他人から安易に物を貰ってはいけません!!
猫ちゃん飼いたい、癒しが足りねぇ。
ある一通の手紙がノエルの元に届いた。その手紙は封筒が赤であり、封は金の蝋でフェリラ王国の王家を象徴するエンブレムが押されている。
「……ノエル、何それ」
「何それって……王族からの手紙だけど」
「誰から?」
「お、王女様からだけど……」
それを聞いてレイゼルは出刃包丁に手が伸びそうになった。しかし、こうなったのも少し前にレイゼルが王族の手先を一人始末したせいだ。かといって、あのまま放っておくのも嫌だった。レイゼルはガチ恋勢との同担は拒否の変態なので。
ノエルにはその手紙を捨ててもらい、存在自体知らない事にしてもらう方が安全だ。そう思い、レイゼルは律儀なノエルにどう言って捨てさせるかを考える。
「(俺が言っても素直にノエルが捨てる訳ないしなー……と、なると)
ノエル、スマホ出して」
「いいけど……あっ、ちょっと」
ノエルがスマホを出すと、レイゼルはスマホを手から取って、スマホのパスワードを解除する。
「……今普通に解除してたけど、何でパスワード知ってるの?」
「彼氏だし?」
「一回も教えたこと無いよね??」
「もしもし? 俺、俺だけどさー」
「無視すんな」
(ブチっ、ツーツーツー……)
聞こえないふりをしてレイゼルがノエルのスマホから通話をかけると、すぐにぶちっと向こうから切れる。レイゼルはすぐにもう一度かけ直した。
「お義父さん? 一言も言わずに切るのは未来の婿養子に対してあんまよくないと思うんだけど、俺は」
〘少女を無差別に誘拐し、無理矢理犯した挙句撲殺する社会のゴミをようやく焼却し終えたかと思えば、突然現れたテロ組織の相手をしろと老害共からの不愉快極まりない命令に従う羽目になり、ようやくテロ犯共を豚小屋に入れる事ができ、仕事に一段落ついた瞬間に愛娘から通話が来た事に歓喜しつつ、娘の声に癒されようと通話に出ると、オレオレ詐欺の常套句が娘の声では無い上この上なく気に入らない男の声がスマートフォンのスピーカーから聞こえ、まだ認めていないというのに許可無くお義父さんとほざかれた時の俺の気持ちを、15文字以内で答えろ〙
「……あー「野郎ぶっ殺してやる」とか?」
〘次に会った時は覚えていろ〙
「理不尽過ぎて草禿げそー」
〘それで、何の用だ。くだらない用であれば切るぞ〙
「それなんだけどさ、ノエルがエリザベス王女様からの手紙を貰ったんだけど、その手紙──」
〘塵も残さず燃やせ〙
「だってさ、ノエル」
「だ、大丈夫なの、それ……」
すると少しノエルの声が聞こえたのか、グシャッ、バシャッという何かが潰れる音と水が飛び散るような音、父親以外の声がスマホの向こうから聞こえてくる。
〘ちょっ、先輩!? 食事休憩中に急にまだコーヒーの入ってるペットボトルを握り潰さないでくださいよ! って、あーっ!! 勢いが凄すぎて俺の報告書が濡れてますって!! というか、自分の服は守るんですね!! 俺の報告書も守ってくださいよ!!〙
「ほ、本当に色々と大丈夫なの!? ちょ、ちょっとレイゼル返して! えっと、もしもしお父さん? なんか物が潰れた音とか、なんか大丈夫ばなさそうな感じの話が聞こえてきたけど、王女様からの手紙の意味も合わせて色々と大丈夫?!」
〘大丈夫だ、問題無い〙
〘いや問題大アリですよね、俺の大事な報告書が茶色く染まってるんですけど。ノエルちゃん聞こえる? そっちの方でこの人注意してくれないかな、落ち着けって〙
〘黙っていろクリス、娘の声を聞き逃したらどうする〙
〘……分かりました、でも報告書は先輩が何とかして移してくださいよ? 先輩がダメにしたんですから〙
向こうが落ち着いたのを見計らい、ノエルはもう一度聞くことにした。
「お父さん、本当に大丈夫なの? 王女様からの手紙を燃やしたりなんかして……」
〘あぁ。そんな事よりも、そっちはどうだ。スラのすけに何かされてはいないか? もし何かされていたら俺が近い内に話をつけておく。それから今はさくらんぼといちごが旬だろう? 家に沢山あるんだ、今夜にでも夕食も一緒に食べに来てくれ。泊まっても構わない。いや、むしろ泊まりに来るといい。それかいっその事、明日から寮からではなくうちから学校に通う事にしよう。その方がいい、家族は常に一緒に居る方がいいからな。魔法で移動をすれば一瞬……いや待て、座学はリモート出席でどうにかできないか?〙
