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第二話 新たな出発

こんにちは。作者の翔峰リアン《しょうほうりあん》です。

閲覧いただきありがとうございます。

文字は心と思いながら、書き記してきました。

閲覧して、読んでくださっているあなたの心が軽くなったり、明るい気持ちになれますように。是非、最後までご覧ください。

『第一章再生』

【第二話 新たな出発】


 ここはマンションやオフィスビルが立ち並ぶ都会のど真ん中。その一画にはアーケードになっている『ひかり商店街』がある。地下鉄の駅も近く、商店街の奥には神社が聳え立っている。元日には参拝者で人だかりができる地域である。だが、時代の流れで客足が遠のいていき、今ではお店は次々と閉業。数店舗のみ営業している状況に追い込まれていた。


 リアンは、翌日、八百屋の店主を訪れた。しかし、前日のアイデアを言葉にするのは難しい。突拍子もないことを今から伝えなければならないからだ。反対されるのが怖い。怒られるかもしれない。嫌われるかもしれない。ずっと、頭の中でマイナスなことばかりが浮かんでいた。みんなが笑顔で暮らせる商店街を再び見たいと思っていることは本当なのに、なぜか緊張する。今はまだ理想でしかないけど、きっと最後までやり遂げる。


『頑張れ、私!』


 緊張した面持ちで八百屋の店主の前で立ち止まった。


「おっ!!リアンちゃん、何か欲しいのでもあるかい?」


 八百屋の店主は変わらずニコニコと気さくに声を掛けてくれた。リアンは少し唇を嚙みながら、震えた声で話し始めた。


「ううん、今日はおじさんに話しがあって・・・。実は、八百屋のお仕事を手伝わせてほしくて。」

「ちょ、ちょっと待て!急にどうした!?何かあったのか!?大丈夫か?」


 突然の事で、店主も驚き、目を丸くしている。頭の中で整理が出来ていないようだ。リアンは店主を見つめ、店主はリアンを見つめている。少し時間が止まったように、無言の時間が続いていた。リアンは、こうなった経緯を話し始めた。

「私、農業をやってみたくて。でも、いきなり畑に行くより、まずは野菜を知ることから始めたいと思ったんです。八百屋で働かせてもらえませんか?」

「そういうことか。それなら、確かにうちが合っているのかもしれないが、ただ、農業に役に立つかは別だぞ。八百屋は収獲した野菜が並ぶ所だから、栽培については全然わからんぞ。俺がわかるのは新鮮な野菜の見分け方と流通だけだ。それでもいいのか?」


店主はリアンの話しを受けて、内心喜んでいた。昨今、農業に興味を持ち、携わる若者が減ってきているからである。農家さんの仕事は思っているより、肉体労働で環境にも左右されやすい。なにより、身体が資本の仕事である。農家さんの高齢化が進んでいることも現代の問題点にあげられるだろう。農家さんは野菜の状態や土壌や気候なども見ながら、頭も働かさなければならない。肥料のバランスや収穫のタイミング、販売のタイミングも見極めなければならない。肉体労働、知的労働のこの二面が存在するのが農家さんだ。


「ところで、リアンちゃん、農業をやるにしても場所はどこでやるのか決めているのか?郊外なら、確か中古の一軒家で田んぼ付きで売っているはずだよ。」


リアンは緊張しながら、話しを始めた。


「昨日、ずっと考えていたんですけど、私はこの商店街の一画の空き家を改装して畑にしたいと思っているの。まだこれは、理想でしかないけど私は沢山のお客さんに農業体験をしてもらって、みんなに笑顔になってもらって、農業に興味を持ってもらいたいの。それに、ここにまた来たいって思われるような商店街にしたいと思っています。」


リアンは店主と夢について話しを始めた時、少しずつ緊張も和らいでいき、心も熱くなっていった。最後の方には鼻息さえも荒く感じるほど眼差しは燃え上がり、希望に満ちた顔で店主の目を目力も強く見ていた。

 興奮したリアンを少し落ち着かせるように、店主が口を開いた。


「わかったわかった、、。畑の件は一度、商店街組合で話してみるとして、明日の夜中の3時から働いてもらいたいけどいいか?農業をやるなら、セリの勉強も必要だろ?野菜が収穫されてどんな風に流通されるか、良い野菜の見分け方も見てみるといい。」


