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チュートリアル用チョロイン幼馴染に転生してしまった  作者: 水性さん
学校編 1年目!!!
38/52

過保護!!!



パッパがレイゼルくんをオトナにさせたい話。


大丈夫、まだこれくらいの表現ならいける……たぶんいける!!





追記 誤字脱字を頑張ってなくしております。もし見つけたらご報告、お願いします。





 どうもこんにちは、久しぶりに実家の果物を食べて幸せな気分になっているノエルです。今の季節はいちごが旬なので、いちごをつまんでおります。いちごをつまみながら、ダイニングテーブルに勉強道具一式を広げてお父さんと魔法のお勉強で特訓をしております。


 ただちょっと気になる事がある。



「お父さん……なんか前より距離が近くない?」


「気のせいだろう、それより集中しろ」



 いや、それが近いんですよ。だって椅子同士がくっついちゃってるし、椅子がくっついてれば体もピッタリとくっついてる。超至近距離。もし私が娘じゃなくてレイゼルも居なかったら、禁断の恋を繰り広げていただろう。まぁお父さんはお母さんにしか興味無いから他の女性には目もくれないし、もしも他の女性に目移りするようなら私の方が無理になるけど。やっぱり一途な人が1番だからね。


 ちなみに私はどんな特訓をしているのかというと、魔力を剣に込めながら、私の草魔法の強化をする為に魔法化学の生物学やこの世に存在する植物や虫、動物などのお勉強をしています。剣技・魔法大会があった後、なんとお父さんは草魔法を使っていた私に教えられるように一から生物学を学んだらしいです。私の父親、とんでもなさすぎる。


 でもどうして魔力を剣に込めているのかというと、充魔式魔法剣は魔力を貯めることができるから。でももっと正確に言うと、ジェームズさんが私に作ってくれた剣はただ魔力を貯めるだけじゃなく、一度魔力を限界まで貯めると、一度全部貯めたものを魔石にしてストックする機能が付いているから。葉や雫のような形をした魔石にすることで、何個も何個もストックを作っていき……なるべく私自身が持っている魔力の消費を抑える。


 そして常に魔力を消費していくことで、体が魔力を生成する速度を上げるようにする。



「いいかノエル、魔力は自分の血であり酸素だと思え。魔法を使う事は悪い事では無いが、使い過ぎると大会の時(・・・・)のようになる」


「それは痛い程に身に染みております、ハイ……」



「次は気をつけろ、アレは魂が神(勇者)なだけはある。体格差もあるからな、そしてあの防御力を突破しなければノエルの攻撃は通らない。アレの息の根を止めるつもりでやれ」



 そう言いながらお父さんは私の頭をナデナデしてくれる。……良い。



《ノエルは幸せな気分になっている!》


「ノエル、集中」


「できましぇん……」



「常に冷静さと集中力、闘争心を持つ事を忘れるな」


「じゃあ撫でるのやめてください……」



「……本当に、やめて欲しいのか?」



 すると斜め上の耳元から悪魔の囁きのようなイケボが聞こえてくる。


 ちょ待てよ、いや待ってください!?  お父さん「ホントウニヤメテホシイノカ」ってどういう事ですかね!?? 


 何ですかそのセリフは!? 娘に言う時のセリフと声じゃないと思います!! 何故か色気しか感じないです!! お父さんは別にそういう意味じゃないんだろうけど!! これ無意識にSな部分出ちゃってるやつだ!! 私知ってる!! 進○ゼミでやったところだ!! (?)


《ノエルは混乱している!》



「お父さん……。

















 やめないでくださいお願いします」


「いい子だ」



 本当に娘で良かった。私が息子だったとしてもナデナデしてくれてただろうけど、娘で良かった。



「親子でSMみたいなのすんのはおかしいと思う。なんなら未来の義息子をアレ呼びするのと、本人の目の前で次の対策練るのっておかしいと思う。


 一番おかしいのは、ノエルが俺に構わずにお義父さんとイチャイチャしてる事だと思う」



 ハイライトを消失させながら、レイゼルはお父さんに撫でられている私の方をじっと見てくる。後で構ってあげる事にしよう。仕方ないからね、うん。



「あえー」


「えーあん!!」



 すると私のリトルベリキュートブラザーズがハイハイしてやってくる。うーん、うちの妹と弟、天使では?? ホント大天使だな、クッソ可愛いな。可愛い、うちの妹弟可愛い。けど集中できないから、今だけは来ないで。お願いだから、お姉ちゃん困っちゃうからやめてね。



「ごめんね、後でね……」


「ああえ」


「や──っ!!!」



 そうかぁ、嫌かぁ……。でもお姉ちゃん、凄く困る。



「や────っ!!!!」



 待って、エルマーが凄く地団駄(?)を踏んでる。可愛い、私の弟可愛過ぎません? 