「お父さん、どれも全部ダメだと思うよ」
〘……そうか〙
「うん。これ以上休憩時間邪魔する訳にもいかないし、そろそろ切るね」
〘待て、まだだ。もう少しこのままでいろ〙
「……もう少しってどれくらい?」
〘2800秒くらいだ〙
「切るね」
〘待てノエル、まだ切るな。他に用は無いのか、今は思い出せないだけで少しくらいある筈だ〙
「ごめん切る」
声色に必死さは感じないが、様子が必死な父親にノエルは内心ちょっと面白く感じながらも、切ろうとしたところでふと指を止める。
「……あ、そうだ」
〘なんだ〙
「お父さんお仕事頑張ってね、大好きだよ」
(ガシャンッ)
〘先輩ッ!? 急に心臓押さえながら崩れ落ちてどうしたんですか!? 食器が落ちてますよ!?〙
〘クリス〙
〘な、なんですか?〙
〘俺の娘は世界一可愛い、それを今改めて再確認できた〙
〘あっハイ、良かったですね〙
(ピッ)
「って訳だからさ、お義父さんはその手紙は捨てた方がいいと思ってる。俺も、その手紙はすぐに捨てた方がいいと思うんだよな」
レイゼルはそう言い、ノエルに手紙を捨てさせようとする。しかし、ノエルは封筒を開けて便箋を開いた。
「ノエル??」
「正直、私も読まないで知らなかった事にした方がいい気がするけど、なんだか今読まないと大変な事になりそうだからやっぱり読むよ」
「……それって勘?」
「うん」
「なら仕方ないかー……」
「えーっと、なにな……に…………えっ」
「ノエルどーかした?」
「ちょ、ちょっ、ちょっと今すぐ出かけるからッ!!」
ノエルはそう言うと準備をし始め、髪を整えたり、魔法で爆速早着替えをするとバッグを持って身支度を整えた後でレイゼルに振り向く。
「いい、絶対に着いてきちゃダメだからね!! 私に隠れて着いてきたりとかしたら、絶対ダメだからね!! 見つけたら即、ぶっ飛ばすから!! だから絶対に、着いてきちゃダメだからね!! 分かった!?」
「あー……分かった!」
「ニョッキも! 来ちゃダメだからね!?」
「にゅ!」
やけにノエルは絶対という所を強調しながらレイゼルにそう言うと、魔法で転移をして城下町に向かった。ノエルの行先は城の門の前。近年テロが増えた為か、城への出入りが厳重になっており、門番が10人も立っていた。
「お待ちしておりました、どうぞお通りください」
「え、あ、はい……ありがとうございます」
思ったよりスムーズに通れる事に驚きつつ、ノエルはもうできることなら二度と来たくないと思っていた城の敷地に踏み入った。
「えぇっと、確かお城の庭にあるガーデンテーブルとチェアーだったよね……えっと、こっちかな」
ノエルは手紙に書かれた簡易的な地図を頼りに向かうと、そこには既にエリザベスが椅子に座っており、優雅にお茶をしていた。
「ようこそ、私様の庭へ」
「お、お邪魔してます……」
「ふふ……そう緊張なさらないで。と言っても、この私様に久しぶりに会うのだから、仕方の無い事かもしれませんけれど」
「……あの、それで王女様、私に一体どのようなご要──」
「せっかく来たのだから、そう事を急いではいけませんわ。お茶でもいかが?」
「あ、どうも、頂きます……あっ、このお茶美味しい! ローズティーですね、良い匂い……」
ノエルはゴクゴクと出された紅茶を飲んでいるが、その中にはなんだかとってもスケベな気持ちになったり、色々効能があるお薬がやっぱり入っており、普通の人なら一口飲んだだけでもすぐに目の前に居る人に襲いかかるくらいの物が入っている。
……だが、ノエルは前、保健の授業の度に強力な媚薬を自分から飲んでいた事もあり、そういった薬に耐性ができていたのであった。そして効かなくなっていく度に更に強力な物を飲んでいたので、今では媚薬などが完全にとは言えないが、効かなくなってしまったのだ。
効いても精々、なんだか普段よりちょっと暑いな、程度である。
そんな事を知らないエリザベスはニッコリと笑ってノエルの口元と喉の動きを見て、確実に飲んでいる事を確認していた。
「そうでしょう? 私様のお気に入りなのよ、ヒエリカの白薔薇で作られたローズティーが。好きな人が、よくお茶をする時に飲んでいたの」
