表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チュートリアル用チョロイン幼馴染に転生してしまった  作者: 水性さん
学校編 1年目!!!
37/52

初めての冬休み!!!


今回はノエルさんがファザマザシスブラコンを発揮し、ノルトパパンがクソ重親バカを発揮したりする回。



「2人ともおかえり~」


「はい、ただいま戻って参りました!」


「ただいまー!」



「早いねぇ~……あら、最近のキノコは歩くのねぇ?」


「にゅ!」



「お喋りもできるのねぇ~」



 どうも、お家に帰る事になってテンションが爆上がりのノエルです。帰ってくるのが早すぎて……朝日が登ってくる時間帯に帰ってきてしまいました。現在五時でございます、近所のおばあさん(82歳)ことハンナさん、おはようございます。そちらの歩くキノコはニョッキです。


 でもやっぱり帰ってくるの早過ぎたよね……それになんだか恥ずかしいし。


 まるでこの状況、好きな人からL○NEが来て「すぐに既読付けたら気持ち悪がられないかな!? 変かな!? 今すぐ返信したいけど、どうしよう! 恥ずかしい!!」っていうくっだらない思考をしてる思春期みたいな……。


 でもこれは早過ぎると私自身思うよ!? だけど家族と会えると思うとつい!! つい、早起きを!!! つい目が覚めたんです!! 



「そうだわ、ノエルちゃんとレイゼル、お野菜の水やり手伝ってくれないかしら? ちゃんとお小遣いあげるから」


「あ、はい」


「じゃあやるー!」



 普段だったら魔法で一気にやるけど、時間潰しの為にジョウロの水みたいにして水魔法を使う。もあぁ、でも普通に家に帰りたい!! 6時になったらお父さんも起きるし、その頃に帰ろうかな……。



「できたー! なぁなぁ、お小遣いちょーだい!」


「えっ? あっ……」


「にゅーっ!」



 考え事をしながら水やりをしていると、レイゼルが一気に魔法で水やりをしていて、結局私が水やりできたのはひとつの野菜と、自ら水にかかろうとするニョッキだけだった。レイゼルがソールを貰って「結婚資金GET!」なんて喜んでいる間、キョロキョロと周りを見渡したり、バッグの中に何か暇を潰せる物が入ってたかどうかを思い出す。


 特に……無いね、うん。最近娯楽用の小説を買った訳でもないし……。



「ノエル、どーかした?」


「えっと……流石に早く来すぎちゃったなって……」



 流石に私の挙動が変だったからか、すぐにレイゼルに気づかれた。なんか恥ずかしい。



「俺は別にいいと思う! むしろその方がいいんじゃね?」


「……そう?」



 聞き返すものの、レイゼルはただ「家の中入ろー?」と言いながら手を握って引っ張っていった。



「着いてしまった……」


「ノエル帰りたくねーの?」



 いや、全くそのような事があろう筈がございません。家に帰りたくないなどと……。



「……緊張してる?」


「ちょっと……」



 なんだか、前に家出した時のことを思い出したな。ドアを開けるの怖くて一時間くらいかかった……明らかに黒いオーラがドアの向こう側からしてたんだもん。あの時のお父さん、凄く怖かった……。


 でもよく考えてみなくても、小学生くらいの子供が一ヶ月間も家出してるんだから、相当子供に興味が無い親以外は誰だって心配する。ましてや娘、変な輩に襲われる可能性もあるわけだし、魔獣に襲われて死んでた可能性もある。


 まぁ、主に襲ってきたのはインキュバスで、魔獣は勘で居なさそうな場所を通ってたから一回も会わなかったんだけど。


 あとごめんあの時のお父さん、叱ってる時に「本当に大事に思ってるんだな……」みたいな感じで若干驚いちゃって……内心、嬉しかったです。


 ちょっと思い出に浸りながらも、一旦深呼吸をして玄関のドアノブを握る。……よし、覚悟は決めた。まぁ今日は土曜日、お父さんの夜勤日だからまだ家には居ない筈。お母さんに口止めでもしておこう。



 ガチャッ



「ただい──」



 開けた瞬間、何故か居る筈の無いお父さんによって私は抱きしめられ、乙女にあるまじき「グフォァッ!!」という鳴き声を発していた。物理的に足がつかない。足元で「にゅっ!?」という、ニョッキが驚いている声が聞こえてきた。



