38 森の攻防 6
集落の前で水竜がじっと空を見上げている。藍色の東の空が徐々に色が抜け始め、夜明けが近いとわかる。
「ちょっと眠い」
「これが終わったらもう一度寝なさい。少しくらい寝坊してもセリエもゴゼロも文句は言わないわ」
「準備が終わったら、そうさせもらうよー」
裕次郎とドライアドの小声を聞きながら水竜は手を天にかざし、すぐに下ろした。そして二人に振り返る。
「これでいい。夜が明けて少ししたら雨雲が広がっているだろう」
「お疲れ様。体の調子はどう?」
「少し疲れたが、寝込むほどではないさ」
「お疲れ様ー。あとはこっちで動くよ。十分休んで」
「お前さんも休息が必要そうだが」
体力には自信があるからと返し、麻痺薬などの準備に家に戻ろうとして止まる。聞きたいことがあったのを思い出した。
「ちょっと聞きたいんだけど、魔王が暴走したって聞いたことある? 自身の力を制御できなくなるらしいんだ」
「ないな。そのようなことは一度もなかった。人に討たれたという話は何度か聞いたが、暴走したという話は一度も聞いたことはない」
「知らないというわけじゃなくて?」
「気まぐれに人の町に行ったことがある。先々代魔王が暴れていた時のことだ。その時に魔王についての話を聞いたことがあるのだ。魔王の死に方は二通り、好き勝手暴れて討たれるか、寿命で死ぬか。暴れ方も自意識を失ってのものは記録に残っていないらしいと言っていたな」
人の町に行ったなど今では忌々しい記憶でしかない。苦い表情で聞いたことを語る。
水竜に礼を言って家に向かう。水竜のことが全面的に正しいとはいえないが、暴走はない可能性もでてきた。次ハインドや賢狸に会った時忘れずに話しを聞こうと心に刻み、さらなる情報収集を心がける。
袋詰めした麻痺薬を持って、セリエと一緒に朝食を食べてからヒアの元に行く。その時に東の空に黒い雲が漂い始めているのを見た。
「これを雨雲に満遍なく撒いてほしいんだ」
「わかりました。なにかほかにすることはあります?」
「いや、これだけでいいよ。頼んだ」
頷いたヒアは薬を飲んで、袋を足でしっかり掴むと飛び立っていく。それを見送った裕次郎は家に戻る。
「お帰りー」
「ウォフ」
朝食を食べていたマカベルとヴァインが食べることを止めて、声をかけてくる。それにただいまと返し、マカベルの隣に座りそのままテーブルに突っ伏した。
「ちょっと寝るよ。気を使って静かにしなくてもいいから」
そう言いひらひらと手を振る。
一緒に朝食を食べている時に睡眠時間が短かったと聞いているセリエは、それをマカベルに伝えなるべく静かにしようと頷きあう。
マカベルが食べ終わる頃には寝息を立ていて、セリエとマカベルとヴァインは静かに食器を洗い、家を出る。
裕次郎はそのまま約二時間後に起きた。セリエたちがちょうど出発する頃で、雨が降っているか見に行くと、セリエたちの背を見送る形となった。その中にヴァインの姿はない。フォーンから集落内警備の話を聞いて残ったのだ。
「ユージローは今日も出かけない?」
少し期待した目でマカベルは隣に立つ裕次郎を見上げる。マカベルの頭に手を置いて、ぐりぐりと撫でる。
「いや、もう少ししたら出るよ。何日も休める余裕はないからねー。ここからじゃ雨が降ってるかはわからないか。雨雲を呼び出した水竜に聞けばわかるかも」
マカベルと一緒に集落に戻り、その足で水竜のいる家に入る。
寝そべった水竜の腹の上にシュピニアがいて、その状態でドライアドと話していた。
マカベルは水竜のことを怖い存在だと聞いていたので、裕次郎の背に隠れている。
「もう起きたの。もう少し寝ていてもよかったんじゃない?」
「いや十分。ちょっと聞きたいことがあって来たんだ」
ドライアドが「私に?」と首を傾げた。
「水竜に」
「なんだ?」
「呼んだ雨雲から雨が降ってるかわかるかなと思って。離れているけど、わかる?」
「少し待て」
そう言うと目を閉じた。水がどこでどのように動いているかはわかる。その感覚を陣に向ける。
「降っているようだな」
「成功したかな? 雨雲に麻痺薬をばら撒いてもらったんだけど、雨にそういったものが含まれているかはどう?」
「それは無理だ」
身近にある水ならともかく、これだけ離れていると体調が万全でも無理だ。
「そっか。雨が降ったことだけでもわかってよかった。俺も出るかな」
「もう行くの?」
マカベルがぎゅっと裕次郎の服を握る。
「頑張らないとね」
「そやつは連れて行かないのか? 今の私よりも戦力になるだろう?」
水竜がマカベルを見ながら言う。力の種類はわからないが、力の大きさ不穏な気配はわかる。その視線から逃れるように再び裕次郎の背に隠れた。
「マカベルは争いごと得意じゃないから。それに戦い始めた時は頑張ってもらったんだ」
「争いが苦手でも役立つならば、連れて行った方がいいと思うが」
「かもしれなけど、この子が活発に動くと勇者も活発に動くから。どうしようもない時には出てもらうよ。その時まで奥の手として静かに過ごしてもらう」
裕次郎は準備のため家に戻り、マカベルはフォーンの手伝いに向かった。
