切り取った思い出!!!
とても見覚えのある白い部屋と、今より好きじゃなかった体の弱い過去の自分。そんな部屋の中、レイゼルは三人称視点で過去の自分に「何だ、ノエルの夢じゃないのかー……」と残念に思う。
基本的にノエルに関連する事以外には興味を全くと言っていいほどに持てないレイゼルは、夢の中の過去の自分に対しても、特に何も思うことはなかった。
とてもつまらなさそうに、前世からの癖で何となく病室にある窓から外を意味もなくベッドに腰掛けて見ていた。
『親父達、元気にしてる?』
レイゼルが■■だった頃。5歳年下である中学生の弟が病室に来る度に、過去のレイゼルはそう聞いていた。
前世のレイゼルは体が魔力に耐え切れなかった。地球という星には魔力というものが無く、体がそもそも未知のエネルギーに耐えきれなかったのだ。当然その病気は正体不明の、治療法が見つかっていない未知なる病気と言われていた。処方箋も当然無い。
なので、本人は常に暴走性症候群に犯されている事も知らず、いつも熱などを出して寝込んでいる心臓病持ちの病人、という事になっていた。
そして聞かれた弟は、最初からその世界の住人で、魔力を持たない健常者である。
『相変わらず、五月蝿いやつらだ』
ため息をつきながら、いつもの問答に飽き飽きして面倒くさそうに言う様子の弟に、レイゼルは『あぁ、やっぱな』と思うのだった。
『……そっか、なら良かった』
ぽーっと意味も無く、窓の外から見える天穹を眺めながら、虚無顔で過去のレイゼルはいつものようにそう答えた。本当に言う必要も答える必要も無い、分かりきった質問と答え。もはや言う必要も無いが、挨拶の代わりのようなものだった。
『アレにそうやって期待するのは、もうやめた方がいいぜ。待っててもただ時間が過ぎて虚しいだけだし、兄貴は実際にそうなんじゃないの。
俺はもうとっくに匙を投げた、その方が楽になれる』
最初から期待しなければ、自分が傷つくことも無い。それくらい分かっている筈だ、そう言わんばかりに弟は"■■"を見たが、こちらを一向に見てこない兄から視線を下ろした。
誰かに何かを求めている。一般家庭ではほぼ必ず親から与えられる筈の、一生送られて来ない物をいつまでも健気に待っている子供のように。
『……本当は分かってるんだけどさ』
そう悲哀を漂わせて呟くように言うと、■■はそれからタブレットを出して『じゃ、今日もやるか!』と当時ハマっていたMMORPGのタイトル画面をタップしていた。
『はぁ……仕方ないな』
『とか言って、オンライン状態なのは分かってるんだぞ~?』
それから暗転し、次に今の自分の幼少期の頃の思い出が見えた。
転生してから自分が覚えている中で、最も古い……初めてノエルに会った時の記憶を。
『レイゼル、今日はどの絵本を読んでほしい?』
『じゃー、これっ!』
そう言うとレイゼルは祖母がいつも用意してくれる、今夜寝る前の読み聞かせの為の沢山の絵本の内二冊を手に取って渡す。
『あぁ、天使の休日と紅眼の白獅子だね』
『……ばぁちゃん、てんしってなに?』
『人間でも魔物でもない、聖力を扱うことが出来る神の使いさ』
『へー……』
『白い格好をして白い翼を持っていて、皆とても美しい姿をしている神秘的な存在でね。純真無垢で、助けを求めている善良な人間を幸せにして救ってくれるのさ』
『……てんしって、ほんとうにいんの? ばぁちゃんはみたことある?』
『さぁね、信仰に熱心な人間の前にしか現れないそうだから、誰も彼もを幸せにする訳じゃないとは聞くけど』
そう聞いたレイゼルは幼心にして、何となく『何かをしてもらうには交換条件など、相手にとって自分が利用価値があると思わせないと助けてはくれない』のだと知ったのだった。
『じゃあししは?』
『ライオンの事さね』
その次の日、レイゼルは家の中で久々に外を眺めていた。