「お父さん、勉強後にしていい?」


「駄目だ」



「でもっ!! これ、難易度ルナティック過ぎませんか!! こんな状況下で普通に勉強しながら魔力の操作なんて!! そんな器用な事、私にはできないと思います!!」


「俺の娘にできないわけが無いだろう」



 お父さん待って、その自信はどこから来るの。無理だよ、こんなに可愛い妹と弟を無視して勉強するなんて!! 



「そんな事言われたって無理だよぉ!!」


「ノエル、勉強しろ」



 はい、やります……。


 私はそれから心を鬼にして、構って欲しそうなルトとエルマーを無視していた。



「(よし、よしよし……心が痛むけど、この調子ならイケる──)」


「にゃーん♡」



 と、まさかのここでラスボスが登場。クソッ!! 何でだ!!! 


 いつの間にか実家に新しく揃えられた白いモップこと、エル。そんなエルはにゃーにゃー言いながら私にちゅーるをねだろうとしてきた。



「ヴッ……!!」



 な、ナデナデしたいぃ!!  家は誘惑が多過ぎる、本当に多過ぎるよ!! 


 きっとこれは私に課せられた試練、そうに違いない。ムの修行なんだ、きっとその内に私のご先祖さまが出てきてくるに違いない。



『もう我慢しなくていいんじゃね? ほら、楽園はすぐそこだぞ♡』



 わーっ!! 見た事ないけど、曽祖父あたりの人がなんか頭に浮かび上がってきた!!! しかもなんという悪魔の囁き!! 


 ……いや、でもちょっとくらい良いのでは? 私結構頑張ったよね、じゃあもう良いよね……。


 ──いやいやいや!! 待て、私の中の悪なる心という名の本能!!  私にはマ○カントに行く手段が無いんだから、無理やり物理的に叩き潰すのは無理だろうが!! 


 落ち着いて餅をつけ私、何とかして冷静に──。



『そんなの無理に決まってるじゃないか、もう諦めたらどうだい?』



 うわ、モノホンの先祖来た気がする。先祖にそんな事言われちゃったらもう仕方ないね、諦めよう! やっぱり人生には潔さっていうのが大事だと思う。


 私は2人と1匹を一緒に抱えて、本能が赴くままに抱き締めた。もちろん、ケガをさせない程度の力で。



「今日もエルちゃ可愛いねぇぇぇ~~っ♡ もちろんルトゥとマーくんも世界で一番可愛いよ♡♡ もちもちほっぺとぷにぷに肉球が超絶可愛いぃぃぃぃ♡♡♡ もう可愛いしか言えない!!! 尊さがインフィニティ……はぁ、ミルクとかぐわしい匂いがするぅ……ここは天国か……」


「集中」



 そう言うならお父さん、その隠しきれない緩んだ顔とナデナデを止めてください。いや、やっぱりやめないでください。


 するとレイゼルが真っ黒な目でじっと私を見ながら尋ねてくる。



「俺は??」


「子猫や赤ちゃんと同じ土俵に立てる訳が無いでしょ」



「絶対俺の方が可愛い!!」



 何言ってんだこいつ。私は思わず猫ミームの「Huh?」という猫みたいになりかけた。



「俺の方が可愛いし!!!!」


「ちょっと何言ってるのか分からない……」



 本当によく分からないんだけども。そう思っていると、レイゼルは「停滞期だぁぁぁああ!! これからノエルが俺の事好きじゃなくなるんだぁぁぁあああ!!!!」と、騒ぎ泣き出した。