「あぁ、おかえりノエル。前に会った時より約0.3ミリほど身長が育ち、魔力量も増えて強くなったな。たったの数カ月で魔力も増え、見違える程に力を付けた。それに髪と肌のツヤや質が上がったな、よく手入れをするようになったのか? 運動をするようになったのもあるだろうが、前以上に綺麗になったな。とても可愛らしいぞ、流石俺の娘だ。そういえば外でお前の魔力を感じたからドアの前で待っていたが、予定より少し遅かったな。ノエルの足の長さと歩く平均速度、家までの距離を計算して、4分35秒前後でやって来るものだと思っていたが……何故予定より約25分も遅いんだ? この俺を焦らすとは、我が娘ながら実に罪深い。罪深いといえば俺の娘だから当然だが、身内びいき無しで見てもお前は本当に可愛いんだ。世界一と言っても過言では無い。だが可愛いがあまりに虫けら共に何かされていないかと思うと心配で、仕事の度にあの王族共をつい皆殺ししないよう自制するのが大変で支障が出る程だった。だがこの俺がそうなってしまうのは、それはひとえにノエルを心の底から愛しているからだ。よくそれを理解し、しっかりと自覚してくれ。だから正直に答えて欲しい、ノエルは25分間、外で何をしていた? あぁ、決して俺は怒っている訳では無い、ノエルに対してそんな無意味な事はしないからな。俺はただお前が心配なんだ。学園でも精神的に疲れ、大変だっただろう? あの害虫にも等しい国王の息子に付き纏われ、更にあの女にすら目を付けられていると聞いて、不安なんだ。だがもしあの害虫共に捕まってしまったとしても、あの城に乗り込み俺がすぐにノエルを助け出してみせる。当然終わった後は二度とお前にあの虫けら共が近づいて来れないよう、駆除をするつもりだ。そこは安心してくれ、俺の娘に不安な思いをさせるつもりは毛頭ないからな。だが、たかが25分ほどであったとしても、あの虫けら共はお前が油断した時すぐにお前を食い荒らそうとするだろう。本当に油断も隙もない害虫なんだ、村の中であったとしても俺の目が届かない場所は無事かどうか気になって仕方が無い。それにあの害虫でなくとも、この村の中にもお前を狙う他の害虫が存在する確率も少なからずあるからな。だが安心しろ、もしノエルの身に何かがあったとしてもこの俺が虫けら共を生贄に必ず助けてみせる」



 圧……いや、激重グラビティとお気持ち長台詞がすごい。お父さん、重力がすごい。抱え上げて抱きしめられているからどんな表情してるか分からないけど怖いです。



「で、何故遅くなったんだ?」


「ハンナさんのお野菜の水やりを手伝った後、やっぱり家に帰ってくるの早過ぎたかなって思いながらドアの前で開けるべきか思案してたからです……」



「いや遅いくらいだ、俺は最初から0時丁度にノエルが帰ってくるものだと思っていたからな」



 深夜に帰る方が常識的に考えてダメなのでは!?? 



「だがこうして帰ってきたんだ、この事は水底に沈めておこう。朝食は食べたか?」


「ま、まだです……」



 水に流してはくれないのですね、お父様。



「お母さんがもう用意してくれている筈だ、さぁ一緒に食べよう。約3ヶ月ぶりに家族全員揃った朝食だ、ルトとエルマーも喜ぶ。……それから新しい家族も紹介しなければな」



 そう言ってお父さんは私を抱えたまま家の中に入ると、テーブルまでそのまま運んでいった。キッチンにはお母さんが立っていて、丁度朝ごはんを作り終わったらしく、お父さん同様に抱き締めてきた。



「おかえりなさい、ノエル♡ それからレイゼルくんもおかえり」


「た、ただいま……」


「ただいまーお義母さん! さっきまでずっと俺空気だったから、ノーバ○ィ化したかと思った!!」



 確かにさっきまでずっとお父さんのターンだったから、レイゼルの存在が薄かったけども! お父さん……レイゼルを見て「あぁ、お前も居たのか」みたいな風に思ってるし! なんかそんな顔してる気がする!! 


