IF 番外編 もしも全員猫だったら
リア友と前に話してたらね……我氏が「オタクだからついオリキャラの擬獣(猫)化を妄想しちゃうの……」って話をして、お互いにオリキャラの妄想してたら、リア友がなんとノエルさん達の擬獣(猫)化した姿を描いてくれたの。
やったぜ!
という訳で、小説にします。普段より短めだけど。
……そういえば我氏、リア友が絵を支援してもらう度に小説を書いている気がするな?
つまり我氏はそれくらいチョロいという事……。
もしファンアでネタになりそうな絵を貰ったら、時間がある時に小説を作者は書きます。
男は一人、ペットショップへと赴いていた。その理由はただ一つ、人間様に飼われ、飼い慣らされる哀れな畜生共の面を見る為である。
決して癒される為ではなく、全哺乳類の中で最も賢い動物の人間様なのだということをマウントしに来たのだ。
顔がゆるゆるになってしまっているが、決して仕事終わりで荒んだ精神を浄化する為に来たのではない。犬、猫の畜生共に、余裕の態度でお前達は支配される側なのだということを知らしめる為である。
男の日課はペットショップへ赴き、畜生共にマウントをとる事であった。だがしかしこの日、男は運命の出会いを果たす。
「おっ、新顔だ……な…………」
透明なガラス越しに居たのは、なんとも可愛らしくも気高そう……いや、人間に搾取されそうな容姿と無駄に自我が強そうな真っ白なメインクーンの子猫だった。
「にゃーん」
「すみません、この子飼います」
即決であった。
何故なら男は本能で「うちの子だ……」と理解したからだ。そして数日後に男はその子猫を迎え入れ、家の中へ監獄する事に決め……更に数日後、ケージから出してからようやく気がついた。
「ノエリア……お前、オスだったのか……勝手にメスだったのかと」
子猫のにゃんたまを見て、初めて男はようやく性別を知ったのであった。一方の子猫……命名、ノエリアは不躾ににゃんたまを見てくる飼い主に「ちょっと、何見てるのよ!」と、パンチをひとつくらわせた。中身はうら若き乙女なので。
ノエリアは普通の猫に比べ、子猫なのにも関わらずとんでもなく力が強い。だが爪は立てていないあたり、優しさはあるのである。叩かれた頬は赤くなったが。……大人になった時はどうなる事やら。
~・~・~・~
ノエリアがやってきてから数ヶ月、家の中はある意味で様変わりした。
バキッ!! バコッ!!
鳴ってはいけない音が鳴り、壁には新しいノエリア作の芸術ができあがる。そしてその傍らには、無惨にも真ん中からポッキリと折れた猫じゃらしがあった。
じっと折れてしまった猫じゃらしを見て、それからイカ耳の状態で飼い主を見る。その視線は「何あたしの物を折ってるのよ」と言わんばかりである。
「お前が折ったんだろ」
「ウゥヴゥ……」
「理不尽」
しかしそんな理不尽なのが猫という生き物である。ノエリアは「仕方ないわね」といった様子で折れた猫じゃらしの先で遊ぶ事にしたが、やはり飼い主に"やらせてあげる"方が楽しいのだ。
すぐに飽きてノエリアは外に行き、見回りをする事にしたのだった。ノエリアはいつも暇な時は散歩という名の見回りへ行き、小さな平和を守っている。本当に小さくはあるが、実際にそれで助かっている人間は数多い。
例えば──。
「あっ! でっかいねこだ!!」
「大きな声を出したら猫さんが驚くでしょ?」
エネコログサを持って遊びたそうにしている男児に構ってあげたり。
「フシャ──ッ!!」
「ブンブンブンブン!!」
「ブンブンッ!!」
民家の屋根にできたスズメバチの巣を破壊、そして何故かノーダメで無双して「害虫ごときがこのあたしに勝てるはずないでしょう? 身の程を知りなさい!!」と、強制退去させたり。
