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第十三話 夢の形


 公民館の図面がリアンの手元にやってきた。早速、組合事務所を借りて、図面を確認する。机の上に広げられた図面は現在の配置を示した図面。リアンはこの図面を見本として、新たにリアンの構想を新しい紙に書いていった。この構想が正式に通用するかどうかはわからない。ただ、叶えてみたい。その一心だった。何度も見比べながら、書いていく。


 紙の上で描かれた線はこれから現実となるリアンの夢が詰まったものだった。体育館、通路、部屋の配置、天井の高さ。数字と線だけで、構成された図面はリアンの頭の中にしかなかった夢。これが現実になる。


(…ここからが、本当のスタートなんだ。)


 紙の上では整ったように見える。しかし、現実はプロの目で見てもらうまではわからない。期待と不安がリアンを襲った。思い付きではどうにもならないこともあるだろう。覚悟を決めて、図面を眺めていた。


 すると、そのとき、事務所に入ってきた人が居た。商店街組合長の久保と中年の男性がやってきた。リアンは緊張していた。この男性は久保の知り合いの建築士さんだった。公民館の図面が手に入り、リアンの夢の図面と現状の図面を見比べながら、相談に乗ってくれることになっていた。


「リアンさん、お待たせして、ごめんなさいね。」

「いえ、大丈夫です。そちらの方が建築士さんですか?」

「申し遅れました。建築士の山崎です。あなたがリアンさんですね。久保さんから話は聞いていますよ。」


 山崎から名刺を受け取り、机の上に置いた。名刺には山崎建築設計事務所と書かれていた。名刺を見ただけでも信頼できそうな風格を感じられた。


「早速ですが、図面を見せて頂いてもよろしいですか?」


 リアンは公民館の図面を見てもらい、その後、リアンの夢の図面を見せた。山崎は図面を見比べている。この見てもらう時間がなんとも緊張を増す。静かに時間は流れていき、山崎が言葉を発した。


「リアンさん、要望などお聞かせ願いますか?」


 リアンは語った。全てを話した。排水の事も天窓の事も話しをした。山崎は少し、険しい顔をして、話しを聞いていた。


「…正直に言いますね。」


 その一言で、リアンの背筋も伸びた。


「このままでは実現は難しいです。」体育館の半分を畑にする。コンクリートで囲って、排水して、水を再利用する。発想としては面白い。でも、このままでは、、。」


 山崎は図面の一部を指でなぞった。


「構造上の制約、耐荷重、湿気対策、換気。それに公民館という人が集まる場所であること。

農地じゃない以上、想像以上に条件は厳しい。」


 リアンは悔しさをにじませながら、唇を噛んだ。

 リアンの夢は儚く消え去った気がした。


「…やっぱり、無理なんでしょうか?」


 勇気を出して、言葉で伝えてみることにした。小さく尋ねてみると、山崎は首を横に振った。


「無理とは言っていません。」


 リアンは驚いて、顔を上げた。


「あなたの案は雑じゃない。ちゃんと考えようとしている。だから、甘くない話をします。」


山崎は少しだけ、表情を和らげた。


「やり方を変えれば、可能性はある。全部を一気にやろうとしない。畑の深さも、水の流れも、段階的に検証する。

それが出来るなら、私は一緒に考える側に立ちます。」


 リアンの胸の奥で、何かがほどけた。


「……否定されると思っていました」

「否定は簡単です。でも、それじゃ仕事にならない」


 山崎はそう言って、図面を机に置いた。


「これは夢の図面です。ここから現実の設計に落とせるかどうか。

 それをやる覚悟は、ありますか?」


 リアンは、迷わず頷いた。


「あります。時間がかかっても、形にしたいです」


 その瞬間、山崎は小さく笑った。


「その言葉が聞けたなら、十分です。じゃあ、一緒にぶつかりましょう」


 リアンも久保も少し安心した。問題は残っているにしても、検証で最善の方法を見つけ、最高のリアンの夢を形にしたいと思っている。


「これが、公民館の図面ですか?」


 突然話しかけてきたのは、ホビーショップの桐谷だった。皆、驚いて、一気に顔を上げて、視線を送った。


「すいません、突然、、、。模型屋の俺は図面に目が無いんですよ。」


 桐谷はホビーショップ兼模型屋を営んでいる。リアンも、商店街の会議以降、一度も会っておらず、驚きを隠せないでいた。今日はスウェット姿ではなく、カラフルなストリート系の洋服で、髪もセットされていた。まるで別人のようだった。


「もう、ここまで話が進んでいたんですね。リアンさん、やっぱり、只者じゃないっすね。それも公民館を改装しちゃうなんて思いもよらなかったです。」


 桐谷は目をキラキラさせながら話しかけていた。桐谷からもワクワクしているのが伝わってくるようだ。


 桐谷が山崎さんと話している。リアンは話の間に入っていけなかった。専門用語が飛び交う中、一つの結論が出たようだ。


「いやぁ~、こういう考え方も出来るかぁ。刺激になってよかった。」

「良かったら、俺、模型作りますよ。作りながら、問題も見えてくると思いますし。模型屋なので得意なんですよ。」


 リアンは静かに頷いた。ちょっと呆気に取られていたのかもしれない。話しがどんどん進んでいって、驚いていた。ただ、何か希望のようなものが見えた気がする。桐谷の登場で、夢が本当に実現するようなそんな気にさせてくれた。


「リアンさん、一旦、山崎さんに図面を作ってもらって、そこから、模型作りさせてもらいますね。やはり、図面はプロに任せた方がいい!」

「わかりました。よろしくお願いします。」


 リアンは専門的なことはわからないため、2人に委ねることにした。どんな風に形になるのか楽しみで仕方がない。リアンの表情が緩んでいく。


「リアンさんの思いもわかりました。これから、一緒に頑張りましょう。リアンさんの要望には極力叶える形で進めていきたいので、また、お会いして相談させてください。」


 リアンはキラキラとした目で頷いた。希望が形になる。夢が現実に起きる。信じられないことだけど、嬉しさがどっとやってきていた。


「リアンさん、俺も手伝うことが出来てよかったよ。模型は任せといて。完璧に仕上げてくるから。あとで、山崎さんに図面貰っておく。」

「私も何かやれることないでしょうか?」

「製作中は必ずと言っていいほど、疑問が出てくるので、横にいてもらったら、凄く助かります。それに、付箋や色塗りもあるので、やってもらえますか?」

「勿論です。」


 リアンは皆で商店街を盛り上げたいと思っていた。今日の出来事が大きな一歩となったのかもしれない。桐谷が自ら、手伝ってくれることに感謝をするリアン。これからの、ひかり商店街の未来が楽しみだ。


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