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チュートリアル用チョロイン幼馴染に転生してしまった  作者: 水性さん
学校編 1年目!!!
32/54

大会じゃ!! 前編!!!



今回、とんでもなーく話が長くなってしまったんですけれども、頑張って読んでね。





「ピキー! ピキ、ピキー! (これから22(にゃんにゃん)回目になる秘密計画についての会議を行うのねん!)」



 一匹のスライムがホワイトボードの前にある台に乗ってそう言うものの、大きな円卓に並んで席に座った大勢の魔物達は全く話を聞いていない様子で、円卓の上で乱雑とした、ある人物の写った写真を見つめていた。



「あ────っ!! デキてる!!」


「五月蝿いです」



 人魚の魔物が興奮しながら、水の中での声を拾うマイクとスピーカー付き水槽の中で、水槽の外側に貼り付けられた写真を見ながらそう言う。そして隣のハーピーの魔物が人魚に注意をしながらも写真をじっと見ていた。

 その写真はとある人間2人の写真である。


 1人は金髪の地雷臭を漂わせる服装をした少年が幸せそうな表情をしており、その隣には照れた様子で顔を赤くさせている、銀髪の気が強くて素直じゃなさそうな少女。



「ま、魔王様……ついに勇者に、恋人が!!」


「なんだかとっても幸せそうです!!」


「魔王様がお心を痛めているというのに、イチャイチャイチャイチャと!! 


 ……いいなぁ彼女、僕もほしい。幸せそうだなぁ」



 そう魔物達が騒ぎ立てている中、和ゴスロリを着たすすり泣く声の主……彼らの王は目元を腫らせたまま、絶望の表情を浮かべていた。そんな魔王に魔物達も今日はあまり元気が無い。



「魔王様は未だにあの出来事のショックからから立ち直れていないのだ……おいたわしや」


「早夜から元気が無いのは、そういう事だったのか……」


「害虫共のせいで……絶対にゆるさないぞ!」





















「魔王様、代わりの物はどうでしょう? こちらのクマちゃんとか……可愛いですよ?」


「ダメじゃ!! バニラちゃんは父上が妾を想って6世紀前にくれたウサちゃんぬいぐるみじゃぞ!! あれが良いのじゃ!!!」



「でも布が随分とコロモクイムシに食われてしまって、もう継ぎ接ぎにするしか……」


「嫌じゃ!!!」



 そう癇癪を起こすのは、魔物である彼らの女王……ティアラ、5859200000000000000005歳児。人間からすると立派な"のじゃロリババア"だが、まだまだ子供なのである。


(彼女が魔王であるという事とは別に、他の吸血鬼よりも特別な吸血鬼であるということもあるが)


 人間に換算すると、5~6歳くらい。なので彼女は立派な幼女なのである、幼女だから癇癪くらい起こす。


 しかしこの様子と容姿に惑わされることなかれ、彼女は正しく魔王。この中の魔物達の中で最もつよーくてえらーい存在だ。


 思わず「ぅゎょぅι゛ょっょぃ」と言ってしまうほどの。



「……じゃあ、久しぶりにあの方が来て直して下さるまで待つしかありませんね」



「今妾はホームシック中で心のズッ友を喪失中なのじゃ、待てぬ!!」


「そうですか……もうこれからはバニラちゃんを抱いてクッキー食べるのは止めましょう? これ以上泣いていては魔王としての示しがつきませんし、何よりバニラちゃんが悲しんでしまいます」



「……うむ」



 まるで保護者のようなハーピーの青年にそう言われ、王座に座っている銀髪の小さな女王はぐしぐしと涙を拭うと、ティアラは王座で座り直す。



「要らぬ心配をかけたな、これより会議をするとしよう」



 いつもの様子に戻ったティアラの声でようやく周りは静まると「スラたろう、報告せい」と指示を出す。



「ピキー! ピキ、ピキピキー! (ラジャーなのねん! ゲイルとスラのすけの報告では、順調に勇者は力をつけているらしいのねん! でも人間の域からは出られていないらしいから、まだまだじゃこなのねん!)」


「……映像とかは無いのか?」



「ピッ……ピキー! (あっ……忘れてたのねん!)」



 どうやら撮り忘れていたらしい。そんなスラたろうの報告に「はぁ……」とため息をつくと、魔王はスラたろうをガッシリと両手で掴む。



「全く、お主らは本当に抜けておるな」


「ピ、ピキー! (ま、魔王しゃまー! お仕置はやめて欲しいのねん~!!)」



「妾に口答えするでない!」


「ピキャー!!」



































 もちちちち、もちもちもちもち、もちち! 



「ピキッ、ピキ、ピキピキー!!!」



 魔王によるプニプニで、スラたろうはのたうち回りながら手から逃げようとしたが、逃げる事はできずにプニられていた。スライムにとってプニプニされるとくすぐったいのである。



「まぁよい、そもそもゲイルとスラたろうには向かぬ仕事じゃからな、戦闘能力については……彼奴(きゃつ)に任せるしかなかろう。でもゲイルとスラたろうは人の目もあるから、まぁたぶん映像は仕方ないかのー、それに恋人が勘鋭いっぽいから気づかれそうじゃし、それに今日は大会の様子は全国ライブ配信だし……。というか、任せなくても恋人が強いらしいし……やっぱり任せなくてもいいかのー。よし! スラたろう! やっぱりやらなくていいと連絡するのじゃ!」


「ピキー! (ラジャーなのねん!)」



「あと人間の所の映像を電波ジャックしといたから別に良いか。そうだ、そうしちゃおー! 


 ……あっ、ゴホンゴホンッ! ところで、この菓子はなんじゃ?」



 思わず素になった魔王様は咳払いをしてから、円卓の上に用意された沢山の洋酒入りパウンドケーキやチョコ、それから大好きなサクサクのクッキーを見つめると、趣味がお菓子作りと酒造りの女子力(?)高めのゴブレスに視線を向けた。



「あっ、それは僕が作った洋菓子です……もし皆がお腹が減っていたら会議も進まないでしょうし、その……魔王様に元気になって欲しくて用意しました。口に合えば良いのですが……」


「ふむ……クロウ!」



 じっとお菓子達を見つめて彼女はハーピーの名を呼ぶと、サッと彼はフォークを持たせる。



「どうぞ、落とさないようにお気をつけて」


「妾はそこまで童子(わっぱ)では無い!」



 そう言ってからワクワクした様子でパウンドケーキにフォークをプスリと刺すと、あまりの柔らかさとふわふわさにティアラは目を輝かせる。そしてティアラは口の中に入れてモグモグと食べ、にぱっと笑った。



「おぉ! ゴブレス、お主また腕を上げたな! やはりお主の菓子が一番美味いぞ!」


「あ、ありがたき幸せ……!」



 この会議に参加していた者達はそんな会話に気分がふわふわしている中、オークは用意されていた洋菓子をただ「うまままままっ! おいしいおいしい!!」と貪り食い、サラマンダーは食欲よりも睡眠欲で、夢の国へ旅立っていた。なんとも緊張感の無い、フリーダムな会議であろうか。


 ちなみにこの会議はそれがずっと続き、途中で解散するのである。


 しかし今回はそうもいかない。何しろ、このワールブルク学園の剣技・魔法大会の様子はアーティファクトを通して全国に生中継され、自宅にある薄い箱型の黒くてちょっと大きなアーティファクトに映るのである。


 そう、つまり高校野球のようなものなのだ。まぁその映像を魔物達は電波ジャックして見ているのだが……実はアーティファクトを一番最初に作ったのは魔物達であり、魔法と原理は同じという訳で、意外と機械いじりは遺伝子レベルで得意だった。電波ジャックくらい、御茶の子さいさい。そしてこの行為は国家ぐるみなので、これは犯罪じゃありません。



「今日は中々、楽しく見れそうじゃ!」















「でも魔王様、流石に始まるまで5時間以上もあるのに、わざわざ早朝から会議しなくてもよくない~? 確実に寝不足になるし、今からちょっと寝ていい?」


「こういうのは早朝テンションで見る物じゃろ?」


「今朝は寝不足確定ですね……」



「まぁ妾は寝ずとも全然平気じゃが!」



 ドヤ! 



「ピキー! (ぼきゅも平気なのねん! しゅいみん欲に囚われるお前らダメダメなのねん、かわいしょお♡ なのねん)」



 ドヤドヤ! 


 そんな書き文字がドン、と書かれるかのようなドヤ顔をする2体の魔物。



「吸血鬼とスライムですしね……後で表に出てくださいスラたろうさん。私が捻り潰して差し上げます」


「あーっ! クロウがストレスでスラたろうにいつも以上にイラついてるぅ!!」



 ワーワー! ギャーギャー! 