雨を浴びた兵の動きはやや鈍く、ゴブリンたちにとって戦いやすかった。久々に多くの肉を食べることができ、ストレスが解消された様子だった。
兵たちはこの体の鈍さを薬だとは気づいてはいなかった。強力な痺れはなかったため、日々の疲れと勘違いしたのだ。このため早めに引き上げる者が多かった。
ゴブリンたちもあまり疲れずに村に戻り、体力の温存ができた。今日の死者数はゼロだった。この結果を見て裕次郎は今後もやることに決めた。三度目からはさすがに怪しまれるだろうが、雨を避けるため出発を遅らせることも可能なため、繰り返す価値はありそうだと思えた。
この日、一番大きな怪我をしたのはゴゼロだった。運悪くロンタたちと出遭ったのだ。そこで戦いとなり、回復薬を使用してなんとか引き分けにすることができた。この引き分けはゴゼロにとって運がよかった。四人揃っての連携は、ゴゼロと互角だった。麻痺薬に気づいて回復されていたら、負けていたかもしれない。次からは四人を一度に相手しないか、速攻で一人倒して余裕を持たせることに決めた。
進攻が始まり二週間。軍の総数はここに来た時から減っていた。入って来た薬を使い動かせるようになった重傷者を後方に帰し、手当てのかいなく死んだ者の数と新しく入って来た兵の数がつりあわなかった。
士気という面から見ると、そう悪いものではなかった。奇襲を話にだけ聞いていて経験していないので、物怖じしていない者がいる。そういった者につられて元気になる者や送られてきた酒で気分を上げる者もいて、どんどん上向きになっていた。
それにストップがかけられたのは、補給部隊壊滅の知らせを受けた時だ。
「吸血鬼が群で襲ってきたと?」
「はい」
以前来たジレーアとは別の部隊長が頷く。吸血鬼に襲われ逃げ延びることができた兵だ。補給基地に戻るより、こちらの方が近いので生き延びた部隊は全員こちらに来ている。
「たしか四十年前も同じことがあったらしいな」
ビュートはなにかを思い出すように半眼となる。
「そうなのですか?」
「ああ、当時の戦いについて書かれた資料を見たことがあってな。どこからともなく現れた吸血鬼に襲われ血を吸い尽くされたらしいな」
「対処はどのように?」
「補給線を複数用意し、護衛を強化したと。だがそれは本国にわりと近かったからできることだ。ここは遠く離れていて連絡も即座には行えない」
「連絡を出しても、その使者が襲われる可能性がありますね」
「だな。せっかく上手くいき始めたと思ったのになぁ。また物資の節約しないといけないのか。頭痛がするよ、まったく」
こめかみに指を持っていき押し当てる。
「吸血鬼の討伐は行われなかったのですか?」
「やったらしい。わりと多くの吸血鬼を殺すことができたが、こちらの被害も大きかったんだと。基本的にあっちの方が強いからな」
「それは実感しました」
奇襲されたせいもあるのだろうが、一方的と言ってもいい展開だった。
「こっちから討伐に出すなら、十人二十人じゃなくて百人単位で出さないと駄目だろうな。どこにいるかわからないし、食料とかも多く持たせないと駄目だろうし、節約しないと駄目だと言ったばかりなのに出費を考えないといかんとはなぁ」
「心中お察しします」
ビュートは部隊長を休ませるため下がらせ、別の兵を呼ぶ。
「なにか御用で?」
「蚊の親戚を殺すため兵を出す。希望者を集めてくれ。参加だけで角金貨一枚。一体殺すごとに追加で角金貨一枚だ。襲いかかってきたやつらは十人ほどいたと言っていたな。それが全部とは思えないし、最低でも百人はほしい」
「吸血鬼討伐でいいんですよね?」
話の流れで蚊の親戚が吸血鬼を指しているとわかったが、確認のため聞く。
「おう」
「わかりました」
兵は一礼し、仲間と協力して臨時討伐を傭兵たちに知らせていった。
集まったのは約百五十人で、十日分の食料を持たせて出発させた。
この討伐隊が囮の役割も果たし、補給部隊全滅という事態は避けられた。吸血鬼の数が三十を超えていたので、討伐隊では手が足りず被害がなくなることはなかったが。
物資に関しては節約していくしかなくなった。
補給部隊が吸血鬼に襲われ一週間が経った。この間にも集落の人数がほんの少しずつ減っていき、暗い雰囲気が漂うようになっている。
森の進攻はさらに進み、ついに集落が兵の標的となった。そこに裕次郎やマカベルがいると知っていたわけではないが、ほかの場所よりも守りが堅く、文明が感じられる場所でそこにいるのではと見当をつけて集中攻撃が決まったのだ。すぐに裕次郎たちがそこから出ている姿が確認され、本格的に攻めることが決まった。
続々と集まり始めた兵に、ゴブリンたちを外に出すことは中止にして、魔法や射撃といった遠距離攻撃で対応していくことになる。
兵たちからも射撃があり、それによって運悪く心臓や頭部を貫かれる者もいて回復薬ではどうにもできないことがあった。
「今日も頑張っていこー」
気合の抜けた裕次郎の声がフォクシンたちの間を抜けていく。緊迫した様子を出すとフォクシンたちが怯えるので、余裕があるように言っているのだ。
それに鳴き声が返ってきて、それぞれバリスタやクロスボウを準備していく。彼らは基本的に正面に対応していた。