「え?え?え?夜中の3時?そんなに早いんですか?」

「八百屋の一日の仕事は仕入れから始まるんだ。大手スーパーはバイヤーがいて、その人たちが目利きして、まとめて買って配送センターから店舗へ運ぶけど、俺みたいな個人経営は自分たちで市場に行ってセリをしないといけないんだ。だから、朝は早く起きないといけないんだよ。」


 リアンは八百屋の一日が早朝のセリから始まることを初めて知った。いつもにこやかで元気があって、お店に立つおじさんの事しか知らかったから、まさか、そんなに早起きで大変だった事に驚いていた。


「夜中だけど、起きれるか?もし、起きれないなら、一人で行って仕入れてくるからよ。」

「だ、大丈夫です!一緒に手伝わせてください!」


驚いていたリアンも理想を現実にするために、苦労をしてでも野菜と向き合いたいと考えた。農業を始めるにあたって、休みも関係なく、野菜のために毎日毎日考えていかなくてはならない。早起きぐらいでは私の信念は曲げない。リアンの心の芯がしっかりと刺さった瞬間だった。

 店主は微笑みながら、リアンの様子をうかがっていた。


「リアンちゃんは、好きな色あるかい?」

「そうですね、紺とか、青系ですかね。それがどうかしましたか?」

「いや、ちょっとな。まぁ、明日になったらわかるよ。」

「わかりました。明日はお願いします。」


少し不思議そうな顔をして、店主の顔を伺い、リアンは会釈して家に戻っていく。

 別れた後、少し安堵して明日の事を考えながら歩く。不思議と不安よりも楽しみで高揚していた。自分の足で一歩踏み出せたことで、理想から現実に近づいたような気がした。

 

(21時かぁ、、、今日は、早めに寝よう。)


リアンは早めに就寝することにした。


-翌日2時00分-


ジリリリリリリ・・・

目覚まし時計が起きる時間だと告げる。辺りはまだ真っ暗で静寂に包まれていた。窓から外を見るが人の気配はない。街灯がぼんやりと辺りを照らす。

 今日ばかりは起きてすぐに行動を始めた。顔を洗って着替えをし、身だしなみを整えて余裕をもって準備を始めていた。普段はのんびり準備するリアンだが、セリに行けるのが楽しみで仕方なかった。

 商店街までは10分もあれば到着する。リアンの家からの利便性もかなりいい。地元だからこそ、活気のある商店街にしていきたい。そんな思いがリアンの心を焚きつけていた。

 少し早めに着くように家を出て、暗い夜道を歩いていく。静かな道だが、朝早くから車は数台走っていた。車のライトが眩しく感じる。街灯は綺麗に整列されているため、真っ暗闇ではないのが救いである。

 商店街へはいつもの散歩道を使って移動した。しかし、昼間と夜の道の見た目も違い、地元だというのに少し戸惑いながら、八百屋の前に到着した。店の前には軽トラックが停まっており、店主はバタバタと準備をしていた。


「おぅ!おはよー、リアンちゃん!ちゃんと来たな!」

「おはようございます!今日からよろしくお願いします!」


 リアンは頭を下げ、店主に挨拶をした。表情は晴れやかに太陽のようにワクワクを隠しきれていない。そんな顔を店主はニコニコしながら見つめ、話しを始めた。


「おうよ!これから、ビシバシいくから、覚悟しておけよ!それから、今日は渡したいものがあるんだ。受け取ってくれるか?」


 軽トラックの助手席から一つの包みを店主は手にした。綺麗な包装紙で包まれて、かわいいピンクのリボンがワンポイントに装飾されていた。


「ほら、開けてみろよ!喜ぶといいんだけどなぁ。」


綺麗な包装紙を丁寧に開けて、中から現れたのは厚手の布生地で出来ているエプロンだった。リアンの大好きな紺色の、藍染めされたものだった。見た目からも丈夫で重みもしっかりしている。隅の方には透明の小さなポケットが取り付けられていた。