 騒ぎながらも、ここで彼らの魔王様は「あっ!!」と、何かに気が付いた様子で声を上げた。



「そう言えば、あの子は何処におるんじゃ?」


「あぁ、そろそろ起きてくる頃だと思いますよ」



 うぅむ……活動時間が逆だと、起きるまでが退屈じゃ! いっそ吸血鬼に……」


「そんな軽率に"人間"を同胞にしようとしないでください」



「えー、妾やだー!! だって"ズッ友"だったら覚えてるからいいけど、人間って大体100年で死ぬんじゃぞ!? それに来世で覚えてるかどうか怪しいじゃろ!! 覚えてなかったら妾ショック!! やだー!!」


「じゃあ起きてきたら本人に直接聞きましょうか……」


「うん! ……あっ、うむ!」








 そして時を同じくして、人間サイドの方でも王とその臣下達はオールナイトで集まって会議をしながら書類仕事をしていた。


 ただ魔物達の方と全く違うのは、その様子が覇気迫った様子でやっていることと、国の主本人が直接その場に居る訳では無く、代理が玉座に座っているということ、主が生物学的には男であること、そして主は王ではなく皇帝だということ。



 〘ノイきゅん、おはよう♡ 昨日はちゃんと寝れたかしら?〙


「……」



 そう呼ばれた片目が白髪で隠れた16歳の美青年、ノイルは、お気に入りのぜっきょーチキンを持ってマイク付きスピーカーにプピプピと鳴らしていた。どう見ても某百円ショップと謳っているのに本当に百円のものがない店とかで売っているびっ○りチキンにしか見えないが、これはぜっきょーチキンである。


 このチキンくんは幼少の頃、国民から貰ったものであり、それ以来ノイルのお気に入りだ。だが何故ぜっきょーチキンで会話をしているのかというと……ノイルは声を出すと衝撃波を発生させ、周りの物や人にダメージを与えてしまうからなのである。実はちゃんと理由があった。ノイルはただチキンで会話をする変な子ではないのだ。


 そしてノイルはノルトの兄である長男ノクターンの一人息子で、母はノエリアの時のようにノイルを産んだ際、亡くなっている。例え生きていたとしても、ヒエリカ皇族の子を産むと体に大きな障害を負う事もある。


 皇族の血を引く者を産むのは、それ程までに母体には危険と大きなリスクが伴うものなのだ。ノエリアとノルトの妻が、どちらも何の障害を受ける事も無かったのが逆におかしいのである。



(ピーピープピーピーピーププピーピーピープピーピープピーピーピーピーピープピーププピープププピーピープピープ)



 〘あら、そうなの? でもちゃんと寝ないとお昼眠くなっちゃうわよ〙


「……」



(ピーピープピーピープピー)



 〘もう眠いのね〙



 そんなノイルは今、何をしているのかと言うと……祖母(♂)に代わり、皇族に仕えている王達の監視をしていた。


 というのも、今日は従妹が通う学校の学祭最終日。この日は世界中が注目する剣技・魔法大会があるからだ。ちょくちょく皇帝であるノエリアが"ヴェリカ家"に来る事はあるが、皇族は基本的に忙しい。


 居る時間も本当に少しの間だけで、それこそ隙を見て休息の為にもやって来ているのだ。そしてノエリアは昨日から一度も休まずヒエリカ全土の魔獣を狩り尽くす程の勢いで、ずーっと魔獣と戦ってきていた。



(ピーププププピーピーピープピープププピーピーププピーピーピープププププピーププ)


 〘大丈夫よ、ルーアちゃんの結婚式を無事に挙げる為にも、SOS信号が途中で入って邪魔されない為にも……エルきゅんの成長をこの目で拝む為にも! それに頑張ってるのはあたしだけじゃないもの、弱音なんて言ってられないわ! 


 それでノイきゅん、そっちに居る家畜共の状況はどうなってるのかしら? 〙



(ピーピーププププピープピープピープピープピーピーププピープピーププピーププピーピーププピープピープピーピーププピープピープピーピープピーププププププピーピーピーピーピーププピーピーピーププピーピーププピープププププピープププププピーププピープピーピープピープププピープピープピーピープピーププププピーピープププピー)


 〘あら……じゃあ体に鞭でも打たせておけばいいわ〙



 鬼畜である。


 なんという職場であろうか、しかし普段これ程忙しい訳ではなく、今回が特別忙しいだけだ。それにこの仕事はブラックという訳でも無く、ちゃんと給料だけでなく福利厚生手当もちゃんとしているので。


 まぁ5人の王達とその臣下達は鞭と聞いた瞬間にむしろやる気が上がり、ハァハァして作業効率が上がっていたが。もちろん終わった後はしっかり飴を与える事も忘れずに。



 〘ノイきゅん、また後で連絡入れるわね♡ 海から個性的なお客様がいらっしゃったのよ、たっぷりおもてなしして差し上げないと失礼でしょう?〙


「……」



(プピープピープピーピープププププププピーピーピーピープピープププピーピープピーププピーププピープピープピーピープププププピーピーピーピー)


〘分かってるわよ、じゃあまたねノイきゅん♡〙



こうして連絡が切れると、ノエリアの方では海からザバーンと水飛沫をあげながら、タコのような緑色の魔獣が現れる。



「本当はこんな雑魚に構ってる時間は一秒も無いけれど、お仕事だから仕方無いわね。……さぁいらっしゃいませ、お客様。


 このアタシが直々に、行きそびれたあの世へご案内してあげるわ」




~・~・~・~





「あっ、戻ってる!」



 朝、ノエルがまだ眠っている早朝、元の姿に戻ったレイゼルが自分の体をぺたぺたと一糸まとわぬ姿で腕やら胸やらを触っていた。


 それからペラリと掛け布団をめくって、ちゃんと付いているかを確認。



「よかった、ちゃんとある……」



 やはり本来あるべきものがそこにあるのは、安心するのである。感覚で分かるとはいえ。


 隣に居るノエルの方を見ると、同じく素っ裸でスヤスヤと眠っている。まぁ仕方ない、昨日はあの姿で結局襲って結局楽しんだのだから。当然ノエルも何も着ていない。


 まぁ、入れる物……つまり、あったら使っていただろう双頭ペ○バンが無かったので、やっていたのはただ指で触ったり舐めたりするくらい。しかもノエルから見たらいくら元々男とはいえ、相手は同性。


 実はバイではあるものの、それはほんのちょこっとだけなノエルにとって、いつも受けであるのもあり、胸はともかく同性のソレを触るのは流石に気が引けた。なのでレイゼルは得た快楽に若干物足りなさを感じながらも、なんだかんだでノエルの前でオ○ニーをして喜ぶ変態だったので、男であった体よりも女の体の方が敏感なのもあり、それはそれで楽しんだ。


 その後はノエルを抱きしめながらぐっすり。


 そして現在、レイゼルは元の体に戻り、息子の安否を確認していたところだ。そんな変態はこの時、いつか百合プレイをリベンジしようかと思っていた。変態なのでエロに対して貪欲なのである。


 そんな変態は帰ってきた息子を確認すると、すんばらしく絶好調でご立派でお元気なエリンギだった。


 そのお元気さは今すぐにでも隣で気持ちよさそうに眠っている大好きな幼馴染に、朝の挨拶(意味深)と朝のちゅー(意味深)をして朝ごはんの濃厚なギリシャヨーグルト(意味深)を出してしまいそうなくらいだ。


 この変態は一応これでもあの頭がおかしい二柱の神(の片方と人間)からできた存在なので、こんな世界の住人らしく、やはり愛情(性欲)が湧き出てくる。


 レイゼルはノエルを愛おしそうにうっとりと見つめながら頭を撫でるが、既に表情は捕食者のようになっており、熱い息が漏れ、ヨダレがとめどめなく溢れ出ていた。


 ふと前世の頃、好きだった人が病室にやってきた時、その間はどういう訳かずっと体が反応して、掛け布団の下で己の息子は「ちゅき♡ だいちゅき♡」と、気持ち悪い程に主張をしていたのを思い出す。


 これがまさに、体は正直、と言うやつだ。


 前は自分の性欲はここまで強かったのか、とか欲求不満がすぎると自分自身引いていたものだが、今では本当の原因はそうではないのではと思っている。


 だって、元々魂は神と同じである訳で、もし体がその影響で普通の人間とは違う性能になっていたのだとしたら。愛が比例して、ここまで二つの意味で肥大化してしまったのだとしたら。


 ありえない話では無い、実際に今は一日に何度もセッ〇スをしないと体はもちろん、何よりも心が満足しない。


 ……随分と自分は昔に比べて欲張りになったものだ。


 そんなふうに「今の自分、昔と変わったなぁ」と同じような感じでレイゼルは思う。本質的な部分は何も変わってなどいないのだが。前はほんのちょっとだけでいいから誰かからの愛……いや、愛よりももっと薄い、優しさとか視線が欲しくて欲しくて堪らなくて、それだけで良かったのに。


 今ではただ一人だけからの特別で、もっと深くて胸焼けしそうな甘い()を独り占めできていないと、頭の中が割れて壊れてしまいそうになる。


 例え地獄に落ちたとしても、頭や魂をぐっちゃぐちゃに掻き回されてすり潰されても、その愛を受けて吸って抱き締めて感じて狂っていたい。むしろもっとおかしくなりたい。


 もう知ってしまったからには戻れないし、戻る気はサラサラ無い。こんなに幸せで気持ちいい事なんて、他に無い。


 前は性行為が無くても想い合う関係であれば、それが愛なのだと思っていた。だが今は違う。愛を伝える為であり、離れて欲しくない、離れたくないという想いの為であり、ノエルからの愛を享受する為のものだと思っている。


 ノエルのことは愛しているし、信頼をしている。ノエルは昔、傍に居てくれると約束した。きっとそれは守ってくれるのだろう、だがそれでも……レイゼルは不思議と恐れていた。


 他の誰かが、いつかノエルを自分の元から引き剥がすのではないかと。


 そう考えて……怖くなってやっぱり考えるのをやめた。もしノエルが自分の事など興味が無く、他の男が隣にいたと考えただけで……吐き気が込み上げてくるからだ。



「おはよー、ノエル♡ あっ、布団かかってない……ごめんな、ちょっと寒かった? いくらノエルが寒いのに強くても、風邪ひくかもしれないし……今から体の奥まで温まろうな♡」