背面のフォローは裕次郎とゴゼロが出て行っている。セリエは前面でフォクシンたちの指揮を取っている。マカベルはクロスボウの矢を運ぶ手伝いをしたりして、セリエのそばで過ごすようになっている。
「射撃止め!」
セリエの声が響き、フォクシンたちは矢を撃つことを止めた。
セリエは今裕次郎の持っていたタワーシールドを塀の上に立てて、その影から周囲を見て矢を射ながら指揮を取っている。
眼下にはクロスボウに貫かれ、倒れた兵が仲間に回収されている。
少し休憩取れるかと思ったセリエは、山を登ってくるロンタたちの姿を捉えた。矢を再度飛ばすよう命じたが、ロンタたちの防御を貫くことはできなかった。バリスタはさすがに警戒しているようで、杭が集落から飛んだ瞬間、避けようとその場から即離れる。
「まずいわね」
セリエ一人で勇者四人を相手はできない。
少し考えて、そばにいたフォクシンにマカベルを呼んできてもらうことにした。会話はできないが、マカベルの名前は知っているので、名前を呼べば連れてきてもらえるようになっている。
「マカベルの異能で勇者たちが退けばいいんだけど。駄目なら突っ込んで時間稼いでいるうちに、ユージローたちを呼んできてもらうしかないか」
ヴァインにも使いを出して、外に出ている裕次郎への連絡を頼むことにする。
迫るロンタたちを見て、乗り切れるかと持っている薬を握り締めた。
クロウボウの矢を運んでいたマカベルにフォクシンが駆け寄る。フォクシンが塀を指差したことでセリエが呼んでいるとわかり、一緒に集落正面の塀に向かう。
「呼んだ?」
「マカベルには悪い知らせだと思う。勇者が接近してる」
「……勇者」
塀から顔を出し、セリエが指差した方角を見ると勇者たちがいた。
マカベルの表情に怯えが現れ、セリエの手を強く握る。
「あの人たちの前に出ろとは言わない。ただここから力を放出できる? それで退いてくれればよし、動きが鈍れば私が足止めに出る。頼める?」
「でもっ勇者と戦うって危ないよ!」
「わかってる。でも誰かが相手しないとね。ヴァインにユージローを呼びに行ってもらうから、時間稼ぎを目的にすればいいし」
怪我もするだろうが、無傷であの四人を抑えるのが無理な話だ。ある程度の怪我は覚悟している。
「……ん、やってみる」
マカベルはもう少し身を乗り出して、異能が届く距離にいることを確認して、収束の緩い力を放出する。以前感じた力にロンタたちはマカベルがいることを確信した。薬で耐え切れるロンタたちは駆け足で前進し始める。そこに今度は収束した力を放出していく。
薬のガードを貫いてくるマカベルの力にロンタたちは驚く。このままではマカベルの前に立たずして倒れることになると、速度を速めた。
「退かないか……出る!」
「気をつけてね」
「頑張ってみるわ」
薬をいっき飲みして、マカベルの頭を一撫でしたセリエは塀を飛び越え出て行った。
「これ以上進むのは止めてもらえるかしら」
「そこをどくんだ!」
「聞けない相談ね!」
振り下ろされたロンタの剣を、セリエは弾いて言い返した。
麻痺プラス異能による体調不良で、ロンタたちの動きは鈍っておりセリエは負傷しながらも四人を相手に足止めを成功させる。
「この場に薬師やゴブリンがきたら不利だ! ここは俺たちがどうにか抑えるっロンタお前は魔王を討て!」
無謀ともいえる突撃をしながらオロスが言う。カルマンドとレラも続き、セリエが斬りつけても離れようとしない。
「このっ離れなさい!」
「さっきの言葉はそのまま返すわ。聞けない相談ってやつをね」
血を流しながらも手を止めないレラたちの相手でセリエは精一杯となり、その間にロンタは塀へと走る。
セリエを見守っていたマカベルは、勇者が迫ることに恐怖から体を硬くして動けずにいる。脳裏に剣で斬りつけられたことが蘇り、目の端に涙が浮かぶ。
マカベルが動けずにいることを確認したロンタが飛び上がり、剣を振り下ろそうと両手で持つ。
高く跳ねて落下が始まったところで、セリエもオロスたちもマカベルが切り裂かれたところを脳裏に描く。
その映像を振り払い、セリエは裕次郎やゴゼロの気配を必死に探るが近くには感じられず、誰も止める者がいないと悟る。オロスたちを振り払っても間に合わず、駄目かと思いマカベルの名を呼んだその時、フォクシンたちの揃った声が響き、大きな火球がロンタを襲った。
直径四メートル弱の炎に巻き込まれて、ロンタはオロスたちよりも後方に吹っ飛ばされた。カルマンドとレラがオロスの無事を確かめるため、セリエから離れる。
「……誰が? いやフォクシンたちなんでしょうけど」
立ち向かってくるオロスの槍をさばきつつセリエは考える。
あのような規模の炎を放つことはできなかったはずだ。というか森の民でも放てず、協力魔法クラスの威力だ。
「あ、協力魔法? 練習中って言ってたけど」
「協力魔法? お前たちのほかに平原の民がいるのか?」
漏れでたセリエの呟きにオロスが反応する。それにセリエは反応を返さず、ここでオロスを殺しておこうと攻めを強める。
そこにカルマンドが加勢に現れ、オロスは深手のみで退くことができた。
「なんとかなったわね」
大きく息を吐いて、去っていくロンタたちを見る。