 ……それにしても、なんか家の中の匂いが変わったな。前はフローラルでお高くてリッチなアロマオイルの匂いがしてたけど、無臭になってる。


 それと明らかに見た事のない家具まで。空気清浄機と……あれ、もしかして爪研ぎでは? もしかして……猫飼い始めた!? 


 す、すごく気になる!! けど、見るのは朝ごはん食べてからにしよう。



「さぁ朝ごはん食べましょう、今日は張り切って作っちゃったからいっぱい食べるのよ!」


「うん、ありがとうお母さん」



「……食べ終わったら、"学校であったこと"をいっぱい教えて欲しいわ♡」



 なんだか含みのある台詞をお母さんは言ってくるし、私はレイゼルとのことだと察してしまったけれど、お父さんに割れ物を扱うかのように優しく椅子に降ろされた後、すぐに気にしないようにして朝ごはんを食べる事にした……けれども。



「お母さん……これは豪華過ぎると思う」


「つい頑張っちゃった♡」


「にゅー!」



 沢山のご飯を前にして喜んでいるのはニョッキで、ニョッキは何故かお母さんの膝の上でちゃっかりご飯を貰おうとしていた。自然な感じでそこに居るけど、ニョッキとお母さんは今日で初対面だからね? まぁ、レイゼルがよくお父さんに報告で手紙を送ってるみたいだから、ニョッキを見ても全く驚いてなかったけど。



「あら、"ソテーちゃん"もご飯食べるのね~♡ もしかしたら余っちゃうかもしれないから、いっぱい食べてくれると嬉しいわ」


「にゅっ!?」


「レイゼル、ニョッキの事ソテーって呼ぶの手紙の文面上だけでも止めてあげてよ、お母さんがソテーって間違えて覚えちゃってるから!!」


「えー」



 それからお母さんは「あらそうなのね」って言って、ちゃんと名前がニョッキだと認識を改めてくれた。かなり豪勢な朝ごはんを食べた後、私はすぐにベビーベッドの方へ向かって覗き込むと……。



「あーっ!!!! うあ──!!! あ──────っ!!!!」



 今日もぷくぷく柔らかで、世界一可愛い弟のエルマーが元気に動いていた。しかもいつの間にかハイハイができるように成長までしている。可愛い。私に気がつくとすぐに近づいて、私に手を伸ばしていた。もう首はしっかりと座っているみたい、赤ちゃんの成長って早いな……ルトは迷惑そうな顔をしてたけど。それより、それよりも!! 



「エルマ──!! 今日もお肌ぷにぷにで元気で可愛いねぇぇぇ!!! お姉ちゃん帰ってきたよ!!!! すっごく会いたかったぁぁ!!!!」


「あ────っ!!!」



 優しく抱き締めてそう言うと、僕もだよ!! と言わんばかりにエルマーも私にしがみつくように小さな体で抱きしめてくる。可愛い。あれ、もしかして私の弟は全ての弟属性を持つ赤ちゃんの中でも、最強に可愛いのでは??


 名残惜しいけど、姉弟で不平等に接するのは良くないのでエルマーをベビーベッドに下ろすと、目の下の隈が悪化したルトを見て「あっ、まだお父さん防音魔法かけてないんだ……まぁ、分かるよ? 自分の魔力って、自分の匂いと同じでアーティファクト使ったり本当に集中でもしないと気づかないもんね……」って察しながら抱き締めて頭を撫でた。



「ただいま」


「あう」



 エルマーと同じ時間分抱き締めた後降ろすと、いつものように私の隣に居るレイゼルに人差し指でクイクイして、こっち来いの合図をした。レイゼルが顔を近づけてきた所で、小さな声で話しかける。



「後で魔法じゃなくて聖力でルトとエルマーの部屋と、私の部屋を防音仕様にしてくれる?」



 そう言うと、レイゼルの体がビクッとした。……えっ、どうした? 



「いっ♡ ……いいけど何で魔法じゃねーの?」


「魔法だと魔力で分かっちゃうし……お父さんが集中できな──とにかく、配慮だよ。この世界中の人間をかき集めたとしても、聖力はレイゼルしか感じ取れないでしょ?」



 そう言うとまたレイゼルがビクンビクンする。ど、どうした?? 



