第十話 出張
今日は仕事の関係で北海道に出張に来ています。実は、僕は大手の玩具メーカーに勤めていまして、今度発売される「愛と正義の消費者ゲンナマン」関連商品の販売営業に来ているのです。
高金利で金を貸し付ける悪徳消費者金融から借金をしまくり、取立てに来たヤクザを返り討ちにする正義のヒーロー「ゲンナマン」。作中では、「いかに踏み倒すか」「いかに逃げるか」をテーマに描かれており、実際にそれを実行してトラブルになった例が多数ワイドショーで取り上げられ、その影響もあってか視聴率も平均20%を超えるなど、今現在一番世間を騒がせている注目作品です。
今回は商品化第一弾としてソフトビニール人形がうちの会社から発売される事になっています。我が社としては、今年の少年玩具部門一押しの商品として考えており、今後は少女玩具部門の「魔法少女ナマステ」関連の商品と二枚看板で売って行こうと目論んでいます。
さて、問屋さんとの打ち合わせも無事に終わり、僕は空港までやってきました。
飛行機の出発まで時間があるので土産を物色します。実は彼女から「花畑牧場の生キャラメル」をお土産に買ってくるように厳命されているのです。ここに来る前に、町にあるデパートでも見てきたのですが、何処を覗いても売り切れ。いやはや、凄い人気です。
最後の砦として、藁をも掴む思いで空港までやってきましたが、やはり何処のお土産店も売り切れ。あれだけ世間が騒いでいるくらいですからね。仕方がありません。
僕は、携帯を取り出し彼女に現状を報告します。他に欲しいお土産があれば、それで許してもらおうと思ったんです。
「あ、もしもし? 実は何処を探しても生キャラメルが売切れで……」
「見つかるまで帰って来なくていいから」
――ツーツーツー……。
僕の彼女はドSです。