退くロンタたちの援護なのか、森から矢や魔法が飛んでくる。セリエは急いでその場から離れて塀に戻る。マカベルのそばには倒れこんだフォクシンが十匹いた。
殺されかけたことで震えるマカベルを抱いて、セリエはフォクシンたちに射撃準備を命じた。次々と矢が飛び、森の中へ落ちていく。それで飛んできていた魔法は止まる。
「しのげたか。あの炎のこと聞かないとね」
マカベルを抱いたまま、近くにいたフォクシンにフォーンを呼んできてもらうように頼む。
フォーンを通じて聞いた話では、フォクシンたちなりに開発した協力魔法で間違いないらしい。ただしまだ未完成で、一回使うと気絶するらしい。倒れていたフォクシンたちがあの協力魔法を使ったのだろう。
詳しく話を聞いていくと、協力魔法とは違いにあることがわかった。複数人で魔法を使うという部分は同じなのだが、魔法の効果や人数制限で違う。
フォクシンの協力魔法は、十匹でないと使えない。それより下では発動せず、それより上だと暴発するのだ。そして魔法も協力魔法のように独自のものではなく、炎の矢や氷の飛礫などに即した効果を出す。さきほどは炎の矢を使ったのだ。
このことから魔法を強化する技術といった方がいいかもしれない。氷の飛礫を例とするなら、バリスタで使っている杭のような氷柱が何本も飛ぶ。風の魔法ならば、竜巻級に勢いの強い風があらゆるものを吹き飛ばすだろう。
これは平原の民にとって魅力的な魔法だ。平原の民やフォクシンでは効果が低くて使いづらい治癒魔法も、回復薬並みの効果を発揮するかもしれないのだ。喉から手がでるほどほしい魔法だろう。
「すごく助かったって伝えてくれる?」
「わかった」
フォーンが頷き伝えると、フォクシンたちは嬉しげに声を上げた。
「なんの騒ぎ?」
「あ、おかえり」
ヴァインに連れられて戻ってきた裕次郎が、鳴いているフォクシンたちを不思議そうな顔で見ている。
そんな裕次郎にここであったことを話す。
ロンタがここにきてマカベルを殺しかけたと聞いて、裕次郎は背筋が冷えた。
「マカベルもセリエも無事でよかったっ」
「もう駄目かと思ったわ。フォクシンたちには本当に感謝してる」
震え続けるマカベルのフォローのため、裕次郎は集落に残る。かわりにヴァインが出ているので多少はなんとかなるだろうと考える。二時間ほど経ち、落ち着いたことを確認し裕次郎は背面の見回りに出て行った。
日が暮れると兵たちは退いていく。集落を攻め始めた初日はその場に残って野営の準備も始めていたが、暗い中集落近くに止まるなど、裕次郎たちにとって狩ってくれと言っているようなものだった。暴れて薙ぎ払い、止まっていた兵を壊滅させた。これが原因で兵たちは森の中やそばで野営することは止めた。偵察や見張りとして少人数が残ることもあるが、ヴァインが見つけ狩っていった。
兵が退いた夜のうちに、ゴブリンたちと協力し使った杭や矢を回収する。無駄遣いできないのだ、こういった回収はできるだけする。ついでにゴゼロに一本木を切り倒してもらい、使えなくなった矢の補充もする。
翌日もその次の日も、同じような攻防が続く。兵が近寄るとバリスタとクロスボウで対応し、時々マカベルに力を使ってもらう。勇者がくることもあったが、フォクシンたちの協力魔法で氷の飛礫や突風を強化して足止めしたところを、収束を強めた異能で他の兵ごと薙ぎ払うといったことで撃退していた。おかげで異能の影響を受けた麓の森は荒地へと変わっている。
後方でも争いはあった。そっちでは裕次郎が出ていることを知ったツアが姿を見せるようになり苦労していた。裕次郎はツアが出てくると躊躇わずに天下無双を使い、投げとばしてまともに戦おうとはしなかった。まともに組み合えば、捕まりそうな気がしている。天下無双使用状態ならばそうでもないが、ツアは強いという印象が慎重すぎる対応を取らせていた。
進展がない状態で、両陣営ともじりじりと消耗していく。裕次郎たちはアルマネイドがいついて食料消耗が早まり、軍側は物資運送状態が改善されずにいた。
「撤退も視野に入れるか? 補給もままならないなら、士気は低下するばかりだしな」
溜息を吐きながらビュートが言う。国境を出発した時はここまで苦戦するとは思っていなかっただけに気が重い。
ビュートの隣にいる騎士団副団長も同じ思いだが、あえて逆のことを口に出す。
「王が勧めている遠征でしょう? 勝手に戻って大丈夫でしょうか?」
「と言ってもな、普通ならこの状況は帰るに値することだと思うんだが」
「まあ、それはそうなんですが」
軍側の被害は集落を攻め始めてから上がりだした。あの規模の集落は数で押しつぶせるのだが、実行しようと数が集まるとマカベルの異能の餌食となって寝込む者が続出した。一で万を圧倒できる歴代最高位の魔王の本領がここにきて発揮されだしていた。
「治療が必要じゃなく寝れば大丈夫とはいえ、一日休めばいいというわけでもないしな」
「勇者殿たちが魔王を倒せればいいんですが、薬がほとんど無意味だという話ですからね」
「あの時に殺せなかったのが痛かったな」
後一歩まで迫ったことを報告で聞いている。そのまま斬り捨てていれば、今頃は優勢でいられただろう。
