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チュートリアル用チョロイン幼馴染に転生してしまった  作者: 水性さん
学校編 1年目!!!
34/54

おテスト!!!

学生にとって1番恐怖を感じる単語……それがテスト。


作者はあたまがわるいのと、べんきょうがきらいだったので、中学の頃に数学のテストで2点取って単位は1点取りました。


テスト週間ではいっぱいノートにカキカキしましたよ……小説を。



 あの大会の後、ノエルは学校内で結構な有名人になっていた。というのも、学園に入学する前までは一切体を鍛えていなかったのにも関わらず、あの勇者と渡り合える程に急成長中の、戦闘の才を持った戦闘部門の紅一点。


 それはもう、大会が終わった後は沢山の注目を浴びた。


 特に他の学科の人達なんかはほとんど関わりが無い為、ノエルを初めて見た人も多く、特徴的な髪の色と翠色の眼という、強烈なビジュアルにして顔の良さに気が付いた。


 一部貴族は「なんかヒエリカの皇族の特徴と同じだな??」と、思って勝手にちょっと調べたら、出身地がド田舎だった為「そんな訳ねぇか」と、それ以上探るのを止めた。貴族たちは基本的に、身分が高い者がそんなド田舎に住まないのが普通で当たり前なので、そんな先入観があった為に探るのを止めたのであった。


 そして更にその一部の貴族は家族構成について調べようとしたら、父親の経歴がとんでもない事になっていて驚愕した。調べたところによると、"ただの田舎に住んでいた"天才宮廷魔法士だった事が判明した。


 ただ、何故かその父親は"黒髪黒眼"、母親は茶髪茶眼であるのにも関わらず、娘のノエルは白髪翠眼。


 養子、それとも腹違いの子供と考えたくとも父親と似過ぎているし、再婚したという事実は無い。そもそも妻は同じ学校の後輩であり、二人の仲は大変良く、浮気のうの時すら出てこない。しかもノエルには魔力色を持っているが、父親同様に魔人族の特徴がある訳でもない。


 やっぱ皇族やんけ、絶対そうやんけ。


 そう思い、更に父親の出自を調べたが、結局それ以上の事は見つからず。とんでもなく慕われている皇族の情報は主にヒエリカで鮮度100%な情報が出回っている為、一応そちらで調べようとした結果……。


 何の成果も!! 得られませんでした!! 


 国民の皆さんが皇族ガチ勢過ぎて、賄賂を渡したら速攻でヒエリカのケイサツと呼ばれる組織に「もしもしポリスメン?」と通報し、ちゃっかり賄賂を推し活へ回していた。


 ガチ勢はリークしようとする輩を絶対許さないマンなのである。仕方ないので、ノエルに接近して確かめようとした結果……。


 何故か靴に画鋲が入るようになったり、呪いの藁人形が机の中に入っていたり、急に体に不調が起きたり、ちょっと遠くから眺めていると、ノエルの隣でいつも息を荒くしている勇者がまるで豹変したかのように一瞬だけ人を殺すような目をして、それが自分と合ったりした。


 ……ま、まさかそんな訳ないよな? 


 そう思うようにして、また別の日に双眼鏡で見ている時。何故か勇者が見ている自分に向けて、ノエルには見えないようにしながら中指をお坊ちゃまに立てていた。


 また別の日、何故か自分の部屋の前に白い紙が貼り付けられており、白い紙には筆跡などが鑑定されないように新聞の文字を切り取って貼り付けてあった。



『これ以上付き纏ったらお前をエ○ワード・エ○リックにする』



 エ○ワードって誰ぞや? 何故かよく分からないものの、寒気がした。そこでこれ以上探るのを止めなかった者は……その後日、起きたら右腕左足が鋭利な刃物か何かに切り取られており、義手と義足を着けて生きることになったとかなってないとか。