 ……手がかかるって意味なら、赤ちゃんと同レベだよ。良かったね。……いや、全然良くない。



「お父さん、勉強にならないからこのやり方と場所と時間を変えた方がいい気がしてきた」


「……そうだな」



 レイゼルが五月蝿いので、私は仕方なく勉強道具一式を持つと、自分の部屋に戻る。レイゼルは私の後ろを着いていって、一緒の部屋に入るとすぐに私の部屋の鍵を閉めて前から抱き締めてきた。



「寂じがっだ!!!!」


「我慢できて偉い偉い」



 仕方ないのでレイゼルの頭をナデナデしてみると、普段はそれで機嫌を取り戻すものの……今回はそうもいかないらしい。



「ノエルが俺の機嫌を適当にとろうとしてる……」


「(バレてる……)」



「……ノエルの方からキスしてくれたら許す」



 なんだ、キスして欲しいだけか。ただ……レイゼル、今回は私の方からディープの方をしないと機嫌を取り戻さない気がする。前に私の方からキスした時、ディープキスの方が良かったとか言ってたし。



「…………ノエル、俺の事好き?」



 するとレイゼルは、いつもの確認(・・)をしてくる。必ず一日に一回、多い時は5回も聞いてくるこの確認は、レイゼルの情緒が不安定な時とかに起こる。



「まぁ、好きな方だよ」


「俺の事好きじゃないってこと……?」



「……はぁ??」



 今完全に私の地雷踏んだな、コイツ。そんな訳ねぇだろうが、それに分かってんだろ。こういう時だけそんな風に言いやがって。



「だって好きな方って事は、普通よりかは好きって事だから、俺の事はそういう意味では好きじゃないって事じゃんか!!」



 完全にいじけてるな。まぁそれもあるけど、スキンシップ減ったから情緒が不安定になってる。それもいつも以上に。こういう時の人には普通の言葉とかじゃ何も伝わらない。13はまだ子供で多感な時期だから仕方ないとして……いや、前世持ちだからアウトか。



「好きだけど」


「嘘じゃないなら早く」



 レイゼルは急かすようにして言ってきて、私は魔法で荷物を机の上に転移させると抱き締め返した。



「……もっと強く」


「これくらい?」



 仕方ないレイゼルにもう少し強めに抱き締めてあげると、少し満足したらしく「ん」と言ってスリスリしてくる。……抱き締めるだけでなんか結構機嫌良くなってない? 本当に不安定だな。


 ただ、こうなったのにも私に原因があるし、愛情表現は必要か。家に帰ったから最近はレイゼルに構うことが減ったし。学校では常に一緒に居るようになったから、もう限界値が来たんだろう。本当に仕方ない勇者様だ。


 なら今回は私の方からしてあげてもいい。私はレイゼルの目を手で覆うと、まずは普通に触れるだけのキスをした。



「んー……」



 手を退けてこようとするので、魔法でレイゼルの目の方に、光の見え方を操作する魔法をかけておいた。これで何も見えまい。


 私の顔が見えなくて不満げだけど、目に聖力使ったらお互いに眩しくなるからね。大人しくレイゼルは私からのキスを受け入れていた。そして少ししてからレイゼルにバードキスをすると、レイゼルのアホ毛がみょんみょんと動き始めて、私を抱きしめる力が強くなる。どうやら喜んでいるらしい。


 いつもレイゼルからキスをしてくるものだから、私が主導権を握る事はほとんどない。……たまには、私の方から攻めてみようか? 


 私はレイゼルの耳に手を当てて塞ぐと、レイゼルは「ん……?」と頭にハテナマークを浮かべている様子。どうやらこういうキスは未経験だったらしい、ちょっといい気分。


 私がいい気分になった所で、何をする気なのか分かっていないレイゼル本人が所望しているだろう、ディープキスをする事にした。



「んっ!?」



 耳が塞がれる事で自分の息やキスをしている時の音がこもって聞こえるし、目が完全に見えない事で感覚が敏感になる。



「ん、はぁ♡ ちゅ、んむ……♡」



 もう気持ちよさそうな顔をしてるレイゼルだけど、こんなでそうなってもらったら困る。散々セッ……をする時に好き勝手していた分と今回のも含め、今回に限っては借りを返しておこう。


