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見えないもの

少し遅れましたがなんとかできました……

かなり急いだもので、所々おかしかったりするかもしれませんが、その時は文句を言っていただいて構いません


また次話は都合により、再来週になると思います

しばらく執筆することもできないので、ご理解いただけたらと思います

「やぁ、フィス。約束通り今日も来たよ」


 地上数十メートル程の高さ。3階の窓から顔をだけを覗き込ませながら、黒髪の少年が部屋の中の白い花のような姫に声をかける。


「オーエン様‼︎今日も来てくださったのですね‼︎」


 その声でアルトが来た事を察した姫は、顔をパァーッと明るくして、元気に返事をした。


「当たり前だろ。フィスとの約束だからな。絶対守るよ」


 堂々と窓から部屋に入り込んだアルトはフィリシスの座るベッドの方へと歩いて行き、そのまま横の椅子に腰掛けた。

 そして楽しそうに話し始めるのであった。


 

 このくだりはすでに3、4日程続けて繰り返されており、もはや2人にとっての日課であった。


 好奇心がままに冒険者の事がもっと知りたいフィリシスと、姫の元へ訪れる以外は寝る事しかないアルトにはとても楽しい時間だった。



「それで、本日はどのようなお話をしてくださるのでしょうか?」

「そうだな…。今日は今までの冒険で出会ったヤバイ奴らの事を話そうかな」

「ヤバイ…奴ら、とは?」

「超強い敵だよ。魔物とか悪魔とか…。とにかく、戦うのが苦しかった奴らのこと」


 少年と姫との会話は、大方少年の話である。外の世界について、知ってるどころか見たり聞いたりもした事のないフィリシス。少年の話は、そんなフィリシスの興味を強く惹きつけるのであった。


「じゃあまず、大剣を背負った大男の話をしよう…。あれは俺らが冒険に出てからまだ間もなかった時の事──────────────────────────」




────────────────────────


「〜♪」


 今日は機嫌が良かった。今日に限らずとも毎日の事であるのだが、当の本人には関係なく、呑気に鼻歌なんて歌いながら廊下を歩いていく。


 毎日が休日ような日々。意味も無く一日中椅子に座ったり、窮屈で動きづらいド派手な服を着たりしなくていいのは、最高に気分が良くなる。


 国王とは思えない程働く事が嫌いなエーベルトは、短パンにシャツという少年みたいな格好で、軽快にステップを踏む。


「あー暇だー。何か面白い事起こらないかなー」


 珍しい生き物でも探すかのようにあちこちを見回す国王。


 しかし実際は暇では無い上に、休日でも無い。本来ならば、王として何か仕事が無くとも玉座の間に座ってなければならない。国やその周辺で何かが起こった時にすぐ指示が出せるように、と言われてはいるが、大体何も起きない日ばかりだ。

 勝手にいなくなったりすると大臣に叱られる羽目になるのだが、やはりエーベルト、破れずにはいられなかった。


 実際、数日前に娘でもあり姫でもあるフィリシスが連れ去られた日、暇だからと城をこっそり抜け出したのがその騒動でばれたが、エーベルトは反省する気も無く、また城を抜け出そうかなどと考えていた。


 エーベルトの日常は、ほぼ休暇。特に何をして何をするという決まった日程は無い。

 兵士や侍女などの様子を見たり、自分のこっそり私物化し、愛情込めて育ててる牛をレースに出したり。言い換えれば、知り合いにイタズラをして、ギャンブルに手を出すと言う中年オヤジのような毎日だ。


 それでもエーベルトは椅子に座らなくて済む日を楽しんでいる。後でどれほど怒られようと、退屈で死ぬよりはマシだ。しかも大臣の説教を受けるか受けないかが、またスリルとなり、余計に止まることを忘れさせる。