 そう言いながらレイゼルは布団を被って、その中でモゾモゾと動きながら移動をするとノエルの上に覆い被さる。


 ……その時だった。



「ん……」


「あ、起きた」



 このタイミングでノエルが目を覚まし、ノエルの頭が覚醒したほぼ同時かと見まごう速度でレイゼルがビンタをくらったのは。



「おいコラ何してんだ勇者!!」


「へぶぅっ♡」



「(あ、危なかった!! レイゼルにほぼ半日以上バフ効果が出るところだった!!)」



 ノエルは心の中でそう安心しつつも、万全な状態のレイゼルを全力で叩きのめしてみたかったと少し思った。



「今日の朝は絶対にダメ! ズルになるから!!」


「じゃあ夜は良いんだよな! 分かった♡」



「あっ……待って、夜もダメ!! 絶対疲れてて無理だから!! 絶対に今日はシない!!」


「ふへ、ふへへ……♡ 楽しみだな~♡ イチャラブセッ〇ス……♡♡ 頑張って我慢して、溜まった俺の精子をいっぱいノエルのま○こにひり出すからな♡♡♡」



 既にレイゼルの頭の中はノエルとの行為の事でいっぱいになっており、ノエルは諦めた。というのも、レイゼルは一度こうだと決めたらテコでも動かない。今日の夜にスるのだと決めてしまったのだから、眠って起きた後も明日の昼までずっとベッドの上で動けなくなっていること間違い無しだ。


 そして動けない自分に甲斐甲斐しく世話をして、くっつきながら「ノエル、大好き……愛してる♡」と、幸せそうに一番好きな表情をして言うのだろう。


 ……まぁ、実はノエルはその時間が好きだったりするのだが、当然レイゼルにそれを言ったことは無い。



「はぁ……ご飯作るから大人しく待ってて」


「じゃあ俺手伝う! まずは着替えを手伝わさせ──あはぁんっ♡ ありがとうございますぅッ♡♡」



 恐ろしく早いビンタ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。


 神速のビンタがまた再び炸裂し、そのビンタにレイゼルは歓喜の声を上げ、バッキバキのガッチガチにしていた。



「の、ノエルっ……♡ 顔射していい?」


「白いペンキに顔面突っ込んだのかっていうくらいになるし、イカ臭いし目に入ったら炎症起こすし、カピカピになるから止めろ」



「じゃっ、じゃあチ○コにデコピンしてっ♡ あっ、足で擦ったりグリグリしてもいいから! あと羽とかでくすぐったり、俺のケツ叩いたり……♡ むしろそうしてっ♡ 尿道責めとかも良い……♡♡ 他にもローションガーゼ責めとか、無慈悲な拘束搾精手コキ3時間コース……それプラス目隠しされながら調教プレイも良い♡♡♡」


「キモ……」



 その一言とゴミを見る目でレイゼルのリトルレイゼルは情けなくビクンビクンッ♡ と完全敗北し、ワンタッチされることも無く床にぶちまけていた。……白いペンキ(意味深)を。



「……絶対に掃除してよ」


「はぁ、はぁ……♡」



 前はノエルに引きずられ、それから投げ飛ばされてイッていた事もあったが、変態は常に進化(アップデート)して変態に磨きがかかるのである。


 久しぶりのゴミを見る目+キモ……発言、この変態にとってそれだけで興奮を通り越してイクことは文字通り朝飯前なのだ。



「……本当にちゃんと掃除してよ? 臭いから」


「あひっ♡♡」



 まぁ、すぐにまた射精してしまうのだが、ストックは沢山あるのでまだまだお元気である。



「クルル……」



 すると外から聞き覚えのあるドラゴンの鳴き声と窓をコンコンと叩く音が聞こえ、ノエルは窓を開ける。そこには寮よりもとても大きな白竜が居り、体よりもずっと小さな手紙を何通か咥えてお座りしていた。



「あっ、クルミ!」



 ノエルは手紙を持ってドラゴンの鼻を撫でると、皇族の配達用ドラゴンであるクルミは口を開いて手紙を離す。


 ヒエリカでは、海だろうが地上だろうが地中だろうが空だろうが魔獣が至る所に居る。なのでドラゴンでなければ、鳩を飛ばしたところで食われて無事に帰って来れないのだ。


 そしてクルミは初代皇帝のペットであり、歴史書ではとある吸血鬼が初代皇帝に卵を渡したのだという。その頃からずっと長い間を生きている為、歴史的な価値を考えてもこのホワイト・ドラゴンは唯一であり、生きる宝なのだ。


 しかし人間に換算すると、1歳。ホワイト・ドラゴンの中でもまだまだ若い。とても体は大きいが、まだまだベビー。そんな激レアドラゴンだが、実はクルミはとんでもなくビビりなので、戦闘面では全く役に立たないのである。その為、一度も戦力として扱われた事がない。


 これがギャップ萌えというやつだ。


 ブレスを吹けば、大抵の魔獣どころか魔物や人間も全て蒸発するレベルの火力を持っているのだが……うーん、実に勿体ない。



「(クルミから手紙が来るって事は……おばあちゃんからかな?)」



 そう思いながらノエルは「エルきゅんへ」「ノエルへ」「ノエルさんへ」と様々な個性溢れる自分宛の手紙を取り、それから一通だけレイゼルへの手紙があった。


 要約すると手紙の内容は「頑張って!」というただの激励なのだが、それだけの為にホワイトドラゴンが寮の前でお座りしてノエルからのナデナデ待ち状態なので、他の生徒達と学園側は軽いパニックと問題になった。


 そんな事は知らず、ノエルは窓から腕を伸ばして巨大なワンちゃん(概念)のクルミを撫でていた。クルミはブンブン尻尾やら羽を振ったりバサバサして喜び、寮の中から悲鳴が上がった。



「クルミはワイバーン系ドラゴンだけど……お手!」


「きゅう」



 あんよが大きいね……可愛いね。そんなふうに思いながら、ノエルはちょん、と自分の手の上に優しく乗せられたドラゴンの足をじ──っと見つめる。よく手入れされているのか、爪がしっかりと切られていてお手をしても全然危険じゃないことが分かる。起きたニョッキは流石のドラゴンにはプルプルと、食べられないかどうかを心配して隠れていたが。



「そうだレイゼル、手紙来てるよ」


「んー?」



 レイゼルはノエルを後ろから抱き締めながら手紙を受け取ると、ノエルの片手を自分の頭に乗せてノエルに頬擦りをする。


 この意味は「俺の事も撫でろ」という意味で、ノエルは仕方ない幼馴染の頭を撫でくり回すと、本人は「んへへ~♡」と、喜んでいる。


 今日が剣技・魔法大会当日だというのに特にピリピリする事もなく、朝からこの幼馴染2人はイチャイチャしていた。



「あ、今日は絶対に手を抜いたら駄目だからね。もしやったら……えっと、どうしようかな……えっと、ムチ打ちの刑に処すから!」


「ノエル、それむしろご褒美」



「……そうだった」



 特に思いつかないのでそう言ってみたが、相手は変態。結果的に喜ばすだけだった。一方ムチ打ちを所望したい変態は「手を抜いたら殺す」という皇族達からの脅しじみた手紙を読みながら、やっぱ考えてる事はこの一族って皆同じなんだなーとか思っていた。


 そして朝食のヨーグルトにブルーベリーソースがけ、サラダチキンとブロッコリーとプチトマト、バナナスムージーを済ませた後、ノエルは一人でヒエリカに来ていた。


 というのも、一人で来るようにと手紙で書いてあった為で、レイゼルは先に学校に行く事となったのだが……。



『やだぁぁああああ!!! ノエルと一緒に居るぅぅぅぅぅぅぅ!!!! やだ、やだぁぁぁああああああああ!!! 行がな゛い゛でぐれよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!』



 行く時にはまるで初めての保育園に預けられた幼児のように情けなくガチ泣きしながら、レイゼルは泣き叫んでいた。



『す、すぐ帰ってくるから……ほら、ニョッキもここに置いておくし……寂しかったらもう先にコロシアムに向かうか、屋台めぐりとかニョッキとしてていいんだよ?』


『にゅっ!?』



『ゴイ゛ヅ嫌いぃぃぃぃぃぃぃぃ!! それに俺はノエルとじゃないとやだぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!! ノエルと行きたいんだよぉぉぉおおぁぉぉぉぉぉぉぉぁおおおおおお!!!』


『にゅーっ!!』(それは同感だが、お前にそう言われると腹立つの意)





 どうしようもねぇ勇者にノエルは、えっぐえっぐと顔をぐちゃぐちゃにして泣いている所にそっとお布団をかけて、いつも自分が寝る時に隣に置いている、幼少期にノルトパパに買ってもらったお気に入りの猫のぬいぐるみを持たせておいた。


 そして何とかレイゼルから離れると、ノエルはこうしてなんとかヒエリカに来たのだった



「(最近の話だから久しぶりに来た……という訳でもないけど、やっぱりヒエリカって空気感というか気候というか、空気中に魔力が沢山含まれてるからか、なんか居心地がいいな……相変わらず天気悪いけど)」



 そして前のようにノエルは門の前の列に並んでいると、ノエルに気が付いた、まさに魔獣を狩りに行こうとしたヒエリカ出身の冒険者達が国民達が外に出る為の門の前で立ち止まり「あっ!!」と言うと、オロオロし始める。あれ、教えた方がいいよな? でも教えていいのか?? そんな様子である。


 すると、勇気ある若者が、ノエルに声をかけた。



「あっ、あの!」


「はい?」



「あ、あなたはそちらの、外国人受け入れ用の関所ではなく、こちらの門を通った方がいいかと!!」


「えっ、でも……」



 いいのかな……。


 そんなふうに思いながらもノエルは大きな門を恐る恐る通っていく。特に防犯とかで急に透明な壁が出てくるということも無く、どこかホッとしながらヒエリカに入国していた。


「(……よく考えたら、自分の意思で1人で行動するのは家出以来な気がする。なんだか、いつもレイゼルが傍に居るから、1人なのが逆に変な感じがするな……ソワソワするというか)」