「わ、分かった……♡」


「……レイゼル? 何か変だよ、どうかした?」



「あッ♡」



 えっ?? 何だ今の。ルトとエルマーだけじゃなくて、お母さんとお父さんまでビックリして見てるよ。あと、物陰に隠れてる白い毛の塊。


 思わず距離を取ると、レイゼルが何故かテレテレした様子で説明し始めた。



「俺さ、実は耳が弱くて……」


「えっ……? そうなの??」



 バッチバチにピアスとか付けてるのに……?? 



(※前にレイゼルのイラストとかで両耳にピアス一つずつしか付いてなくね? ってちゃんと我氏の絵を見てくれて、そう思ってる人はもしかしたら中には居るかもしれんが、作者が「あっ、物理的に痛そうだな……大丈夫かな……痛くない? 平気?」って思っちゃうから、本当は付けてて欲しいけど、物理的に痛そうなのは趣味じゃないので(アニメやゲームなどのグロシーンも作者は血も込であんま見れない)あえて一つずつの描写なだけだぞ! 実際はバチくそに空けてピアス付けてるぞ! もしバチくそに空けてる男とお絵描きが好きな人は、我氏の代わりに誰か! もしノエルさんがいきなりドS化したら「それはそれでなんか違うんだよなぁ……S堕ちするなら段々の方が良い」ってなるめんどくさいド変態勇者をかっこよく描いてあげてくれ! まぁ普段がアレだからかっこいいレイゼルくんとか全く想像つかないけど!


追記 ハーメルンで書いたのそのままコピペしたぜ!! レイゼル君のビジュ知りたかったら、pixivかハーメルンで挿絵出してるからそっちを見てね。まぁ、いつかちゃんとした立ち絵とか描こうかと思ってるから気長に待ってておくれ)



 でもオシャレには犠牲が付き物だもんね……女子は足の冷気に対する防御力を最小限に、冬でも短いスカート履くし。似たような物……? そういう事にしておこう。



「どーしよ、ノエルにとうとう俺の弱点バレたなー……」


「……そうだね」



 何故かレイゼルがチラッ チラッってこっちをニヤニヤはぁはぁしながら見てくる。



「これからはセッ〇スする度に反撃食らって、いっぱいノエルにチ〇コ気持ちよ──」


「私の妹と弟の前でそんな事を言うなクソ勇者が!!」



 いつものビンタをした後、レイゼルはいつものようにハァハァして喜んでいて、私はお父さんから「ビンタのキレと威力が上がったな、流石は俺の娘だ」って褒められた。嬉しい。



「そろそろ学校での生活を一から全部教えてくれないか? カメラを手に入れたと聞いたからな、撮った写真を見せてくれ」


「私の作ったお菓子を食べながら、一緒にお話ししましょ♡」


「うん!」



 それから私は学校での事を説明したり、ドレスを着た時の写真とか、今まで撮ってた写真をお父さんとお母さんに挟まれ、ニョッキを膝に乗せながら、ソファーに座って見せていた。



「この写真は……学校でできた友達のヘレンちゃんと遊んだ時に撮ったの!」


「(あの殿下と友人になったのか……つくづく王族とは縁ができやすいな)」


「あら、お友達ができたのね! 良かったわ~♡」



 なんだかお父さんの反応が微妙だけど、気にせずにどんどん話して紹介していく。



「お父さんが学生時代の時からもう居たんだよね、スラのすけ先生」


「……あぁ、懐かしいな。触った時、とても柔らかかっただろう?」



「うん、ひんやりはしてたけど思っていたほどじゃなくて、凄くぷにぷにしてた!」


「俺もあの柔らかさだけは気に入っていてな……今でも踏んだ時の感触を覚えている。あの感触の為にスライムを飼おうかと、一時期本気で迷ったものだ」



 えっ、踏ん……えっ?? あんなに速いスラのすけ先生を??? お、お父さん? 何をやっちゃってるんです?? というかこの世界の魔物の中でも上位種って言われるスライムを子供の頃に倒せるお父さん、本当に強くないですか?? どうなってるんですか?? 