「そうなんですね、私の家でもよく薔薇の紅茶を飲むんですよ。3時頃にお母さんがお菓子を作って用意して、お父さんが紅茶を入れて、それでいつも薔薇の紅茶を出して家族で会話をして楽しむんです」
「あら、そうなの。とても……家族の仲がよろしいのね」
「はい、とっても。
(それもほぼ毎日、両親が毎晩仲良くしてるくらいには……。というか、お母さんがお父さんに何かしてお父さんに叱られることはあるけど、本気の喧嘩をして2人の仲がギスギスしてるところなんて、見た事ない……)」
ノエルは紅茶に口を付けながら、普段の両親の様子を思い出す。……頭の中に浮かんだのは基本的にイチャイチャしているか、自分達の子供にくっつきながらやはりイチャイチャしているかである。その仲はまさに白鳥や鶴の番のよう。
「ふふふ……貴女の事がもっと知りたいわ、もっと貴女の事を私様に教えてくださる?」
「あっ……」
エリザベスがそう言った瞬間、ノエルには分かったのである。エリザベスは嘘をついているという事を。それに思わずノエルは反応してしまい、不審に思ったエリザベスがすかさず聞く。
「あら、どうされたのかしら?」
「い、いえ、なんでもないです……その、ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「よろしくってよ、私様に答えられる範囲であれば」
「王女様は何故私のような下自民に、あのようなお手紙を贈ってくださったのでしょうか? その、私に依頼をしたい、との事ですが」
ノエルはそう聞くと、エリザベスはにっこりと笑って答える。
「最近、テロとかで物騒でしょう? だから最近は私様のお気に入りのドレスデザイナーの店に通う事ができていないのよ」
「……王女様の外出に同行する護衛を私に、という事でしょうか?」
「えぇ、理解が早くて助かりますわ」
「で、ですが私には少々荷が重いと言いますか、責任があまりにも大き過ぎるような……。まだ対人の実戦経験も無いですし、力不足なので近衛兵の方達にお任せした方が──」
「春の剣技・魔法大会はお見事でしたわ」
「あっ、み、見てくださっていたんですね、ありがとうございます」
ノエルはその言葉の意味にすぐに察した。意味は「強い癖に謙遜すんな、YESと言え」である。しかしノエルはその意味に気づかないフリをするのであった。
「実は貴女が参加していた自由形の選手の中に、我が国の近衛兵も何人か参加していたのです」
「は、ハイ、そうなんですね……」
「一瞬で倒してしまい、優勝をしたお姿、とても私様は感動しましたわ。ですので、前から貴女を護衛として雇いたいと思っていたのです」
「……え゛っ??」
「あら、もしや……何か不都合でも?」
思わず素でそう言って反応してしまったノエルは、すぐに「あ、こ、光栄ですッ!!」と勢いよく言っておいた。王族に対して「うわ、嫌だ……」という態度をとるのは不敬なので。顔に思いっきり出ていたとしても、勢いで言えば多分何とかなる。たぶん。
戦闘部門では、将来は傭兵になりたい生徒や代々騎士として王家に仕えている家を次ぐ予定の生徒達が通うのと、とりあえず名門校に通いたい力と体力に自信のある生徒が通っている。
そして剣技・魔法大会で活躍し、力を見込まれた生徒には直接護衛や魔獣などの討伐依頼などをされる事もある。
実はノエルは初めての大会の時からたまに依頼を貰っていたのだが……一度も依頼を受けていない。
正確には、依頼の手紙を見た事が無いのが正解だが。
ノエルのことが大好きなでっかい柴犬が、男からの郵便物をイタズラでつい、全てビリビリに破いて存在自体を知られる事が無いようにしてしまっていたからである。ワンちゃんだから仕方ない。
なのでノエルは初めて、依頼をこうして受けさせられる事になったという訳だ。強制的に。
「……それで、王女様の外出される日程は決まっておられるのですか?」
「えぇ、あと30分程で外出する予定ですわ」
それって今日のこれからの予定じゃないですかヤダー。私、別の日の話だと思ってたんだけど……。
ノエルはそう思いながら、心からあの時働いた自分の勘に感謝した。もしあの時ノエルが手紙を読まずに燃やしていたら、王女からの依頼を無視した事になっていたのだから。
ノエルに届いた手紙の内容は、こうである。