前世の頃にもよく外を眺めていたが……別に自由に外を歩きたいという願望がある訳では無い。……本当はずっと口では諦めているような事を言いながらも、心の奥底では諦めきれなかったからだ。
もしかしたら、本当は親が少しでも心配してくれていて、顔を見に来てくれるのではないかと。いつか目を向けてくれるのではないかと。
正直親の顔はもうとっくに、忘れてしまっていたと言うのに。
だが転生してからは前世の頃に欲しくて堪らなかった無償の愛と自分自身を見てくれる視線を、手に入れる事ができた。なので外に出る必要を感じなかった為、レイゼルにとってたった一人の家族と居られる幸せな箱庭のような家の中は、病室とは違ってとても居心地が良い天国のようだった。
つまり、レイゼルの世界は完全に外の世界には無く、家の中で完結していたのだ。だから無意識に、普通の子供とは違って一度も外に目を向けた事が無かった。それになんだか、外の世界が少し怖く感じていたので。
だが祖母との生活はとても幸せではあったものの、レイゼルは何故か少しだけ空虚に感じていた。まるで世界が色あせて、彩度がいくつか下がっているかのような。そして、心に何かが欠けているかのようにも感じていたのであった。
しかしこの日、なんとなく……何故かレイゼルは窓が開いていながらカーテンがかかっている外が気になってしまった。いつもだったら風に揺られているカーテンを見ても気にも留めないというのに。
レイゼルはカーテンを開いて、初めて外の世界を見た。
……そして見つけた。いや、"見つかった"のだ。
『あ……』
『……?』
『ばっ、ばぁちゃんっ! てんし、いた!!』
ドタドタドタッ
『……天使? 髪の事かな、それにしても随分と顔が綺麗な子だったな~』
それからレイゼルは一週間。全く家の外に出なかったのが、その天使ことノエルを見る為に、長時間も太陽の下に出ていた。……ノエルの後ろをじっと凝視しながら。
無意識ながらも、この頃から記憶が無い状態の幼子だったとはいえ、変態ヤンデレストーカー勇者の片鱗が出ていたのである。
本人にとってはただ、話しかけるタイミングが分からず、いざ話しかけようと思うと胸がドキドキしておかしくなりそうになっていたので、ずっとノエルを見てタイミングを測っていたのだが。
なのでずっと感じる視線と背後からの魔力にノエルがとうとう気になって仕方なくなった結果、前世の■■だった頃のようにノエルの方から話しかけてきたのだが。
そしてその日を境に、レイゼルはノエルにくっついて着いていくようになり、初めて会った日はひたすらにノエルに質問攻めをした。
まずは名前、好きな物、嫌いな物、誕生日、特技、趣味、家の場所、家族構成、家の中がどうなっているのか、よく居る場所やお気に入りの場所……などなど。
段々と変な方向にいっていったが、その時のレイゼルはとにかく気になった。ノエルの事が知りたくてたまらなかった。たまに村の者が家にやって来ることはあるが、レイゼルはその当時から全く他人の事などに興味が無く、名前も知らなかったし、時々祖母が他人の名前を言っていても、実際にその名前の人物に会っても全く覚えてすらなかったというのに。
一体どうしてノエルの事だけはこんなに気になってしまうのか。胸が苦しくなってしまうのか、常にノエルの事が頭を過ぎるのか。身に覚えが無いというのに、胸に感じる懐かしい暖かさを感じるのか。
この頃のレイゼルにはまだ分からなかったが、この頃はとても純粋な恋だった。
『懐かしーな……この頃のノエルもすっげー可愛かった……カメラあったら1ヶ月で10000枚くらいは撮ってた』
そしてまた古い記憶の、その半年後の記憶に時代が変わる。
ある日、レイゼルと祖母の前に王国の兵士達がやってきた。というのも、"勇者"を"迎えに来た"のである。
この夢を見ている現在のレイゼルは、過去の事とはいえ、窓からその兵士達が見えた事に、心の中ではかなり動揺していた。
