法か…!!
『信じる』という魔法か!!
「ごめんミルス!!」
アルトは唐突に謝った。
「え!?」
「この作戦は、あいつの魔力切れを待って、そこを狙う事だったね!?」
「は、はい!!そうです!!」
「悪いんだけどさ…これ…。」
このまま倒せそうかも…。
「え!?」
ミルスは耳を疑った。アルトがそんなことをできると断言したからだ。
「だから…俺に魔法をもっとかけろ…!!」
「魔法ってなんですか!?」
「信じろ!!」
「っ!?……はい!!」
ミルスは握っている汗ばんだ手を離し、アルトに後ろから抱きついた。
「キタァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
アルトは左手を前にだし
「『クリスタルウォール フレキシブル』!!」
自分とミルスの目の前に新しい壁を張った。
それと同時に10枚目が破られた。
『どんな壁を張ろうと終わりだァッ!!死ねぇぇぇぇぇ!!』
「師匠ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アルトの張った新しい壁に光線が当たった。
バインッ!!
が、光線が当たると壁はゼリーのように反発し、光線を空へ弾かれた。
『なっ!?』
「えっ!?」
「まだ終わらねぇ!!」
アルトは光線が跳ね返った先に、次々と同じような壁を作り出した。そしてその壁に当たる度に光線は跳ね返される。そしてディアスの真上に来た瞬間、
『しまっ…!!』
「ドッカァーン♪」
光線はディアスの真上の壁により、真下に弾かれた。
『グァァァァァァァァァァッ!!!!』
光線はディアスに当たり、ディアスはそこで悲鳴を上げ、大きな爆発が起きた。
「げほっごほっ!!」
「師匠!!すごいです!!」
「流石アルトきゅん!!」
「感服です!!」
勝った…のか?ハハハ…、震えが止まらないな…。まさかバハムート、それも魔式に勝つなんて…。
『うがぁっ!!』
喜びも束の間、ディアスはまだ倒されてなどいなかった。
「何っ!?」
「そんな!?」
「…いや!!よく見てごらん!!」
「どうやらもう、戦う魔力も残ってなさそうですね…。」
アルト達はボロボロのディアスを見ていた。
『く、オノレ…。我が人間ごときになど!!ガハッ…。仕方がない…ここは退くしかない…。』
ディアスは最後の力を振り絞って、空へ舞い上がった。そして町の外へ飛んでいった。
「あ!!逃げた!!」
「アルトきゅん!!追うよ!!」
「急ぎましょう!!」
「…待ってください!!」
ミルスが飛んでいるディアスを見ていると、ディアスは飛んでいる最中に森へ落ちた。
「大変!!」
誰よりも先にミルスが動いていた。
「あっ、待てミルス!!」
全員が町を後にし、森へと急いだ。