〘ノエル様へ。エルローズ(※)が咲く季節になりましたわね、ヒエリカでお会いした日以来ですけれど、ノエル様はお元気だったかしら。実は貴女にお願いしたい事がありますの。5月19日に城まで来て下さると嬉しいわ、場所については地図を同封しておきますのでお待ちしております〙
(※ エルローズとは、名前の由来がノエルの薔薇の品種。ノエルがニョッキを召喚した時に作ったキノコの魔力を吸収する能力を、最も美しいとされる白薔薇の品種に再現し、更に美しく咲くように品種改良を施された数年前に誕生したヒエリカの白薔薇である。この薔薇の特徴は魔力で成長し、雨が降らない地域でも簡単に咲かせる事ができ、病気にも強く安価で購入できる為、庶民達でも手軽で簡単に楽しめる薔薇として人気を博している。ただし虫対策には気をつけなければならない。アブラムシとヨトウムシとカメムシ、お前らは存在してはいけない生き物だ)
「(もしお父さんの言う通りにしてたら、何をされて何言われるか分かったものじゃないな……)」
「それで、先程から思っていたのですが……そのキノコのような生き物は一体なんですの?」
「えっ?」
ノエルはエリザベスにそう言われ、周りをよく見てみるとマイペースに胞子を飛ばして仲間を増やしているニョッキがすぐ近くに居た。
「ニョッキ!?」
「にゅ?」
「な、何で!? 部屋に留守番させておいた筈……!!」
「にゅー!」
「にゅー! じゃないでしょ、何でここに居るの?」
「にゅっ! にゅにゅ、にゅーっ!」
《しかし何を言っているのか分からなかった!》
「……申し訳ございません王女様、どうやら私の使い魔が着いてきてしまったみたいです」
「構いませんわ。何もせず大人しくしていれば、ですけれど」
「あ、ありがとうございます」
ノエルはニョッキを抱えると、キノコくさい体をモチモチする事であんまり楽しくないお茶会で削られた心のHPを回復する。やはりこのあざとキノコは癒しなのである。キノコくさいが。
そんなふうにモチモチしている時、エリザベスはノエルのスイッチを押してしまうセリフを言ってしまった。
「ところでノエル様はご家族の写真などをお持ちかしら?」
「はい、持ってますよ!! 見ます!? というか見てください!!」
「えぇ、是非見せてくださる?」
この後、エリザベスはあわよくば家族にしか見せないありのままのノルトを見ようと、家族の写真を見せて欲しいと言ったことを非常に後悔する羽目となる。
エリザベスは忘れていたのだ、ヒエリカ皇族の魔物由来な凄まじい家族愛を。
「まずお見せしたいのはうちのリトルツインズです!! 私には妹のルトと弟のエルマーが居まして、一目ですぐに王女様も思う筈です、あぁ、天使だって。そう、私の妹弟は天使なんです!!」
「え、えぇ……」
「本当はすぐにでも写真を見て頂きたいところなのですが、その前に私の妹弟の魅力は写真だけではお伝えしきれないので、まずは軽くいったいどういう子なのかを──」
~約30分後~
「 くりくりなおめめをキラキラさせてて、もうてぇてぇとしか言えないんです!! だからいつも冬休みと夏休みが楽しみで!! 本当にうちのリトルツインズ罪作り過ぎる、お姉ちゃんをどこまで沼に落とせば気が済むの!?」
「……」
《王女エリザベスは放心している》
すっかりエリザベスの表情は無になり、その氷のようなライトブルーの目は遠くなっていた。
「あっ、そろそろ外出の時間ですね」
「(妹弟の話だけで時間が一瞬で過ぎたわ……流石ヒエリカの皇族、家族愛が異常なまでに強過ぎる……!!)」
「ちょっと時間が足りなくてお見せできなかったんですけど、また今度の機会にお見せしますね」
結局エリザベスはノルトどころか一枚も写真を見ることができずに、ただ無駄な時間を過ごしたのであった。
「そ、そろそろ……行きましょう、こうしている間にも時間は過ぎるばかりですわ。それにまだお話の途中ですし」
「はい! ドレスを選んだらすぐにお城に戻って私のリトルツインズ達の話の続きをしましょう!」
「…………えぇ、そうですわね」
《エリザベスは更に遠くなった目をしている!》
頭が痛くなりそうな発言を聞き、クソでかいため息をしたくなったエリザベスだが、徐々に薬の効果で変化が現れていくノエルを見て思わず口角が上がった。