 そして何故か勇者が学園内で100食限定のとんこつ系勇者ラーメンを作り、大繁盛した為か一日だけなのがとても惜しまれていたとかなんとか。



「レイゼル、どういう風の吹き回しでラーメンなんて作ったの?」


「つい最近良い肉手に入ったから、ノエルとの結婚資金を得る為にそれで商売でもしてみようかと思ってさ! いやぁ、結構儲かった! 料理教えてくれた天国のばぁちゃんには感謝しないとなー!」



「(なんか、深く聞いちゃいけない気がする……凄く嫌な予感がするから止めておこう)」




~・~・~・~




 大会が終わって12月、そろそろ一学期が終わり、ウィンターホリデーがやって来る。けれどもその前に、学校には生徒……というよりも貴族のご子息やご令嬢達にとって重要なイベントが2つやって来る。


 それがテストと、夜会。


 この学校は年に3回テストがあって、学期ごとの最後にテストが行われる。その後にはクリスマス前に行われる、貴族達の為のパーティーがあるからとても忙しい。


 夜会は生徒達の交流の機会みたいなもので、学科の違う全ての生徒が集まって食事をしたり、生のオーケストラの曲に合わせて踊ったりする。うーん、お金かけてるね。


 そしてこのパーティーは国の政治絡みなお見合いパーティーでもあって、貴族のご令嬢達はそれはもう大変煌びやかに着飾る。少しでも顔が良くて家柄も良く、能力も兼ね備えた優良物件の男を捕まえる為に。


 下自民の私達にとっては、ただ美味しい料理を食べられるパーティーだけど。


 あ、でもヘレンちゃん曰く、このパーティーでカップルが成立する事も多くて、そのままゴールインする人も多いらしい。だからかテストは憂鬱だけど、学校内を歩いているとパーティーをとても心待ちにしている人の声が多く聞こえた。


 もちろん私もパーティーを楽しみにしている側の人間……だけど、それはパーティーを楽しみたいとかそういう訳ではなくて、そのパーティーに参加している、女の子達のドレスをただ鑑賞したいだけ。


 そもそも前世の時、私がエロゲやってたのって、ただツッコミを入れて楽しむだけじゃなくて、かわいい女の子を鑑賞するのが目当てでもあったからなんだよね。


 せっかくの夜会、非日常感溢れるこの機会でしか見られない、ドレス姿の女の子達を鑑賞するのにうってつけ。この世界、基本的に顔が良い人が多いし人口も多いから、とても目の保養に良い。


 ただ、この世界はみんな女の子の胸がすごい。過去は見るだけで目の保養だった2つの山が、今じゃ悲惨な自分との比較対象になってしまって悲しくもある。


 絶壁なこの胸が恨めしい。でもまぁ、Aが3つ並んでいるよりかはだいぶマシだよね、うん。私は醤油皿くらいだし……いや、せめて子供用のお茶碗くらいは欲しかった!! 


 まぁ、村の女性達はみんな丼サイズだったけども!! 


 ……なんだか虚しくなってきたな、その話はもう考えるのをやめよう。



「──様、ノエル様?」


「え? あ、ごめんねヘレンちゃん、ちょっと考え事してて、話聞いてなかった……」



「そうでしたか、ではもう一度質問させていただきますが、ノエル様はどのようなドレスで参加するのでしょうか?」


 私はヘレンちゃんにそう聞かれて、思い出した。そういえばまだ言ってなかったっけ? 



「あっ、その事なんだけれどね、ドレスじゃなくて私は別の物を着ようかなって思ってて」


「そうなのですか?」


「そーなの!?」



 ヘレンちゃんは驚いた表情で私を見てくる。あれ、レイゼルにも言ってなかったっけ? 