 そう思いながらノエルは、手紙に書いてあった噴水広場と書かれている場所に向かう。ヒエリカは結構広いのでちょっと走って向かうと、ノエルは思ったより早く噴水広場に着き、そこで待っていた。



 そして……何故かカラスにジッと見つめられ、狙われていた。



「(……何だ、あのカラス。もしかして、私の髪に反応してる? もしかして光ってるから? いや、なんかと違うな……)」



 両者、お互いに一歩も引かない中、ノエルはハッとしてポケットの中に手を入れる。出てきたのは、忘れ去られていたお腹減った時に食べるオヤツのナッツが入った小袋。……柿ピーとか飴をポケットとかに入れて置いて忘れる事って、案外あると思う。あったとしたら、そんな感じだ。たぶん。



「(何故分かった……これが野生の勘!?)」



 別に勝負をしていた訳じゃないけれども「お前の勝ちだ……お前にやるよ」と言わんばかりにノエルは袋の中身を全部カラスに渡すと、カラスは1つだけ残してノエルの方にナッツを寄せた。


 種族を超えた友情が爆誕した瞬間である。


(でも実はヒエリカで野生の動物にエサをやるのはヒエリカの一般常識的にはダメだったりする。ヒントは魔獣だ。しかし、推しだから許されたところがある)


 最高にエモい状態に周りのヒエリカ国民達は心の中でガッツポーズをし、当然この様子を見ている千里眼持ちの皇族箱推しガチ勢おじいちゃん執事も歓喜していた。


 カラスが近づいてきた目的が例えご飯の為で、それが気のせいだったとしても……そう思った方がなんだか楽しいし夢があるので、そういう事にしておいた。


 とはいえ野生のカラスは生きる為には、他にも色々と食べなければ生きてはいけない。チラリとノエルに「じゃあな」と挨拶をするようにして見ると、飛び立った。



「……今度来る時はもっとナッツ持ってこよう」



 そんなカラスの友達ができてご機嫌なノエルの所に、チキンさんで親しまれているぜっきょーチキンを持った、自分の父親に顔立ちがとても似ている青年、そして燕尾服を着た老人がやって来た。



「あっ、ノイ兄とおじいちゃん!」


「……」


(ピープピーピープププピープピープピープピーププピーププププピーピープピーププピーププ)


「ノイル坊っちゃまは「お元気でしたか」と申しております」



 チキンを隣で翻訳するセバスチャンにノエルは「相変わらず何で分かるんだこの人……」という目で見ていると、従兄のノイルに少しぎこちない慣れていないような手つきで頭を撫でられる。


 まぁ、このチキン語はぶっちゃけモールス信号で会話をしているので、モールス信号が分かる人にとっては簡単なのだが。


(ちなみにノイル推しの国民達(ガチ勢)は、ノイルの言ってることが分かるようになりたいが為に、モールス信号を必ず覚える。モールス信号を勉強して語り合うオフ会もある。推しのノイルを感じていたいガチ勢オタクは、ぜっきょーチキンキーホルダーを何個か持っている。そして今回のカラスの件で、ノエル推しの国民達(ガチ勢)は、来世はカラスになりたいと言う者も続出する事になるのであった)



「ところでおばあちゃんは……? ここで待っててって言われたんだけど……」


「陛──ご主人様はただいま、公務に励んでおります。ですので、ノイルお坊ちゃまと私、セバスチャンが皇──お嬢様のお迎えに参りました」


「……」



 なでなで、なでなで、なでなでなでなでなでなでで。



 ノイルは未だにノエルの頭を撫で、流石に不審に思ったノエルは「ノイ兄……? えっと、そろそろ恥ずかしいから、というかなんか周りの人がこっち見てるからやめて欲しいんだけど……」と言うものの、止まる気配無し。ポケットから食べると無敵になりそうな感じのぺろぺろキャンディーを出すと、ノエルの手に優しく握らせた。



「ノイ兄……会うといつも飴くれるけど、それ喜ぶの5歳くらいの子だと思う……」


「……」



「だからってお小遣い渡せばいいって訳じゃなくてね? えっ、ちょっあの、スッ……ってお財布出さなくていいから。お財布しまって。ホントにいいから、ホントに!」



 まぁ仕方ない、母が亡くなってしまった以上、ノイルは一生一人っ子が確定してしまっている。たったの3つとはいえ、ノエルは143cm、それに対してノイルは166……。ノイルにしてみればあまりにもノエルは小さく、加護の対象なのだ。


 つまりノエルがゲイルを守護らねば……と思っている事と同じように、ノイルもノエルをそういう風に思っている。しかしひとつ違うとすると、ゲイルはノエルにとっての先生で、ノエルはノイルにとっての妹のようなものだということ。


 そう、ノイルは今まさにノエルをこうして甘やかす事で妹扱いしている。一応血は分かれているものの繋がっているし、親が兄と弟なので、まぁたぶん合ってるだろう。



「お嬢様、でしたら私からの献上金をどうぞ……」


「おじいちゃんも何でお財布出すの!? 2人共ちゃんとお財布しまってね!? 


(一体何故おばあちゃんといい、従兄弟や執事といい、身内はお小遣いをあげたがるのか。ここにレイゼルが居たら、絶対に代わりに受け取ってただろうな……。


 ……その前に、この状況を見たらレイゼルが出刃包丁をノイ兄に投げてきそう)」



 そんな風に思いながらノエルはキャンディーをぺろぺろし、満足気なノイルに手を繋がれて移動をしていた。なぜ転移魔法で移動をしないのかというと……もちろん、ノエルとの散歩を楽しむ為だ。


 お兄ちゃんは妹と一緒に居たいのである。






 ……その一方でレイゼルはというと──。



「あっ!! 今ノエルが俺の事考えてる!! そうだよな!? えへ、えへへぇ……♡ やっぱり本当はノエルも寂しいんだよな! そうだよな~~♡♡


 俺も……寂じいぃぃぃぃぃぃいいい!!! 早ぐがえっでぎでぇぇえええええええええ!!!! あ゛ぁ゛ぁ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!」


「にゅーっ!!」(うるさいの意)



 アホ毛からノエルのテレパシー的な物を受信して、相も変わらずノエル分離不安症を発症していたレイゼルは、五月蝿く惨めに泣いていた。


 イマジナリー犬耳と尻尾を垂れ下がらせた状態で、ベッドに丸くなりながらノエルの残り香をクンカクンカしながら。



「にゅにゅにゅ……にゅ──っ!!!」



 そんなレイゼルにニョッキはベチンベチンとカサで引っぱたくと、無理やりレイゼルを外へ連れ出したのだった。


 キノコなのでジメジメした場所は好きだが、べそべそジメジメした奴は嫌いなのである。


 それに嫌いな奴がずっとビービー泣いているので、調子が狂う。絶対にニョッキはそれを認めようとはしないが。


 そう、主人にこの変態を頼まれたから面倒を見てやっているだけなのである。決してこの変態を心配している訳では無いのだ。これも主人を心配させない為。



「ノエルぅ……ノエルぅ…………」



 顔をぐっちゃぐちゃにして目元を赤く腫らしながらノエルの魔力を持ったニョッキを抱き締めて「キノコくせぇよぉ……ノエルの匂いじゃないぃぃ……」と言っていた。



「にゅぁぁぁあああ!!」



 ニョッキの方は体をバタバタバタさせて暴れるものの、レイゼルが強くホールドしているので離れる事はできない。嫌いだとか言いながら思いっきりくっついてるので、ヤンデレ変態ストーカーはめんどくさい男なのである。



「ノエル帰ってきでぇ……えっぐ、ぶぇぇええ……」



 やっと泣き止んだのにまた泣き始める変態。ノエルが居ない時は大体こんな感じで、まだ祖母が生きていた時はひたすらに虚無っていたが。


 ……そんな時。














「うーわ、汚ったねーしブッサイクな顔……」



 ゴシックパンクの服を着て黒い髪と青い目をした美少女がレイゼルの目の前に現れた。身長は大体自分と同じくらい、年齢も同じ。



「ったく……ある意味予想通りっつーか、期待を裏切らねェもんだな……ほらよ、これでさっさと拭いてその汚ったねー顔をこれ以上人様に晒すなよ」



 いきなり粗暴な口調で話しかけてくると、その口調とは裏腹に、真っ白でレースとフリルの付いた可愛いハンカチを出してくる。どこの誰だか分からないが、レイゼルはありがたくそれを受け取ると、思い切りそれで鼻をかんだ。



「ありがと……えっと、どっかの田中真樹彦アンサンブルシスターズ」


「何言ってんだテメー、あとその汚ねーの返してくんな。クッソ要らねェ」



「俺も要らない……ハンカチはノエルのだったら絶対に汚さねーし、汚れたら俺が記念に取っとくし……。


 あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁあぁぁああああああああ!!! ノエルぅぅぅぅぅぅぅぅぅううう!!! ノエルのばかばかばかばか!!! 何で俺を置いてったんだよぉぉぉぉぉおおおおお!!!! ざびじぃ!!!!!!!! 


 もう怒った!! 怒ったからなっ!! 絶対浮気してやるっ!!!!!! ノエルが俺の事放置してどっかに行くのが悪いんだぞ!!! 他の女の事を1分以上見つめたり考えたり、一緒に手とか繋いだり、一緒にパフェ食いに行ってプレゼントとかあげて浮気してやるぅぅぅううう!!!!!」


「に゛ゅっ!? にゅにゅにゅう……」


「うるっせーし、うっぜー…………ゴミクズ野郎以上にめんどくせー……つーかその浮気ってガキの考えるデート内容かよ」



 ギャンギャンと騒ぎ、泣き叫ぶレイゼル。ニョッキを抱きしめる力が入り、マッシュボディの中身が出そうになってニョッキの魂がふわ~~と口の中から出てくると効果音にちーん……という音が鳴る。しかしそんな時、アホ毛レーダーに謎のノエル電波を受信する。



「……あ゛ぁっ!? 今、ノエルに他の男が近づいて……今勝手に触ってる気がする……しかも今何か渡した? 