 でもその前に一言、言っておきたい事がある。



「……絶対にありえないけど私が本当に浮気してたら──、
























 その時は一緒に死んでやるから、二度と言うなよクソ勇者が」



 それから私は全力でレイゼルが立てなくなりそうな箇所を重点的に攻めた。



 ~10分後~



 部屋からレイゼルと一緒に出てリビングに行くと、フラフラでヘロヘロで、顔が赤くて大人しくなったレイゼルを私の家族全員が見てくる。



「あら♡」


「……」



 お母さん、そんな「結婚も早いわね♡」みたいなふうに思ってる顔をやめてください。お父さんは「血か……」みたいに思ってるでしょ。私分かるからね、勘で。


 あれ、お母さんいつの間にか格好変わってる。外行き用の完全にお母さんの趣味全開な甘ロリ服になってるな、もうこんな時間か……。そう思っていると、お父さんが話しかけてきた。



「ノエル、お母さんの仕事を手伝いに行ったらどうだ」


「えっ、いいの?」



 普段、城下町になんて絶対に行かせないお父さんが珍しくそんな事を言って来た事に、私は驚いていると「今日の販売先はバレッタ(※ 《ref》フランスに似た国《/ref》)だ」と言ってくるから、過保護だなぁと思いながらも、急にそんな事を言ってきた理由に察して、私のお父さんは世界一だな……とファザコン化していた。私は自他ともに認めるファザコンだからね、それに最強で最高のお父さんだし。別に恥ずかしくない。



「……大丈夫(・・・)かな?  大丈夫じゃないと思うんだけど……」


「問題無い。それよりノエルは気にせずに行って楽しんでこい、こういう時間は必要な事だからな」



 そう言うと、お父さんはスマホ的なアーティファクトを出して操作……しようとして「あぁ、そういえばノエルはまだ持っていなかったな」と言う。



「……手紙(アナログ)も捨て難いが、日々の連絡や緊急時にも役立つか」



 少し独り言を言って「3分間待っていてくれ」とお父さんは席を立つと夫婦の共有部屋に行って3分。なんだかお父さんの魔力が感じてくる、何してるんだろう。そう思って待っていると、本当に3分後に部屋を出てやって来た。



「ノエル、これからはこれを使って連絡を入れてくれ。ヒエリカに行った時もこれで買い物ができるからな、金は既に入れておくが、無駄遣いはするな」


「ありがとうお父さん!」



 そう言って持ってきた物がなんと、前世の生命線……そう、スマホである。大切に使おう……この世界のアプリゲームとか入れちゃおうかなとか思ってないからね、ぜんぜん。



「ノエル、ゲームする気だろ」


「そんな訳ないでしょ」



「超顔背けてるじゃん」


「すっごく高かったでしょ、これ」


「いや、170ソルだ」


 話をそらそうとしてお父さんに聞いてみるものの、とんでもない破格の料金が出てきて私は一瞬不安になった。けど、お父さんがそんな性能悪い物を渡してくる筈がない。


 そう思いながら私はスマホの設定とかいじったり、魔力の登録をしてロックが外れるようにした。それから私はスマホの容量を見て確認。ここ、大事だからね。



「あー400ね、ゲーム入れ放題……ん??  いや待ってこれ、単位違う」


「うわ、えっぐ。スマホでただ普通に使う時の容量じゃねーだろ」



 なんとまさかのTB(テラバイト)……。どういうことだってばよ、とんでもなく容量が凄い。



「400TBって……流石に多すぎません?」


「ヒエリカでは普通だ」



 あっ、なるほど……映像とか音声とかの進歩によって、容量なんてすぐに圧迫するもんね。1TBが予め入ってるPS4買ったけど、すぐ容量パンパンになってたな……。



「国民達がよく(皇族の)動画や写真を連写で撮るからな、すぐ使い果たす」


「えぇ……」



 ヒエリカ国民、どれだけ容量を食いつぶしてるの? おかしいって……。


 そう思っていると、お父さんは私のおNEWスマホを横から少し操作し始め、QRコードを出した。それをカメラで読み取ると、隣でポチポチ。


 すると私のスマホに通知が来た。どうやら通知によると電子マネーが私のスマホに振り込まれたらしい。電子マネーはS○icaしか使った事ないから知らなかったけど、こうなるんだ。


 どれくらい振り込まれたんだろう? 