ノエルは席を立つと、徐々に服に違和感を感じ始め、次第に体が変化をしている事に気がつく。
「(なんだか、さっきから服がキツイような……)
って、うわっ!? 服がパッツパツのピチピチに!? というか、声が変に……低くなってるような……待って、私成長してない? 身長伸びてない!?? 急に成長期来たの!?」
「あらあら……♡ノエル様、お身体がまるで……」
エリザベスは生唾を飲み、すっかり想い人にそっくりになったノエルを見つめる。
「見目麗しい殿方に……♡♡」
「嘘ッ!? えっ、何で!? 私何か変な物でも食べ──あっ(察し)」
ノエルが気づいた時には既に時おすし。前にレイゼルにエリザベスから狙われていると言われていたのにも関わらず、相手がか弱い女性だからと油断したのを後悔しても今更なのだ。
「(やられた……というか待って、性転換の薬は確か性欲が凄く強くなる筈!!……私にその効果が効くのかは、分からないけれど)」
ヤバいヤバいと焦り始め、ノエルはこれから起こってしまうかもしれない事故に顔が青ざめていく。
「す、すみません、このままだともしかしたら間違いが起こってしまいかねないので、やっぱり今回の事は無かった事に──」
《ノエルは逃げようとした!》
《しかし逃げられない!》
トンズラしようとした所でがっしりと腕を組まれて、そのメリハリのついた豊満ボディを押し付けられてしまい、女性相手にはあまり強く抵抗できないノエルは酷く焦り始める。今この時、助かっているのは出かける前に何となく、スカートではなくズボンで出かけた方がいい気がすると、ズボンを履いてきていたことだろう。
まぁ皇族の男子は皆体格がいい為、男体化した事でとんでもなく服がキツくて足とか腰回りとか、腕とか首とか胸が苦しくて、そっちの意味では助かっていないが。
「遠慮する事はありませんわ♡ さぁ私様とイキましょう♡♡」
「それはどっちの意味で!? あ、あの、ちょっと、離していただけませんか?!」
「性別が変わっても髪は長いままですのね、短くしたらきっと似合うと思いますわ」
「いや、だ、大丈夫です、とにかく離していただけないでしょうか、ドレスを見に行くんですよね!?」
「えぇ、ですがその前にヤリたいことができましたの♡」
「何を!?!? ちょ、ちょっと、待ってください!! ニョッキ助け──」
《しかしニョッキは何故かそこに居なかった!》
「誰かーッ!! お父さー!! ……んは仕事中で無理だからレイゼルーッ!! 助けてぇぇーッ!! 何か大事な物を奪われそうなんですけれどーッ!! 主に私の貞操が!! 童貞がぁぁぁぁぁあッ!!」
女性にあまり強く出れないノエルは情けなくも助けを呼ぶが、普段ならどこからか一瞬で駆けつけるレイゼルが何故か湧いてこない事にノエルは余計に焦りを感じていく。
(そもそもどこからともなく湧くレイゼルに慣れて、今もなんだかんだ傍に居ると思っているあたり、ノエルは相当毒されている証拠でもある)
するとその時、聞き覚えのある声がどこからか聞こえてきた。
「のぉぉぉえぇぇぇるぅぅぅぅッ!!!!」
ノエルはそちらの方を期待して見てみれば、太陽のように輝く金髪をなびかせながら、晴天を閉じ込めたかのような目をした青年が汚い声を上げながらノエルの方に走ってくる。もちろんやって来たのは某勇者である。その後ろにはキノコくさい生き物が居り、どうやらレイゼルにノエルの居場所を教えていたようである。
「レイゼルぅぅ!! ニョッキぃぃぃぃ!! グッドタイミング!! 私レイゼルを見てもう大丈夫だって安心したの、今日が人生で初めてだよ!!」
そしてレイゼルは聖力を使い、ノエルを自分の傍に瞬間移動させるとエリザベス王女に指を指す。
「おいそこのエリなんとか王女!! 何俺のノエルの童貞狙ってるんだよ!! しかもわざわざ、匂い消しの魔法でノエルの匂いを分からなくさせる小細工を使って、門の前にちょー兵士配置させて足止めとかしてさぁ!! 30分以上も遅れただろーが!!」
「(帰ったら何かご褒美あげようかな……)」
ノエルはレイゼルの無意識な自白に「やっぱり着いてきてたな、この勇者」と思いながらも安心していると──。
「ノエルの童貞は、俺のだから!! ぜってー渡さねー!!」
「おい」
いつもの余計な一言でノエルは一瞬にして褒めてあげる気が削がれていた。するとエリザベスは何故か拍手をし始める。
