11話 風紀委員
本作品は、HoYoverse様の『原神』の元素反応の仕組みや、パーティ構成などを妻に教える為に執筆を始めたので、類似している内容が見られるかと思います。(修正しながら投稿するので、酷似しているわけではありません。)
著作権の侵害等は避けるよう心掛けておりますが、引用したようなものが見られ、削除した方がよいと言われた場合、速やかに削除させて頂きます。
ストーリー自体は、全く『原神』を真似ていることはありませんので、上記のことをご理解頂ける方のみ、ご閲覧をお願いします。
夏も序盤、様々なパーティが編成されるキルロンド学寮では、練習試合のような決闘が盛んになってきていた。――が、魔王の娘と王族を率いる、ヒノトのパーティ『DIVERSITY』に声が掛かることはなかった。
「クソッ!! 俺も試合やりたい!!」
「仕方ないでしょー。誘いも来ないし、私たちから行ってもみんな拒否されちゃうんだから」
横目に悔しがる机に突っ伏すヒノトを見下ろすリリム。最近では、めっきりリゲルの姿を見掛けなくなっていた。
「リゲル……少し前から授業にも来てねぇなぁ……。何週間、顔見てないんだろ……。名前はあったから、辞めてはないんだろうけど、何があったんかなー……」
「リゲル…………」
リリムは、寮の階段で言われたことを思い返す。当時は、自分のことだけで深く相手の言葉を考えていなかったが、今のリリムならあの言葉の真意が分かる。
「私……サトゥヌシアって名前を先生にあまり呼ばないようにお願いしていたの……。それをリゲルは知ってた。その時は早くその場から逃げ出したくて考えられなかったけど……今考えてみたら、そんなことを知ってるなんてリゲルも同じだったからとしか思えない……!」
「え…………つまりどういうこと…………?」
「私たちリゲルのファーストネームしか知らないってこと!」
ヒノトは途端にハッとする。今まで、気さくに話しかけてきていたから、考えたこともなかった。
「そうか……。先生もあんまりフルネームで呼ばないから気付かなかったけど、たしかに、アイツのラストネーム……一度も聞いたことない気がする……」
その後、教員室へ聞きに行ったが、本人の意向により勝手に教えるのはNGだと帰されてしまった。
廊下をトボトボと歩く二人。
「どうすんのよ、リゲルのこと…………」
「考えたんだけど、知られたくないってことは、知られたくないってことだろ?」
「はァ? 何当たり前なこと言ってんのよ!」
「アイツが、俺たちにも知られたくないことなら、俺たちがそれを無視して知ろうとするのって、どうなのかなってさ」
「それは…………まあ……そうね…………」
「だからこの話はおしまい! きっとアイツもパーティ組んで忙しくしてんだろ! これからさ、闘技場行こうぜ! どんな奴らが戦ってんのか見てみたい!」
そして、ヒノトはニカっと笑った。
「ハァ…………これか…………」
その姿に、リリムは大きな溜息を零す。リゲルの伝えようとしてきたことをしっかり理解した。
「あ? なんだよ?」
「いーえ、アンタといると、めげてる暇がなくて疲れるなーって話よ!」
そのまま、バシバシとヒノトの背を押し、そのまま二人は闘技場へと足を運んだ。
闘技場は、トレーニング施設などと並び、広大な敷地を有しており、公式戦でも使用される為、観客席も数百〜数千人が座れるようになっていた。
「うおー! デケー!!」
ヒノトがいの一番に来そうな場所だが、生徒による初旬の勝手な行動を抑える為、夏まで立ち入り禁止となっていた。
「今は誰がやってんだろう!!」
「えっと……ここに書いてあるみたい。今、13時だからここね。えっと…………『風紀委員』VS『ANARCHY』。学寮の風紀委員パーティが戦ってるみたい」
「あー、規則取り締まってる奴らだろ?」
そのまま、雑談しながら客席への階段を登る。
「アハハ、規則取り締まる奴らもブレイバーゲームとかやるんだなぁ」
歓声が轟く中、他愛もなく話しながら闘技場内を見渡した瞬間、二人の言葉は切られた。
『ーーーー風紀委員、渾身の二連勝!! ただいまANARCHYのリーダーを倒したのは、なんと、未だ一年生のリゲルーーー!!』
会場は、ウワッと盛り上がる。
「リゲル…………!?」
二人は、唖然とその姿を眺めることしかできなかった。その容姿は、真っ赤な髪色から変色し、中心から黒い髪が少しだけ覗かせていた。
「リ、リゲル……元気そうだな……。あ、ふ、風紀委員に入ったんだな……」
動揺するヒノトに、リリムは目を見開いてヒノトの言葉に返答しなかった。
「ヒノト…………リゲルから……魔族の魔力を感じる…………」
