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誓い

内容が良く分からない事になってるかもしれません

「遠い所、その上アクシデントによる長旅、誠にご苦労でだったな」

「いえいえ。これも務めでありますゆえ。そして私とエーベルト国王陛下、もといマクとエフュリシリカとの親睦のためと思えばこの程度のトラブル、なんともありません」


 玉座の間にて。

 エーベルトは対等、エルモンドは敬意を表す態度で互いに顔を見合わせていた。

 エフュリシリカの王はマクの領主の到着に至るまでの苦難をねぎらう。


 エルモンドの到着は、本来の予定より大分遅れている。

 本来ならばマクを出発してから、日が変わらない内に王国に辿り着くはずであった。しかし事故が起こりエルモンドの乗る馬車と、警護として連れていた兵士らを乗せていた荷台が直せないくらいに大破。王国に行くまでの手段は歩きのみとなった。


 馬の力を使えば早く辿り着けるとしても、人が歩くとなるとかなりの時間と体力が必要になる。しかも重い甲冑を身につけた兵もいるため、1人だけ馬に乗って行くなんて事もできない。

 そのため兵を1人遣わせ、増援を王国に要請させた。兵の力を借りたかったのは、道中で魔物に襲われても対抗するための力が必要だったため。マクから同行している兵士も戦えるが、まさか日を跨ぐとは思はなかったので、危険な夜を安心して過ごせるような準備はしていない。荷台と馬車がやられていなければ逃げれたが、戦うとなると、魔物が集団で襲ってきたならば兵が足りない。


 しかし王国の兵が到着した後に、また問題が起きた。

 あまりの大雨に地盤が緩み、途中に通らなければならない山道が土砂崩れを起こしたのだ。その道を通らないとなると周り道をしなければならず、さらに時間がかかる。

 同行する兵の体力も無限では無い。ただの移動に過ぎなかったはずなのに、旅のように何日も外で日を明かさなくてはならず、疲労も蓄積され続けるばかりであった。


 一行の歩く速度も徐々に低下し、日数にしておよそ7日、本来ならば1日経たずに到着する予定が、一週間もかかると言う前代未聞の出来事が起きたのだった。



「まずはゆっくりと休むのだ。会は疲れが取れてからで良いだろう」

「お気遣い結構……、と申したいところですが、そのお言葉の通りにさせていただきたいと思います。川や湖で水浴びはしたのですが、それでも不衛生なもので…。体力もかなり消耗しており、できれば今すぐに、私と兵達にお湯を頂きたいのですが?」

「ならすぐに準備をさせよう。好きに使って構わんさ」

「御心遣い感謝します」


 エルモンドは立ち上がると、一礼をしてからその場を去ろうとする。


「…あ、そう言えば…」

「どうかしたのか?」


 突如、足を止めたエルモンドを、エーベルトが気になって尋ねる。


「フィリシス様の姿が見えませんが…?何かあったのでしょうか?」

「ん……、あぁ、あの娘の事か…。最近、特別な理由が無い限り、部屋から出てこないのだ」


 渋い顏でエーベルトは答える。


「おや?それはまたどうして?」

「……そういう時期なのだろうな…。すまないな、顔も見せず…。……会いたいのならば呼んでくるが?」

「いえ、そこまでなさる必要はありません。目が見えないのですから、部屋の外に出さないほうが宜しいでしょう。ただ、お身体でも悪いのかと気になっただけですから…。……ふふ…、子供と言うのはそうやって成長するんですから、お好きなようにさせてみると良いと思いますよ」

「うむ…。其方の言葉、胸にしっかり刻み込んでおこう…」


 会釈をすると、マクの領主はゆっくりと玉座の間を去った。


────────────────────────


「あぁ……。ぁぁぁぁ…っ…‼︎」


 自室のベッドの上でシーツに包まるように、フィリシスは身悶えしていた。

 色白な肌をしている少女の顔は桜色に染まり、慌てた表情で頬を抑えている。

 もう昼を過ぎているが、着替えずに寝巻きのままだった。


(わ、私は一体、オーエン様に何を申そうとしていたのでしょうか⁉︎)