 は? 誰そいつ……ノエル、ソイツ誰? ノエルは俺の物なのに?? 何で浮気してんの?? もしかして今俺を置いてってるのって、浮気する為?? そっか、だからソテーを置いて俺の監視させたんだ……そっか、へー…………ノエルは俺の事、飽きたんだ……。でもノエルは俺から一生離れられない。


 だって俺はノエルの恥ずかしい所とかいっぱい撮り溜めて残してるし、これをネタにノエルを脅していっぱい避妊無しの子作りセッ〇スして俺とノエルの愛の結晶ができれば、ノエルはもう一生俺から離れられなくなるよな……♡ 最初からそうすれば良かったんだ、そしたらもう寂しくないしずっと一緒に居られる……ノエルぅ……絶対に離さないからなぁ……ふへ、ふへへへへ、えへへへへ…………あ、ノエルに近づいた男共は後で全員殺さないと……ノエルの事を誑かす男は全員死んでこの世から消えればいいんだ……殺したら蛆虫の餌にして、成長したら金魚の餌にして、その金魚をネズミの餌にしてネズミを猫の餌にして食物連鎖のばいよえーん起こしてやる……殺す……殺してやる……絶対に…………あは、はははっ……ふへへ……」


「きっしょい所もアレ以上、何でコイツが……」



 気分はジェットコースター、快速特急である。信頼? すぐに気分が変わるメンヘラでヤンデレな奴の前でそんな言葉を信じてはいけない。そんなレイゼルの頭を復活したニョッキは思い切り引っぱたく。



「いってぇ!? 何すんだよソテー!!」


「にゅ──っ!! にゅにゅにゅにゅ……にゅっ?」



 するとゴスパンク美少女がレイゼルからニョッキのカサを掴み上げてじっと見つめる。



「にしても、珍しいタイプの精霊だなテメー。フツー、精霊ってモンはそう簡単に別の何かに変化とか進化はしねー。魔物ってのは弱点を無くす為に、周りの環境の変化を受けてそれに適応する体になってる。


 海に住んでいた魔物が火山で生活をし始めると炎耐性のスキルを手に入れて、灼熱の暑さに強くなったり……だが精霊は違う。完全にその場所や自然のエネルギーそのものの存在。


 テメー木の精霊だろ、何でキノコになってやがる」


「俺のノエルが天使だから……」



「何言ってんだテメー」(二回目)


「それより、ノエルの事が頭でいっぱいで忘れてたけど……誰?」



 あまりにも今更過ぎる質問に美少女はイラッとしながらも、ニョッキを少し雑に離して(というよりもポイッと投げて)いた。



「テメーがギャーギャー騒ぐから言えなかったんだろーが!! はぁ……オレの名前はレイネル。一応メス、そんでテメーの血ィ繋がった姉貴。敬えクソ弟~、お姉様だぞ」


「……」



 かなり衝撃的な事実をサラッと伝えてくる実姉にレイゼルはカチーンと止まる。



「…………は??」


「つーか、ばぁちゃんから聞いてねーのか? 俺らの元になった精子を生成したクズが、ばぁちゃんに構って貰えなくて色んな女に手ェ出したマザコン野郎ってのを」



 知ってはいる。沢山の女性に手を出したとんでもないヤリチンだというのは知っている。なのでレイゼルは驚いて固まってはいたが、別に兄弟が居てもおかしくはないと心の中で思っていたので、驚いたもののすぐに受け入れていた。



「クソなのは知ってたけど、マザコンまでは知らなかった……ん? 待てよ、つまり……俺には他にも大量の兄弟とか姉妹が居るとか……??」


「いや、堕ろさせてたらしいから居ねェぞ」



「ホントにクソだな!?」



 思わずレイゼルがそうツッコミを入れる程のクズっぷりである。



「でもじゃあ何で俺の前に姉が……? 堕ろさせてたんだろ?」


「オレらが本命の女にできたからに決まってんだろ」



「あぁ、そういう……。で、今まで俺やばぁちゃんに一度も顔を会わせずに生き別れてた姉ちゃんが、何でいきなりここで登場? なんか目的でもあんの?」


「別に、ただ一度人間界を実際に自分の目で見たくなった。丁度、オレの保護者役もここに居るしな。やっと許可取れたから、下見ついでにテメーの(ツラ)を見に来たんだよ」


「へー」



「ウィンターホリデーが開けた春、オレはこの学園に入学する事になってる。だから今日はその下見だ」


「ほー……」



「あとはテメーの腕前を確かめる為だな。勇者としてどこまで力が付いたのか、興味がある。もし簡単にやられたら、春からオレがシゴキ倒してやっから楽しみにしとけよー」


「ふーん…………」



 聞いてるんだか聞いてないんだか、あまり関心の無い返事にレイネルはレイゼルのアホ毛を掴む。



「人に聞いといてその態度、いいご身分だなァオイ……」


「だって俺ノエルにしか興味ねーし」



「じゃあ何で聞いたんだよテメー!!」


「だって、俺勇者だし。勇者に近づく女の子とか、この学校に入学してから沢山出てきたからさ。ワンチャン、聞いたら目的をポロリと話してくれるかと思ったんだよなー。もしかしたらノエルに何かする可能性も否めなかったし」



 そう言ってレイゼルはじっとレイネルの格好を見る。



「それにちょっとおバカキャラっぽそーだったし」



「さっきまで人様に恥さらしてたテメーが言うんじゃねェよ!! 喧嘩売ってんのか、買うぞゴルァ!! てかそれ言ったらテメーもオレと似た服の系統だろーが!! どういう判断基準だよ、さっきから泣くわうるせーわ病むわ、デリカシーもねェ!!


 こんなクソを好きになる奴の気が知れねェぜ! どーせ魔力のすげェだけのDQN女だ!! そういう奴は見た目も心もブサイクで見た目に釣られたクソ女ってのが相場で決まってる!!」



 オラついている自覚があるらしいレイネルがそう言った瞬間。レイゼルの様子が一変し、謎の黒いオーラを発する。



「は? ノエルはエンジェルマイワイフだけど?? そこら辺の女の子よりも圧倒的に美少女で強くてツンデレで可愛いけど??? 憶測で俺のノエルを貶してんじゃねぇよ????」


「じゃあ証拠見せろよ!! 証拠!!」



「……???? 見せる訳無いだろ? ノエルの写真は常に持ってるけど、お前みたいな可愛げもねー奴は女の子じゃねーし」


「テメーの目は腐ってんのか!! この圧倒的美貌とナイスボディー、それと完璧で完成し尽くされたこのファッション!! どこをどー見たら女じゃねェなんて抜かせんだよ!!」



 レイネルは胸を強調させるようなポーズをすると、学祭を楽しみに来た周りの男性一般人達がレイネルに集まると、釘付けになった様子で鑑賞し始める。それにレイネルはドヤ顔でフフン、とレイゼルをバカにしたように笑う。



「うぐ……ノ、ノエルはツルペタロリボディだけど、ちゃんとお前には持ってない可愛さを持った女の子だし!!!」


「だからその証拠見せろっつってんだろーが!!」



「絶対見せねー!! ノエルの超高画質ドスケベな隠し撮りオ○ニー映像も絶対見せねー!!! まぁ一生誰にも見せる予定無いけどな!!!」


「誰が見るか変態野郎!!!」



 2人はくだらない事で柴犬のようにギャーギャーキャンキャン言い争い、ニョッキはそれに対してうるさそうにして顎や眉間にシワを寄せ、他人……いや、他キノコの振りをした。すると、見覚えのある人物を見つけて一目散に駆け寄る。



「にゅー!」


「……あー、ノエルの使い魔か……匂いがしないって事は、居ないみたいだな。なら良かった……声を聞く限りだと、面倒な事になってるんだろうけどな。


 それより俺を救世主みたいな目で見るのはやめろよ」



 猫背であくびをしながら面倒くさそうに歩き、その後ろをニョッキが着いていく。実はニョッキ、人間のオスが嫌いなだけで、魔物のオスは炎系以外なら全然いけるのである。



「レイネル、約束の場所に居ないから探したんだけど。俺にあんま無駄な労力使わせるなよ、俺だって暇じゃない」



 そう言ってレイネルを取り囲む男達をすぐに掻き分けて入ると、レイネルに声をかけてきた人物にレイゼルはハッとして大きな声を上げた。



「あ──っ!! ドロボー猫!!」


「ネロ!! 遅いだろーが、何ちんたらしてたんだよ!!」


「うるさ……耳に響くんだけど。もう少し声を小さくできない訳? 2人分だから倍くらい五月蝿い……」



 理不尽に怒るレイネルにネロは歩いていくと、ぐに──っとほっぺをつまんで伸ばす。



「そもそもお前が駄々こねるから、俺が保護者として付き添うことになったんだろ……。勝手にどっか行くなって何度も言われてたし、俺も一応伝えた筈だ」


「|ひひょふひょにはひふんはほへへ《美少女に何すんだよテメ 》ー!! ははひははへ(離しやがれ)!!」


「本当に可愛くない奴……ほら、早く行くぞ。俺はお前の為にわざわざこんなだだっ広い敷地内をわざわざ回って、好きそうな所を探してたんだから疲れてるんだ。遊んだらさっさと帰って部屋で眠らせろ……」