 とにかく、ジッとしているのが嫌いな人間であった。



「んーー。なんか無いかな〜?………む?」


 ふと目に入ったのは、兵士長ローグと部下の兵士。何やら話しているようだった。


「おぉそこの2人‼︎なにかあったのか⁉︎」


 軽く挨拶するように手を上げながら、エーベルトは好奇心を表に出して2人に尋ねる。


「っ⁉︎陛下⁉︎何故ここに⁉︎」

「国王様…。あなた、また抜け出してきましたね?」


 自由すぎる王の行動に慣れてない兵は、予想外の人物が来たことに驚き、比較的普通の兵よりも王の性格を知っているローグは呆れたような表情で尋ねる。


「ハッハッハ‼︎人間楽しまなくては損だからな‼︎」


 悪びれる様子も見せず、エーベルトは大笑いする。


「ところで?何やら話していたが…、問題か?」


 とにかく何かあったのかどうか知りたいエーベルトはすぐ笑うのを止めて聞く。


「いんや。問題じゃ無いっすよ。諸事情で到着が遅れてるマクの領主の迎えに行かせてた兵士から、この間の雨で山の土砂が崩れて、回り道しなきゃならねぇって伝達があったんだよ」

「そうだったのか。うむ……、会までもうしばらくかかりそうだな…」


 それを聞いてエーベルトは残念そうな表情を作る。しかし、それは茶会の延期ではなく、自分の期待していたような話ではなかった事に関してである。


「ま、気長に待てやいいさ。エルモンド殿や兵は問題無くエフュリシリカに向かってんだ。あっちの護衛だけじゃなく、ウチの兵まで着いてんだから、盗賊とか魔物に襲われたとしても大丈夫だろ」

「それもそうだな。……と言っても暇でなぁ〜。ところでローグよ、なんか面白い事は無いか?」

「面白い事?うーん……、そうさなぁ〜。面白いかどうかはともかく、メイドのイーナが不安そうな顔してたな」

「イーナ?それはもしかしてフィリシスの世話をしてくれている者か?」


 イーナと言うメイドは、数いる侍女の中でも仕事が良くこなせる人物であった。それ故に誰かの手助けがなければ、部屋の外に出るどころか歩くことさえもできない盲目の姫、フィリシスの世話役として任命された。

 姫が朝起きてから夜眠りにつくまでの全てを手伝わなければならないため、仕事内容は1人だけ姫の世話。姫が自室にいる以外はほぼ働きっぱなしだ。


 エーベルトが気にしているのは、そのイーナが不安に思っている事が、自分の娘のフィリシスに関してなのではということだ。


 少なくとも何か面白い事かもしれないため、エーベルトはイーナのところへ行くことにした。


「そうだな。ワシ直々に尋ねてみるとしよう。悩みがあるのなら上にいる者として、解消してやらねば。で、イーナはどこにおる?」

「姫様が今部屋にいるから、洗濯でもしてんじゃねぇか?あの人、超ハードスケジュールだからな。そこじゃなくてもどこかで働いてるさ」

「そうか。ではワシは失礼するぞ」

「おう。あんまフラフラしすぎないでくれよ。何かあったら怒られるのはあんたじゃなくて、こっちになんだからな」

「ま、そん時はそん時だ。じゃあの」


 手をぷらぷらと振りながら背を向け、ゆるい国王は去っていく。



「本当、あの人は自由だな。ま、そこがまた憎めないし、俺は支持するけどな」


 その後ろ姿を見送りながらローグと、しばらく固まっていた兵士が口を開く。


「へ、兵士長‼︎」

「ん?どした?」

「兵士長は、何故陛下とタメ口で話されているですか⁉︎」


 その兵士が何よりも驚いていたのは、自由すぎる国王ではなく、それと対等に話しているローグの方だった。


「あん?別に普通じゃね?あの人はそういうの気にしねぇんだよ。お前だって多分、タメ聞いても問題ないと思うぜ」


 兵士にはローグの言っている事が信じられなかった。いくら自由主義な王とはいえど、そこまで許してしまえるのかと驚いていた。


「な、何故陛下はそれほどまで?」

「あの人の意向さ。国を治める者として、民の本心を知らなければならない。上下関係の配慮があると言いたい事も言えなくなり、民の声が聞こえない。だからどんな奴でもタメ口で来いってさ」