夢の中のレイゼルはその兵士に『城までご同行をお願いします、勇者様』と言われた瞬間、身に覚えの無い今までに感じたことの無かった、悪寒を感じた。何故か吹き出てくる正体不明な恐怖に支配され、レイゼルはポロポロと涙を流しながら聖力を暴走させ始める。
『い、嫌だ……嫌だ!! もう城には、戻りたくない!!』
『れ、レイゼル?! 一体どうしたんだい!?』
城には行ったことが無い。だが何故かレイゼルの口からは子供らしい舌っ足らずな声ではなく、とても流暢なそんな言葉が出た。
『やっと、やっと見つけたんだ!! やっと人並みの、人間としての幸せをッ!!』
『!? 全員、退避ッ!!』
その瞬間、家の中が聖力の光が満たし、家に入ってきていた兵士達だけが、その光に焼かれて重症を負っていた。
この時、レイゼルは聖力の力に目覚めたのだ。
『嫌だ、嫌だ、嫌だッ!! 誰にも、この幸せは奪わせない!!! もうこれ以上、俺から奪うなッ!!!』
『レイゼル、もうお止めっ!!』
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!』
レイゼルは発狂しながら兵士達に聖力を暴走させ、兵士達は一旦精神状態がおかしくなっているレイゼルから離れ、負傷した兵士達を療養させる為にも、一旦城に戻る事になった。
兵士達の気配がしなくなった頃、レイゼルは徐々に理性を取り戻していくが、覚醒して目覚めた聖力は暴走しきっており、意味も無く体の外へ放出させられる。
『な、なんだよこれっ!? どうしよ、おれ、おれっ……ばぁちゃん!!』
しかしそれと同時に初めて見た聖力(謎の光)に、レイゼルは余計に取り乱す。何とか祖母はレイゼルの元へ行こうとするが、さっきまで無害だった聖力が自分の肌を焼き始める。
『なんて力だい、これが勇者であるレイゼルの力の一部……!!』
すると家の外からでも様子が明らかに異常なレイゼルの住む家に、村人達が『大丈夫か!?』『今助ける!!』と、レイゼルに聖力を無にする為、魔法を使った。
しかしそれは逆効果で、平常心を無くしたレイゼルが更に取り乱していく。
『だ、だれか……だれかっ……』
涙を零しながらレイゼルは助けを乞う。しかし、圧倒的な聖力を前にして凡人がどうこうできる話ではなかった。だが幸いにして、この村には凡人では無い人物が2名居た。
『無事か!!』
『わ、私の孫が!!』
その日はたまたま仕事が無かったノルトが騒ぎを聞きつけ、そしてノエルが嫌な予感を察知してレイゼルの家にやってくると、レイゼルはやってきたノエルを見つめた。
泣き腫らした目で、助けを求めるように。
その瞬間、ノエルの体は考えるよりも先に体が動いていた。足が、レイゼルの方にへと走り出した。
『カルゾーンっ!!』
瞬時にノルトは、ノエルに聖力を少しも通さないように、どんな装甲よりも分厚い魔力の障壁を瞬時にして作ると、それをノエルに纏わせた。
『レイゼル!!』
そしてノエルはレイゼルを抱き締めると、必死に宥める。強く抱き締めながら頭を撫でたりして。
『……もう、大丈夫だから。だから、安心して』
務めて落ち着いていて優しく、焦らずにそう言ったノエルに、ストンとその言葉がレイゼルの胸に落ちて満たされていく。そして心はまるでさっきまでとは違い、凪いだかのように落ち着いてきた。それほどまでにレイゼルにとって、ノエルはとても大きな存在になっていたのだ。
もしこれでノエルが落ち着いて言っていなければ、今よりも酷い状況になっていただろう。その落ち着きが、レイゼルの心を平常心にさせた。
そして聖力の暴走が止まり、ノエルとレイゼルはそれぞれ聖力の放出のし過ぎと、抜けた腰のせいで力無く座り込むと、2人の保護者が駆け寄った。
『ノエル!!』
『レイゼル!!』
『『怪我は無いか(い)!?』』
『『ない……』』
『この時のノエル、イケメンだったなぁ……俺まぢヒロインぢゃん……』