「にゃーん♡」
「にゃーにゃー!」
お腹を空かせた見知らぬ子猫にご飯を分け与え、野生として強く生きる為の方法を何故か家猫のノエリアが伝授させてたり。
ちなみに子猫達にノエリアが教えた事は「ご飯は人間から貰う方が効率がいいけれど、中には危険な人間も居る。人間が用意してくるご飯が道にばらまかれていたら、絶対にそれは食べたらダメよ」という物だ。テレビで猫の虐殺ニュースを見た飼い主が「ノエリア、道端に落ちてるカリカリご飯と猫缶は絶対に食べるなよ〜」と、言っていたので学習したらしい。とってもかちこい猫ちゃんである。
あとは時々生意気な集団で揶揄ってくるカラスに力の差を分からせ、ゴミの被害をなくしたりもしている。そんな訳で、何故か近所ではボス猫がまさかの家猫という事態に。普通は群れる事をしない猫がいつの間にかノエリアに着いていき、舎弟というよりも信者のようなものを獲得していったのだった。
そんな破天荒なノエリアはいつものようにお散歩していた。
「!!」
その途中、ノエリアは見つけたのである。目隠れの超絶どタイプな雌のサバトラだ、いわゆる一目惚れというものをノエリアは猫生で初めて味わったのであった。
しかしそのサバトラ猫はノエリアを見るや否や、怯えた様子で逃げ出してしまった。それもその筈、まだノエリアは成猫ではないのにも関わらず、とんでもなくビッグサイズな雄の子猫だったからだ。
メインクーンなので、とにかく大きい。それもノエリアは普通のメインクーンの子猫と比較してもとにかく大きいのだ。
(まぁこれ以上大きくならないだろ! と飼い主は思っているが……完全にフラグである)
「にゃ……」
タイプの子に逃げられた事にしょんぼりとしながらもノエリアは「また会いに行けばいいわよね!」と考え直していつもの見回りコースを優雅に歩くのだった。
~・~・~・~
「にゃん」
「おいまてノエリア、なんだその猫は」
「にゃー」
ある日飼い主は帰ってきたノエリアが見知らぬ雌猫を連れてきた事に驚いた。しかも見知らぬ猫やノエリアはさも「これからよろしく」と言わんばかりに普通にゆっくりと過ごしている。
「いやいやいやいや!! 待て、おいコラ! 何まったりしてんだお前達は!!」
「……?」
「何を言ってるのかが分からないみたいな感じになんな」
そんなふうに言っているが、飼い主は既に謎の猫を飼う事を決めていた。なんなら名前も決めている。名前はスクイナだ。
「全く……いいか、もう絶対に他の猫連れてくるなよ。俺の財布がまた軽くなる」
~数年後~
「なんでこうなったんだ??」
気づけば家は猫だらけになっており、ノエリアの子供が更に子供を産み、今では総勢で10匹である。しかもノエリアの血が濃いのか、白い猫しか生まれない。一体どうなってるんだと飼い主は頭を抱えた。
もちろん去勢しようとしたのだが、その気配を感じ取ると全力で暴れるので諦めた。何しろ、猫とは思えない馬鹿力で物を破壊しながら暴れるので。
そして今ではその猫達の日常を撮り、動画にしてアップロードしてみたらチャンネル登録者数が10万以上になり、収益化した。その結果、飼い主は無職となった。今では猫達に養ってもらっている立場である。
猫様々だ。
「にゃー」
「ん? どうしたノエル」
そんな時、ノエリアの息子、三男のノルトとノルトが散歩の時に連れて帰ってきた嫁のマリエッタとの間に数ヶ月前に生まれたノエルが飼い主の元へやってきた。
ノエルはプライドと自尊心が異様に高いノエリア達に比べたら比較的に触らせてくれる方の猫である。まぁツンデレなのには変わらないが。
「にゃ」
「全く、ちゅーる欲しい時だけやって来やがって……そんなんで俺が喜ぶと思ってんのか?