《ノエルはアプリを開いて確認した!》



「……」



《ノエルは見なかった事にした!》



 うちの家族、前から思ってたけど金銭感覚ちょっとおかしくない?  なんかオタクの「無(理の無い推しへの)課金」みたいな、なんというか……まぁ貰ったお金はありがたく使わせてもらおう、それがいい。



「お母さん、行こっか」 


「そうね、行きましょう」



 ~・~・~・~



 それからノエルはマリエッタと一緒にケーキの販売に行った。家に夫と彼氏、そして双子を残して。


 何故かと言うと、転移魔法(ムーヴィ)で移動する直前、ノルトが着いていこうとするレイゼルを強制的に拘束魔法(スカフ)で縛り付け、引き剥がしたからなのである。


 レイゼルは胴体を鎖状の魔法で縛られているが、特に抵抗もしない。したところで、目の前で優雅に紅茶を飲み、妻の作った焼き菓子を食べているこの男から逃げる術は無いからだ。



「で、何の話」



 すっかり早くノエルの所に行きたいが故の、このノルトに対するレイゼルの態度にお義父様は将来の婿養子になるかもしれない勇者にただ一言。



「やはり神は神だな、想像通りに成長していない」



 そう言い、ノルトはティーカップを置く。



「一応3センチくらい伸びたけど?」


「俺が貴様の身長ごときに興味を持つとでも思うのか」



 ノルトは心底どうでもいいと思っていそうなふうに言い捨て、レイゼルにようやく視線を向けた。



「何故貴様のような、人間として幼稚な男に娘が惚れたのか……。理解はできるが、共感は全くできないな」



 その視線はとても鋭く、まるで鷲のようにもレイゼルは感じるものの、そんな視線を受けてもなお、レイゼルは特に思う事はなかった。当然、洞察力の鬼であるノルトが気づかない筈もない。ノルトはそんなレイゼルを一度離し「座れ」と一言。


 レイゼルは圧倒的な威圧感(プレッシャー)を感じながらも、内心では「ノエルの所に行きたい」と思いながら大人しく椅子に座った。


 するとノルトは口を開く。



「……ひとまず先に自分から挑戦する。どうしてもできないものは無理をしてやらない、人に頼る。だがいざという時にはどんな手を使おうとも、罪や罰を受けない方法で目標を達成する。一度やると決めたのなら、最後までやり通す。


 約束は自分のできる範囲までにする。自分の間違いを認める時はしっかりと認める。余程の相手でなければ受け入れ、理解する。合わなければ無理をせずに離れる。常に学ぶ姿勢を持つ、相手を侮らない。自信を持つ」



 それはどんな立場の人間であろうと人として必要な意識であり、生きていく上でとても重要な精神(マインド)



「俺はそういう風にノエルを育ててきた」


「……俺はそういう風に育てられてないって言いたい訳?」



 俺の娘に釣り合っていないとでも言うつもりなのだろうか、そんなふうにレイゼルは思いながら聞くと、ノルトは「半分はそうだ」とその言葉を肯定した。



「だがそれは仕方のない部分も多々ある。産みの親が親で精神的に重要な部分が大きく欠如し、育ての親は過去の失敗、そして相手が孫なのもあり、ただ甘やかすようにして育ててしまっていたからな。


 だが、あの年齢であれほどまでに幼稚な人間は中々居ない。教育と愛情が足りなかった人間はあそこまで歪んだ存在になれるとは……お陰でいい反面教師だった」



 そんなふうに話すノルトにレイゼルは「ん??」と思いながら質問をする。



「なんか、言い方にクソ親父と話した事あるっぽいけど……」


「大雨の中、お前をこの村に抱いて連れてきた夜に、善意を装い家の中へ入れて良い酒で何をしに来たのかを吐かせた」



 釣る方も釣る方だが、釣られる方も釣られる方だ。やはり父親(ヘレオス)はクズである。レイゼルを預けたその次には他人の家で酒を堪能していたのだから。



「うっわ……でも何で?」



 流石に悪名高い父親の事は多少なりとも気になるのか、レイゼルは理由を聞くとノルトは話し続ける。



「雷雨の中、外を走るような動きをした馬鹿の魔力と小さな魔力を感じたからだ。それもメーヌによく似た魔力だったからな……もしやと思い、セバスチャンが用意した酒で釣った」