 エーベルトと言う人間は良くできている。人の気持ちを考えることができ、自分の地位を決して鼻にかけたりしない。従えている者一人一人にも接する事までもできる。


 威厳が無くとも、国を治めると言うことを成し遂げているのだ。






「へい‼︎イーナよ‼︎」


 中庭で衣類を洗濯しているメイド、イーナに向かって、エーベルトは元気にありふれたような挨拶をする。

 一瞬、何事かと動揺したイーナだったが、エーベルトだと分かるとすぐに緊張を解いて頭を下げた。


「ご苦労様です国王様」

「ええい。そんなかしこまらんでもいい‼︎もっとかる〜く挨拶すればよいわ」


 イーナに接するエーベルトを人が見れば、あたかも飲み屋のよくいそうなオヤジのような感じと思われるだろう。笑って見える白い歯、目に寄るシワ、ふわふわしていそうな髭。それらが要因となってちょい悪系なオヤジの印象を生み出していた。

 が、それもまたエーベルトの策だった。


 真正面からストレートに尋ねるよりは、こういうオヤジキャラで接すれば相手の事がナチュラルかつ、あまり悪い気にもさせずに聞き出せる。

 あまりねちっこくなると、王とは言えど煙たがられる。ほどほどにしておけば、堅っ苦しい言葉を交わしたり、うざいと思われたりせず、会話がしやすい。


「とは言え、最低限の言葉遣いはさせていただきます。これでも、使える立場の人間なので」


 イーナは真面目かつ、クールな性格をしていた。

 とにかく機械のように忠誠心が高く、感情を表に出さない。

 エーベルトでさえも笑った彼女の表情が変わったのを見たことが無く、心情の変化を読み取ることのできる声のトーン、それも変わるのも聞いたことがない。


 その特徴から、兵士や他の侍女の憧れと言う噂は、髭を触りながら話しかけているエーベルトも聞いた事があった。


「なら好きにして構わないぞ」

「ところで、国王様?私に何か御用ですか?」

「おおそうだった‼︎聞いたぞイーナよ。何か悩みがあるそうじゃないか‼︎」

「はい?悩み…ですか?」


 唐突な質問だったが、たじろぎさえもしないのは流石だと国王は感じた。


「悩み…は特にございません。一体、なぜそのような事をお聞きに?」

「うむ。兵から聞いたのだ。主が不安そうな顔をしていると聞いたからな」

「それでわざわざ私なんかに?」

「仕えてくれている者の事を考えるのも大切だし、何よりも暇だったからな。なんかしようと思ってたのだ」

「それはまた、嬉しいご厚意です」


 エーベルトの言葉に感服したのか、イーナ目を閉じて礼を言った。

 しかしやはり表情や声に出ないため、感動しているのかどうかは話している王にさえもわからなかった。


「私が不安な顔をしていたというのは、私のことではございません。フィリシス様の事で気になることがあったからです」

「フィリシスの事でか?」

「はい。実はここのところ、フィリシス様が私を必要とする機会が少なくなったのです」

「どういうことだ?」


 何を伝えたいのか国王には理解できなかったため、イーナはわかりやすく言う。


「はい。昼過ぎ頃になれば、フィリシス様は私をお呼びになります。そして私は適当な本を1冊開いては、それを読み聞かせるのです」

「ふむ。それが最近は無いと?」

「はい。フィリシス様はそのまま1時間ほど眠ってお休みになられます。それは何年も前からの日課でございました」

「しかしイーナよ。フィリシスもいつまでも子供では無い。もう12歳だ。色々難しい時期なのだろう。本の1つや2つ読みたく無くなる時もあるだろう。それについこの間、連れ去られるという怖い思い出をしたのだからな」


