表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

♢♢♢童話集♢♢♢

神さまの落としもの

作者: 犀月靖緒

高い高い、空の上。

神の国に、ひとりぼっちの神さまがいました。

朝も、昼も、夜も、その神さまはひとりぼっちでした。

だから神さまはさびしくて、神の国の掟を破って、人間の住む世界へ遊びに行ってしまいました。




人間の住む世界は、神さまが想像したよりも、ずっと楽しいところでした。

神さまは、自分の爪を切ることさえ忘れてしまうほど、楽しい時を過ごしました。


でも人間の世界で過ごすうちに神さまは、この世界にあるいろいろの、辛いことや悲しい思いも知りました。

だから神さまは自分の、神の国に帰ろうと思いました。



♢♢♢


神の国に帰った神さまは、やっぱりひとりぼっちでした。

そして掟を破った神さまには、神の国の裁きが待っていました。

神さまは罰せられ、深い深い谷底へと、落とされてしまったのです。




谷底へ落とされた神さまは、谷の岩の壁に、自分の爪を立てて登ろうとしました。

人間の世界で長く伸びた神さまの爪は、岩の壁に食い込んで、神さまが壁をよじ登るのを助けてくれました。

でも爪は神さまを支えきれなくて、神さまはすぐに、底に転げ落ちてしまいます。

そんなことを、何度も何度も、くり返しました。



そうして何度、底に転げ落ちても、神さまはあきらめませんでした。

神さまは、人間の世界で楽しいことだけでなく、たくさんの辛いことや悲しい思いを知りました。

だからそれを思い出したのです。

さびしいのや悲しいのは自分だけじゃないんだと、自分を励ましました。




悲しみを力に変えて、神さまは、岩壁を登り続けました。

神さまの爪は、岩壁を登れば登るほど、強く頑丈な爪になっていきます。

そして神さまはとうとう谷の岩壁を、てっぺんまで登ることができました。

岩壁を何度も登った神さまの爪は、もうどんな高い壁でも登ることのできる、強い強い爪になっていたのです。



神さまは、岩壁のてっぺんに腰掛け、爪の中に溜まった土汚れを掻き出しました。

その汚れは、人間の世界に、キラキラと輝きながら落ちていきました。


神さまの落としものは、空から降って、苦しい人や悲しい人のところに落ちました。

その人たちは、そのキラキラしたものを見つけると、煎じて飲んでみることにしました。


すると、どうでしょう。

苦しい人も、悲しい人も、元気と勇気が湧いてきました。


それは、希望と呼ばれました。



♢♢♢


高い高い空の上。神の国にある谷の、その岩壁のてっぺん。

今日もそこには、神さまが、ひとりぼっちで座っています。


でもひとりぼっちの神さまは、人間たちに喜んでもらえたので、もうさびしくはありません。


その神さまは、笑顔で、キラキラと輝く爪の垢を掻き出しているのです。

お読みいただき、ありがとうございました。

ブクマや評価、リアクションや感想などいただけると、励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