大当たりだよ畜生」
ちなみにこれが父親の場合だと、ちゅーるを自分に貢ぐのは当たり前だと思っている節があるので「さっさと持ってこい」と言わんばかりな態度でじっと見てくる。
しかも味には五月蝿い方なので、その時の気分に合ったお気に入りのご飯やオヤツでなければ餌の入った皿を、まるで洋画にある酒の入ったグラスをスライドさせるかのごとく妻の方に飛ばすのである。妻の方は残飯をもらって喜ぶが。
それに比べたら、娘は可愛い方である。それから同じノエリアの孫であるノイルは、飼い主が触ると異様に毛繕いをするし、なんなら触ろうとするとサッと逃げていく。何故かお風呂の時だけは普通に触らせてくれるし、大人しく入ってくれるので助かるが……原因は謎である。
「にゃーん」
「分かった分かった、すぐに持ってくるからな」
飼い主はそう言いちゅーるを棚から出そうとした……が。
「……そうだ、ちゅーる切らしてたんだった」
「にゃっ!?」
なんと下僕である飼い主は貢物を用意するのを忘れていたという失態を犯していたのである。頭がいいからか、その言葉を聞いていたらしい人間の言葉を理解している節のあるニャンズ達はじとーっとした目を向け、ノエルは明らかにショックを受けていた。
「にゃ……」
「ウゥゥゥヴヴヴ……」
「ごめんて……」
娘がとてもショックを受けている事にモンスターペアレントのノルトが飼い主に威嚇をし、ノエリアはいつの間にか飼い主の足元でただじっと見ていた。ハイライトが無いのが余計に怖い。うちの子に期待させておいて悲しませてるんじゃないわよ、といった様子である。
「しゃーない……ペットショップ行って、ついでにお前の欲しい頑丈そうなおもちゃ買ってやるから」
「にゃー!」
ノエルはすぐに元気になると、ピーンとしっぽを立ててサービスとして飼い主にスリスリをする。周りからのニャンズ達からの視線が痛いが、飼い主はノエルを連れていつものペットショップに向かった。
ペットショップが結構家と近いので、普通に歩いて行ける距離なので上機嫌なノエルと歩いて向かったのである。着いた先のペットショップでは新商品の猫用おやつがあり、それぞれ好きそうな物を買い、ノエル本猫におもちゃを選ばせていた。
会計が終わり、帰ろうとした時である。
「にゃ────っ!!!」
やけに興奮した、商品のベンガル猫がノエルに目を輝かせながら自分の存在を主張させていた。とても激しく動いたりしながら。
飼い主にはその猫に覚えがあった。とにかく男の客には愛想が無く、一切の遊びにも興味が無い。生気すらもほとんどない、ガラス窓のケージに1匹だけ入れられた雄猫だ。店員曰く誰にも懐いておらず、雄猫を同じケージに入れると喧嘩になるので一匹のみらしい。
だからか顔が良いのに中々買い手がつかない為、保護施設行きが近い猫である。まぁそうなるかは実際の所知らないので、男がそう勝手に思っているだけなのだが。
そんな猫がノエルを見た途端、まるで人ならぬ猫が変わったかのように生き生きとし始めた。
「な、なんだお前!? どうした!?」
「にゃ──────っ!!!」
「えっ!??」
明らかにそっちに行きたいと言わんばかりにガラスをカリカリと引っ掻き始め、それを見た店員が驚いてすっ飛んできた。
「ど、どうしちゃったの?」
「にゃ────────────っ!!!!」
「にゃ……」
ノエルの方はなんだコイツといった様子であるが、ベンガル猫はお構い無し。無我夢中でノエルを見て興奮していた。しっぽをピーンと立てて、まるでバイブレーションかのようにしっぽだけではなく体全身を揺らせて。まるで痙攣しているかのようで、病気なのかと心配になる程だ。
店員が大急ぎでケージから出すと、ベンガル猫は店員の手から離れようと暴れ、腕を引っ掻いてしまい、思わず手を離してしまった店員の隙を見計らってノエルの方に一目散に駆けつける。
「ふにゃーん♡♡♡」
そして店員も聞いたことが無いような媚び媚びの声を出して、ノエルにスリスリしていたのだった。ノエルの方は驚きすぎて、目をまん丸にさせてキョロキョロしていた。
とはいえ、帰ろうとしていた訳なのでずっとそうさせている訳にもいかず、ノエルを抱えてその場を離れようとするとベンガル猫がそれを全力で阻止しようとしてきて、飼い主は何とか宇宙を背負った状態のノエルを連れて帰った。
それから一週間後、飼い主はまたペットショップに行ってみたら店員が大慌で飼い主の元にやってきた。
「本日も来ていただいてありがとうございます、それでお客様、突然すみません!! お願いがあります!!」