 しみじみと成長する娘の事を考えながらエーベルトは髭を撫でる。しかしイーナは即座に否定した。


「いえ。私が妙に思っているのはそれでは無いんです。その事で昨日フィリシス様の部屋の前まで行ったんですが…。どうやら誰かとお話しされているのです」


 それを聞いた父親も変に思った。


「?一体誰と何の話をしていたというのだ?」

「そこまでは存じません。盗み聞きするのはどうかと思ってその場を離れました。フィリシス様自身は楽しそうにしておられるように思えたので、それを誰かに知らせるべきかどうか迷っておりまして…」

「なるほど…。謎の人物との密会か」


 エーベルトの表情には僅かに笑みが浮かんでいた。

 ようやく面白そうな話題に辿り着けたとか何とか考えていることがイーナには容易に読み取れた。


「よし…。ワシも行ってみるとしよう」


 絶対に今から娘の部屋に行くだろうという事も。



────────────────────────


「そして俺は魔法が効かない鎧を着けたガルガデスって言う大男を、何とか撃退した」

「オーエン様の勇ましい姿が想像できます。やはりお強い方なのですね」


 胡座をかきながら床の上に座るアルトと、目を閉じながら椅子に座っている王女フィリシス。アルトが話しているのは過去に戦ったガルガデスと言う男の話。ちょうど、そいつの襲撃から撃退までの話をし終えたところだった。

 フィリシスはその主人公の強さを褒めるように軽く拍手を送る。


「でも結局倒せては無いからな…。しばらくしてから後を追いかけてきたのか、弟子のミルスと戦ったらしいし…。もしかしたらまた戦わないといけなくなるかもな」

「そのお方は何故、オーエン様をそこまで狙うんですか?」

「よくわからないけど、強い奴と戦いたかったらしい。本当に謎が多いやつだ。始めは空から降ってきたし、聞いた話だと口から長い刀を取り出したらしい。ひょっとして人間じゃ無いのか?」


 年齢、人種、見た目から知ることができる情報は分厚い鎧に包まれてシャットダウンされている。声から考えるとおそらく性別は男なのだろう。

 しかし、正体が分からない。そもそも人間なのかさえも知らない。魔族という可能性も捨てきれない。


 フィリシスに話してみることで初めて、今まで気にもしなかった疑問が浮上していく。別に知ったところでどうという事は無いと考えていたが、これからもまた襲い続けてくるのかと考えれば、いずれ決着をつけなければならない。


「ガルガデス…………。どうしてでしょうか?私、その名前に聞き覚えが……?」

「っ⁉︎それは本当かフィス⁉︎」


 王女の呟きを聞いたアルトは思わず立ち上がる。


「ですが…、何故聞いたような記憶があるのかすらわからなくて………」


 必死に思い出そうと、眉にしわを寄せて難しそうな顔をする。


「……う〜ん………。…あっ、そうでした。思い出しました」


 数分間じっと考え込んで、その瞬間は突然に訪れた。


「確か私が昔、イーナさんに読んでいただいた本。その登場人物の名前が『グィルガレウス』。少し音が似ているから聞き覚えがあると感じたんです」

「グィルガレウス……。フィス、その本のタイトルは?」

「それが…よく覚えていません。今まで読んでいただいた本は数え切れないくらいありますから…」


 アルトは残念そうにまた床に腰を下ろす。

 ガルガデスの正体の手がかりかもしれないと思ったが、タイトルがわからなくては仕方がなかった。



 書かれたのが最近で無い限り、本の中の人間が現実に現れる訳が無い。だがアルトはこれまでの冒険で、そんな常識が通用しない事を知ってきた。悪魔達の闇の力やベルザード、ベルザーグなどの魔人。出会うまでは、アルトにも未知のものだった。

