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レベル100の引きこもり魔法使いが防御魔法を極めてたら  作者: 四季 恋桜
魔法使いが存在しなかったやる気を出して旅に出るまで
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黒雲

とりあえず今日はこれで…。あまりにも頑張りすぎて中指が痙攣してきました。(ほんとです…。)


とりあえず、100000文字を越えるまではこのくらいのペースを保ちたいですが、辛いので1日に1、2話ペースでいきたいと思います

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…。」


 なんとかギルドまでたどり着いた。いつからか追ってくる熊もいなくなっていた。


「ほんとうに散々だ…。」

「あら?もうお帰りに?」


  休んでいると受付嬢がやって来た。


「はい!!ノルマ達成してますね♪では報酬を。」


  契約書を渡すと受付嬢は笑顔で答える。倒したコボルトは魔法で契約書に数が記録される。


  報酬と言って渡されたのは1200ゴールド。コボルト1匹で400ゴールドの換算だ。


「それよりどうしたんですか?そんなに息荒立てて?」

「そ、それが…!!新種の魔物が!!」


 ミルスの話を聞くと受付嬢は納得したように

「あぁ、森の王様ですね。」

「森の…王様…!?」


  知ってたのかこの女?


「なぜかわからないけど人を追いかけるんですよね。」

「それじゃ、どうしてあんなに盛ってたんですか!?」

「あら?盛ってたの?それはたまたまよ。いつもはそんな報告受けないわ。」


  何も言えない。いくら可能性はあると言えどシーナの話を信じた俺がバカだった。とりあえず地獄を見た。しばらくクエストなんてやりたくない。やる気がゼロになった。


「…帰ろう…。」




  翌日。今日は全員でミルスの訓練をすることにした。森に行ったらまたあれと遭遇するから町の周辺で行っていた。初級魔法は全て叩き込んであるから、後はただ経験するのみだ。


 今回の訓練は1対1で行った。重要視するのは、相手の攻撃をしっかり避けることができて、なおかつその隙に魔法を当てられるかだ。ミルスの相手役にはルナに頼んだ。近接攻撃の武道家が相手なら、目で動きを追うことが可能だし、武器を使う職に比べると大きな怪我をすることは無い。


「そおりゃっ!!」

「きゃっ…!!危ない…、『フレイム』!!」


 やはりミルスは才能の塊だ。ルナの止まない攻撃を避けつつ、魔法を詠唱する。あれでまだ、冒険者になって1ヶ月も経っていないなんて…。自分の胸がえぐられるように痛い。才能の差を痛感する…。


「よし!!そこまで!!」

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…。」


 かなりの体力を消耗しているだろう。ミルスは杖に体重をのせて座り込んでしまう。それに対してルナはまだまだという感じで体を伸ばした。


「今日はここまでにしよう…。魔法の体力消費を侮ったらダメだからね。」

「うーん♪いいよミルスちゃん!!身のこなしが軽いね!!」


  満足げな顔でミルスを誉めるルナ。しかしミルスの呼吸はなかなか整わず、喋るのがつらそうだ。


「あ…、ありがとう…ハァッ…ございます…ハァッ…ハァッ…。」


  そんなミルスの姿を見てか一番動いてはならない人物が動いてしまった。


「ミルミル辛そうだね!!待ってて♪今僕が口から息を送り込んで上げるから☆」


 何をいっているんだ。


「…え!?ハァッ…け、結構です!!ハァッ…。」

「照れないで♪ねー?あいたっ!?」


 じりじりとミルスに迫る変態にチョップをくらわす。


「止めなさい。とりあえず僕は先に帰るよ。久しぶりに眠い…。」


  大きなあくびが出た。


「シーナ、ルナ。ミルスを頼むよ。」

「ガッテンです!!」

「モチ~♪」


 正直この2人は不安だ。変態とバカに任せていいのかと思うが、一応平均レベルはおよそ80だ。大丈夫だろう。


 アルトの姿が見えなくなるまで、ミルスは必死に深呼吸を繰り返していた。


「ハァーーー…。疲れた…。」


 こんなに疲れたのは人生で初めてだ。


「それじゃそろそろ行こうか♪」

「ちょっと待ってよルナぴょん。せっかく女子3人だけなんだよ?少しくらい町をぶらぶらして行こうよ~。」


 覆い被さる形でルナにシーナが乗っかる。


「いいですね。私も近々町を見てみたいと思ってました。」


  ミルスは少しよろけたものの立ち上がった。


「ん~、じゃあそうしょっか!!」





 少女3人はそのまま町を歩いた。


 そしてたくさんのところを見た。この町には飽きないくらいたくさんの場所がある。


 例えば鍛冶屋。


 ここでは女の若頭を中心とする職人たちが、冒険者の武器や装備を作ってくれる。職人たちの見た目はまるで極道の一派みたいだが、仕事には常に命をかけるほど真面目なのだ。そのため完成する武具は最高の物ができあがる。