「姿が変わってしまっても、それでもノエル様を尚愛している……流石勇者様──いえ、御先祖様ですわね。感服致しましたわ」
「「……は?」」
「では、本来の目的であるドレスの前に、一度ノエル様の着替えるお時間を取りましょう。ご家族……ノエル様のお父様に服をお借りしてはいかが?」
「「…………は??」」
一体何を言っているんだ、この王女は。ノエルとレイゼルはそう思いながら、自分はさっさと用意された馬車がある方へ向かうエリザベスを見つめる。
「馬車の中でお待ちしておりますわね」
「「………………は????」」
ノエルとレイゼルは色々な意味で何を言っているんだこの女は、という顔をしてエリザベスの後ろ姿を見つめる。
「……レイゼル、どういうこと?」
「って言われても俺、前世より前の生って覚えてないから知らねー」
「……本当に何だあの人、薬盛って急に私を性欲剥き出しで襲おうとしたかと思えば、やって来たレイゼルが絶対離れないを分かっている上でまだ私と一緒に居ようとするあの精神、一体どうなってるの? 普通はレイゼルが来たって分かった時点で慌てるよね?? それになんでわざわざ一旦帰すような事させるの? ……まぁ、相手は王族だから一般ピーポーな私達には戻ってくる選択肢しか無いけど……」
本気で理由が分からないノエルに対し、レイゼルは何となくその理由を察した。エリザベスのこの行動の理由、それはつまり……ノルトに対する警告や脅し、挑発のような物なのだ。
いい加減無視するのを止めないと、お前の娘の方に手を出すぞ、という意味で。最初からそういう目的なのだ。レイゼルが助けに来ても、全く動揺を見せなかったのは、元々来る事が分かっていたからなのと、もしノエルとヤレたらラッキーくらいの気持ちだったからだ。
だがそのような分かりやすい思惑がある上で、レイゼルが居てもお構い無しなのだから、やはり精神というか頭の方を疑うが。分かりやすい所がなんとも、自分が覚えていない頃に作った子孫と言われれば妙に納得してしまう要因だ。
「とりあえずさ、お義父さんに連絡したら?」
「……いや、いいよ。今頃お仕事中だろうし、心配かけたくない。かといってお母さんに頼んだらロリータの服着せられそうだし……おばあちゃんはいつも忙しいらしいし……。ノイ兄はアーティファクトの超難関大学に行って勉強中、流石私の従兄。そして伯父ーズも仕事中……!! 他に誰か……」
その選択肢の中に、彼氏が入っていないのが普段のレイゼルへの信用の無さが出ている。まぁ、それ以外にも色々と理由があるのだが。
「隣に俺が居んじゃん」
「服のサイズ合ってないから無理、正直私が男の子になった時にここまで成長するとは思わなかった……レイゼルより身長高いし、足も長いし……それにしても、首が絞まる……」
なんと、ノエルは一気に180cmになり、ほぼ父親と同じ身長になってしまったのである。35cmも伸びたのだ。細かった体は一気に骨格自体が男性特有の物となり、筋肉の厚みができた結果……ちっぱいは雄っぱいへと化した。首も太くなった為、シャツの襟がノエルの首を絞める。
「あとレイゼルの趣味はゴスパンクだから、王女様と出かけるには合ってないでしょ? それに……。
私が着た後の服、絶対変な事に使うよね……」
「えー、そんな事………………しねーし」
「何、その長過ぎる間は……。他に誰か居たかな、フォーマルめな服とか用意してくれそうな人……あ! 居た!!」
思いついたノエルはすぐにスマホで連絡を入れる。
「……もしもしおじいちゃん。ちょっと信じて貰えるか分からないんだけれど、今ちょっと薬の影響で男の子になっててね、こんな声してるけどノエルです……」
〘はい、存じております〙
「あっ、見てたんだ……。とにかく、急いで王女様と出かけるのに相応しい服が欲しいんだけど、今すぐ用意とかしてもらえるかな? レンタルでいいし、どうにかしてお金は返すから──」
〘レンタル!? とんでもありません!! この事は陛──ノエリア様にお伝えしておきますゆえ!! 少々お待ちください!!〙
ブチッと通話が切れると、10秒くらいしてノエリアから通話が来る。しかもビデオ通話で。
〘エルきゅん!! 男の子になったって本当──あらやだ!! 若い頃の髪をセットしてない時のあたしにそっくり!!〙