 きっとバッキバキにプライドへし折られて、その上で踏まれちゃったんだろうな……。初対面の時に私を見てプルプルする訳だ……。


 まぁ、少し前にまた魔法薬が爆発して私の体がちょっとの間だけ男体化した時に、そのまま午後の授業に出たらスラのすけ先生が泣いちゃった時についレイゼルから借りて撮っちゃったけど……。



挿絵(By みてみん)



 本人にとっては恥ずかしい写真な訳で、回収しようとしてくるスラのすけ先生へのいい弱みになりそうだったから、回収される前に自分の部屋に即転移させました。スラのすけ先生がウザくなければ、そもそも私は写真を撮ろうとしませんでしたよ、はい。



「ヒエリカに行った時の写真もあるよ! 後はゲイル先生と一緒に撮ったやつとか!」


「本当によく撮れてるわね♡」


「……何故今年はノエルが俺と撮った写真が無くてゲイルと撮った枚数が多いんだ?」



「が、学校に居たから仕方ないと思います! 今度お父さんの仕事が休みの時に一緒にいっぱい撮ろうね」


「有給を取って今日から1週間は休みだ、俺は絶対にこの1週間は仕事に行かない。絶対にだ」



 マジですか……。



 他にも今まで会えなかった分を埋め合わせるように話して、いっぱいお母さんのお菓子を食べていた。やっぱり実家はいいね。そんな風に思っていた時の事。



「そろそろ頃合だな、慣れて来た頃だろう。……エル」



 ん? お父さん今私の事呼んだ……? あ、違うな、猫ちゃんかな? どんな子なんだろ。


 すると物陰から白い毛の塊が恐る恐る私に凄く警戒した歩き方とイカ耳をしながらお父さんの方にやって来る。



「なんかすげーノエルに色が似てる!」



 レイゼルが後ろから興奮した様子でアホ毛とイマジナリー尻尾をブンブンし、猫ちゃんはレイゼルの方をじっと見てイカ耳が普通耳になると、それから私の方を見てイカ耳に戻す。これは……是非とも仲良くなりたい所存。



「あら……エル、どうしちゃったの?」


「普段は人見知りをしないんだが……」


「まぁ、そういう時あるよ。ゆっくり慣れていけばいいし」



 動物は難しいからね、そういう事もある。前世の頃のおばあちゃんの家に居たハスキーのハルは人間大好きな陽キャのおバカさん(馬鹿ではない)だったから、通行人見つけるとすぐに撫でてもらおうとしてたな。同じ散歩してる犬にも遊んでもらおうと近づいてたし。


 だけどおばあちゃんがハスキーのことよく知らずに飼っちゃって、困った事になった。ソリを引く犬として飼われてたハスキーは、散歩を長時間しないといけない。


 その散歩をしないと、ハスキーはそのストレスで家の中を暴れ回っちゃったりする問題行動を起こすようになる。だからハルが虹の橋を渡るまで、私がなるべくいつも散歩をすることになったけど。


 前世のお母さんは鬱でそれどころじゃないし、お父さんは……家の事一切やらないし、そもそも帰ってくるの遅かったから。


 散歩の度に自転車こぐのは大変だったけど、可愛かったな……モフモフで。だからかハルはおばあちゃんじゃなく、一番私に懐いてた。帰ろうとする雰囲気と移動を察知すると、すぐに通路の前に立って道をよく塞いできたな……。


 つい昔の事を思い出しちゃったけど、とにかく動物を飼うのは一筋縄じゃいかない。



「特に猫とかは慣れるのに時間がかかるっていうし──」


「おー! すっげーモフモフ!」



 私がそう言っている最中、何故かレイゼルの方に私にそっくりなエルは自分から撫でられに行っていた。しかもゴロゴロ音を出しながら。


 ……どうして!! 