「えぇ……」



 流石のレイゼルも引いている。しかしレイゼルは気づいてはいなかった、自分も貰える物は貰う性分でやりかねない為特大のブーメランだということに。



「それで少し、今までの武勇伝を語ってもらったが……。あのような人間でも、生殖能力を失っていなければ親になれる。不思議な物だ、世の中には子供ができずに泣く夫婦も多いというのにも関わらず……。責任感のない男が、最も責任を負わなければならない育児を放棄しているのだからな。


 ……時に、貴様は育児を何だと思う?」



 突然の質問にレイゼルは「え、何」と思いながらも、在り来りな回答をした。



「子供を育てる事?」


「端的に言えばそうだ、だが……具体的に言えば何をする?」



「身の回りの世話とか? 後は勉強を教えるとか……」


「他には」



 そう聞かれ、レイゼルは「えっと、知らねー」と答えた。だって、知らない(・・・・)んだもの。



「……なるほど、つまり貴様は約3年この家に居てその程度の答えしか分からなかった訳だ。それ程、周りの事が見えていなかったと見える」


「だって俺ノエル以外はどうでもいーし……」



 その言葉はつまり、ノエルの家族にすら本当は興味が無いということ。あくまで、ノエルの家族で居候をさせてもらっていたから。だから本当は村の人達の顔や名前すらレイゼルは覚えていないし、クラスメイトの令嬢達ですら名前を覚えていない。


 なんなら、勇者ラーメンを作った時に使った材料(・・)の存在すら忘れている。



「育児は大まかに分けて3つある。まず世話、これは当たり前だな。愛だけを与えていても、腹が脹れることは無い。病気にならないよう、栄養価の高い食事を与え、感染症などにかからないよう風呂に入れて家の掃除などをする。そしてただ世話をするだけではなく、身の回りの事が自分でできるよう、覚えさせる。それがまず一つ。


 次に勉強、これは生きていく上で必要な知恵を得る為のものだ。これをさせなければ、買い物や仕事すらできない無能に成長し、搾取される。


 そして一番重要な事……お前は何だと思う?」


「……愛とか?」



「確かにそれは重要だが、半分違う。一番重要な事、それは忍耐。……と、他の家庭における親なら言うだろうが、俺は違う。 それは親として子供にとって完璧で、最良である姿を見せ続け、心を育てる(導く)事だ」



 ハッキリとノルトは言い、言われたレイゼルはあまりピンと来ていないようだった。



「何で?」


「そうだな……例えばの話だ。





 ある日、夫婦に息子が生まれたとしよう。母親は子供に衣食住を与え、良い職に就かせる為にひたすら勉強をさせ、父親は妻と息子の為にひたすら働いた。そして母親は子供に対し、毎日のように「これは私とお前の為」だと言い、何時間も勉強をさせた。


 子供はその事に当然不満はあったが、文句を一つも言わずに熱心に取り組んだ。 それはできなくてはならないもので、常に完璧でなければならない。母親が正しいのだと思っていたからだ。


 だがここで重要なのは、母子には愛があった。だから、子供は母親の為に努力をした。


 そして子供は学校に通う年齢になり、成長をして給料の高い仕事ができる有能な大人になった。数年後には全てを投げ打ってでも愛している女と結婚し、今度は親の立場に変わった。


 月日は流れ、数年後……男は愛していた女に離婚を言い渡された。


 それは何故だ?  そしてその後、男と子供はどうなったと思う?」



「また問題?  えーっと……あー……子供に殴ったとか?」


「ふむ……今の話なら可能性はある。だが、それは「妻に嫌われる」という理由でしていないから違うな」



「えー?  ん~~……」



 レイゼルは考えるが、なにぶんレイゼルは普通の家庭で育った訳では無い。前世だって、病院にただ入れさせられていたのだから。それに勇者は前世を覚えている能力があるというが、何故かレイゼルは前世より前の生を覚えていない。知らないのだから、答えようがない。すぐに諦めて「分かんねー」と言うレイゼルにノルトは答えた。



「答えは妻を愛し過ぎる男が子供に嫉妬をし、育児に協力もせず、家事すらもできない男に妻はほとほと愛想が尽き、離婚した。その後、男は元妻をつけ回すようになり────自分の子供を殺した。


 原因は親になるにはまだ男の精神が未熟(幼稚)であったことと、子供の頃に父親の姿を見ていた事だ。これは極端な例だが、現実にも子供に嫉妬をし離婚する夫婦は意外と多い」



 そう言うノルトにレイゼルは疑問に思う。



「え、家事は?  家事も一つの理由だったんだろ?」


「だがそれはあくまで、後に湧いて出てきた問題だ。そもそも、男が育児に参加をしていれば妻は家事に追われる事も無かっただろう。子供の面倒を見る時ほど、神経を使うものは他にない。


 だが何故嫉妬をしたか? 