 そう言いながらレイネルの頭にぽん、と手を乗せると雑に頭を撫でくりまわす。



「髪がぐちゃぐちゃになるだろーが、ヤメロ!! セットにどれだけ時間がかかったと思ってやがる!!」


「……そういえば、アンタ今日は珍しく1人なんだな。なに、別れでもした訳?」


「は?? 今日も昨日もノエルとはラブラブでイッチャイチャだけど???」



 毛を逆立てる黒と金の怒りの矛先を変えさせ、ネロは「じゃ、そういう訳で行くぞ。早く来ないと寮に帰る」と歩き出し、レイネルがそれを追いかけた。



「待ちやがれーっ!! クッソ、脚長族だからトロイ癖に移動速度はえェな!!」



 土煙を起こしながら走っていき、ぽつん……とレイゼルはその場に残され、周りのモブ男達は解散。ニョッキは未だに他キノコのフリをしていた。



「……おいソテー、何で知らんぷりしてるんだよお前」



 ニョッキだもん、ソテーって名前じゃないもん。というかお前の事は知らないんだもん。あー、胞子ばら撒くのに忙しい忙しい……あっ、あそこジメジメしてそうで仲間増やすのに良さそう。


 そんな様子でニョッキは他キノコのフリをしていると、レイゼルがまた、強く抱きしめる。



「に゛ゅっ」


「あ──────────!!!! いつになったらノエル帰ってくんだよぉぉぉぉぉおお!! もうやけ食いしてやるっ!!! やけ食いしてイメチェンしてやる!!!! 


 ……でも、そしたらノエルに愛想尽かされるかも……そしたら、ふ、振られ──やだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!! 捨でられだぐないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいい!!!!!」



 レイゼルはまた泣き始め、ニョッキはげっそりした様子で主人の帰りを心の中で願っていた。












 結局、帰ってきたのは試合が始まる時間になるとも知らずに……。



 更に場面を移してノエルの方はというと、ぺろぺろキャンディーを舐めながら大きな鉄の扉の前に立っていた。セバスチャンが扉を開く為の指紋、魔力認証装置に手の平をくっ付けると、扉のロックが解除され扉がひとりでに開く。


 窓も無いので中は真っ暗で何も見えない。そしてパッと天井からライトがつき、突然の光に目が眩む。


 ノエルが目を開けたそこは体育館くらいの広さで、壁に飾ったり木箱に入れるようにして、埋めつくしそうな程に大量の武器が保管してあった。装飾が美しいもの、無骨で荒々しいながらも、丈夫そうな物、個性的な物、機能性を重視したシンプルな物。


 ぺろぺろキャンディーをウマウマと舐めながら、周りをキョロキョロと見る。パッと見でもこんなに沢山あると、どれから見た方がいいのかが分からない。



「えっと……ここは?」


「ここは国民達から献上される武器を保管している武器庫でございます。一昨日、お嬢様が学祭で自分に合った良い武器を見つけられなかったと手紙を送ってくださったでしょう?」



「うん」


「そこで陛──ご主人様がお嬢様に、武器を贈る事にしたのです。……正確的にはただ預かって保管していただけなのですが」


「預かる……? 誰から?」


「……」



 じとっとした目で咎めるようにノイルはセバスチャンを見ると、セバスチャンは「申し訳ございません……」と謝る。そのやり取りにノエルは頭にハテナマークを浮かべていると、急に胸に暖かい物を感じてフワフワしたので、気にしない事にした。



「そしてここはアーノルト皇──ん゛んっ!! ゴホッ、ゴホゴホゴホン……ノルト様の武器庫でございます」


「えっ!? ……というかおじいちゃん、咳大丈夫?」



「いえ、お気になさらず……実はここにお嬢様に贈る武器も一緒に保管しているのです。広いので、少々遠い場所に歩く事になりますが」



 それからまたノエルは歩き、見失ってノエルが迷わないようノイルに手を繋がれながらキョロキョロぺろぺろしていた。ちょっと寄り道して装飾でキラキラした武器をじっと見てみたり、殺傷能力の高過ぎる鞭なんかも発見してビビったりもしたが。



「こちらです」



 そして着いた場所は、他の場所とは違ってスペースを空けるようにしてあり、30剣以上が壁に並べられていた。



「これらは全て、お嬢様の武器です。お嬢様の体の大きさ、筋量を考慮し、私が僭越ながら選ばせていただきました」


「お父さんのに比べると圧倒的に少ないけど、使う事を考えたら十分多い……」



 そして武器を見てふとノエルは思った。



「あれ、それにしてもお父さんの武器と私のを見てて思ったんだけど、結構……軽そうな武器が多いんだね? ロマン溢れる大きくて重そうな剣とか斧とか……そういうのがあんまり無い」


「はい、皇……ゴホン、伯爵一族の方々はあまり筋肉が発達しづらい家系ですので、重い剣を扱うとすぐに体力を削られ、疲れてしまうのですよ。……ご主人様は例外ですが」



 おばあちゃんって、凄いんだね……。そう思いながらノエルは用意された自分の武器達をじっと見つめる。見てみるとオシャレな物が多く、炎をイメージした武器もあれば、水や雷……翼、花。よーく、よーく一つずつ見て、手に持って考える。


 剣は武器だ、だからこそ見た目や性能よりも自分に合っているかが重視される。いくら切れ味が鋭くとも、どんな相手でも一刀両断できてしまうような剣だとしても……例えそれが自分が使える大きさの物より随分と大きければ使い勝手が悪く、かえって自分の重りになる。



「……でも、正直あまりピンと来る物がない」


「おや、それは困りましたね……」



「なんというか、こう……ビビッとくるような、そんな剣?」


「ビビッと、とは具体的にどのような物で……?」



「うーん、分かんない……具体的どうこうって話じゃなくて、私の中で「コレだっ!」って思える物がなくて……見た目は全部綺麗で凄く良いと思うんだけど……」



 ノエルがそう言うと、ノイルとセバスチャンは5年以上前にノルトとマリエッタが娘自慢をしていた時の話を思い出す。





『ノエルは普通の子供とは違い、とにかく勘が鋭い。俺の娘だから普通と違うのは当然で必然の事だが……それがあまりにも鋭過ぎるんだ』


『そうそう! ノルトさんのお仕事はいつも帰ってくる時間が違うから、晩御飯の用意はいつにしようか迷っていたら……「あと2時間10分32秒後くらいだと思う」って横から言ってきて……そしたら本当に2時間10分32秒後に帰ってきたのよ! あと明日はショートケーキが売れて、いちごタルトがそんなに売れないとか……本当にいつも助かってるの! 


 あとお買い物の福引とかにノエルを連れて行くと、絶対に当てたり! 当てすぎて完全ランダム式のアーティファクトにいつの間にか変わっていたけれど、見計らって列に並んで……順番が来たら何故か、当たるのよね』



『昨日もまるで分かっているかのように玄関のドアの前に立たれ、丁度呼ぼうと思っていた時に気づけば隣に居るからな』


『天気の予報も完璧で、洗濯物を干す時も大助かり──そういえばノエルが喋れるようになってからは天気予報のニュース、全く見てない気がするわ……そもそもテレビ自体は普段から見ないけれど』



『……そういえばそうだな』


『凄い偶然よね~』



『こんな偶然あってたまるか。……ここまで来ると、何かしらのスキルを生まれつき持っているんだろう』





 その時の記憶を引っ張り出して考えられる事は、つまりノエルの鋭い勘で今はこの中に使うべき武器は無いという事。ほんの少しだけロマンチック要素をひとつまみして言うとするなら、運命の相手という名の剣がここには居ない。又は、まだ誕生していないのだ。


 となると、もう剣技・魔法大会には間に合わない。


 剣技・魔法大会の剣技形では公平を期すために剣に付与されているスキル(バフ効果や相手にデバフ効果を与える物)や呪われている武器などは発動、使用ができないが、剣技大会では本人に一番合っていてロングソードや刀のようにリーチがある剣でさえあれば何を選んでもいい。


 例え魔法剣のように魔力も攻撃力になるような武器でも、特別な剣技形では本人の攻撃力ステータスに依存しているので効果は問題は無い。


 ……が、自由形となるとそうはいかない。


 何故ならそれも名前の通りに自由形、なので。ルール違反さえしなければ、なんでもありなのだ。そうなると貴族のお坊ちゃまな戦闘部門の生徒は金に物を言わせて、とんでもない反則級のスキルを持った武器、それかガ○ダムのようなものを使う場合がある。もはやそこまでいくと、今までの頑張りはなんだったのか、とか武器と言うよりもそれは兵器なのでは、という話だが。


 当然ながらそんな過ぎた力を持つ武器は所持者の成長を妨げ、腐らせてしまう。かといってノエルの要望通りのただの魔法剣をそのまま渡してしまっても、ノエルの成長を妨げる。


 というのもノエルはレイゼルの影響で幼少期の頃から自然と意図せずに攻撃力を伸ばし続け、それでもって両親2人のつよつよ遺伝子によって魔力がとんでもなく多い。更にノエルの鋭い勘が加わって、常にクリティカル率100%。


 それに魔力が刃になり、攻撃力にもなる魔法剣をクロスオーバー的な事をさせると……なんということでしょう! 