 私は悲しくなっていると、お母さんの膝の上に乗って餌付けされていたニョッキは私の所にやって来た。



「にゅ!」


「慰めてくれるんだねニョッキ……ありがとう」



 キノコなのにプニプニモチモチしているニョッキの体(でもキノコ臭い)を抱き締めていると、何故か隣でお父さんが何処かソワソワし始める。もしかして……あれですか? お父さんもプニりたくなりました? 分かる、そっちの立場だったらきっと私も撫でたくなってた。



「……ノエル」


「ニョッキが良いならどうぞ」


「にゅ?」



 自分で言うのもなんだけど、察しのいい私はニョッキをお父さんの前に差し出すと、あんまり男の人が好きじゃないニョッキはすぐにシワを寄せる。


 なのでお父さんが手を伸ばそうとする、その時だった。



「にゅー!!」



 触るな!! と言わんばかりにニョッキが傘でお父さんの手に向かって叩こうとした。



「随分と暴力的な使い魔だな」


「にゅ!? にゅーっ!!」



 けれども叩く前にお父さんが傘を掴んで、暴れまくるニョッキを普通に手だけの力で押さえつけていた。……えっ?? 



「にょ、ニョッキ、男の人がダメみたいで……前におばあちゃんにも無視した事があったんだよね」


「ほぅ? 身の程を弁えないキノコ風情が母上を無視するとは……ノエル、少し使い魔を借りるぞ」



「えっ?」



 お父さんはそう言うと、暴れるニョッキを連れてリビングから出ていった。すると「にゅあ──────ッ!!!!」というニョッキの悲鳴のようなものが聞こえてきて、それからお父さんが戻ってきた時には……。



「にゅーっ!」


「やはり中々悪くない感触だな」



 何故かニョッキがお父さんに懐いていた。一体あの短い時間の中で、何が起こったんだ!?? 本当に何をしてたんですか、お父さん!! 



~・~・~・~



 私は今、ムカ着火ファイヤー状態になっていた。というもの、私の名前の由来である、ノエルとかいうとんでもない美少女が数時間前に帰ってきたから。親の顔が良いならムカつくことに娘の顔も良い……この世は不平等。親ガチャ大成功マンめ、羨ましいが過ぎるぜ。


 その娘は、本来だったら私の場所であったパパの膝の上を独占し、ママからのナデナデを当然かのように受け入れて、愛情を独占していた。幸せそうな顔をしやがって!! 


 その場所は!! 私の場所だからな!! 早く退け!! ……でもいいもん、私は新しいイケメンの男に構ってもらうし! 


 私はモフモフ尻尾をビタンビタンとフローリングに叩きつけているのを止めると、何故か娘の背後に立っている金髪イケメンに擦り寄る。



「にゃーん」


「お父様、お母様……そろそろ俺にもノエル成分を補給させてください」


「……ノエル、もう冬だろう? 新しい服を買いに行こう」



「ごゆっくりどうぞ!!」




 おい、何だコイツもか。というか聞け、構え。可愛いネコチャンが構えと言ってるんだ、構え!! 



「にゃーん!!」


「あ、エル。いつの間に俺の足元に……」



 さっきから居たけど? 居たけど?? お前、無視しやがって! こんなに可愛いネコチャンを無視するとは、極刑だ!! でもイケメンだから特別に許す!! 



「エルがノエルだったらな……」


「にゃっ!?」



 こんなに可愛いネコチャンを前に、まだ娘の事を考える余裕がある、だと!? 何だこの同族(地雷系)イケメンは!! 



「まぁいーか!」



 するとイケメンは私をようやく撫で始める。そう、それでいいんだよ、それで。あぁ~~……極楽だぜ。



「ノエル……」



 おい、私を撫でてる時に別の女の事を考えるな!! 手が止まってんぞ!! 


 ちょっと爪を立てて膝に突き立ててみるものの、金髪イケメンは全くの無反応。



「はぁ……」


「にゃー!!」



 撫でろや!! 


 今度は噛んでみるものの、相変わらず無反応。というか、硬っ……えっ、血もでねぇ~~!! 無傷かよ、嘘だろ!? 何なんだこのイケメンは!! 人間のしていい硬度じゃねぇ!! 


 ……もういい!! 何だコイツ、私を撫でてる時に別の女の事を考えやがって!!


 私は金髪イケメンの膝から降りると、私が降りた事に気づいたイケメンが「あっ……」と、寂しげにアホ毛が垂れ下がる。オマケに犬のしっぽと耳の幻覚が……うわ、罪悪感……。


 やめろ! 私が悪い事してるみたいぢゃん!! 


