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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
魔法使いが存在しなかったやる気を出して旅に出るまで
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vsバハムート魔式 inタウン

バハムートは町の上をただゆっくりと飛んでいた。

『ビー!!ビー!!ビー!!ビー!!只今、町に魔式のバハムートがいます。住民は速やかに避難し、レベル80以上の冒険者は至急ギルド会館にお集まりください。繰り返します…』


サイレンが町に響く。

『おい!!逃げろ!!バハムートだ!!』

『うわぁ!!助けてくれ~!!』

人々はひたすらに逃げ惑った。

『ハハハハハハ!!逃げよ!!我を恐れよ!!無能な人間どもよ!!我が名はディアス!!この世を滅ぼす神の悪魔なり!!さぁ…逃げよ!!生き延びよ!!そして我が名を語り継ぐがよい!!』

ディアスは笑いながら飛んでいた。


「キャアッ!!」

『む…?』

一人の若い女性が、逃げてる途中に転んだ。ディアスの目はその女性を捕らえた。

『愚かなり。無能なり。さぁ!!神の国へと逝くがよい!!』

ディアスは空中で止まり、翼を大きく広げた。

「誰かぁっ!!」

女性の前を走っていく人々は当然目もくれず逃げていく。

翼を大きく広げ、自分の体を丸くしたディアスに、黒い光の粒子が集まっていった。

『滅べ!!』

そして次の瞬間、ディアスは口から黒と赤の光線を放った。

「キャアァァァァァ!!」

一直線に飛んでいく光線は女性に



「『クリスタルウォール』ッ!!」



当たらなかった。


アルトが女性と光線の前に割り込み、「クリスタルウォール」を張ったからだ。


パァァァァァンッ!!


光線は透明な壁に容赦なく降り注ぐ。

「ぐっ…!!」

アルトは耐えるのでいっぱいだった。

バハムートの口からは光線が途切れることなく、発射され続ける。

このままでは持たない。

そう判断したアルトは出せる限り大きな声で

「ルナァッ!!!!」

仲間の武道家の名前を呼ぶと

「了解です!!『サンダー インパクト』!!!!」

ディアスの横に大きくジャンプをしたルナは、雷が集まる右拳を光線を発射し続けているディアスの脇腹に当てた。

『ぐうっ!?』

光線が途切れ、ディアスの体は横に吹き飛び、レンガ造りの家を崩壊させた。。


「ハァッ…ハァッ…。何してるんだ!?早く逃げろ!!」

光線が止むと、アルトは息を荒立てながら、後ろの女性に叫んだ。

「は、はい!!」

その命令に女性は素直に従い、逃げていった。

「師匠!!大丈夫ですか!?」

「アルトきゅん!!怪我は!?」

そこにミルスとシーナが到着する。

「怪我はない…。だが気を付けろバハムートは『サンダーインパクト』でも効かない…。」

「…!?師匠!?『クリスタルウォール』が!!」

アルトの『クリスタルウォール』は大きなヒビが入っていた。

「…ちっ…。」

アルトは舌打ちをして、『クリスタルウォール』を解除した。

「許さねぇ…。」

「えっ…?」

ミルスは最初、バハムートを召喚した自分のことだと思っていた。しかし、アルトは

「あのヤロォッ!!!!僕の可愛い防御魔法にヒビいれやがった!?絶対に許さねぇ!!!!」



………そっち?



「問題はそっちですか!?師匠の防御魔法が破られそうだったんですよ!?て言うか可愛かったんですか!?」

このまずい状況でも尚、防御魔法を愛しているアルトはヒビを入れられた事に腹をたてていた。

「今回はかなり綺麗にできたんだ!!縦700.0センチ、横500.0センチ、そして厚さ50.0センチ!!表面積820000.0平方センチの体積17500000立方センチだぞ!?数ミリの狂いなく、ここまで正確な『クリスタルウォール』なんて滅多にできないんだぞ!?それをこんなにしやがって…!!俺の嫁を帰せっ!!」

発狂し、呪文のように喋るアルト。

ミルスは心の中でそんなアルトに最も恐怖していた。


『なかなかやるではないか。』

バハムートが起き上がった。アルトの言った通り、『サンダーインパクト』を受けても平気だった。

『だが所詮は人間の冒険者!!数十年もの間、誰にも喚びだされることの無かった我に勝とうなど、やはり愚かな人間の考えることだ!!』

体勢を立て直すと、バハムートはまた宙へ舞った。

「はっ!!それってつまり存在を忘れられてただけだろ?」

アルトはそれに対向し、鼻で笑った。

『口の減らない愚かな小僧が!!数十年分のパワーが溜まった我の「メガフレア」に耐えた事だけは褒めてやろう!!しかし、貴様をすぐに神の国へと送ってやろう!!』


「あれが数十年間のパワー分の『メガフレア』?笑えるね!!僕の防御魔法は『クリスタルウォール』だけじゃない!!芸術性の高い防御魔法で、お前を再び異次元に送り返してやる!!」

アルトとディアスの対立は、どちらも退くことがなかった。


すごい…。アルト師匠は、あんな大きな召喚獣に対しても、堂々としてる…。こんなになったのは私のせいだよね?私が好奇心で召喚魔法を使わなければ…、こんなことに…。


「ミルス!!」

心の中で自分を責めるミルスに対し、アルトは叫んだ。

「この状況を自分のせいだと思うな。たかが空を飛ぶ大トカゲ一匹召喚したくらいどうした!!そんなんじゃ魔王は倒せないぞ!!」

アルトの声はミルスの耳ではなく、心に届いた。


そうだ…。私、魔王を倒さなきゃいけないんだ…。こんなところで立ち止まってる暇なんて…ない!!できることを尽くすだけ!!師匠、それとシーナさんとルナさんと一緒に!!