 昨日の事。フィリシスは親しくなった冒険者から、様々な話をたくさん聞いていた。外の世界をあまりよく知らない彼女にとって、想像力は楽しさしか産み出さない。ここのところ毎日である会話を普通にしていた。

 が、その日は普段と違った。

 調べ事があり、冒険者は少し早く部屋を去ろうとした。もっと話をしたかったために、フィリシスは寂しく感じた。


 そこでフィリシスは、その冒険者について行って調べ物の手伝いをしようと考えた。話を聞かせてもらえなくとも、一緒にいる事はできる。


 しかし、冒険者はそれを拒んだ。フィリシスが盲目だったからだ。目が見えているのならば、むしろ有難かった。現実では、目が見えていない彼女を連れて行くのは危険であった。本棚にぶつかったりでもして、棚からこぼれ落ちた本に当たったら惨事になりかねない。

 冒険者はリスクを考えて、来たらダメだと告げた。


 なんとしてでもその冒険者と居たかったフィリシスは諦めようとせず、2人だけで茶が飲みたいと言ってみたりもした。

 その発言がむしろ彼女の首を絞めることになった。

 

 何故に2人だけなのかと理由を問われてしまった。

 しまったと思っても時すでに遅く、恥ずかしさから徐々に熱が昇り始めた。クラクラとして、混乱しかけていたフィリシスはつい、秘めていた想いを打ち明けてまいそうになった。

 何日も会っている内に抱き始めた特別な感情。大人へと成長していく間の心の変化。初めて体験する感覚に素直になろうとした。



 伝えかけたところで父親に乱入されて、阻止されてしまったのだ。


「あの方は気絶なさっていましたけど……、もし…、もしあの言葉を聞いていらっしゃったなら…?…あぁぁ…、顔も合わせられません…‼︎」


 父親に聞かれた事よりも、その冒険者に言いかけていた事を思い出すと、恥ずかしさのあまり死んでしまいそうだった。


「だって、会ってから全然日にちが過ぎて無いではありませんか⁉︎まだ全然オーエン様の事を知りもしないのに……、それなのに…こ、恋してしまうのは、なぜだかいけない気が……」


 思春期による不安と姫である立場としての自分を考えると、この気持ちが果たして良いものなのか、判断する事が不可能だった。

 おまけに父親のエーベルトには認めないと言われてしまい、子供で世間の事を良く知らない彼女は困っていた。


「……オーエン様は…今日も来てくださるのでしょうか…?」


 開いた窓の方を向く。見えなくとも、例の冒険者が来れば気配で少しわかる。

 今はただ外からの陽射しが射し込み、風でカーテンが揺れているだけであった。


「………今すぐに…オーエン様に会いたい…」


 幼いお姫様は切なげに声を漏らした。


トントントン…


 すると、部屋のドアが静かにノックされた。


「っ‼︎は、はい‼︎どちら様でしょうか⁉︎」


 つい口にしてしまったタイミングで来客があったため、焦ってした返事は声音が高かった。


「アルト オーエンだ。フィス、入ってもいいか?」

「オ、オーエン様⁉︎も、もも、勿論でございます‼︎」

「ありがとう。失礼する」


 入室を許可したはいいものの、だらしない姿なのを思い出して、フィリシスは取り乱した。真昼間なのに目覚めてから着替えていない。寝巻き姿を見られるのは姫としてもどうかと思われるが、フィリシスにとっては、何よりアルトに見られる事が問題だった。


 しかし目の見えない彼女が自力で着替える事はできず、結局ベッドの上で上体だけを起こした。


 ドアが開き、アルトは部屋に足を一歩踏み入れる。


「…………」


 そして部屋の隅から隅までを、目を尖らせ確認する。


「……誰も…いないか」

「え?どうかなさったのですか?」

「いや…。なんでもない…」


 何も無いことを知ると、ゆっくり姫のいるベッドへと近づく。


「えっと……、その……。何か…御用でしょうか?」

 