「うん……というか、そもそも私に合ったサイズって子供用のドレスから探した方が早くて、子供用のデザインしか無いからレンタルして着ていったら恥をかくだけだし……オーダーメイドで仕立ててもらおうとしたら、相当お金がかかるでしょ?」



 私はそう言うと、ヘレンちゃんは目を輝かせる。



「でしたら! 私が!! ご用意させて頂きます!! むしろ私にやらせてください!!」


「えっ!? いいよ、王女様だからお金があるとはいえ、流石に友達にそんな大金を出してもらう訳にもいかないし、ドレスじゃなくて体のラインが分かりにくい物を選ぶ事にしたんだ」



 それにその服装なら強制的に足を動かせない状況になれるし。


 そう思っていると、私にくっついているレイゼルが横から「えー!?」という、明らかに不満そうな声を出した。



「俺ノエルの為にドレスのデザイン考えて、これから作ろうと思ってんのに!」


「テスト勉強しないで最近コソコソと何をやってるのかと思えば……一応聞くけど、どういう感じの?」



「真っ白で、バラをあしらったヤツ。それと頭に被せるレースとブーケもちゃんと用意するからな!」


「それウエディングドレスだから、全然違うから」


「つ、ついにその時が来たのですね!? 末永く爆発していてください!!」



「違うよ!? 結婚しないからね!?」


「あ、そうなのですか……ところで、ノエル様が当日に着用される正装というものは、一体どのようなものなのでしょうか?」



 気になって仕方がない様子のヘレンちゃん、それとついでのレイゼルに、私はよくぞ聞いてくれました! と思いながら、その質問にしっかりと答えた。



「夜会当日はランセンの着物を着ようかと思って」


「和服衣装キタ────!!」



 ヘレンちゃんはいつものようにご乱心状態になっている中、レイゼルは真顔で「白無垢も良いな……」とか言っていた。



「……こほん、それで何故ランセンの着物を?」


「フェリラのドレスって基本的に胸元開けるから……それにさっきも言ったけど、身長が低くて子供用くらいしか無いし、私の目と髪の色からして、ピンクとかが合うと思うんだけれど、そうなると子供っぽすぎるからだよ……それにドレス着るの普通に恥ずかしいし」



 あと絶対に「胸無いくせに胸元見せてるとか、どれだけ自分に自信があるんだよWww」って目で見られる、男女関係なく。


 それで私が着物を着たい一番の理由が、この世界作った神様の片方が爆乳を飛び越えてもはや奇乳だったから、そんな神様に作られた人間も必然と胸がデカいのしか居ないし、デカいのしか基本的に好きじゃないから。というか、女として見られない。


 でも、私みたいな体型が好きな物好きはとても数少ないけれども存在している。そういう奴らは存在しちゃいけない生き物だよね、ハム治郎! 


 でも残念ながら、一定の少人数で存在している。居るとしたら、ロリコンとかぺドとかの変態くらい。ちなみにこの世界の女の子は発育がかなり早い段階から始まるから、ガチのロリコンと呼ばれる人達は、結構好みの女の子の年齢が低いことからアリスより年齢の低いペドも多いし、この世界の性欲を考えても犯罪者予備軍も居る。……キショいな。


 まぁそういう奴らは、ロリの奴隷を買う事も多いし、あの気色悪い王様みたいに、呪いをかけて成長できなくさせる事もある。……つまり、そういう奴らはあのクソ王と同じく、力の無い女の子を支配してやりたい放題するのが好きな、性格と性癖ねじ曲がった凌辱趣味のやべぇ奴しか居ない。私の偏見だけど。