「あ、おばあちゃん……助けて……服が……キツくて……正直もう限界……」
するとノエルの着ていたシャツのボタンがブツンッと勢いよく飛んで行き、ビリッと嫌な音が聞こえてきた。
「「あっ」」
〘あら……今すぐ用意するわ、エルきゅん〙
女物の小さくてフォーマルめな服は筋肉の圧で見るも無惨な姿となり、首から一気に3段までボタンが飛び……。
第三者の視点から見れば、何故か明らかにサイズが違う女物のフォーマルな服を着て、窒息しかけて蒼白している時にたまたまボタンが弾け飛んで、意図せずAカップ用ブラをした胸を露出をしている、細マッチョの長髪イケメンという異様な光景になってしまっていた。
「……結局、おばあちゃんに頼る事になっちゃったな」
「しかもこれ、絶対お義父さんに話行くよな」
「心配かけたくないのにぃ!! かけたら絶対お父さんの過保護が悪化するッ!! だって前に「俺が宮廷魔法士になったのは、金の為という事もあるが、妻やいつか生まれてくるであろう子供が社会のゴミ共に汚されない為だ」とか言って、私に城下町へ行かせないようにして、村以外はひとりでお出かけさせないようにしてる人だよ!? 絶対ダメ!! もう遅いけど!!」
ノエルは「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」と、ファザコン状態になっており、そんなノエルの様子を見てレイゼルはふと思う。
「……ノエルはそういうのって重く感じねーの?」
「全く? 私はただ、お父さんが私という原因で溜めたストレスと仕事の過労で死んじゃわないかが心配なの!!」
「ふーん?」
いいこと聞いた! とばかりになんだか意味深にニコニコし始めるレイゼルに、ノエルはじとーっとした目を向ける。
「いつか束縛で監禁するのはやめてよ?」
「…………」
「黙るな」
急にスンッとした顔になるので、やはり図星らしい。それからノエルはやって来たセバスチャンから渡された、測ってもいないのの何故かピッタリなサイズの服を着ると、オプションで持ってきたらしい髪を結ぶリボンで纏める。
「よし、じゃあ行こう。気を引き締めていかないと。もう絶対油断しない、物とか貰わない」
「そーして、まぁもし貰っても俺がぶん投げるけどさ!」
「……結局、普通にドレス見るだけで終わったね」
「まぁ、特になんにもなくてよかったな!」
意気込んで護衛なのに一緒の馬車に乗る事になり、気まずい空気の中何事も無く目的地に着くとドレスを吟味して、普通に城へ送り届ける事となった。
「いや、待って!? 私、いつ元の姿に戻れるの??」
「んー、一日中じゃね?」
「……だよね、こういうのって大体一日で戻るし心配しなくても大丈夫か」
「あっ……ノエル、それは今一番言っちゃいけないヤツ」
「スーーッ…………やらかした」
久しぶりにフラグを生成するノエルさんである。
我氏ね、1週間くらい前に「久しぶりにFF7ACC見てぇな……DvD版とBluRay版もあるけど、いつでもどこでも見れるようにしてぇなぁ……」となったので、アマプラ入ってるから2000円で購入して見ておりました。
やっぱファンタジー系のクソカッケーCGアニメーションはFF7ACしか勝たん。アニメの戦闘シーンとはまた違うカッコ良さがあって、我氏の中の厨二心が喜んでしまいますね。
オタクのおまいらも見ろ。ストーリーは原作の二年後の話で、ちょいちょいゲームに出てくる設定の用語とかあるけど、そこはリメイクとリバース版ではなくて原作の方を見るか、pixiv百科事典でも読んでくれ。リメイクとリバース版は展開が大分違うから……大まかな所は一緒だけど、違うんよ。
VTuberの動画じゃないと見る気失せるって人は、ホ○ライブのス○ルちゃんのアーカイブで見るんだ。ちなみにACの同時視聴もあるから、見やすいと思うぞ。FF10もいいぞ、サ〇メ嬢のアーカイブから見てねッ!!元ネタ知らんくせにワッカのネタ擦ってるやつほど見ろ、知らねぇとは言わせんぞ。
という訳で、ここから先は久しぶりに見たACの感想……というより、ACのここが好きっていうのでも言おうかね。当然、ネタバレが出てくるからこれからゲーム本編やりたいのAC見たいって人は飛ばすんじゃぞ。
語っても良いですかな?