 だが学んだのだ。魔法やスキルがある限り、有り得ないなんてことは無い。100パーセントや0パーセントと言う数字は存在しない。


 もしかすれば、絶対的な平和を保っている町が一瞬で瓦礫の山と化すかもしれない。

 もしかすれば、人間の男なのに急に女になるかもしれない。


 全て経験が語っている。今まで体験してきた事がまさにそれだ。



 故に、グィルガレウスと言う名前の登場人物とガルガデス。 関係性があるとも分からなければ無いともいえる根拠が無い。

 アルトにはその本が気になってしょうがなかった。


「自分で今度探してみるか」

「きっと、城の図書館だと思います。イーナさんはいつもそこから本を持ってきますから」

「よし。今からそこに行ってこよう」

「それでしたら私も…」

「え?フィスも?」


 フィリシスが着いてくると言うと、驚きの声をあげてしまった。


 目が見えないフィリシスは一体何をするつもりなのだろうか。


「オーエン様のお手伝いがしたいのです」

「気持ちは嬉しいけど1人で大丈夫だよ。フィリシスは目が見えないんだから、無理しなくても…」

「ですが……」

「?何か用事があるのか?」


 諦めない様子から何か別の目的があるのかとアルトが尋ねる。


「い、いえ⁉︎そ…、そ、その………。特に…ありません…」


 すると、動揺しているかのように噛み、声が小さくなった。

 その顔は赤い。俯いているため、アルトの角度からその様子は伺えなかったが、風邪をひいたように赤かった。


「そうか。ごめんね…。俺はただ、これから大量の本を机の上に積み重ねる。そこに目が見えないフィスが居て、もし本の山が崩れでもしたら、とっても危ない思ったからだなんだ」

「ぞ、存じております…」


 フィリシスは赤い顔を下げたまま、また小さな声で答える。


 アルトはその間、立ち上がってドアの前まで歩く。


「また明日も来る。この間約束は守るさ」


 と言い残してドアノブに手をかけると、


「オーエン様‼︎‼︎‼︎」


 フィリシスが先ほどまでの比で無い大声で名前を呼んだ。

 驚いて振り返ると、フィリシスが少しふらつきながら立っていた。


「ど、どうしたんだ急に⁉︎」

「あ、あの‼︎オーエン様‼︎」


 緊張して口が上手く動いておらず、呼吸も乱れていた。


「こ、今度お茶でもいかがでしょうか⁉︎」


 そして伝えたのは、姫からの茶の誘いだった。


「お茶?」

「は、はい‼︎いつものようにオーエン様が私の元へいらっしゃって、ただ話すのではなく、もっとちゃんとしたところでいろんなお話をするんです‼︎」

「…?あ、うん…。その誘い受けるけど、それは茶会的なものかな?」

「っ⁉︎い、…いえ…。ふ、2人きりです‼︎」

「2人きり?俺とフィスの?」

「そ、そうです‼︎私とオーエン様だけです」


 今部屋を出ようとしていた少年には姫の言っていることが不思議でしょうがなかった。

 

「でもどうして?別に茶を飲むのなら、いつも通り来てもできるんじゃない?」

「そ、それは…‼︎」


 疑問を尋ねられると、フィリシスは言葉に困った。

 そしてまた小さな声で、何度も噛みながら話す。


「何か俺だけに伝えたいことがあるのか?」

「えっと……、えっと…わ、私が…」

「私が?」

「っ‼︎……その…、オーエン様の事を…」

「僕の事を?」

「───っ‼︎…す




 バンッ‼︎‼︎‼︎


 ちょうど言いかけた時だった。

 勢いよく部屋のドアが開けられ、ドア前にいたアルトはドアと壁に潰された。


 そしてそこに立っていたのは、目に涙を浮かべているフィリシスの父。

 国王エーベルトだった。


「フィ、フィリシスよ‼︎‼︎」

「こ、この声は⁉︎お父様⁉︎」


 その人物の来室にフィリシスも驚いていた。


 そして国王は


「ワ、ワシは…‼︎」


 溜まっていた涙を決壊させながら、


「認めないからな───‼︎‼︎うわーーーーん‼︎‼︎」


 号泣して、部屋を出て行った。



 その数秒後、気絶したアルトは地面に倒れ、部屋が静かになると、フィリシスもさっき言おうとしていたことを聞かれたと気がついた。

途中ある人物の話を混ぜておきました

一応これ伏線です


最後のオチはわかったでしょうか?

文がよくできてはいませんが、父親の気持ちになれば何に泣いているのか分かるかと思います



………やはり主人公の鈍さは解消されないんですね

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