それから半年後に夢の中の時代が変わった。
『ばあちゃんただいまっ!』
『おかえりレイゼル……なんだい、そんなボロボロになって』
見えたのは6歳の頃の自分だ。この頃にはもうすっかりノエルにくっついているのが見慣れた光景になり、一種の依存や執着心のようなものが出てきていた。そして独占欲も。
『ノエルがはながすきっていってたから、とってた!』
『おやまぁ……とりあえず風呂に行ってきな』
『いってくる!!』
ドタドタと走りながらレイゼルは風呂場に向かうと、ぽいっぽいっと服を脱ぎ散らかして体についた土などの汚れをお湯や石鹸で落としていた。
「ふー!」
《男前になった!》
そして新しい服に着替えると、レイゼルはまたドタドタと走って料理中の祖母の近くに寄る。
『ばぁちゃん、はらへった!』
『そこに座って待ってな、今作ってるから』
『じゃあまつ!』
ソワソワ……。
『ばぁちゃん、まだー?』
『さっきそこで待ってろって言ったばかりだろ、あとちょっとだから』
終始落ち着きの無い様子でレイゼルは椅子に座って待っていると、やがて湯気が立ち上る料理がテーブルに並べられる。
『あっ、スープだ!』
『いただきますしな』
『いただきます!!』
この日常が変わってしまうことを何も知らない、過去の自分。そして、大好きだった祖母と思い出のスープ。
『……まだ、3年か』
祖母が逝ってしまってから、まだそれくらいしか年月が経っていない。しかし、この夢を見て……レイゼルは酷く懐かしく感じていた。
夢を覚えていたら、寮に帰った後でノエルにスープを作ってもらおう。
そう思い、レイゼルは夢の中でありつつも、祖母との思い出を思い出していたのであった。
夢の中のレイゼルはお腹いっぱいになるまで祖母の美味しい料理を食べ、その後はちょっとお昼寝をして、取ってきた花を持ってまた外へ。
『ノエル~! なぁなぁこれみて!』
『ん? あぁ、レイゼル。何?』
大好きな幼馴染に花を差し出し『プレゼント! これ、ノエルのかみとおなじなんだ!』と言うと、ノエルは少し照れながらも『ありがとう』と、レイゼルからの贈り物を受け取った。
『なんだろう、淡く虹色に光ってるし……ガラスみたいに透明……花びらのところはちょっと透けた乳白色だ。スベスベでツルツルしてる……。というか、これって本当にバラなの? 魔力も感じるし、魔力でできてるのかな……それにしても凄く綺麗だね』
『だろー? みつけたから、とってきた! たいへんだったけど、たのしかったー!』
『大切にするよ』
『じゃあいっしょーだいじにして!』
そう言うレイゼルにノエルは、なんかちょっと重いな……と思いながらも『うん』と答えた。
『やくそくだからな!』
それなら後になって2人は保護者達に教えてもらった事で知ったのだが、稀に植物が魔力の溜まり場にある影響を受けて結晶化し、魔石のなり損ないになるという。結晶化は特別な条件でしか起こらず、天然の結晶化した花はとても希少価値のある花だ。
特にヒエリカでは皇族の象徴ともされている人気の白いバラともなれば、更に価値は跳ね上がる。
(反対に、赤いバラは血と皇族の死期を連想する為、国民達から忌み嫌われている)
今でもそのバラは実家のノエルの部屋にある花瓶に入れて大切に飾ってあり、常にノエルの髪のように淡く輝いている。
『……早く目、覚めねーかなぁ』
そんなふうに言いながら、レイゼルはこの世で最も愛している幼馴染に想いを募らせていた。
~・~・~
目が覚めると、超アップでニョッキの顔が私の視界全体に映る。
「にゅ」
「あ……お、おはようニョッキ」
「にゅ!」
撫ろと言わんばかりにニョッキは頭を向けてくるので、類を見ない程にふてぶてしいキノコを撫でる。もはや使い魔と言うよりもペット。
……ん? なんかニョッキの頭にあるしっぽというか、見る人によってはピ○ミンっぽさを感じる触覚が長いような……。