 でもそんなに悲しいなら、私がまた行ってあげよう。あー、私ってば本当に優しい! 金髪イケメン、優しい私に感謝するんだな! 


 そんな風に思っていると、ようやく娘がパパの膝から降りたらしく、私を撫でていたイケメンはチラチラしてちょっとずつ近づいていた私を放置して、娘の方に瞬間移動した。……構えよ!!!! 



「ノエル、くっつけなかった分だけ、いっぱいイチャイチャしような♡ な、なんなら……俺のチ〇コとの触れ合いでも──」


「黙れド変態勇者!!」



 そう言うと、娘はセクハラ金髪イケメンを掴んで家の窓から森の方へ放り投げた。しかも豪速で。さては娘、ゴリラだな? 



 ……はにゃ? 待て、娘……今なんて言った? 今、あの金髪イケメンを勇者って呼んだ?? と、いうことはまさか……。ヒ〇メルと同じってコト……!? 














 ………………アレが?? 



 とにかく、私がパパに拾われるのはやっぱり運命だったって事に違いない。つまり私はこのイケメンなパパに愛される猫生を送る事は確定されている!! 


 ふっふっふ……とことん謳歌してやるぜ、この命。



「にゃーん!」



 空いたパパの膝の上に私が乗ると、パパはすぐに私を撫でてくれる。あ~~……やっぱここがいい、まぢチルい。安心感がだんち。あ、でも娘の匂いがする……後で私の匂いをつけ直しておこう。



「いいかエル」


「にゃ?」



 なんかパパが私に話しかけてきた。やっぱりパパ、私が言葉を理解してる事に気付いてるよね。特に何も言わないけど……まぁ、気楽だから良いか。



「俺はお前を愛している」



 えっ……(トゥンク)


 何、急に……パパやめて、別の意味で好きになっちゃうぢゃん! 



「当然、ノエルと同じくらいにな」


「にゃー!!」



 今分かって「同じくらいに」って言っただろ!! おい!! メンヘラ女をからかって楽しいか!! 



「だから嫉妬する必要も、不安になる必要も無い」



 ……でも、パパがそう言うのなら、信じてあげようかな。



「分かったら変な意地を張るのと、ノエルを避けることを止めるんだな」


「にゃん」



 まぁ? いい子だったら? パパがそう言うなら? 仲良くしてあげてもいいけど?? だけど私はそんなお安いネコチャンぢゃないので、そう簡単に仲良くはならない。


 あっちの方から来てくれるなら、受け入れてあげない事も……ないけど??







「ねぇお父さん、ちゅーる的なのない?」


「ある」



 にゃ? にゃ、にゃに!? 


 ちゅーる!! 



「あ、エルがちゅーるという単語にもう反応してる」


「……分かりやすいな」


「にゃーん♡」



 ちゅーる!! ちゅーる!!!! 早く!! 



「……やっぱり猫って自分が可愛いことを自覚して、おやつ持ってると甘えてくるよね」


「そうだな」



 なんか娘とパパが言ってるけど、そんな事よりちゅーるおいちい! ちゅーるおいちい!! 



「でもお父さん、犬派じゃなかった?」


「親が魔獣に殺されていたらしくてな、魔獣に取り込まれて害獣になる前に保護してやった」



 ちゅーるまぢウマー!! 



「そうなんだ……やっぱりどんな猫もちゅーるの魔力には勝てないんだね」



 ちゅーるおいちかったぜ…………娘、凄くいい子! だってちゅーるくれたから! また食べたいぜ……。






本当にお安くてチョロい猫ちゃんですね。



そういえば、ようやく今描いてる漫画完成したんですよ……!! やっと剣技魔法大会の漫画を描ける!! やったぜ!! なるべく早く仕上げるからね! まぁ、4月から働く事になるので小説と絵も投稿頻度が落ちますが……。頑張るぜ!


(その漫画はpixivにて見れます)


あとなろう系をよく読んでいる我氏のパパ上にノルトパッパのクソ長セリフ見せたら「長ッ!?」という良い反応をしてくれました。






~おまけ~




「にゃーん♡」


「すっかり懐いたな」


「そうだね」


「なんかエルが俺の所に来なくなったんだけど、何で?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