はい、カッコイイ。
やっぱリメイクとかリバースのクラウドさんより、ACのクラウドさんの方が顔が可愛くて好き。そしてイケメェン……好き。エアリスの事があってメンタルがやられて病気になっちゃったところも非常に良き。とても良き。
そしてドスケベな裸ピチピチ黒コート3人組が可愛い。子供っぽくて。やろうとしてる事は人類滅亡だけど。
それにしても、ACとリメイクとリバースを見ると、ティファの声優(女優)さんの成長がよく分かるね。アニメ版とか酷かったけど、本当に成長したよね……。
あとティファの戦闘シーン好き。よく見ると所々リミット技が出てて良き。ファンファーレ着信音も好き。
それからこのくだりしゅき↓
マリン 「(電話)持ってる?」
ヴィンセント(持ってない事をマント広げて伝える人)
マリン「信じられない!」
その後のバハムート零式が召喚されて暴れてる時、徐々に仲間が集まってくるシーン↓
ヴィンセント「電話屋は何処だ」
めちゃくちゃ好き↑
拙者、JーEーNーOーVーA(ACver )が好き好き侍と申す。ロックが結構好きなので、ロックにアレンジされたJーEーNーOーVーAが死ぬ程好きでござる。シアトリズム、Switchのヤツ買おうかな……。あとずっと思ってたんだけど、JーEーNーOーVーA(ACver )のループバージョン、欲しい。めちゃくちゃ欲しい。
それとJーEーNーOーVーAが流れる時の戦闘シーンと仲間達のシエラ号で話してるとこが好き。シドさんの「うるっせぇな、ジャンプしろジャンプ」が好き。ちょっと言い方強めだけど、そこからみんなの仲の良さが分かるのがとても好き。
ユフィちゃんの「幼虫!?虫、虫なの!?」っていう台詞と「差別!さべーつ!!」っていう台詞が可愛くて好き。ナナキの背中に乗ってるリーブさん(猫の姿)も可愛いね。
あとこれみんな分かってくれないんだけど(まぁ我氏の気のせいかもしれんのだが)シエラ号が離れた時にクラウドの表情が一瞬、ニッて笑ってるのよ!!お前ッ!!仲間の事やっぱ好きだな!!?めちゃくちゃ大好きだな!???
そらそうか、電話には出ない癖に常に持ってて、皆からの不在電話はちゃんと聞いてるくらい好きだもんな!!どこでかは知らんけど、充電もちゃんとしてるし!!……あの教会って電気通ってないだろ、ほんとにどこで充電してんだ。
あの一人で居たいけど一人は寂しい引きずりまくりのド陰キャメンヘライケメンめッ!!
それからザックスの事も忘れてはいけない!!
出番少ないけど「俺はお前の生きた証だ」のシーンがいつ見ても好きであります。CCをやった後で見るACほど心にダイレクトアタックするものは無い。
前は可愛い子犬だったのに、あの逃避行でのザックスはマジで英雄だったよ……。
神羅兵士に引き摺られてるクラウドを、本調子じゃない状態で守って、気にかけて、マトモに返事できない状態のクラウドに明るくいっぱい話しかけて……。おまい、英雄過ぎたよ。何故逝ってしまった。ザックス……。
ところで、そんな魅力的なキャラとの絡みが見れる夢小説が古の夢女が活動していた今は亡きフォ○ストくらいにしか無いのはどうしてだい??
FF7CCR出たよね、何で??
救済モノの夢小説は……???
い、一体、何処に……????
ザックスにはエアリスという嫁が居るのは分かってるので、友達ポジの夢主が欲しい。あの尊きザクエアの間には入りたくねぇ……なので、それを拝む夢主が見たい。
自分で書けってこと??いや、自分で書くのと人のを読むのとでは栄養素が違うんすわ。だ、誰か……支部に投稿して……頼むッ!!
語り疲れたぜ。
ところで暇人の皆、どうしてフェリラ王国が今までテロはあっても革命とか起きずに、大昔からあの王族達が上に立てていたか、国が滅びなかったのかを考えたことは無い?
今回の話がヒントだずぇ。
レイゼル・ハワード
最近の出来事《いつかSに目覚めたノエルにお尻を容赦なくいじめて欲しいので、自分で開拓中。段々アヘ顔ダブルピースをしてメスイキができるようになってきた。この度ノエルが男の子になったので、ア〇ル処女をあげて童貞を貰おうとしている。ノエルはノエルなので、男の子になっていて普通にBL同人みたいな感じになっても特に気にしない。それに男の子になってるのは今だけなので、色々と楽しみたい》
ノエル・ヴェリカ
最近の出来事《無理やり男の子にされたけど、結構早く順応してる。前世も含めてあんまり身長高くなかったので、高身長に実は内心感動している。ファザコンでおばあちゃん(♂)大好き星人なので、その2人によく似たイケメンになれたのが結構嬉しい。ただ、男の子になったのでお腹が減るし、ムラムラして生理的現象に困っている。何よりも困るのが、それでムラムラしているのを察したレイゼルがハァハァして近寄ってくること》