戦う!!



『フハハハハハハハ!!魔王を倒すだと!?奇智に富んだ冗談だ!!そんなものは叶わん!!なぜなら、貴様ら全員、今ここで我が塵も遺さず燃やし尽くしてくれるからだ!!』

ディアスは再び『メガフレア』を撃つ態勢に入った。


「シーナァッ!!」

アルトが名前を呼ぶと、

「OKだよ!!くらえぇっ!!『メテオソード』!!」

シーナは剣を背中から抜いてディアスの前に大きく飛んだ。

そしてスキルを発動させると、シーナの振り上げた剣は業火に包まれ、燃える刃渡りが10メートルほどになった。

「ハァァァァァッ!!!!」

その炎の剣はエネルギーを溜めていたディアスを、再び地面に叩き落とすと、異次元から流星群を召喚した。

その流星群は地面に落ちたディアスに降り注ぐ。


ドォンッゴォンッ


と音を立てながら、複数の爆風が起きる。

そこに追撃をかけるようにルナが

「『波動拳』!!」

ルナの拳から丸いエネルギー弾が飛ぶ。

その弾は爆風の中に飛んでいくと、また新たな爆発を起こした。


そこで全員距離を取る。爆風でディアスの姿は見えない。

「や、やりましたか!?」

アルトの後ろからミルスが顔を出し、煙を見つめる。

「…まだだ!!」

アルトが叫ぶと爆風の中から、煙の幕を突き破り、光線が一直線に飛んでくる。

「『ダイアモンドウォール』!!」

アルトは光線が届く前に透明な壁を張った。

「オォォォォォッ!!」

壁は光線を完全に受け止めていた。それでも攻撃は止まらず、十数秒の間耐えてようやく止まった。


「す、すごい…!!」

今度は壁にヒビも入っておらず、完全に護り抜いた。

「嫌、ダメだ…。」

「え!?」

呟くアルトにミルスは驚く。

「縦の長さが0.3センチもずれた…。最悪だ…。」

「………。」

ミルスはもう何も突っ込まない。

『よく防いだぞ!!人間よ!!』

土煙のなかからディアスが舞い上がった。

その声は余裕と言った感じだった。

「あちゃ~。『メテオソード』受けてもピンピンしてるよ~。」

「『波動拳』まで効かないなんて。」

大技なスキルをもろともしないだけあった、流石にシーナとルナにとってはショックだった。

「アルト師匠!!有効な魔法とか無いんですか!?」

ミルスはアルトに問うと

「ないよ。バハムート魔式は全ての魔法に対し、耐性を持っている。普通に倒すならスキルしか手はない。」

「そんな……。」

声を落とすミルスにディアスが笑う。

『我は最強のバハムートなり!!人間よ!!己の愚かさを知り、我に跪け!!我を崇めよ!!』


「まぁ、弱点はあるよ。」

アルトが呟いた。

「え!?」






遥か昔。数百年前の話。

人間と魔王の今も続いている戦いはこのとき始まった。人々は魔王軍に立ち向かった。圧倒的な数の魔王軍に対し、人間は魔法やスキルを開発し対向していた。

そしてある日、人は魔王軍から1つの魔方陣を奪った。そして魔法使いはそれを召喚した。そのとき現れたのがバハムート魔式。バハムートは他にはいたが、圧倒的な力を秘めているため、人々はバハムート魔式を使用した。




「バハムートは歴史上2度召喚された。」




最初にバハムート魔式を召喚したとき、バハムートは暴れ尽くし、魔力が切れたため自然に消滅した。

しかし、2度目の召喚の際、

『つまらぬ。』

バハムート魔式はただそう言い残すと、人間軍を召喚した魔法使い以外を滅ぼし、魔王軍も滅ぼした。暴れて疲れたら魔力が回復するまで休み、また暴れては休む。その繰り返しをすることによって、召喚者が存在する限りバハムートはこの世界ずっといることができた。


しかしある日、一人の勇者がバハムート魔式の弱点である、額の赤い宝石を砕いた。動力源であるその宝石を砕かれたバハムート魔式は消滅した。


そして、魔式の恐ろしさを知った人間たちはその魔方陣を消し、2度と使われないように存在を消すことにした。

元々魔王軍のものであったバハムート魔式の魔方陣は、この世の何処を探しても、魔王の手元の1つしかない。





「つまり…。あの額の宝石を壊せばいいんですね!?」

ミルスはアルトに確認する。

「そうだ。でも難しい。あのバハムートには数十年間分のエネルギーがある。その攻撃をどう避けて、破壊するかが問題だ。」

「私に考えがあります!!」

ミルスがは1つの策を思いついていた。


「…!?ダメだ!!危険すぎる!!」

その策にアルトは反対した。

「大丈夫です!!それにそれに私にしかできません!!」

「バカなこと考えるな!!」

「これは私が事件の引き金を引いてしまいました!!けじめをつけないといけません!!」

その目は揺るがない信念を訴えていた。

「……………はぁ。言っても聞かなそうだね。そのかわり、後でお仕置きだからね?」

「はい!!」


『何をしようが我には勝てぬ!!次は「メガフレア」の比ではないぞ!!我が力「破滅の閃光(デスフレア)」で塵と化すがよい!!』

ディアスは両手を前につき出した。その手に先程とは比べ物にならない、禍々しい魔力が集まる。

「行くぞミルス!!」

「はい!!師匠!!」


この策が失敗すれば全滅する。その覚悟を胸に、アルトとミルスはお互いの手を握った。

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