純黒
十年以上前だろうか、疲れ果てて昼寝をしていた時だ。
あの子が横にいた。
明るく活発で、ひらけた場所にいると、いっつも走り回ってる。でも、感情を荒げることは滅多になく、喧嘩の仲裁役にもいつも割って入る、大人なのかこどもなのかよくわからない子だ。そして何より、本当に嬉しい時に見せる、くしゃっとしたどこか可愛らしい天使のような笑顔が素敵だ。
今思えば恋をしていたのだろう。
そんな子が、僕の真横で小さな寝息を立てている。恋すらわからぬ僕に理性なんてなかった。
気がつくと、僕とその子の唇は触れていた。
びっくりした。その衝撃から、その子を軽く押し退けてしまった。「まずい..!」そう思った時には遅かった。
不意に体を揺られた彼女がついに目を覚ます。咄嗟に僕は寝たふりをする。
少しぎこちない誤魔化しではあったが、なんとかバレずに済んだ。
それでも心臓は自分の恥ずかしさを代弁するように、ドックンと大きな鼓動を立て続けている。
それから何時間経っただろうか。不安で寝られないままでいると、今度はその子が「もう起きて〜」と猫のように小さな手で体を揺さぶってきた。やっと終わりか。
天長地久に続くかとも思われた、保育園のお昼寝の時間はこれにて幕を閉じた。
これ以降も、この緊張感に味を占めた僕は、残り少ないお昼寝の時間をその秘密の行為に当てていた。それは初恋を奪ったあの子に囚われず行われた。そこまで好みではない子や友達として好きだった子にも手を出していた。唯一の救いは、小学校以降はお昼寝の時間なんてものは存在せず、秘密の行為を行わなくなった――いや、行えなくなったことだろう。純粋とは時に恐ろしいものだと、この出来事を思い出しては時々思う。
当時5歳にしてはあまりにませていた。そう思う自分も、初恋のあの子のように大人なのかこどもなのかわからない。そんな自分もどこか好きでいた。
ミスって連載にしちまった