 闘技場。


  ここでは定められたルールのもと、冒険者が実力を競う所である。観客はその勇姿を見るためにいつも満席となる。複数の種目があって、パーティー単位での戦いもできれば、召喚獣同士の戦いも可能だ。勝ち続けるものは富と名誉を得ることができる。




 他にも楽しい場所はたくさんある。


 それらを回りながらミルス達は甘味処で休憩していた。


「はーい♪ご注文の『ぶり焼き』でーす!!」


  猫耳の少女が持ってきたのは『たい焼き』ならぬ『ぶり焼き』だった。見た目的には全く違いがない。


「わーい♪いっただきマイケル♪」


 ぶり焼きを目の前にして誰よりも早くかぶりついたのがシーナだった。


「んんぅぅぅ!!僕の発電所がメルトダウンしちゃうくらい美味しい♡」


  無表情なのと、いってる意味こそわからないが、おそらくとてつもなく美味しいのが声からわかる。


「それじゃいただきます。」


 ルナさんは武道家らしく、拳と手のひらを合わせながら挨拶し、かぶりつく。


「甘い~!!!!」


 まるで子供のように足をばたつかせながらはしゃぐ。


「では私も…いただきます…。」


 私も初めて口にするぶり焼きに少し恐れながらもかぶりついた。


「んん!?美味しい!!」


 とてつもなく美味だった。


  外はサクサクで中はもっちり。できたてでほっかほかだ。餡も甘すぎず薄すぎず、美味しい。


 気がつくと私は恍惚の表情でぶり焼きを頬張っていた。


「ミルミル可愛い!!おかわりでミルミル食べてあげる♡」


 早くも食べ終わったシーナがミルスに抱きついてペロペロするが、ミルスには目の前のぶり焼きしか見えていなかった。


「本当に美味しいですね♪アルトさんにも買っていきましょうか?」

「そうですね!!師匠もきっと喜びます♪」


 アルトの喜ぶ顔を思い浮かべながらミルスがぶり焼きをかじる。




『し、師匠!!お、お土産に…、あ、ああ、甘いものを買ってきました!!』

『本当かい!?ありがとうミルス!!…うん!!美味しいよ!!』

『よかったです!お口にあって。』

『ミルスは優しいね。きっといいお嫁さんになれるよ。』

『そ、そんな!!ただお土産を買ってきただけでそこまで…!!///』

『…ミルス。君は僕の者だ。』

『師匠………。』




 という妄想をしながらぶり焼きの尻尾を食べる。


「フフフ…。………っ!?」


 その時だった。ルナは異変に気づいた。それは

「なんでしょうか!?あの雲!!」


  ルナが店の人や道の人にも聞こえるような大きな声で、遠くの空をを指差し叫んだ。


「…黒い…雲!?」


  シーナが立ち上がり目を凝らす。


「いや違う…。」


 ルナはその雲をじっと見つめる。


「っ!!魔物!!」


 こちらに向かってくる黒い雲、しかしその正体は魔物の群れだった。


『ビー!!ビー!!ビー!!ビー!!町の冒険者に継ぎます、町の冒険者に継ぎます。ただいま北の空からワイバーンの群れが接近中。その数はおよそ9000と思われます。冒険者は全員速やかに町の北に集まってください。繰り返します…』


  サイレンとアナウンスが至るところで流れている。それを聞いて冒険者は一声に北へ向かい始めた。


「ミルミル行くよっ!!」


 シーナが手を引っ張り走る。このときのミルスは、たぶんいつもと何も変わらないんだろうが、少し頼もしかった。


 走っている途中でミルスは大切なことに気づく。


「待って!!アルト師匠は!?」


 もし訓練から家に帰っていたなら寝ているはず。


「そうだ!!たぶん家にいるはず!!今ならまだ間に合う!!」


 ルナはそう言ってミルスとシーナを掴むと、驚異のジャンプ力で屋根を渡る。




「アルト師匠!!」


 ミルスは家につくなりドアを開け師匠の名を呼ぶ。しかし誰もいなかった。


「っ!?アルト師匠!!どこにいるんですか!?」


  ベッドももぬけの殻だ。


「ムムム…感じるぞ…。アルトきゅんの香りだ…。」


  鼻を使いながら、シーナがアルトのベッドにダイブする。


「んんん!!これはアルトきゅんの温もりか!!さっきまではここにいたみたいだよ!!」

「もしかしたら既に町の北にいるのかもしれません!!ここにいるよりも向かいましょう!!」


 アルトがいないだけでミルスはすごく不安だった。

 そんなミルスの不安をより掻き立てるようにサイレンは鳴り続く。

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