「ん゛~ッ!! (離せソテー!! 俺の朝はノエルのま○この匂いと味を堪能しながらシコる事から始まんだよーッ!!! 何で朝からキノコの臭いを嗅がなくちゃなんないんだよ!!! って何俺より先にノエルの柔らかお手々で撫でられてんだ、退けッ!! そこは俺の場所でノエルは俺のだぞ!!! ちくしょう羨ましい!!!!)」
「レイゼル!?」
目で辿ってみて見ると、なんとレイゼルが床でニョッキにぐるぐる巻きに拘束されていて、全力で抵抗をしていた。血涙と勃起をしながら。……朝勃ちか。
「ニョッキ、離してあげて」
「にゅ……」
するとぺいっと投げるようにしてレイゼルを離したニョッキは、自由の身になったレイゼル(朝勃ち中の姿)にガシッと頭を掴まれるとカサを横にびよーんと引っ張られていた。
「何すんだこのスー○ーキノコ!! 起きてからず──ーっとあのままにしやがって!! お前のせいで今日のノエルの○○○○○○○をべろちゅーしながらシコって睡眠姦できなかっただろ!!!」
「にゅ──っ!! にゅっにゅっ!!」
両者、キレながらそれぞれ意味が分からないことを言っていて、とりあえず私は変態を全力でぶん殴って顔面を掴んで吊し上げておいた。
「……で? 毎朝眠ってる私に無責任中出してた時の感想は??」
「ノエルしゅき……♡ けっこんしてあかちゃんいっぱいつくろ♡♡ しゅきしゅきしゅきっ♡♡♡ って思ってた……あと、はぁはぁ……♡ 思い出すだけでもチ○コがっ……♡♡
ノエルの無防備ま○こ、しゅごく気持ちよかっ」
私はそのままレイゼルの頭に力を込めていった。
「あ゛~~~っ♡ 来ちゃうぅぅぅっ♡♡ チ○コにクるぅぅぅぅううう♡♡♡」
「黙ってろクソ勇者」
その後、レイゼルのレイゼルはレイゼルしてレイゼルしていた……ので、窓の外に投げ飛ばしておいた。
「……ニョッキ、朝ごはん食べようか」
「にゅ!」
着替えてホテルの一室から出る準備をした後でニョッキを抱えて私はホテルにあるレストランへ向かうと、ニョッキは頭の触覚で私の手に巻き付いて引き寄せてくる。
「ん? もしかして撫でて欲しいの?」
そう思った矢先、ニョッキは私の指をハムハムしてチュパリングし始めた。まさかニョッキが全自動チュパリング機能付きキノコだったとは思わなかった……。
すると魔力が吸収されていくのを感じて、分かった。
なるほど……ニョッキの食事はこれで、使い魔であるニョッキを使役するにあたっての代償がこの魔力供給って事かな。
使い魔はその名の通り、使役する魔物。使役するのは大体精霊とか妖精とかで、時々サキュバスとかインキュバスとか。使役する為には当然、欲しがるものを与えなくてはいけない。ギブアンドテイクの関係だからね。
中にはキラキラした物、お腹いっぱいになるまでの食事……淫魔の場合はお察し。
「ニョッキは他に何か欲しい物は無いの?」
「にゅ~……にゅっ!」
どうしよう、なんて言ってるのか全然分からない。でもゲイル先生なら分かるかもしれないってことは分かった。とりあえずニョッキの翻訳機とかが欲しい。
レストランに着く頃にはニョッキのチュパリングが終わっていて、かなり吸われたけれど……ただの一般人だったら魔力が溜まるのに凄く時間がかかっただろうな。
私の場合は……何故か甘い物食べたらすぐに魔力補給できるから。
「おー!」
レストランに着くと、そこには沢山の食べ物がブュッフェ式で用意されていて、デザートとかも選り取りみどりにあった。
昨夜、ホテルに着いた時にオーナーの人がわざわざ私達が来るのを待っていて、ホテルの事について色々と説明をしてくれた。
このホテルにあるレストランの代金は宿泊料と一緒になっているらしく、無制限の食べ放題で宿泊者はいくら食べても大丈夫なんだとか。
「じゃあ、あそこにあるドーナツもケーキもパフェも全部……凄い。流石高級ホテル!!」