 私がドレス着たら絶対にそういう人種が寄ってくる。あのチビデブとか、真っ先にやってきそうだし。……考えたら寒気がしてきたな。


 うん、やっぱりこの世界ダメだ。


 2番目の理由は、前世の頃にちょっと……ある事で嫌な思いをした事があるからやりたくない。そんな訳で、私は絶対に着物がいい。絶対にその方がいい。



「そうでしたか(……ただドレスコードは大丈夫なのかしら)」



 ヘレンちゃんは納得しながらも何故か「ん……?」といった様子で私を見ていて、レイゼルはじっと私を見つめて言ってくる。



「俺、嘘つくの良くないと思うけどなー」


「どこも嘘ついてないけど……」



「あー、言葉が足らなかったな」



 そう言ってレイゼルは私を抱きしめてきて、それを見たヘレンちゃんは口から魂が抜けていた。



「本当はノエルに自信が無いから、ドレスを着たくないだけだったりして」



 ……変態の癖に、確信ついてきたな。私に関わることは変に鋭いんだから本当に。



「違うけど」



 言ってはみるけれど、レイゼルが顔を覗き込んでくるので私はレイゼルから逃げるようにして顔を逸らした。するとレイゼルは首元に頭を押し付けてきた。それを見てヘレンちゃんは……うん、創作意欲が爆発中みたい。いつも通り、ハッスルしてるよ。そんな中、レイゼルが私にしか聞こえない大きさで聞いてきた。



「……社交ダンスだろ?」


「やりたくない……」



「やっぱそうだと思った。でもさ、ダンスなんて体で覚えるものっていうだろ? ノエルなら普通にできると思うけどなー」


「できないとは言ってない、なんならこの前練習してすぐに基本は覚えたけど……ただ」



「不安?」


「精神的ストレスで吐きそう」



 当日は文武学祭と同じく、レイゼルは"勇者"として見られる。そして文武学祭以上に、レイゼルは多くの人との交流をする事になるし、話しかけられる。


 恐らく、その半分以上が貴族のご令嬢達だろう。もし勇者に手助け(意味深)して、その勇者が戦争を止められたのなら、王様から褒美を貰えるから。


 そんな多くの視線を集めている中、どんなに綺麗なご令嬢でも全く興味を示さなかったレイゼルが、今の所は盲愛していると言ってもいい相手である私によって恥をかかされたら。


 ……まぁ、これまでよく色んな人に恥を晒してはいたけれども。


 体裁を気にする貴族達になんて言われるか。……本人は気にしないだろうけども、私が凄く嫌。


 それなら、いっそ踊れない状態になればいい。出席率は下がるけど、風邪引いたって嘘つくか、着物を着ればいい。


 着物ならサイズの問題だって大丈夫だし、レンタルすればそんなに高くはない筈。正装でもあるし……まぁドレスの中、着物が一人なのは浮くだろうけど、勇者の隣に立っている時点で色んな人に見られるんだ……今更という話。



「じゃあ、ノエルが嫌なら俺もやんない!」


「……えっ!? 何言ってるの!?」



 私はともかく、レイゼルはダメでしょ。



「というかダンスって、なんかマナーとかで男が誘うものなんだろ? だったら俺がノエルを誘わなければいい話だし、他の男が話しかけようとしても俺が傍に居るんだから平気だろ!」