 リアンは歓喜していた、昨日、突然、お手伝いを要望したにもかかわらず、これほど準備をされていて、何故か自分という存在を認めてもらっているような気がした。


「前掛けですか?ありがとうございます。付けてみてもいいですか?」

「付けてみな?やり方わかるか?丈の調整は腰で内側に折り曲げて、後ろで紐を交差して前で片結びが主流だな。」


不慣れな手つきでリアンは腰に前掛けを巻いていった。腰に巻いた前掛けは、紐でしっかり骨盤を支え、背筋も伸びていく。重い荷物を持っても腰の負担を軽減してくれそうだ。


「出来ました。似合いますか?」

「いいじゃねぇか。早速出発するか!」

「はい!」


そういって、軽トラに乗り込む二人。店主は慣れた手つきでハンドルを握り、市場へと向かっていった。普段は交通量の多い道路も車の数も少ない。目的地までの道のりは順調に進行できた。市場まで2人で会話をしながら、八百屋でやること、リアンがお手伝いできることなどを店主から教わっていた。


「市場に着いたら、まず管理棟に行って入場許可証を貰いにいくからな。リアンちゃんは見学のために許可がいるから。本来は登録証をそれぞれ持っていて、それが通行証みたいなものだ。俺も持っているぞ。ダッシュボードを開けてみてくれ。」


店主に言われたように、ダッシュボードを開けて、中を確認してみた。その中には番号の並んだ札が付いている帽子が入っていた。緑色のつば付き作業帽タイプに札が刺さっていた。この帽子をかぶっている姿はリアンも見たことが無かった。


「この登録証で何が出来るんですか?」

「普段はスーパーや八百屋っていうのは仲卸業者を介して仕入れをするんだが、直接、卸業者から買い付けが出来るんだ。しかし、こういう仕入れは顔が命だから、馴染みの人しか売ってくれねぇけどな。」


 リアンは思考が追い付いていなかった。卸業者と仲卸業者の違いが話しを聞いてもわからなかった。思い切って、店主に質問をしてみることにした。


「卸業者と仲卸業者の違いってなんですか?」

「おぅ、そうか。普通はわからないよな。卸というのは農家から直接収穫した野菜をまとめて買い付けてくるところ。そして、仲卸業者は種類別に買い付けて、小口販売するところというのが、わかりやすいかな。俺は特売の品は卸から直接買って、普段は仲卸から買っているぞ。仲卸を介さない分、一個の価格も抑えることが出来るんだ。ただ、仕入れる量も増えるけど、お客さんが嬉しそうにしてくれるのが嬉しくて、廃棄が出ないように頑張って売っているよ。」


リアンは説明に納得をするとともに、勉強不足だということを感じていた。農家、卸、仲卸、小売商店。それぞれの思いがあって、そして、生活のために利益を上げなくてはならないからだ。現代の野菜の高騰も致し方ないのかもしれないと思うリアン。


「さぁ、着いたぞ。」


運転席で、サイドブレーキを掛ける音が聞こえる。


―ギギッーーーー―


「ハッハッハッハ、驚いたか?結構長い事乗っているから、悲鳴上げているな。」

「少しびっくりしましたが、大丈夫です。」


市場に到着し、駐車場から管理棟へ移動する。辺りはまだ暗闇だが、管理棟の照明と市場の中は天井にあるLEDランプのお陰で、明るい。そして、ここまで来るまでに人がほとんどいなかったのに、市場内はセリの声と人の歩く音、段ボール箱がこすれる音、車輪の音、モーター音。独特の朝の喧騒が耳から入ってくる。リアンは初めて見る光景にドキドキが止まらない。

管理棟に到着し、入口に入ると守衛さんらしき人がカウンター越しに待ち構えていた。


「おはようございます。これから、ちょくちょくこの子も付き添いで市場に来ることになっているから、よろしく頼みます。」

「大森さん、おはようございます。新しい子ですか?市場は広いし、人も多いからしっかり見といてくださいよ。」

「わかっているって!ほら、リアンも!」

「あ、よろしくお願いします。」

「それではこちらの名簿にお名前と連絡先、それから、大森さんの登録番号を記入してください。」

「はい!」


 リアンは静かにペンをとり、自分の名前と連絡先を書いた。登録番号は店主の帽子を借りて記入していった。登録証には登録番号のほかに店舗名、登録者の名前が書いてあった。


「おじさんって、大森栄一っていうんですね。初めて知りました。いつも、おじさんしか言ってなかったから。」

「今更かよ!」


 ここにいる3人が笑いに包まれ、無事に入場証も発行してもらい、市場へ向かうこととなった。


「帰る際は必ず、管理棟に入場証は返却ください。」


リアンは市場内へ足を踏み込んでいった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

投稿は不定期にはなると思いますが、作品を愛していただけると嬉しいです。

コメントや評価など是非教えてください。

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