 それは先程も言ったが、男が幼稚だったからだ。そしてただ仕事をして帰ってくるだけの生活を送る父を見ていた男は思った、子供に妻を取られてしまうと」



 それも、男女関係無く性欲に溢れた人間しか居ないこの世界であれば、尚更別の理由で邪魔な存在だと思うだろう。子供が出来れば産まれるまで行為はできない、それは当たり前の事。だから大体、夫は他で発散するか、不倫をして別の相手で発散するか、それでも妻に口か手でやってもらうかだ。



「でも母子家庭は? ほぼ条件一緒だろ、関わってないし」


「あぁ、だが母子家庭はそもそも父親という存在が家に居ないことが多い。しかしこの家は父親という存在が家に居る事が前提だ。そうなると、育児の方針や家計の事情、意識も大分変わってくる。だが何故そうなったのかをより詳しく言うと……。


 母親は愛と衣食住、そして生きる為の知恵(勉強)を与えたが、母親は息子は勉強ができたが故、母親は息子をただ褒めることだけをし、勉強に専念させる為にその他は一切教えなかった。息子の将来は安泰だと。だから息子の精神を育てる事をおざなりにし、無意識に管理した。


 そして男は育児に参加をしない父親を見て育ち、父親とはそういうものである事が普通だと無意識に感じていた。このままでは妻からの愛を子供に奪われてしまう、そう考えた男は嫉妬をするようになり、妻は子供を守る為に離婚。


 こうして事件が起こった。実に救えない、ただの例え話だ」



 昔から、子供は親の姿を見て育つという。それは現代においてもよく言われる重要な部分。子供は親が無意識にしている姿すら、また子供も無意識に学習して育つ。良い癖や悪い癖も、例外無く。



「何でその話を俺に?」


「俺はいくら能力が高かったとして、中身の伴わない人間は本能のままに生きるただの虫けら同然だと思っている。更に依存をするのであれば、寄生虫だな。当然、娘には人間(・・)と将来を共にしてほしいと思うのが父親としてごく当たり前な感情だろう?」



 つまりノルトはレイゼルが将来、そういう男になるのではないかと危惧しているのだ。



「恋人である事は別に構わない、ノエルがそう望み今の所は上手くいっている。そしていつでも別れることができるからな。だが、結婚や子供を持つともなれば話は別だ。責任が伴い、よほどの事がなければ別れることも簡単にはできなくなり、子育てには金もかかる。


 一般的な子育ては国にもよるが、多く見積もって4000万ソールは必要だ。それを何人も作るとなると、相当負担がかかる。そして当然だが、子供を産む事は心身にも大きな負担がかかる。最悪、死ぬ可能性もあるだろう。


 貴様の性格と先程の発言を考えると……子供を持つよりも、そのまま結婚だけをすればいい筈だ。ノエル以外のために金を稼ぎ、我慢をする事が育児だと言われるものの為に、我慢ができない貴様が養うなど……俺には到底できるとは思えん。


 もしもノエルを縛り付ける為だけに、デキ婚でもしようものなら────」



 ノルトがそう言いかけたところで、レイゼルはハッとして先程までこの家には存在していなかったはずの人物が、いつの間にか居る事に気がついた。



「この私が責任を持ってアーノルト様の名の下、レイゼル様の命を刈り取らせて頂きます」



 セバスチャンである。


 実はこの代々ヒエリカ皇族に仕えてきた執事は、純血の魔者が魔者同士で殺すと死んでしまうことと同じく、皇族が人間を殺して死んでしまわないように、自分が皇族の命令を受けて、代わりに殺す汚れ仕事などをしていた。


 主に殺す標的は、国や皇族に仇なす者だ。それは国民であったとしても等しく、容赦が無い。当然このような仕事をしているという事をヒエリカ帝国民や、海外の人間は知らない。