「ま、まぁ……そうだけど」



「ならドレスでもいいじゃんか、なっ? そうしよ? 絶対可愛いって! 頼むから、俺の為に着てくれよ~」


「恥ずかしいから嫌……」



 その後レイゼルとは「ドレス着よ?」「着ない」の会話が続いた。それは4時間目の保険(実技)の時でも……。


 どれだけ着せたいんだ、全く。


 テスト当日、レイゼルはいつも私にくっ付いているのが当たり前だったから、カンニング対策の為に席を離れさせられた事にぐずっていた。



『先生、どーしてもダメ? 筆記テスト一瞬で終わらせるからさぁ~』


『だ、駄目ですよ~!? もしかしたらノエルさんに答えを教えてしまうかもしれませんし!』



『じゃあ終わったら目隠しして猿轡付けて、ノエルの椅子になる! というかなりたい!!』


『駄目です!!』



『何で!?』


『逆に何でいいと思った変態勇者』



 そしてテストが始まる直前までレイゼルが「ノエルと離れたくねぇよぉ~~!! やだあぁぁああああ!!!」と騒いでいた。



 そして現在……。



「……」



 ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ



「…………」



 ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ



「………………」



 ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ ピカッ



「クレア先生、隣の勇者(レイゼル)くんが何回もしつこく私に太○拳のポーズをしながら、聖力で愛してるのサイン送ってきてテストに集中できません」


「こらーっ! レイゼル君、邪魔をしてはいけませんよ! 罰として廊下に立っていてください!」




「(ドラ○もんで何度も聞いたこのセリフって、今どき言う人居るんだ……)」



 しかし、案外というか普通に効くのがレイゼル。凄く五月蝿くなるのが目に見える。というか、もう見えてる。



「嫌だぁぁぁあ!! 俺はノエルと同じ空気を共有して、ノエルの吐いた空気だけを吸って生きてたいんだ──っ!!」


「静かにしなさーい!!」


「(先生も五月蝿い(大概)ですよ……)」



「あとノエルの隣は俺の場所だし!!! 学祭の時みたいにもう絶対離れないからな!!」


「こらー!!!」


「どっちも教室から出てくれませんかね……」




~・~・~・~



 同じ学年の生徒達の魔法テスト順位表を見て、私はドヤっていた。もちろんそのトップ、一位に輝いているのは私である。本当にお父さんには感謝だね、魔法の知識を惜しみなく教えてくれてありがとう……。あっ、今イマジナリーお父さんが出てきて「当然だ」とか「よく頑張ったな」って褒めてくれてる。



「ノエル、見た!? 俺2位だってさー!」


「見た、というか大して勉強してないのに私の順位のすぐ下に居るのは凄く納得いかない……あと、あんなに迷惑行為してたのに」



「順位でもノエルの傍に居たいから1日10分で頑張った!」


「30分も無い、だと……??」



「なーなー、誉めて!」


「な、納得いかない……すごく納得いかない」



 だけど10分だけとはいえ、勉強したみたいだし。何事にも、やり甲斐は大事だよね。当日にはあんな迷惑行為をしてはいたけれども……。



「……よく頑張りました」


「へへ~♡ 頑張った!」



 なでなでもオマケにしてあげよう、ご褒美は豪華な方が嬉しいし。……ソシャゲの石だって、豪華な方がみんな助かるよね。まぁかといってばら撒きすぎたらサ終して、ゲームが消えちゃうけど……あぁ、帰って来い私のデータ。


 そんな亡き運営に思いを馳せながらレイゼルの頭に手を乗せて、なでなですると……レイゼルが「あっ、あっ、あっ……」と、某映画に出てくる黒くてお面を付けた化け物みたいな声を上げていた。恍惚としたトロ顔だったけど。


 ……その日の夜も、レイゼルはナデナデを要求してきたから、その場の雰囲気と流れでナデナデしたよ、セッ……してる時に。ただ、その時に急にレイゼルが泣き出すからビビった。やっぱりこの勇者、情緒が不安定過ぎる。急に泣かれるの凄く心配になるから、また今度頑張った時だけくらいにしよう。


 ただ、テストの結果で喜んでいられるのもその日の内だけだった。



 数日後、筆記テストと魔法の実技テストを迎えて、オール満点を叩き出していた私はそれが嘘だったかのように、ストレスで吐きそうになっていた。



「パーティーは嫌だ、パーティーは嫌だ、パーティーは嫌だ……」


「ノエルが「スリ○リンは嫌だ」みたいな言い方してる! ていうか、ダンスはしないんだから別にいいだろ?」



「ドレスは着たくない、絶対に」


「でも着ないと絶対お義父さんが悲しむと思う!」



「だから困ってるの!!」



 私は煌びやかなドレスを前にして、私は布団に潜り込むと「うわぁぁぁあぁあああ!! 絶対に着たくない!! 無理無理無理ッ!!!」と、大きな声で叫んでいた。一体どういう状況なのか、簡単に伝えようと思う。