 フィリシスの内心では、あんなに会いたがっていたアルトだが、今はとにかく嬉しさよりも、バクンバクンと鳴る胸を抑えることに全力だった。

 昨日の言葉を聞いているかいないかわからず、もしそのことを聞かれていたなら恥ずかしくてたまらなかった。


「…うん。また話に来たんだ」

「お話ですか?」

「ああ…。フィスに色々と聞きたい事がある」

「私に……、聞きたいことですか…⁉︎」


 まさかあのことを聞きに来たのではと、フィリシスの頬を汗がつたい落ちる。


────────────────────────


「どうやら何事も無く終わったみたいです。まぁ、ただ王様と会うだけでしたからね」


 領主を迎えた後、護衛としての任を受けた冒険者の少女達は中庭で休憩していた。芝生の上に腰を下ろしたり、横になったりと、つい先ほどの緊張を落ち着かせるために。

 今回は護衛と言うより、城の兵と同じように偉い人物に対して敬意を示すだけ。

 おそらく動かなければならなくなるのは、先日のように冒険者が城を襲撃した時。領主の安全を確保するためにいち早く集まり、その身を守らなければならない。基本的には異常が起きるまでは、領主に無礼が起きないように注意しておけば、これまで通りくつろいでも良さそうだった。


「にしても、エルモンド フーリエ氏はカッコ良かったですね」

「うむ。金髪に美顔なんて、あれはファンが何人もいるタイプだ」


 女子の目からすれば、やはりエルモンドは俗に言うイケメン。その美貌について騒がない訳にはいかなかった。


「私が皆さんと一緒になる前に旅をしていた時に聞いた噂なんですけど、あの人の所には手紙や花束が尽きないらしいですよ」

「私もあの人の噂聞いたことあるよ。見た目だけじゃ無くて、秀才で何をやってもできすぎるらしいよ」

「何人虜にしてんだろ〜ね。カッコいいのは確かだけど……。……あ、でも僕の一番はアルトきゅんだから、安心してねん!──て、あれ?アルトきゅんはどこ?」


 雑談をしていると、シーナはアルトがいない事に気づき、周りを見回す。

 すると他4人楽しく話しているのに反して、難しい顔を1人しているミルスが代わりに答えた。


「マスターなら寝むいから、と言って部屋に行きました」

「アルトさんとエルモンド氏は、なんか反対ですね」

「アレルギー反応でもおこしたんじゃないの?あの人のオーラにやられてさ」

「…そうなんでしょうか…?」

「「「「?」」」」


 ミルスの暗い顔に4人も首を傾げた。


「エルモンドさんが通った時。マスター、すごく怯えているように見えたんです…」

「アルトさんが怯えている…?具体的にはどういう風にですか?」

「通る前は欠伸なんかしてたのに、顔中汗でぐっしょりな上に、青ざめていたんです…。それに足も小刻みに震えてて……」

「ジョークのつもりだったけど、本当にアレルギー反応?」

「まさか。具合でも悪くなった、とは考えられませんね。アルト君はその直前まで、欠伸をするくらいだったんですから…。……となると、エルモンドさんと何かあったとか?アルト君って、過去にアレがあるじゃないですか。その時、実は知り合って、エルモンドさんにトラウマがあるとか」

「それならそもそも護衛の役割なんか受けないよ。きっと、寝不足のせいさ。睡眠時間が足りなくて疲労が溜まると、風邪とかにかかりやすくなるからね」

「……だと、いいんですけど…」


 未だ納得がいかないミルスだが、ひとまず本人に後で会ってみることにした。



────────────────────────


「エルモンド フーリエって、どういうやつだ?」

「エルモンド様の事ですか?えっと…、凄くお優しい方です」

「あとは?」

「他は……、お父様と仲が良いです」

「それで?」


 一方的な質問に答えていくフィリシス。

 アルトの様子がおかしい事は薄々気がつき始めていた。


「……オーエン様。どうなさったのですか?何やら焦っているように思えます…。エルモンド様と何かあったのですか?」


 あまりにも急にマクの領主の事を知りたがっているため、自分が部屋に篭っていた間に悪い事でも起きたのかと心配になった。


「…っ。いや……別にそういうわけじゃない…。ただ、気になってさ…」


 フィリシスの問いの意図を考え、アルトは焦り過ぎていたと反省した。怖がらせてしまったと思い、少し彼女から離れた。


 