早速私はお皿を持ってニョッキを連れて食べたい物を取っていくと、空いたテーブルに座った。でも何故かこう……視線を、周りのお客さんとか宿泊者達から視線を感じるのはどうして。
「そういえばニョッキって野菜食べられるのかな。キノコだし……」
「にゅ?」
「はい、あーん」
「にゅあー」
ニョッキに野菜を食べさせると、モシャモシャしながら食べる。
「にゅ!」
「まぁまぁって所かな……じゃあお肉は? 元々冬虫夏草だし、案外食べられそう……」
私のハンバーグをちょっとあげてみると、ニョッキはちゃむちゃむして食べる。
「にゅ~~っ!」
「お肉が大好きなキノコが爆誕した……いっぱいお食べ」
その後ニョッキは私のハンバーグを食べ尽くし系キノコになって目をキラキラと輝かせながら食べていた。なので新しいハンバーグを取っていくと、戻ってきていたらしいレイゼルが大量のお肉とささやかな野菜を取っているのが見えた。……まぁ全部お肉じゃないだけ、偉いけど。
それにしてもレイゼル、もう来てたんだ。
「野菜、もっと食べて」
「じゃあノエルが食べさせてくれるなら食べる」
「……ちゃんと全部食べてよ?」
「食べる!」
それからニョッキが待っている席まで案内すると、ニョッキはお冷をゴクゴク飲んでプハーしていた。するとニョッキの体が何故かつやっとして見えて、更にモチモチぷにぷに度が増してスベスベしているような気がする。キノコは乾燥してるのが嫌いだもんね、水がやっぱり好きなのかな。
……後で撫でよう。
「あー、む……んー、ミネラルを感じる」
「はい次の野菜」
レイゼルに全部のサラダを食べさせた後、レイゼルはただひたすらにお肉を貪り食って、お皿に沢山持ってあったお肉を全て食べ終わっていた。
お腹が満たされた後は外に出る準備をして、本来の目的である魔獣狩りをする事にした。
何故か出かける前にホテルの従業員達総出でお見送りされたし、全員と記念写真を取る事になった。オーナーは号泣して手を合わせて「ありがとうございます、本当にありがとうございます……あの、あとチェキ一枚だけいいですか」なんて言って出刃包丁を両手に持ったトッ○ィ顔をしているレイゼルに殺意を向けられていたけれど。
「皆、写真を複製しろっ!! 仕事は後ででいい! やるんだ!!! 推し事が最重要だっ!!」
「えっ、それがお仕事なんですか!? というか他のお客さんが困りますから!! お仕事に戻ってください!!」
「ただいま大切な推し事中なんですよ!!」
「えっ、えっ!??」
「すっげぇア○ジャッシュ……話聞いてるだけなら面白いけど、ノエルの写真が量産されてるからすっげー面白くねぇ……むしろ俺が欲しいッ!! というかカメラ売ってるとこ何処ッ!? 俺の住んでる何処だったけかの国じゃ売ってないんだけど!!」
「カメラ? あそこのアーティファクト専門店で普通に売ってますよ」
レイゼルはそう聞くと土煙を巻き起こしながら爆速で走っていき、しばらくして満足そうに店の外に出ると私の所に戻ってきた。
「こ、これで……♡ ノエルの普段の様子の一部とかを切り取って……はぁはぁ♡ いっぱい思い出も撮って、ノエルの……ノエルの……ふへへっ、ふひ……♡♡」
「(……距離取ろうかな)」
「はーっ、はーっ♡ ……ノ、ノエル? 何で俺から離れてくんだよ?」
《レイゼルはとうとうカメラを手に入れた! レイゼルのストーカー行動であるコマンド"盗撮"の幅が広くなった! レイゼルの変態レベルが上がり、72になった!》
「というか、買ったならもっとちゃんとマシな使い方してよ? カメラは思い出を残す為にある物なんだから」
「思い出……分かった! じゃあさ、カメラ買った記念にもう一回俺達だけで撮ろ!」
レイゼルにしては珍しくマトモな事を言っていて、私はその提案に乗る事にした。
「まぁ、それならいいよ」
「やった! じゃあノエル、そのキノコ邪魔だから一旦ソテー離して?」
「えっ」
「にゅっ!?」
まさかニョッキを仲間外れにする気なの!?