「……あれだな、いっきに攻めてみるか。全方位から昼夜問わず」
「わりと賭けですよね。一箇所に集めると魔王にあっという間にやられますし」
「このまま攻めていてもやられそうだしな。魔王は一人だ、全部に対応は難しいだろう。その隙をつけてあそこを蹂躙、できるといいが」
裕次郎やゴゼロやセリエの存在が言い切れなくさせる。
体調を整えるため、今日明日の進攻はなしと皆に知らせる。このところ節約していた食料なども出すことにした。
副団長と部下が知らせに出て行き、一人残ったビュートは自身も出るため武具の手入れを始める。
「失敗すればクビかねぇ」
全滅するまでは進むつもりはなく、一当てして無理だと判断したら国に戻るつもりだった。その場合はクビもしくは投獄だろうなと考えている。さすがに処刑はないはずだ、ないといいなと思いつつ気合を入れる。
ビュートや兵の不安を隠すように月が雲に隠れる。心の状態を示すように、いつまで経っても月が雲からでてくることはなかった。
一日経ち、兵たちの動きが止まり久しぶりに静かな時間が森に戻ってきた。それに安堵しているのは動物や知恵の低い魔物だ。
裕次郎とゴゼロはぼろくなり始めた塀の上に立ち、人影のない森を見ている。
「狙いはなんだと思う?」
「さてナ。あまりいい気ガしないのハたしかだ」
「以前の戦いでこういうことはあった?」
「戦場全部のことヲ知っているわけデはないから、なんとも言えン」
「そっか。警戒はしとこう。こちらとしても休息できるのは助かるしね。爺さん、また木を取ってきてもらっていい?」
「わかっタ」
ゴゼロは頷き、ゴブリンを連れて山を下りていく。
裕次郎も薬の材料を集めるため、ヴァインと一緒に集落を出た。ヴァインは散歩がわりだ。一緒にマカベルもついてきて、ヴァインの背に乗っている。なんてことのない雑談をしながら、材料を集めていく。久々の落ち着いた状況にマカベルも嬉しそうにしている。
家に戻ると、セリエが最近出来ていなかった手の込んだ料理を作って待っていた。洋風肉じゃがといった感じの料理だ。
「やっぱりこういったのんびりした雰囲気がいいよね」
「そうね。荒事には慣れているけど、好きってわけじゃないしね」
「おかわり!」
少なめに盛っていた料理をマカベルはぺろりと平らげ、器を出す。
「はいはい。食が少しずつ増えてきてる、いいことよね」
「だねぇ。俺もおかわり」
フォーンとヴァインもおかわりといったふうに器を押す。
作ったものを美味しく食べてくれることに、セリエは上機嫌となる。
父と母と子といった家族団欒にも見える食事が終わり、食後に薬を作りながら雑談をして過ごしていった。
そして翌日、偵察に空へと上がったヒアがいつものように動く兵を見る。その動き方が森全体を包囲するようなものではなく、明らかに一箇所から侵入するということもわかった。荷物を多めに持っていることもわかった。
「全力でここを落としにきたってことでいいのかなー」
「私もそれに同意だわ」
ゴゼロやドライアドたちも頷く。
正念場だと、裕次郎は気合を入れる。
フォクシンやゴブリンたちを集めて、現状を説明する。
「はっきり言って苦しくなる。それを乗り越えるためにも皆の協力が必要だ! ここで相手の数を減らせば減らすだけ今後が楽になるはず! 押し返し、追い払い、森から追い出し、国へ叩き返すぞ! 気合入れてけっ!」
通訳が必要なので即座返事が返ってくることはないが、皆大声で返事を返してくる。ここが踏ん張りどころだと皆もわかったのだろう。
配置に関して少し話した後、それぞれの担当場に散っていく。
マカベルは相変わらず正面にいて、ドライアドがサポートについている。クロスボウやバリスタは道以外へと照準を合わせ、背後は裕次郎たちが遊撃に出る。外に出ることを控えているゴブリンたちは物を運んだり、バリスタの発射準備を手伝うことになっている。余ったフォクシンは大急ぎで矢を作ることになった。背後は人数の少なさから防御が低いとわかりきっている。そこで裕次郎は水竜に頼んで背後の山の麓に水溜りを作ってもらい、麻痺霧をしかけておいた。以前山と森の民の聖地で使った時、高い位置には霧が届いていないことを思い出し、集落の位置まで届かないだろうと考えた。ここしばらく使っていなかったので、罠に使えそうなこれを忘れていた。
動き始めて一時間が経ち、麓から人の気配が感じられた。山を囲むのは千五百人だ。残り六千は山から少し離れたところに待機している。ある程度時間が経ったら千五百人が戦いに向かい、戦っている者たちは引く。これで波状攻撃をしかけていくつもりだ。集落の規模から裕次郎たちの戦力を少ないと見て、この人数でもきついだろうとビュートは推測した。
道やそれ以外の斜面から続々と兵たちが上がってくる。攻撃を始めたのは軍側だ。
「弓を撃て!」
ビュートの合図を皮切りとして集落前面に矢が降り注ぐ。それをドライアドが木の葉で集落上空を覆って防いだ。何度も使える手ではないのでこれまで参戦しなかったが、今日は出た方がよいと判断したのだ。弓魔術は防ぐことはできないが、離れて射られたただの矢ならば十分対応できた。この状態を一日中保つことができればよいのだが、それは無理なので使いどころを考えないといけない。