 今のアルトの心には、隙がなかった。城の中にエルモンドと言う人物がいると考えるだけで、いつどこで惨劇が起こるか分からないからだ。


 もしかすれば抱いた恐怖心は、彼に対する劣等感だったりするのかもしれない。

 だが今でもはっきりとエルモンドが怖いと言えた。怪物でも飼っているのか。残忍な裏の顔があるのか。


 アルトが想像すればするほど、危機感を募らせるばかりであった。


(エルモンド…。今はあの男に関しての情報が欲しい…。やっぱりあいつは怪しい。本能的だけど、ここまで俺が恐れているなんて滅多にない…)


 アルトは、お化けとか怪物はあまり怖がらない。何故なら一番恐ろしいのは人間だと知っているから。

 人の持つ残虐性や暴力的な本性を、旅を通して見てきたからだ。野望のためならどんな物でも使い、周りの被害など考えず、自己中心的な奴らばかりであった。


 が、アルトがエルモンドから感じ取ったのは、そんなまだ優しいものではない。

 人の物とは思えない狂気。顔の皮一枚剥いだら、その下は真っ黒な化け物だと推測しても良いくらい、邪悪な塊に見えたのだ。


(気のせいだったら、それはそれでいい。だが何かあってからじゃ遅い…。エルモンドの素性を明らかにして、早々に手を打たないと……。フィスや他のみんなを守るために…)


 目の前で座っている少女。その父親である国王。

 城内にいる仲間や、世話になっている人達。


 何か起こる前に助けなくては、と考えていた。


「……オーエン様」


 汗をかいた手を握りしめていると、フィリシスが優しくアルトの名前を呼んだ。


「私の眼は光が見ることができなくても、オーエン様の今のお顔は見える気がします…」

「フィス…?」


 フィリシスが何を言っているのか全く理解できなかった。

 

「オーエン様は、何かに怯えていらっしゃいますね」


 目隠しダーツで胸を射抜かれたようだった。当たる訳無いと思いながら、少しのズレも無く正確に当てられた事に驚くような気持ちだ。


「…っ‼︎なんで…それを?」

「恐れる事はありません。オーエン様なら何をやってもできます。あなたは私達の英雄でございますから」


 フィリシスは質問には応えない。しかし口から放つ暖かい言葉の全てが、アルトの胸にすっと入り込んだ。


「何故エルモンド様の事を知りたがっているのかは存じません。ですが、きっとまた誰かをお護りするためなのですよね?でしたら私は応援します。きっとやれると信じています」

「……フィス…」


 フィリシスが喋り終わった頃には、抑え付けられていた心に開放感が与えられていた。

 エルモンドを怖れる気持ちも忘れ、皆を護る事だけを思っていた。

 少年は、ゆっくりと膝を床につけ、少女に向かって頭を下げた。


「…フィス──、いやフィリシス様。有難い御言葉、私の言葉では感謝の気持ちを伝えきれません」

「ご心配いりません。オーエン様の気が晴れたのなら、私はそれで嬉しいのですから」


 互いに頭を下げると、少年はそっとお姫様の手を取った。


「ごめんフィス…。しばらく話に来れなくなるかもしれない…」

「ふふ…、私は構いません。オーエン様はこれから人のためになる事をするのですよね?だったら、止めたりなどしません」

「ありがとう。代わりに約束する」


 少年は立ち上がった。


「もしフィスの目が見えるようになったら、俺が外の世界を見せてやる。森、山、海、あとは人がたくさんいる街。フィリシスが見たがっているもの全てを見せてあげるさ」

「本当ですか?それは楽しみです。待っています、オーエン様」


 フィリシスが返事をした時、すでに冒険者の少年はそこにはいなかった。

 今はただ、窓際でカーテンが風にそよいでいた。

急いだため話の流れが伝わり辛いと思い、まとめておきます



アルトはエルモンドがなんかやばいと思った

何かが起きる前に行動しようとした

とりあえずフィリシスの所へ行き情報を得ようとした

何かから護ろるために行動している事を悟られ、応援される


こんな感じです


急いだので誤字や文章が酷い所もあるかもしれません

ためらわずに御指摘してください

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