12話 前衛の役目
本作品は、HoYoverse様の『原神』の元素反応の仕組みや、パーティ構成などを妻に教える為に執筆を始めたので、類似している内容が見られるかと思います。(修正しながら投稿するので、酷似しているわけではありません。)
著作権の侵害等は避けるよう心掛けておりますが、引用したようなものが見られ、削除した方がよいと言われた場合、速やかに削除させて頂きます。
ストーリー自体は、全く『原神』を真似ていることはありませんので、上記のことをご理解頂ける方のみ、ご閲覧をお願いします。
放課後、キルロンド王国の王城には、レオ率いるパーティメンバー三人と、ヒノト率いる四人が集められた。
「なんだろう……何故か我が家なのに緊張する……」
リオンはただいつもの様に帰っただけだが、この報せを受けてから、二人の一触即発な空気感が気が気でなかった。
七人は、レオがいつも鍛錬に使用しているというトレーニングルームへと向かった。
「改めて紹介しよう。我がパーティ『KINGS』のシールダー、シグマ・マスタングだ」
「キルロンド学寮二年Aクラス、シグマだ。よろしく頼む」
シグマは貴族院出身だが、ガタイのいい肉体と全員にがっしり握手を交わす性格から、生真面目さが伺えた。
「次に、ヒーラーのファイ・ソルファだ」
「一年Dクラスです……。よ、よろしくお願いします……」
ファイは、その場で小さくコクリと頷いた。
「んじゃあ俺ら『DIVERSITY』は…………」
「不要だ」
「あ……?」
こんな、ピリピリとしたやり取りでヒノトはレオを睨み付けたが、リオンからどおどおと制された。
「今から、二人の岩魔法で私に岩シールドを展開させる。貴様は、何をしてでもそれを破壊しろ。以上だ」
「はっ、ンなもん簡単にやってやるわ」
*
しかし、それから何度斬り掛かっても、仁王立ちで構えるレオのシールドを破壊することは出来なかった。
「ハァハァ……俺にも魔法が使えたら……」
「意気込んでいた割には全然ダメだな。リオン、私に向けて本気で水放銃魔法を放ってみろ」
「い、いいのか……? 一応、レオには敵わないかも知れないが、俺も王族の魔力だぞ……?」
「いいから、やれ」
-水放銃魔法・水針-
ビィン…………
変な音がしたが、やはりシールドの破壊までは至らなかった。しかし、レオは少し意外そうな顔を浮かべた。
「やはり、愚兄ではあるがちゃんと王族の魔力だな。音が鳴ったのは、破壊直前まで到達した合図だ。逆に言えば、貴様はそこにすら到達できていないことになる」
「んじゃあ、ブレイバーゲームはチーム対抗戦なんだし、シールドはリオンとリリムで破壊すればいいんじゃねぇか……?」
「その通りだ。チーム対抗戦である以上、現時点で貴様らにできる連携はそうなるだろうな」
「じゃあ…………」
今までの鍛錬は何だったんだ、そう聞く前に、レオは言葉を続けた。
「――――だが、四人中の二人をシールドの破壊に割き、貴様は前衛として突撃する。しかし、相手はただシールドを破壊されたに過ぎない。残りの貴様のパーティは、シールダーとソードマン。相手陣営に乗り込むなら、シールド一枚の貴様VS四人、と言うことになる」
その言葉に、レオとの思考の差に唖然する。
「つまり、圧倒的なシールドの前では、遠距離支援は必須かも知れないが、ある程度のシールドであれば、前衛である貴様一人で処理すべきと言う話だ。それが前衛である、我々ソードマンの最初の役目だ」
「でも……俺には魔法が……」
しかし、ヒノトは言い切る前に歯を食いしばる。レオは、項垂れるヒノトを黙って見下ろした。
「レオ……もう一度、シールドを張ってくれ……!」
レオは何も答えず、合図を送った。
「シグマ、ファイ、頼む」
そして、再び二重のシールドがレオに張られる。
(シールドは前衛がこじ開ける……ね……)
ヒノトは、ニシっと笑みを浮かべた。その笑みに、自然とレオも笑みを浮かべる。
「アドバイス、素直にありがとうっつっとくぜ、レオ……! でも、これでもうお前のパーティにだって勝っちまうからな……!!」
その言葉に、レオも今度は剣を構える。
ボン!!
「んむ!!」
ヒノトは、レオの眼前で剣を口に咥えた。
「えっ!?」
見ている全員が口を揃えて声を荒げた。
ボン!!
右手をシールドに当てると、ヒノトは大きな音で魔力を暴発させる。しかし、破壊には至らないどころか、暴発の勢いでヒノトがその場から吹き飛んだ。
ボン!!
吹き飛んだ態勢から右足で暴発。
ボン!!
再び、左手から魔力を暴発。
ビィン…………
「鳴ったぞ!!」
しかし、またしてもヒノトの身体は吹き飛び、今度は左足で魔力の暴発をさせた。
「喰らえ……!」
最後、剣を手に持ち替え、剣に魔力を溜める。レオも、ヒシヒシと割れそうなシールドを前に、剣を構えてニタリと笑みを浮かべる。
ボン!! ――――ガシャン!!