お返しとしてフォクシンとゴブリンたちが矢を放つ。それを軍側は盾を使って防いでいく。だがバリスタは防ぐことはできず、最初に被害が出たのは軍だった。
「あんな防衛策を持ってたか。進め!」
ビュートの言葉のすぐ後に銅鑼が響き、兵たちが山を登り始める。
マカベルのいる正面は少なめで、前面の斜面と背後に多く兵を配置している。背後の兵は霧に阻害され、進めずにいる。すぐに異変を悟ったそちらの隊長は風の魔法を使える者を集めて霧を流そうとしている。まごついている間に、毒に耐性を持つ薬を飲んだ裕次郎が突っ込んでいく。その際にもう一度薬を水に入れたので、霧を吹き飛ばすのはしばらく無理になった。霧の届いていないところから進むようにして、その侵入路にゴゼロが立ちはだかり兵を食い止めていった。
一方で、単騎突撃した裕次郎はツアと対面していた。
「今日はいきなり投げ捨てるってことをしないんだね」
「したいんですけどね。始まったばかりで寝込むようなことはできないんで」
「こちらとしては助かる話だよ」
そう言い、構えた。裕次郎としてはツア一人に時間をとられたくはないが、好き勝手させるのも問題があるので、戦う意思を見せる。両手には石を持っていて、ツア一人だけにかまわずほかの兵に投げつける気満々だったりする。
ゴゼロの方にもロンタたちが行っている。何度もマカベルの力を受けているロンタたちは体調万全とはいえず、ゴゼロ突破に苦労している。
「攻めてこないのかい?」
ツアは連続した蹴りを放ち、最後の蹴りで裕次郎の防御を足場にして距離を取り、話しかける。
「今日は防御重視です。薬の効果が切れるまで粘ってツアさんを捕まえられたら後々楽になりますし」
「おや、私が捕まる側になったのか。捕まえられるかな?」
「やってみせます」
ならばやってみるといいと言って、再びツアは攻め始める。
胸躍る戦いではなかったが、捉えきれない相手と延々戦うのもそれはそれで楽しく、ツアは逃げずに最後まで戦っていた。もしかすると裕次郎側が勝つかもしれないと思い、プラッカ獲得のために動くのもいいかと思ったのだ。
ゴゼロの方もぼろぼろになりつつ、ヴァインの助力を得てロンタたちを追い払うことができた。
銅鑼が響いて、兵たちが退いていき休憩かと思ったところに、兵が押し寄せる。ゴゼロは回復薬と疲労回復薬を飲み、バトルアックスを握り締める。集落の者たちも苦しくなるといった裕次郎の言葉を強く実感していた。
連続した攻めは交代が一巡りするまで続いた。その攻勢を蓄えていた薬や矢をすごい勢いで消費して、水竜が元の姿に戻り虚勢を張るなどして兵を抑え、なんとか耐え切った。
一当てといった考えを持っていたビュートは一度進攻を緩めて情報を整理していく。
最初は鉄壁と言ってもよかった守りだが、最後の方は疲れも見せ始めていた。矢の雨やゴゼロの守りを抜いて、村に侵入する者もいたくらいだ。フォクシンやゴブリンたちの攻撃で返り討ちにあったが。
軍側の被害も小さくはなかった。千人以上の死者がでているし、怪我人もそれ以上だ。
「このまま元気な兵三千人で押すか、四時間ほど休憩を挟んでまた波状攻撃をしかけるか。退く、これはないな。心配なのは魔王の消耗が抑えられていることか」
集落正面では最後は睨み合い状態で、動きはなかったのだ。魔王の動きによっては大人数でいっても返り討ちの可能性があった。
押してみるかと決めた時、警鐘が響く。
辺りに響く声から、薬師が魔王を背負って奇襲をしかけてきたことがわかった。日が落ちて暗く、接近に気づけなかったのだ。
これは攻めが弛んだことで一度集落に戻り、消耗具合を見た裕次郎が時間を稼ぐために起こした行動だ。マカベルを戦場に連れて行くことに不安はあったが、延々と攻めが続くと明日までが限界だと予測し、マカベルに絶対守ると約束し連れ出したのだった。
「手を緩めたことが悪手になったか!?」
ビュートは気だるくなり始めた体調をおして外に出て、退くように指示を出す。集落正面の守りが薄くなっているので一瞬攻め時かとも思ったが、麓に置いている兵は五百もおらず、運が良くて共倒れするだけだとその考えを振り払った。
散発的に撃たれる矢を盾で受けながら、裕次郎たちは退いていく兵を見る。仲間を背負った兵が多いため動きは遅い。マカベルの安全第一なため石を投げるくらいで追撃にはでなかった。その石に当たって死ぬ者が何人もいたが。
集落に戻ってきた裕次郎たちをセリエたちが出迎えた。マカベルを下ろす裕次郎にセリエが話しかける。
「どうだった?」
「なんとか退かせることはできたよ。これでいつまでかはわからないけど休むことができそう」
それに皆ほうっと安堵の息を吐く。最低限の警戒を残すことにして、皆を休ませることにした。
余裕のある裕次郎は、使った矢の回収に出向き、ほかの者たちは休む。セリエも指揮と矢を射るだけでわりと余裕はあったが、マカベルを落ち着いて休ませるため家に残る。家にはツアがいるので、マカベルは落ち着けないのだ。持ち物は回収したが、手足を縛るなどの拘束はしなかった。薬なしでは至近距離でないと戦うのは難しいのだが、マカベルは近づこうとしないしセリエとは至近距離でも負ける。本人にも戦意はなかったので自由にさせていた。