 何のスキルも無いただの魔法剣をノエルが持つだけで、とんでもなくつおくてまぢやばばな剣にメ○シンカ! 相手にギコギコすること無く、ただ一度刃を当ててスーッと引いてしまうだけで一撃必殺になってしまう。


 そんな事になってしまったら、間違いなくノエルは成長できなくなってしまう。


 ノイルはどうしようかと考え、その隣でセバスチャンは懐かしそうな表情でニヤニヤを何とか堪えていた。というのも、こんな事があったのは実はこれで連続2回目。


 一度目はもちろん、ノルトだ。


 ノルトも昔はよく、どんな武器を選べばいいのかを迷っていた時期があったからだ。……ノルトの場合、どんな武器を使っても強いからどれを重点的に極めればいいのか、という問題もプラスされるのだが。器用貧乏よりも、やはり極めた方が良いのである。つまり大○翔平選手は凄い。


(結果的に色々あって使いやすさが一番なので無難な細身の剣にした)


 そう考えると、ノエルは最初から自分にはレイピアのように軽く、けれど頑丈で斬れ味のいい、使っていて疲れないような武器が良いと分かっているので、楽なのだが。


 するとノエルはうーむ、と考えて頭に電球がパッと付いた。



「よし、いっそお店に行って良さそうなのを見てこよう! 前にね、鞭を買った時におばあちゃんが褒めてくれたんだけど……そこのお店、剣とかも色んなの売ってたから良いのあるかもしれないし! 


(そしたらまたフローレちゃんに会えるかもしれないし! それにまだまだ修行中の身っぽかったけど、フローレちゃんの作った鞭が良かったって事は……きっと師匠もすごい人の証拠だろうし!)」



 とりあえずノイルはノエルの好きなようにやらせる為に、ノエルが言っていた店にノエルに手を引かれて連れてかれた。


 セバスチャンは千里眼でその時の様子を見ていた為、何処の店だかは知っている為……そう言い出したノエルにセバスチャンは更にニヤニヤを必死に我慢していた。


 その店に近づく事にニヤニヤがニチャニチャに変化し始め、ノイルは歩いている方向と道に「まさか……」と思いつつも、到着が近づくに連れて、冷や汗を流し始める。



「ここだよ!」


「……」



 ノイルはブンブンと頭を横に振りノエルに「待て、落ち着け、落ち着くんだ」という、立てこもり犯を説得するかのような切羽詰まった反応をしていた。



「どうしたの、ノイ兄」


「そういえば、あの時はいらしていなかったのでお嬢様はご存知なかったのでしたね」



 誰が……??



 ノエルはノイルの様子になんだか少し嫌な予感がしてくるものの、鍛冶屋の店のドアを開けると、ドアベルが鳴る。すると中から「ギャ────ッ!??」という悲鳴が聞こえた為、ノエルは慌てて店の中に入る。



「だ、大丈夫ですか!?」


「これが大丈夫に見えます!? というか見えたら節穴過ぎて草生えるんだがWww あーあ、せっかくの我が子が台無しだよ……というか、拙者ドアに作業中につき営業してませんって書きましたよね? 明らかにそっちが悪いよね?? 責任取ってもらわないとダメだよねぇ??? ねぇこれ払える? あっ、ちなみに126000000000ソールだけど……W 無理とは言わせませぬぞ?? だってそっちが悪いんですしおすし???」



 そこには脂ギッシュで小太りで目を3の状態にさせ、尻もちをつきながらメガネを床に落とした状態で、そうまくし立てるオタク口調のブサメンが居た。ぶっちゃけノエルが苦手なタイプだが、こればかりはノエルが悪いので、なるべく態度に出ないようにして接する。



「えっ!? そ、そんなにするの!?? ご、ごめんなさい、見てませんでした……」


「それで許されるならフェリラ王国の国王がやった事も謝罪ひとつで全部許されるんだが?? それと同じくらい罪なのをよくおわかりで??」



「あっ……それは許されない、ど、どうしよう……。ど、どうすれば許してくれますか……?」


「そうやってしおらしくしておけば、拙者が許してくれると思っても大間違い──」



 ここでブサメンはメガネをかけて、ノエルをしっかりと見る。



「……??」



 そしてメガネを外して服でメガネの曇りを取ると、またかける。そしてさっきよりも見えやすくなったノエルに、ブサメンは質問をした。



「……あ、あの……お、おお、おな、お名前……聞いても……」


「ヴェリカと申します……」



 その名前を聞いた瞬間、ブサメンはさっきまで研いでいたらしい剣を持つと、自分の首に当てようとする。



「切腹案件ですわコレ」


「何で!? ま、待って待って!! それはダメです!! 命を大事に!!! というかそれ切腹じゃない!!!」



「推しに口答えするゴミはホント死んだ方がいいですゆえ」


「いや、だから──」



「いい人生だったでござる……」


「あなたの命貰っても要らないので、本当にやめてください!!」



 なんとかその一言でブサメンは自害を止めることに成功し、ノエルはブサメンを改めてタナーカ・ジェームズに剣の相談をする事にした。ノイルはずっと中に入らず、待っていたが。



「……何でノイ兄は入って来ないの?」


「お坊ちゃまは少々、潔癖な所がありますので」



 セバスチャンにその話を聞いて、キョロキョロと周りを見る。……確かに、これは酷い。というのも、完成された武器がどれも乱雑に置かれており、掃除もされていないからか、ホコリっぽいからだ。前にノエルがここに来た時は普通だったのだが……。



「で、弟子の子がいつも最初にここに来ると綺麗に並べて片付けて掃除までしてくれるんですよ……自分でやれって話なんですけどね」


「(弟子……フローレちゃんの事かな、そういえば今日は居ないのかぁ……残念)」



 そしてオマケに店主がずっとシャワーも浴びていないのか不衛生……嫌がる筈である。だがこれはクリエイターあるある、お風呂に入る時間すら勿体ないと思うがゆえだ。物を作るという事は時間がかかり、ずっとその作品に向き合わなければならないので。


 まぁそれでも風呂はちゃんと入れよという話なのだが。



「でもノイ兄、普通に私と手繋いでたよね? しかもずっと……」


「ノイル皇──お坊ちゃまが家族だと思っている方々は別なのですよ、おそらく精神的な部分が関係しているのかと」



 セバスチャンにそう言われて、ノエルはふと思い出す。



「(そういえばノイ兄、レイゼルには絶対に近づかなかったな……というかそもそもノイ兄がレイゼルを私に近づかないようにしてたんだけども。絶対に認めない!! みたいな感じで。


 ……あっ、それより今は剣!)」



 ここでようやくノエルは本来の目的を思い出し、要望を言う事にした。



「それで……今日ここに来たのは他でもなく、ジェームズさんのお店で魔法剣を買おうかと思ってまして」


「ミ゛ッ……」



「なのでオススメな剣とかを紹介してくれませんか? できれば私でも使えるような軽い剣とかがあったら良いんですけど……できれば魔法剣とか」


「ワワッ、アッ……」



「でもただの魔法剣だと、そもそも私の魔力量が多過ぎて普通の魔法剣だと強過ぎる武器になってしまうんです。


 そうすると私はいつまでも成長できなくなってしまいますし、魔法剣の特性上、刃を具現化させて使っているだけでも魔力が消費されてしまう。更に魔力を消費するごとに、何故か機動力と攻撃力が大幅に下がってしまうんです。


 だから持久戦に持ち込まれて魔力が尽きかけても、私の体力がある限りずっと戦い続けられる、そんな武器とかがあったらいいんですけれど……」



「スーッ…………」



 そう言うと、ジェームズは何故か天を仰ぎ見て涙を流し始めた。



「えっ!?? あ、あの、ジェームズさん!? 」


「ktkrッ!!!!!! こんなのさ、こんなのさぁ!? 運命じゃないですかヤダー!!! 推しがグッドタイミングで拙者の元に降臨するとかこれ運命なんですけど──!!!!! 拙者今日で持てる運を全て使い果たして、豆腐の角に頭ぶつけて死にそうで夜しか眠れないんだがWww」



「(やっぱりこの人も王女様に続くオタクタイプか……!!! でもなんか古い!! 一昔前のオタク感がする!!)」


「ハッ!? ……それで、ノエルたんの欲しい剣の話でしたな」



「(たん!?? あれ 、そういえば私、ファーストネームって言ったっけ? ……まぁいいや)」



 なんだかモヤッとしたが、胸の中が暖かくなったので気にしない事にした。



「実は今! ノエルたんの為──いや、丁度いい剣を作ってたところでございましてなぁ! でも少し、行き詰まってまして……はい」


「なんて都合のいい!! ……でも具体的にはどんな問題が?」



「よくぞ聞いてくれました!!」



 するとジェームズのメガネがキラッと輝く。



「お恥ずかしながら、モチーフが!! ぜんっぜん決まらんのですわ!!!」


「……えっ、モチーフ? って事は、つまり……剣自体がそもそもできてないんですか!?」



 ノエルは驚きながらもそう聞くと、ジェームズは「まぁその悩みは半分無くなったんですけども……」と言うので、まだ他にもあるんだな……と思いながら言葉の続きを待つ。



「ところでノエルたん、その……ドゥフッ、ノエルたんの得意な魔法ってなんですかな?」


「得意な魔法……」



 そう言われてノエルはふと気がつく。



「考えた事、なかった……」


「エッ」



 爆発的に高威力の出せる炎系魔法は好きだし、ドッカーンするのは気持ちがいいけれども……かといってノエルが得意かと聞かれるとそうではない。


 というのも、父親から教えられた魔法はあくまで将来、使えていたり知識があればどんな職業でも場所に住んでいても、やっていけるようにする為の"教育"という形で教えられてきたもの。


 そう、最初からノエルが戦う為に教えられた訳ではないのである。……教えられる時にとんでもない火力でイメージの幅を増やそうとしていたが、元々はその為だ。もしノエルが傭兵になるとか、冒険者になるとか、そういう道に進む事になったその時の為に。