「あ、はい。どうかしました?」
「実はあのベンガルの子がうつ病になってしまって、一切ご飯を食べなくなってしまったんです!! もう一度あの子を連れてきてくださいませんか!!」
「えっ」
飼い主は「おいそこまで嫌だったのかよ」と思いながら、ベンガル猫を見せてもらうと……。なんか明らかに目のハイライトが消えて「ノエル……」と思ってそうな超絶病み病み状態になっていた。超特急で病院行きに警戒するノエルを連れて、ベンガル猫に見せてみると……。
「にゃ!!! にゃ──っ♡♡」
「マジかよ」
一瞬で元気になり、思い出したかのように喉が渇いたのか水をゴクゴク飲んで、腹が減ったと鳴き、またノエルに媚びていた。そんな様子を見て飼い主は──。
「……また増えちまった」
ベンガル猫を飼うことにし、名前をレイゼルと付けたのだった。ちなみにレイゼルは1時間ごとに飼い主の元へやってくると「にゃー?」とだけ鳴いて離れていく。一体何がしたいのかが謎だったが、ある日飼い主がニャウリンガルを買ってきた事で判明するのだった。
~・~・~・~
「ふっふっふ、とうとう手に入れたぞ! テッテレテッテテッテッテー! ニャウリンガル~!」
ゴソゴソと昔のド○えもんかのようにポケットから出してそう言うと、飼い主は早速動画を回しながらニャンズ達に使う事にした。
「ノエリア、なんか言ってみてくれ」
「にゃー?」
早速鳴いてくれたので、鳴き声をマイクで拾ったニャウリンガルに目を向けると……。そこには『あら、新しいおもちゃかしら?』と、ニャウリンガルで訳されており、ノエリアを見てみると遊びモードに入っていた。
「これはおもちゃじゃないんだ……壊れるからやめてくれ」
「にゃー」
『期待させるんじゃないわよバ飼い主』
「バ……!?」
「にゃーお」
『それより遊んであげるから、あたしのおもちゃを出しなさい』
なんとも上から目線な翻訳が出てきて、飼い主は驚いていると急かすようにノエリアは前足で飼い主を優しくぺしぺししていた。もれなくおもちゃはバッキバキにへし折れ、飼い主は理不尽な怒りを浴びせられる事となったが。
そして飼い主は他の猫にもニャウリンガルを使う事にし、今日も妻から奉仕という名の毛繕いをされているノルトにも使ってみる事にした。
「ノルト、なんか言ってくれ」
「……」
「何でもいいから、ほら。言ってくれたらちゅーるやるから」
「…………」
物で釣ろうとするものの、ノルトは完全無視。いや、目線はこっちを向いているのだが……その目はまるで「それがこの俺にものを頼む態度か?」と言っているかのような目だった。
「お願いします、何でもいいので喋ってください……」
「にゃ」
『さっさと出せ』
飼い主はすぐにちゅーるを献上した。
それからノエリア、ノルトと来て次はノエルだな! 飼い主はそう思い、今日も相変わらずレイゼルにゴロにゃんぺろぺろべろべろされてウザがっている様子のノエルの元に行くことにした。
「にゃあん♡ にゃ────っ♡ にゃんにゃ♡♡」
『ノエル♡ しゅきしゅきしゅきしゅき♡ 交尾しよ♡♡』
「うぉう、とんでもねえの拾っちまったぞ」
ノエルの元へ行く途中、レイゼルのクソでかい鳴き声をニャウリンガルが拾ってしまい、たまたま翻訳してしまったので「これ動画に流して平気か?」と飼い主はそんなふうに思っていると、ノエルがその次の瞬間に猫パンチをレイゼルにくらわせていた。パンチを受けた方は……しっぽをピーンと立ててバイブレーションして喜んでいた。
「やっぱコイツドMだよな……」
飼い主はそう呟いていると、その声にレイゼルが反応して飼い主の方を向いた。
「ん? どうしたレイゼル」
「にゃー?」
『お前だれー?』
「…………えっ??」
飼い主は一瞬何を言われたのかが理解できず、意識が宇宙を漂いかけると、レイゼルが後ろを向いてノエルの方へ歩こうとした。
「にゃ」
『まぁいっか』
「いいかで済ますなよ!! 俺お前の飼い主!! お前を世話してる奴!!! 忘れんな!!!!」
「にゃにゃーお……にゃ?」
『俺にそんな奴居ないけど……何言ってんの?』
まるで異常者を見るかのような目を向けてくるレイゼルに飼い主は泣きそうになった。するとノエルがレイゼルをまたビンタする。
「にゃー!!」
『毎日会ってるでしょ、忘れんな!!』
「にゃっ♡♡」
『あんっ♡♡』
「……ニャウリンガル、封印しよう」
全ては己の心の平穏を守る為、飼い主は固くそう決意した。