暗い中、裕次郎は籠に矢と杭を回収しながら周囲を探る。気配がまったくなく兵は皆無とわかる。籠が一杯になり、それをゴゼロに伝えると死体を喰うためにゴブリンを出したいと提案される。自身の見えないところでという条件で頷き、ゴゼロはゴブリンたちを率いて集落を出て行った。
家に戻るとまだ明かりがついていた。
「ただいまー」
「おかえり」
セリエが起きているのかと思っていたが、待っていたのはツアだった。
「まだ起きてたんですか?」
「まあね。逃げようとか思ってたわけじゃなくて、なんとなく起きていただけだよ」
「俺はもう寝ようと思いますけど、まだ起きてます?」
「そろそろ寝ようかね」
よいしょと言って立ち上がる。
「あ、そういえば軍がどう動くが予想できます?」
「そうだね……少なからず今回で決めるつもりで動いただろうし、それが失敗したとなると今後の進攻は緩やかになると思うよ。国に帰る可能性もなくはないんだろうけど、退くにも準備があるし明日いなくなるなんてことはない」
「ありがとうございます」
ツアは部屋の隅で毛布に包まり、裕次郎は隣の部屋で眠る。
翌日からはツアの予想通り、少数の兵が森に入るくらいだった。目的は珍しい魔物や動物の捕獲で、集落には近づく様子もなかった。
ヒアに偵察に出てもらい遠くから観察してもらうと、休養メインで静かにしているらしかった。
そうして静かに五日が過ぎて、兵の侵入もなくなった。その翌々日には全軍が退いていった。帰還準備をしていたところに、裕次郎がツアを陣近くまで送り届け、解放した。その際にプラッカのことも話す。ワープ装置を使わせてもらって山のバグズノイドに渡すことにしたのだ。ツアが医者を連れて山のバグズノイドに会いに行けば、いつでも連絡がつく。
陣に戻ったツアはどうにか逃げ出したと言い、多少怪しまれつつも受け入れられた。どうせ帰るのだから、懐柔されていても構わないといった考えだった。
自由に動けるようになったツアは勇者の居場所を聞いて、そちらに向かう。
テント外から声をかけて中に入る。ロンタたちが、真剣な表情で武具の手入れをしていた。
「その様子だと君たちは帰還するというわけではないのかな?」
「ツアさん、無事だったんですね。よかった」
知り合いの帰還にほっとした雰囲気がテント内に漂う。
「ユージロー君からの伝言だよ。本当に暴走するのか確かめてみたらということらしい」
「どういう意味です?」
「暴走について水竜やドライアドといった長生きした魔物に聞いたらしいよ。返答はそんなこと知らないということだったと。水竜は先々代魔王が暴れていた頃に、人の町に行ったこともあって情報に疎いわけでないらしい」
「魔物の言うことなど信じられるわけありませんよ。それに王からの命令ですし、そう易々と放棄もできません」
魔王が暴走しないとわかったので討伐止めました、では王は納得しないだろう。
「だろうね。これからは四人だけで魔王討伐を続けるのかな?」
「そのつもりです。物資もわけてもらいました」
「魔王は常にユージロー君とセリエ君のそばにいる。さらに気配察知の得意なラグスマグもついている」
「だから?」
「奇襲は無理だと知らせておいてと伝言その二だよ。正直なところ彼らを抜いて魔王を倒せるのかな?」
「それは……」
四人とも頷けない。頷けないだけの経験をしている。四人揃えば向こうの一人は倒せるが、都合よく一人になっているところで挑めるかどうかわからない。
「一度帰って、現状報告してさらなる支援をもらうのも手だと思うよ」
叱責はあるだろうが、一国の軍を退けたという話もすればそう酷いことにはならないだろう。居場所が居場所だ。四人のみで討伐続行させる無理も考慮し、傭兵を雇う資金もでるかもしれない。それが無理でも魔王対策の薬の品質向上を願いたいところだ。
「少し考えてみます」
「それがいいと思う」
そう言いツアはテントを出る。首を傾げながら自身に与えられたテントへと歩き出す。
(依頼達成かな? 四人で突っ込む無茶を示唆したから、やる気は少しは削げたと思うし)
プラッカを渡す条件として、勇者の説得を頼まれていた。勇者の目的は森ではなく魔王なので、軍と同じ行動をするとは限らない。残って攻撃しかけてくる可能性もあるとツアは裕次郎に言い、それを聞いた裕次郎たちはツアに勇者の説得を依頼した。
森側の勝ちがほぼ確定していたので、ツアは裕次郎たちを生き残らせるため頷いた。
話し合ったロンタたちは現状では目的達成の目は低いと判断。一度セジアンドに戻り、対策を考え、修練を積み挑むことにした。
軍退却のきっかけは、五日目に国から早馬がきていたことだ。
届いた手紙を開いて、ビュートは表情を硬くする。
「なんと書いてあったのですか?」
「そうだな、簡潔に述べると人員の増加はなし、物資も送る量を減らすだ。これで戦えということだ」
「……どうなさるので?」
「退く」
「よろしいのですか?」
王命に逆らうのだ、部下は心配した様子で聞いてくる。