 私はお父さんに「ダンスパーティーあるけど、絶対に私は踊らないからドレスは用意しなくていいからね」という旨の手紙を出そうとしました。


 それで「よし! 当日まで大分猶予あるし、これで大丈夫!」って言った瞬間に頼んだ覚えの無いお届け物と一緒にお父さんからの手紙が届きました。


 手紙を読んでみたら、そこには「少し早いが、そろそろダンスパーティーの時期だ。ノエルの為に最も似合うだろうドレスを、俺と母上達が直々に用意しておいた。その辺の貴族の女が着ているどんなドレスよりもグレードは高いから、何かを言われるような心配はしなくていい。だから安心しろ、この俺の娘に平凡でありふれた量産型のドレスを着せる訳にはいかないからな。それからレイゼルの分のタキシードも用意しておいた。ノエルの隣に立った時、お前と釣り合っていない物を着て恥をかかせるような事態にはしたくはない」という、要点をかいつまんでも長い手紙が書かれていました。


 実際はもっと長かったけれど……そして追伸に「PS.着た姿を帰ってきた時に見せてくれ、母上達も楽しみにしている」とも書かれていました。


 ……お父さん、察してたね? 私がドレスを着るの嫌がるだろうから、手紙を出す前に送ったね?? しかも手紙の最後に写真まで要求して、まだ猶予は沢山あるのに……。


 考えが甘かった!! G〇DIVAのホワイトチョコレートよりも甘かった!!!



「……やらざるを得ない状況になってしまった」



 お父さんの教えの中に、やるからには全力でやれという物がある。その理由は、いつかその経験は身になるからというもの。やりたくはない、ものすごくやりたくはないけれども……でも全くのその通りで。


 レイゼルの隣に立つ為には、貴族との関わりは避けて通れない。


 だから教養で嗜みであるダンスは踊れなくてはならない。


 ただでさえ学園の一部の人間からのアンチやヘイトが私に向かっているのに(レイゼルに至っては、あの父親のせいで沢山の人間に嫌な目を向けられているし)私のせいでこれ以上嫌な態度を悪化させるようなことはしたくない。


 あと普通に恥はかきたくない!! 


 ので!! 練習は一応今後もしておこう!! なんなら「ダンス? できますけど?? ドヤァ……」くらいにはやって、手本を見せるとか言ってバカにしようとしてきた奴らの出鼻をへし折ってやれるようにはならないと!! 


 ……そう思うとなんかやる気出てきたな。



「けれども! やるからには徹底的に!! 誰よりも上手くなって、高笑いできるレベルになってやる……胸には絶対に勝てないけど、舐め腐ったお嬢様達を技術で捻り潰す!!」


「そういうノエルのプライド高いとこしゅき~♡」



「そうと決まれば練習あるのみ!! という訳で付き合って」


「え~?」



「不満なの?」



 レイゼルにしては珍しい、そう言ったらいつも喜ぶのに……。


 するとレイゼルは私を抱きしめてハァハァし始める。



「ふへ、えへへ……ノエルってば大胆だな~♡ 俺とそんなに突き合いたかったなんてさ……♡ 丁度チンコも勃ってきたし、俺と腰振りダンス──」



「ぶるぁぁぁあああッ!!!」



 私の胸にさすさすしてくるレイゼルを思わずcv若○規夫みたいなふ声を出して左でぶん殴ると、私は喜んでいるレイゼルを引き摺っていった。



~・~・~・~



 学校にある数多くのダンスホールの一室にて、私は何故かお父さんに送られた練習用のハイヒール(シンプルだけどなんか高そうな靴)を持ってやって来ていた。



「とりあえず! ワルツはダンスの基本だし、基本的にステップは3カウントだから難しくはないし、覚えれば自然と体が動いて、後はリズムに乗るだけ!! だから実質音ゲーの覚えゲーだから!! た、たぶん……たぶんできる!! と、思う……」


「つまりDA○CERUSHってコト!? 俺やった事無いけど頑張る!! 頑張ったら俺とセッ──」



 バチンッ



「あんッ♡♡」



 凄く自信無いけど、まだ練習だから! 本番じゃ無いから!! 