砂煙漂う中、二人が立っている姿が見える。
「シールドは……?」
「あ……えっと……」
シールドは、破壊されておらず、そこには、ヒノトの剣が砕け落ちていた。
「魔力の暴発に耐えられなかったっぽいです……」
全員、ポカンと呆然とした顔を浮かべる。
「解散だ」
ただ一人、レオは早々に剣を鞘に納めた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、レオ!! 剣! 剣貸してくれ! 古い剣だったんだよ!!」
ヒノトは必死に懇願するが、レオは無視を決め込み、他の面々を帰宅させ、ヒノトも渋々帰路へ着かせた。
「な、なあ、レオ……。最後のヒノトくん……」
恐る恐る、リオンはレオに話し掛ける。普段であれば、リオンの言葉は無視されるはずだった。
「ああ、合計二発の魔力暴発。そこには、自身の肉体へ相当の負荷が掛かっているだろうが、それでも、事実として王族の魔力と同じ威力を発揮した。もし、奴が魔力の暴発をさせても壊れない剣と出会ったら……」
そう言うと、またもニタリと笑った。
「ふっ、まああんな魔力の暴発なんかに耐えられる剣、存在するはずがないがな」
そして、レオは自室へと戻って行った。
(戦闘であんなに楽しそうなレオは久々に見た……。ヒノトくんの戦い方が特殊なのもあるけど、やはり、先日のライバルという発言や、常に対等として足掻き続ける姿に、レオも認めざるを得ないのかも知れない……)
そうして一人でニコッと笑うと、リオンも自室へと戻って行った。
帰り道の寮の前で、不貞腐れるヒノトを、リリムとグラムの二人で慰めていた。
「はぁー、もう少しで破壊できたのになぁ……。アイツに勝てたのになぁー!!」
「確かに……。教えると言った割には、破壊させる前に帰すなんて……何を考えてるのかしら……」
リリムが考え込む中、グラムが言葉を加えた。
「レオの期待値を越えたんじゃないのか?」
「レオの期待値?」
「レオのシールドは、貴族院のシグマとファイの岩シールドの二重になっていて、王族の魔力を持つリオンでさえ破壊することは出来なかった」
「つまり……ハナから破壊を目的とはせず、『リオンのレベルを目指せ』ってことを伝えたかった……?」
「その可能性はあり得るだろう。本来、岩属性を二人も採用し、あそこまで強固な『岩Ⅱ不随魔法』まで発動させるパーティはそうは居ない。レオのパーティのシールドは、一人で破壊できなくて当然なんだ。それを、『破壊してみせろ』と煽り、王族の魔力であるリオンのレベルまでヒノトの地力を引き上げた」
「確かに、それなら納得が行く……と言うか、私たち以上にヒノトの性格を熟知した計算で、むしろ腹立ってきたんだけど……!」
「レオはやはり、小手先だけで神童と呼ばれているわけではない。剣術、魔力、そして知力までもを駆使して、その名を背負っているのだろう」
いつまでも「もう少しで……」と言っているヒノトの頭を叩き、リリムはシャンと立たせた。
「ヒノト、よく聞いて。私、この学寮に入学する前、街外れの魔法学校に通ってたの。そこでは自分でも言いたくないけど、一応魔王の娘だし、他は平民の子しか居なかったから、群を抜いて魔力量は常に一番高かった」
ヒノトの肩を掴みながら、リリムは俯く。
「でも、ここに来て初めて……レオに負けたの……。王族の魔力量は凄いって知ってたけど、私の魔力量はやっぱり貴族院の人たちよりも群を抜いて優ってた。それでも、レオには及ばなかった」
「リ、リリムが魔力量で劣ってんのか……?」
「そうよ。学年二位。学寮全体で四位よ……」
「リリムが……四位……!?」
「魔族だとか関係ない。上には上がいるんだって思った。だからこそ、昔の私は、ヒノトはいつも何を言ってるんだろうって思ってた。でも――――」
いつになく、リリムは真剣な顔でヒノトに向き合う。
「でも、仲間がいればそんなの関係ない……!」
ゴクリとヒノトは息を呑む。
「そう教えてくれたのは、アンタだから……」
「そうだな……。へっへっへ、負ける気がしねぇ。レオのパーティも風紀委員も、まとめて俺たちがぶっ倒すぞ!」
そうして、三人は拳を合わせた。
○DIVERSITY
ヒノト・グレイマン:ソードマン
リリム・サトゥヌシア:闇魔法
グラム・ディオール:岩属性/シールダー
リオン・キルロンド:水属性/ガンナー
○風紀委員
リゲル・スコーン:炎属性/ソードマン(炎魔剣)
カナリア・アストレア:雷属性/ウィザード(洗脳魔法)
○王子レオ パーティ
レオ・キルロンド:雷属性/ソードマン
ファイ・ソルファ:岩属性/ヒーラー
シグマ・マスタング:岩属性/シールダー
ルーク:ウィザード
◇剣術魔法
雷鳴剣術魔法:レオが鍛錬により開発した独自の剣術魔法。
炎魔剣術魔法:義賊スコーンにより継いだ魔族の力が込められた剣術魔法。
◎自然界の恩恵
・岩Ⅱ不随魔法:岩属性が二人同時に魔法が発動中、シールドが張られている味方の『シールド値』及び『攻撃力』が増加する。