「ただでさえ士気が下がってる。そこに物資も減るとあってはな。吸血鬼たちの邪魔もある。どれだけの物資が届くか。低い士気がさらに下がる。こんな状態で戦えはしないだろうさ」
「どうして人員の増加がなくなったりしたのか、その手紙に書いてありますか?」
ビュートは頷く。
謀略の風が吹きすぎたのだ。貴族たちは互いに疑心暗鬼に陥り連携もとれなくなり、各地の内政が滞り、治安が悪化していった。動かしていた兵力では足りなくなり、待機させていた予備兵力を使って治安維持に乗り出さざるをえなかった。
こうなることは予測の一つとしてあった。だが輸送が滞る前に片がつくと考えていたのだ。
手紙が届いた時点で、国内は落ち着きを見せ始めている。傀儡派にとって都合の悪い話が証拠付きでぶちまけられ、宮中の対立は傀儡派の没落という形で決着がついている。おかげで各地の統治機能が本来の働きを取り戻していった。それですぐに治安が元に戻るわけではないし、一度解散させた兵を集めるのには時間がかかるので即座に追加の兵を送れはしない。
「撤退準備をするぞ。皆に知らせろ」
「はっ」
こうして軍は退いていき、裕次郎たちの勝ちではなく、ヘプシミン国の内情が原因といった形で決着がついた。
ここまで耐え切ったことで裕次郎たちの勝ちと言えるかもしれないが、勝ちを喜ぶ声はなく、生き残れたことを安堵する者のみだった。
感想誤字指摘ありがとうございます
初日に水竜に奇襲してもらって、そのすぐ後にマカベルとヒアに上空から異能をふりまいてもらい、その後裕次郎とゴゼロが暴れて、同時にセリエとマカベルに麻痺の霧を風の魔法で陣に流せば、回復も満足にできず一日で殲滅もあったでござるの巻
これをするとあっさりすぎてつまらないので制限をかけたら、今度は勝利するとご都合主義にしかならず、上手く生き残らせるにはと考えて相手に自滅させるということになりました。緊迫した戦争って難しいね!
》裕次郎に王族殺し濡れ衣を着せて生贄にした貴族達には天罰を~
王の手紙をないことにしてたりしてますから傀儡派のトップ連中は処刑を免れません
》魔王の事を狸に聞くんじゃなかったっけ
二人ともど忘れしてます。水竜には聞きました
》てっきり水竜から奪った子供を素材にした武器で撃退するのかと思ってました
それやると怒りで死ぬことすら構わずに特攻しそうです
》天候操作できるならそっちの方が……起きるタイミング失敗したなコレ
ですよね。原因は水竜がやれることを知らなかったことです
》吸血鬼の力で死人たち操れない?
この世界の吸血鬼にその能力はないですね
》マカベルの異能の力を死人に使ったら、言うこと聞くか~
考えてみたら、普通の人より耐えるけど、それだけでいずれ動けなくなるとでました
どんな状態でも動けるようにといった効果の薬なので、少々の体調不良じゃ止まらないかと
》雨の中に麻痺毒仕込むのと並行して、雨雲かもしくはめちゃくちゃ濃い霧を~
雲の位置によっては、マカベルの異能が地上に届かないですね
》朝起きたらすぐそばにセリエ(+マカベル)がいるとかユージロー的には~
集落に移ってからだとわりと珍しくない状態なんで慣れました。それでも一分ほど寝顔を観賞しましたが
》勇者はハーレム要員たちの気持ちには気づいているのかな
好意自体には気づいているけど、それが恋愛感情だとは気づいてない。そんなところです
》人間軍が人でなし作戦しまくりだけど、まぁ人間サイドの視点で言えば~
水竜がいるんでできる無茶ですね。あと使った人間が犯罪者だというのも大騒ぎしない要因です
》この世界での勇者の定義が「勇気ある人」というより「なんか突然変異で突出して強い人」~
そこに人々を守るとか国に利益をもたらしたという評価がプラスされますね。ただ強いだけだと有名な冒険者止まりです
》裕次郎はただの大犯罪者って扱い以上にはなれないんだろうなぁと~
気にしないですね。ティークたちに罵倒されたら傷つく可能性はありますが
》今度暴れたらエビフライに蟹味噌か・・・ (@ ̄¬ ̄@)ジュルリ
いやいやきっと不味いはず
》風の魔法で敵陣から離れた所から麻痺毒と睡眠毒とか飛ばすってわけにはいかんのかな
逆風のことも考えて、自重してました。囲まれたんで最後には罠として使いましたが
》国側がこれだけ非人道的な事やってても、指揮が下がったりしないんですかね
攻略対象が水竜や噂に名高い難所なんで、非人道的なことも必要だと思っている、のかなぁ
》予想通り水竜さくっとぼっこでした
体調万全なら蹂躙できたんですけどねー
》テンポよく読めるけど超展開っぽいとこが少なくて読みやすいです
超展開にするにはと考えて、思いついたのは戦っている最中に異星人襲来。一時的に両陣営が手を組んで戦い始め、宇宙船に乗り込み内部から爆破とか
》面倒くさいので国のトップを全員クスリで発狂させればいいんじゃねと~
実は手配書出された時点で考えていたことではあるんですよね、王に薬を使うことは。そのルートでは逃亡に失敗して捕まって、尋問中に逃げ出し、セリエを探しながら城か貴族の屋敷の薬品室で調合した麻痺薬を城中か都市中にばらまいたりしてました