 だから村に居た時は回復魔法か身体能力強化魔法、水魔法、料理をする為だけに使う炎魔法、洗濯物を乾かす為の風魔法くらいしか使った事がなかった。


 なので戦う為に魔法を使う練習や勉強をし始めたのは、学校に入学してからで、実は初めての事なのだ。


 ノエルが考えながら色々と魔法を使った時の感覚やシーンを思い出していると、ふと幼い頃の事を思い出した。



「……あ、でも……印象深いというか、思い入れのある魔法ならあります」


「ほほぅ、それはどんな魔法ですかな?」



「えっと、草魔法です」


「これまた意外な……」



 本人が知らないとはいえ、あの皇族が自分の得意な魔法はこれといったものもなく、思入れのある魔法があまり戦闘向けとは言えない草魔法。


 祖父である現皇帝や元皇太子である父親の事を考えれば、ド迫力のある炎魔法や雷魔法、身体能力強化の超攻撃形を熱心に教えていそうなものだと思っていたので。まぁ実際にそうだったのだが。



「私、花が好きなんです。それである男の子が私の為に花を育てようとしてくれた事があったんですけれど、初めて花を育てるからかどれくらい水をあげればいいのか分からなくて……。最初は芽が出て葉っぱが出てきたんですけれど、いっぱい水をあげすぎて根を腐らせちゃったんです」


「ふむふむ」



「本人は私に内緒で育てて、花が咲いたら見せかったみたいなんですけど、腐らせちゃったから大泣きして……だから私が花の育て方を教えた後で、ちょっと理由をつけて種を本人から渡してもらった時、魔法で改造して虹色の綺麗な種のできない、なおかつ早く咲くひまわりに品種改良して渡してみたんです」


「(推しがロリ時代の時に素で高度な事してるんだが……天才か??)」



「それで2週間後に、凄く嬉しそうにしながらひまわりを見せに来て……でもそのひまわりを切って私にプレゼントしようとしてきたので、すぐに止めましたけど。そんな事があって、印象に残った魔法は草魔法なんです。


 あ、実はヒエリカに来た時、一番最初にしたのが図書館で魔法を勉強した事で、その時に勉強したのも草魔法なんですよ! 


 それで森の精霊を草魔法でキノコに変えて、意図せずに使い魔にしちゃったり。


 あとはお母さんの得意な魔法が草魔法だったり、お父さんは逆にあんまり使うのが好きじゃなかったりとか、色々理由ありますけど」



 そう説明しているノエルにジェームズは思わず✝︎昇天✝︎しそうになったのを堪え、セバスチャンはニコニコしながら一度店から出ると「Fuuuuuuu!!!」という奇声を上げ、それから何事も無かったかのように戻ってきた。


 何故ならノエルがその話を楽しそうに話しているから、というのもあるが……"ある男の子"の話をしている時、ノエルは無自覚にもその話をしている時が一番いい顔をしていたからだ。


 明らかに特別な想いが込められていて、頬をほんのりと赤く染めながら恋する乙女の表情をしていたので。


 剣をタダどころかむしろ貢がせてください。


 限界キモオタメガネはそんな言葉が喉から出そうになった所で、満面の笑みで「じゃ、じゃあノエルたんはどんなお花がお好みですかな?? やっぱり、そのひまわり? せ、拙者は花言葉とかも君らしくて良いと思うよ、デュフフ」と聞くと、ノエルは頭を横に振る。



「白いバラです。その男の子から初めて貰ったプレゼントがその花で……私自身、バラが一番好きですから」



 そんなのさ、もう好きじゃん。好きが隠せてないじゃん、これ絶対ノエルたんの言う男の子が傍に居たら、こんな話絶対してないじゃん。


 しかもたぶんノエルたん、自分で気づいてないだろうけど……凄く恋した乙女の顔をしてるよ。それに色々な思い出を思い出してるからか、コロコロ表情が変わって……あー、心が浄化されるんじゃ~……。


 ジェームズは昇天しながらそう考えて、剣のモチーフやデザイン案などをたった今決めて、心の中にあった真っ白な設計図を書き上げていた。


 タナーカ・ジェームズには作品を作る時、ポリシーや強いこだわりをもって作ることがある。


 それは持ち主の精神や強さを剣に落とし込み、なおかつ自分のオリジナリティーを上手く共存させて、唯一無二の作品を作り上げること。


 そしていかに持ち主を象徴する剣を作れるか。


 ノエルが海外に住んでいる事もあり、ジェームズ含めヒエリカ国民はノエルの事をほとんど知らない人が多く、ノエルのことを知る為には皇族本人達から聞くしかなかった。しかし普段皇族はとても多忙、皇帝ともあればその忙しさは比ではないだろう。


 なのでノエルの為に作ろうと思っていたモチーフは一度も、そもそも案すら浮かびもしなかった。


 だが弟子のフローレンスからノエルに会ったことを聞き、何故あの時自分は外出していたのかと嘆き……今日実際に会ってみてジェームズはあれほど悩んでいたモチーフ決めが驚く程簡単に決まった。



「……モチーフは決まったよ、だけど材料が無いんだ。たぶん、作れないかも……ほんとスマソ。個人的なこだわりというか、拙者のせいで大会どころか5年経っても作れないかもだけど……。


 あれば、あれば拙者が命と魂を込めて、全力で間に合わせるし、最高傑作を作れるかもしれないのに!!」


「そうなんですか!? えっと、じゃあ取りに行きます、今すぐに!」



 勢いよくガタッとノエルが席を立つと、ジェームズはビクッとする。



「ノ、ノエルたん、意外と行動力すごいネ。えっと、それが凄く貴重な物で……」


「絶対に持ってきます」



「え、でも……」


「あれば作れるんですよね。それに今からでも間に合うっていうことも、本当ですよね。……私は"嘘をつかれる"のではなく、"嘘をつく"のが嫌いです。だからあんまり約束をするのは好きじゃありません。


 ジェームズさん、もう一度貴方に聞きます。本当に、できるんですね?」



 ノエルは絶対に取ってくる。


 まるでそう信じさせてくれるかのような様子、そしてさっきまで微塵も感じなかった、皇族らしい雰囲気と様子。



「う、うん! そこはプロとして、ノエルたんの期待を裏切らない為にも絶対に持ってくるよ! ……終わった後は、多分倒れて今日は一日中営業できないかもだけど」


「分かりました」



 そう言ったジェームズの言葉に嘘は無いとノエルは感じ、その問題の素材を聞くことにした。



「それで、その貴重な材料というのは?」


「それは──」









「ノイ兄、おまたせ!」


「……」



 すごく心配した、と言わんばかりな様子で抱き締めてくるノイルにノエルは「だ、大丈夫だよ……」と言うと、さりげなくノイルから離れる。



「ごめんね、ちょっと必要な物をジェームズさんと取りに行ってたから。いきなり店内で転移魔法使ったからビックリしたんだよね、それにちょっと時間かかっちゃったし。


 おじいちゃん、場所知ってたのに教えてくれなかったし」


「聞かれませんでしたからね、それにこういうものは自分で見つけた方が、意味があるものでしょう?」



 やがてノイルは落ち着き始めると、ジェームズが剣を作り終えるまで少し時間がかかるので……ノエルはノイルに剣を教えてもらうことにした。とてつもなく距離が近かったので、流石のノエルもちょっと驚いたが。





あとがき



実はノイルくんも転生者で、前世は女の子ですが中身は男の子。そして前世の頃も一人っ子でした。それで性被害を受けて小学生の頃に亡くなってしまい、男女の適切な物理的距離感がノエルたそ以上に全く分かっていません。他人を信じる事もできません。


歪んだ認知が植え付けられて、精神年齢も非常に幼い状態のまま成長しちゃったんですよね。どんな性被害をどういう関係の相手から受けていたかは、全てご想像にお任せします。


いもうとできた!やった!うれしい!うれしい!! ……いとこだからちがう? ぼくのいもうとだが?????


そんな感じで精神がショタで成長していない為(性知識は異様にある、誰に教えられたかは……秘密である)前までは普通に出会い頭で抱き締めて、ずっとそのままくっついていたり、よくほっぺにちゅーをする事もあったですが(もちろんレイゼルくんがとんでもなく嫉妬をして、ずっと歯軋りさせてました)ノイルくんが13になってもその癖が治らないので、ノエルたそや皇族の皆さんが「これはちょっとそろそろ止めた方がいい……かなぁ?」と思う程。


ちなみにこの癖は皇族みんなにやってます。


でもとうとう15歳になっても止めなかったので、気づいた双方の親からストップをくらう事に。流石に止めるだろ的な事考えてたけど、止めなかったからとてもビックリした。


違う、これ愛情表現だ……親愛の証だ……僕は妹のように思っているノエルと仲良くしたかったんだ……。


無自覚シスコン(?)なノイル氏はそう、チキンくんで供述しており――。


今ではあめちゃんをあげたり、おこづかいをあげて「ぼくのかんがえるりそうのおにいちゃん」ムーブをしております。もちろん現実にはこんな男子はいません、創作だからできること。


そんなノイルくんですが、特技がぜっきょーチキンに歌わせる事です。鳴き声の音程も自由自在。


あ、モールス信号は一度アプリ使ってやってて、それを置き換え機能使って変換してます。それが出来ないところは手作業なので、もしかしたら誤変換して意味が通じてない所あるかも……もしダメだったらごめんねッ!


もしノイルくんの言ってる事が知りたくて調べたい場合、モールス信号はひらがなのヤツにして調べてねッ!




あとジェームズ氏の初恋の人は実はおばあちゃん(♂)である。


草にwを生やすなカッコ戒めカッコ閉じ。


そういえばハーピー♂のキャラクターが出てきたけど、この世界でのハーピー♂は設定的にゲ〇ド族のガ〇ンドロフおじさんみたいな感じ。

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