「でも私とレイゼルの身長は20cmくらい差があって、理想的なのは10cm……私が10cm以上高いヒールを履く事になるから、そこから慣れないと……どうしよう、そもそもそんなにヒールなんて履いたことない……。


(というか、なんでお父さん私の身長と足のサイズ把握してるの。ぴったりで高さも合ってるし……)」


「大丈夫、俺がちゃんとバッチリ支えるからな!」



 こういう時のレイゼルは意外と頼もしい、お言葉に甘えて存分に助けてもらおう。



「そう、駅弁でセッ○スした時みたい──」



 バチンッ



「にッ♡♡」


「いちいち下ネタ挟むな変態勇者、あとそういう事言うのやめろ!!」


「ありがとうございます、ありがとうございますッ……!!」



 何故か練習の様子を見に来てるヘレンちゃんが、鼻血出して私とレイゼルに拝みながら原稿用紙とGペン持ってるから!! 


 本当に……友達に言ったらあれだけど、自重しないオタクにそういうネタを出したら、とんでもないフィクション込のエロ同人描かれるからね?! 


 というか描かれてるけど!! 



「えっと! その、それで……まず、ヒール履いて歩く練習からしていい?」


「そこから?」



「そう!! ほら、バランス感覚掴めてないのにいきなりダンスなんて、絶対転ぶし……足がガクンってなりそうだし、ヒール履いてるのに歩き方が駄目だったら、かっこ悪いし。というわけで、まずレイゼルには私の歩く補助をしてもらいます。慣れてきたらダンスの練習、それでいい?」


「良い! だってさ、それってノエルにずっとくっ付いていられるって事だろ? 全然良い、むしろ最高!!」



 なんか、この勇者喜んでるな……。



「それでヘレンちゃんにも手伝ってもらいます!」


「わ、私、ですか……?」



 ただ漫画描きに来ただけのヘレンちゃんは、まさか自分が手伝う事になるとは思ってもおらず、私に指名が出て驚いた表情になっていた。



「ヘレンちゃんには、ヒールを履いた状態での歩き方を教えて欲しいです!」


「ですが私は、その……(推しCP2人が力を合わせて、イチャイチャしながら2人だけの力で乗り越える姿が見たいのに、私が介入したら……あ、でも友達ポジで教える側も捨て難い……わ、私は一体どちらを選べばいいのかしら!?)」



 ……ヘレンちゃんの中で変な葛藤をしてる気がする。


 こういう時は、お父さんにお願いする時のアレを使う時が来たかな……まぁ、成功した試しは無いけど。やったら凄くニッコニコで「駄目だ」って言われて頭を撫でられて抱き締められるけど。



 ……秘技、美少女の顔面をつきつける!!



「私の為に誰か手伝って欲しいなぁ……このままじゃ、性格の悪い令嬢達に馬鹿にされちゃうなぁ……ねぇヘレンちゃん、助けて? おねがい」


「いいですとも!! 僭越ながら私がやらせて頂きます!!!」



 ヘレンちゃんにうるうるの目でそう言ってみると、ヘレンちゃんは即堕ちした。



「ずるい!! 俺ノエルにそんなお願いされた事無いんだけど!!! 今度俺にもやって!??」


「レイゼルにはやる意味全く無いでしょ、それにやったら何してくれるの?」



「愛の力でノエルが嫌いな奴とか不都合な奴全員消す!」


「絶対頼まないからね」



 この勇者、本気だ……。





レイゼルくんは血とかグロイのはダメだけど、嫌いな奴とか邪魔だと思ってる奴はそもそも人間だと認識してないから、それに何しようと何も感じないっていう。


ちっちゃな子供が虫の羽を引きちぎったり、足を引っこ抜いたり、頭を潰したりするのと同じだね!



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