クリスマス編その壱
高2の冬休み、クリスマスイブの前日である12月23日、朝から男友達と遊びに行った帰り、自宅近くの最寄り駅についた俺は雨に降られていた。
改札を出た俺は、濡れて困る物は特に無く、家が駅からそう遠くなかった為、走って帰ることにした。
後少しで家という所で、家への近道である公園を通ろうとしたとき、ふと公園の隅にダンボール箱があるのが目に入った。
それがなんとなく気になり、近づいて行くと、そこは木の陰になっていて全く濡れていないダンボール箱があり、その箱には『拾って下さい!』という文字が記されていた。
中を覗いてみると
「うわぁ……今時こんなのやる奴 まだいるんだな……けど、コイ ツは……」
その中身は予想はしていたものとは少し異なっていた。
中で小さく丸まりうずくまっていたのは金色の綺麗な毛並みをした子ぎつねだった。
よく見ると子ぎつねの首には何か数珠のようなものが掛けられており、どことなく不思議な雰囲気だった。
子ぎつねは物音に気付き起きたのか、顔をこちらに向け『だれ?』とでも言うかのように首をコテンと傾げていた
動物好きな俺は放っておく事が出来ず家へと連れて帰る事にした。
そうときまれば早速子ぎつねが濡れないようにスカスカの鞄の中に入れ、大急ぎで走って帰った。
しかし、子ぎつねは鞄から身を乗り出していたようで、結局一人と一匹はずぶ濡れになりながら無事帰宅することとなった。
ちなみに実家が学校から遠かった為、両親が俺の為に学校と駅に程よく近いマンションに部屋を借りてくれている。余談だがペットOKだ。
びしょ濡れになった俺は同じくびしょ濡れの子ぎつねを抱え風呂場に直行した。
風呂から上がり、子ぎつねをタオルで拭いていると、ふと首元の数珠の様なものが目に付いた。
色は半透明の紫色で濃い色と薄い色が交互に連なっている。
綺麗だと思い、しばらく見とれていると、子ぎつねが『おなかすいた……』とでも言うようにこちらを見ながら切なげに鳴いた。
その可愛さに思わずクスリと笑い子ぎつねを抱えてキッチンへと向かった。
冷蔵庫からミルクを取り出し、深めの皿に注いで電子レンジで温める。
その間に俺はもう一度冷蔵庫を開け油揚げを取り出しておく。
とそこで油揚げに気付いたのか、子ぎつねが俺の注意を引くようにズボンの裾をしがみつくように引っ張っていた。
「わかったわかった、あげるから少し待ってな」
『わかった!』とでも言うように元気に一鳴きすると大人しくお座りの状態で待ち始めた。
俺は油揚げを子ぎつねが食べやすいようにある程度の大きさに切り皿に盛ろうとした、すると電子レンジのチンッという軽快な音がなり牛乳が温まった事を知らせる。
俺はレンジから温まったミルクを取り出し、少し冷ますようにゆっくりとかき混ぜ、油揚げを別の皿に盛り、リビングに持って行く。
リビングに向かおうとするともうすぐ食べられることに気付いたのか、尻尾を振りながら俺の後ろをトテトテとついて来た。
リビングに入り子ぎつねの前に二つの皿を置いた、子ぎつねは俺に伺いを立てるように鳴くので
「ほら、いっぱい食べな」
そう言うと油揚げに真っ先に飛び付いた。
油揚げもミルクも綺麗に平らげると、けぷっ、と小さくゲップをすると、お腹がいっぱいになりウトウトとしていたので空の衣装ケースに毛布を敷き詰め、そこに子ぎつねを入れてやった、すると暖かさが止めとなったのかすやすやと眠りについた。
子ぎつねが眠りについた俺は、自分の夜ご飯を簡単に済ませ、布団へ入った、眠る前に、名前を考えないといけないな、と薄れてゆく意識の中でそう思った。
朝、顔がやけにくすぐったく、気になり目が覚めると目の前にはモフモフの毛玉、いや子ぎつねが俺の顔を舐め回していた。
「おい、ちょっ、やめっ」
とりあえず子ぎつねを両手で抱え上げると、ベッドから抜け出した。
リビングに行き子ぎつねを下ろして朝食の準備を始めた。
すると足元をカリカリとひっかくので、足元に目を向けると
『ごはん!』と、言うようにキラキラと目を輝かせ、こちらを見上げていた。
俺はほっこりとした気持ちになりながら、牛乳を火にかけ、沸騰したら牛乳を皿に移し冷ましておく。
冷ましている間にフライパンに少し油をたらし広げながら温める、そして薄切りのベーコンを焼いていく。
カリッとするまで焼いたら皿に移し、そのまま同じフライパンで卵を目玉焼きにしていく。
その間に冷蔵庫からサラダミックスを出し皿に盛り付けておく、目玉焼きが出来たら先程のベーコンの上に乗せて、茶碗に米をよそったら、リビングに持って行く。
牛乳もいい感じに冷めていたので一緒に運び1人と1匹で朝食を開始した。
いかがでしたでしょうか?
ほのぼのとしていただけたら幸いです!
正直、クリスマスで終わらせるつもりなのですがオチがつきにくそうだと正月に持ち込もうかと考えてます…
まぁ、どうぞ暖かく見守って下さい!