「は…………? だってアイツは、炎属性で…………」
しかし、ヒノトの目にはハッキリ、黒髪が紛れているのがチラチラと映り込む。その内、風紀委員長 カナリア・アストレアが、マイクを握って闘技場の中央に現れた。
「今この場に居る学生諸君。我々はブレイバーゲームという競技を解体する。それに伴い、全てのパーティを我々自らの手で敗北させよう」
そう言うと、キィン……とマイクの電源は切られ、リゲルを含めた風紀委員の四人は去って行った。
「我々が全パーティを敗北って……無理でしょ」
「でも、この前の試合で、三年生の強豪パーティを下したらしいよ……」
観客席が騒然とする中、ヒノトは駆けた。
「待ってよ、ヒノト…………!」
「リゲルが…………リゲルがなんか変だ…………!!」
「それは分かるけど…………!」
ヒノトの前に立ち塞がったのは、
「レオ…………!!」
王子 レオ・キルロンドだった。
「愚民、貴様に話がある」
「今はお前に構ってる暇はねぇんだ、退けよ」
レオはいつもより落ち着いた素振りを見せていた。むしろ、一触即発に冷静さを欠いているのは、ヒノトの方だった。
「あっ、あのーーっ!」
その場を割り込むのは、レオのパーティメンバー、一年生のシールダー、ファイ・ソルファだった。
「ヒ、ヒノトさん…………今まで、レオ様と因縁があったことは聞いていますが、どうかお話を聞いてください…………」
レオのパーティメンバーとは、まるで思えないビクビクとした態度に、ヒノトの熱は少し冷めた。
「私は公式戦で、愚兄諸共、貴様らパーティを下すつもりだ。だが風紀委員は、公式戦が始まる前に、この学寮からブレイバーゲームを消すつもりでいる」
「んで……だから俺に何の用だよ…………」
「リゲル…………。貴様の友人だな。私も、以前の魔族討伐の折、少しだけ共に行動をした」
「あぁ、聞いたよ。お前の馬車に乗って行ったって……。だから急がなきゃならねぇんだ!!」
レオは、ヒノトの目を真っ直ぐに見つめる。
「奴が使っていた剣術魔法『炎魔剣』。アレは、義賊スコーンの使う剣術魔法で違いなかった」
「は…………? じゃあ、リゲルの名前って…………」
リリムは、先に全てを察し、苦い顔で俯く。
「リゲル・スコーン。魔族と契約した大罪人の息子だ」
「スコーンの……息子……。でも、いや……は……? じゃあ、なんでアイツは風紀委員にいて、ブレイバーゲームを廃止させようとしてんだ…………?」
「落ち着け。今のリゲル・スコーンは、貴様らと関わっていた頃とは違う。風紀委員長…………元王族の、カナリア・アストレアにより『洗脳』されている」
「洗脳だって…………!?」
「そうだ。カナリア・アストレアは、雷属性のウィザードだ。この齢にして上級職を獲得しているのは、この国では稀に見ないだろう」
「ウィザードって…………魔法職メイジの上位職か……。それに、王族の力で洗脳魔法も強力…………」
「言いたいことは分かったな。私と貴様が対峙する前に、我々の前には打ち倒すべき敵が現れたのだ」
そう言うと、レオは短剣をバチバチと光らせ、ヒノトの前に掲げた。
「この私自ら、貴様を鍛えてやる。まずは、防御魔法を破壊できるようにならねば、話にならんからな」
「ちょっと、勝手なこと……!」
リリムが制しようとした言葉は、満面の笑みを浮かべさせたヒノトによって切られた。
「マ、マジ!? いいのか…………!?」
「ヒノト…………!?」
「リゲルを救うには、カナリアを倒す必要があんだろ? レオの言う通り、防御魔法を破壊できる力は、ソードマンの俺には必要になってくるし、何よりレオは強ぇからな! 王族で魔力量もあって、剣術も強い奴から教えて貰えるなんて、ラッキーじゃん!」
ヒノトは笑うと、レオの目と真っ直ぐに向き合った。
○DIVERSITY
ヒノト・グレイマン:ソードマン
リリム・サトゥヌシア:闇魔法
グラム・ディオール:岩属性/シールダー
リオン・キルロンド:水属性/ガンナー
○風紀委員
リゲル・スコーン:炎属性/ソードマン(炎魔剣)
カナリア・アストレア:雷属性/ウィザード(洗脳魔法)
○王子レオ パーティ
レオ・キルロンド:雷属性/ソードマン
ファイ・ソルファ:岩属性/ヒーラー
シグマ・マスタング:岩属性/シールダー
ルーク:ウィザード
◇剣術魔法
雷鳴剣術魔法:レオが鍛錬により開発した独自の剣術魔法。
炎魔剣術魔法:義賊スコーンにより継いだ魔族の力が込められた剣術魔法。
◎自然界の恩恵
・岩Ⅱ不随魔法:岩属性が二人同時に魔法が発動中、シールドが張られている味方の『シールド値』及び『攻撃力』が増加する。