 皇族達は国の太陽(・・)であり、守護者(・・・)なのだから。そんな皇族が人を殺して死ぬという事があってはならない、あって欲しくない。その高潔さを失い、力を振りかざして私欲と感情のままに殺して欲しくない。最期までその髪の色のように清廉潔白でいて欲しい。


 だがそんな綺麗ごととエゴは大衆の中に潜んだ悪意や私欲の前では通らない。何故なら国民やそれ以外の人間が皇帝を傷つけていても、皇帝は無抵抗のままそれを享受して死ななければならないからだ。そして自己犠牲の塊である皇族が皇帝を守ろうとして、死ぬ場合だってある。


 おかしいではないか、守るべき存在から攻撃を受け、抵抗もできずに死ぬなどと。


 だからその悪意を消し、国や皇帝、皇族を守る為に……そしてセバスチャン自身が守りたいから、自分だけが知っていたいから、幸せになって欲しいから、幸せにしたいから、たった一人の執事として存在している。つまりセバスチャンもセバスチャンで、皇族に対する愛が重過ぎるのであった。


 例えノエル本人が皇族である事を知らず、恋人を失い悲しむ事になろうとも……セバスチャンは親友の子孫を守る為なら、なんだってできるのだ。



「(やっべぇ、俺国家の闇見ちゃったんだけど……)」


「俺は家族の幸せの為なら老害の相手をし、未練がましい愚かな女に遭遇しようと、殺し以外ならなんでもする。お前が例えノエルを攫い、この世界の裏側や別の世界に行こうとも絶対に見つけ出す。


 ノエルはお前が守っている訳ではなく、常に俺の庇護下に居ることとヒエリカ(帝国)が見ていることを忘れるな」



 そう言い、ノルトは席を立つと双子達のミルクを用意するのだった。



「私も常に見ているので、お忘れなきよう」


「(なんか追撃来た……)」



 執事から怖い一言を言われて「うわ……」とレイゼルはなっている中、ふと祖母の事を思い出すのだった。



「(やっぱこの家、居心地悪いな……超アウェー。仕方ないけどさぁ……ばぁちゃんが生きててくれたらなー……)」







『ばあちゃん、ノエルとずっといっしょにいられるにはどーしたらいーの?』


『いいかい、レイゼル。それはね……子供を孕ませればいいのさ。そしたらもう、物理的にどこにも行けなくなる。子育てで他の事にも気が回らなくなる上に、金銭面でも制限ができるからね』



『……なんか、それヤダ』


『そうかい、じゃあ……ノエルちゃんを落とすしかないね」



『そしたらノエルとケッコンして、こどもいっぱいつくれる? 


『そりゃ結婚するからね、仲と運が良ければできるだろ。でも何でレイゼルは子供が欲しいんだい?  一緒に居たいなら、子供なんて作ったら子供にその時間取られて減るだけだよ。やめときな』



『でもほしーからいい!』









「(……でも俺、そういえば何で子供欲しいんだろ)」



 なんとなく欲しい。今まではただそう思っていたが、考えてみればおかしなことだ。自分の性格を考えて、正直に言えばノエルの視線や意識が自分から分散されてしまう邪魔な存在でしかないというのに。


 そもそもレイゼルは他人の子供を見ても何も思わないどころか、興味すらないのに何故、ノエルとの子供は欲しいのか。心の中で考えてみるも、答えは出なかった。






ねぇ、知ってるぅ~? 繁殖期のクマのオスはメスを見つけるとすぐに交尾しようとするけど、子連れのメスは子供がいる間は子供を育てる為に体が発情しないようにできてるんだってー!


だからオスは子供を食い殺して、無理やりメスを襲って自分の子孫を残そうとするんだってー!


だから子育て中のメスは凶暴で、時々メスが子供を守ろうとしてオスと戦って、オスだけが生き残る場合もあるんだ~!


弱肉強食だね……。









漫画描かんといけんのに、時間がねぇです。





~おまけ~



「お、お母さん……やり過ぎだと思います」


「あら、そんな事ないわ! 娘に手を出すのはお客()様じゃなくて、ただの穴だもの!」



一方その頃、マリエッタは娘に手を出そうとしたロリコンドM達の穴(意味深)を魔法で作り出した蔓の鞭によって拡張させていた。



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