「にゅっ!! にゅ──っ!!」
するとニョッキはレイゼルを頭のカサでぺしぺしと叩き始めて、それにレイゼルが怒った柴犬のように吠えていた。
「何すんだよっ!! そもそもお前は役得なキノコの使い魔だからって、さっきからず──っとノエルのつるぺたちっぱいと細くて柔らかい腕の感触を堪能しやがって!! そこ代われ!!! 俺の場所だぞ!!!」
「にゅっ、にゅっ!!」
「俺もノエルにギュって抱き締められたい!! セッ○スの時はだいしゅきホールドして体と一緒にちっぱいくっつけてくれるけど、幸せだけど!! そうじゃなくて!! 普段からノエルにギュって抱きしめられて幸せを噛み締めてたいんだよっ!! 何でキノコ風情のお前がノエルのちっぱいを独占してんだ!! そのちっぱいは俺のだかんな!!!」
「にゅ────っ!!!」
「俺の!! 俺のちっぱ──」
「さっきから連呼すんな、黙れッ!!」
ゴッ!!
「お゛っ♡♡」
レイゼルを1回ぶん殴って黙らせ、それから鼻血を出して恍惚な表情のレイゼルと、あざとい表情でキメッキメのニョッキと一緒に結局写真を撮る事になった。
初めて買ったカメラの写真がこれでいいのかな……。うーん、まぁ思い出の一部には一応なったから、100歩譲ってこれで良しとした。
……何故かその様子を見ていたホテルの従業員どころか、通行人すらも手を合わせて泣いていたけれども。
フェリラ王国とヒエリカ帝国の違い。
まずその一、法律。
住んでいる国ではなんと重婚ができるから、ハーレムを形成できるよ! でも男女間のいざこざがあっても、裁判すら起こせないよ! つまり自己責任だよ! 性奴隷制度が認められているよ!性奴隷制度がある為、拉致されることもあるよ! もちろん拉致は犯罪だよ!でも親が子供を売る事は犯罪じゃないよ!
ヒエリカでは皇族に習って一夫一妻だよ! 奴隷を持つことはどんな身分だろうと罰せられるよ! でも特別な理由がある場合に限り、許されるよ! でも秘密裏に監視はされるよ!
共通している事は強姦したら犯罪だよ!
その二、住みやすさと住みにくさ
フェリラでは貴族や王族に無理矢理犯されることもあるよ! 抵抗できないよ! だから子育てするには全く向かないよ! 子供は必ず親同伴じゃないと危ないよ! 娼館とかがいっぱいあって選り取りみどりだから性欲処理に困る事は無いよ!
ヒエリカは魔法学問とアーティファクトの製造が発達しているから、とても物や家などが利便性に優れているよ! 常に環境も新しくなって、改善されていくよ! でもおじいちゃんとおばあちゃんはその分ついていけなくなるよ! 国がとても潤っていて、貧困による犯罪がほとんど起こらないよ! 子供の教育(特にヒエリカで生きる為に必要な魔法の知識)に熱心だから、基本的にどこの国に行っても将来的に重宝されるよ! 外には魔獣がウロウロしてて危険だよ! だからいざと言う時に生き残る為に、近所の人同士で連携が取れるようにご近所付き合いを良くして、よく交流しないといけないよ! 陰キャには辛いよ! でもぶっちゃけ陰キャが多い国だけど、みんな共通の大御所推しグループ(皇族)が居るから結束力が強いし、普通にオタク同士だからで会話が盛り上がって仲良くなるよ!
まとめ どっちも欠点はあるけど、ヒエリカの方が圧倒的に住みやすい。
その三、国民達による王(皇)族達へのコメント
フェリラ 死ね、特に国王。娘or好きだった人を返せ。できることなら全力で中指を立てて、城に大砲か特大魔法ををぶっぱなしたい。
ヒエリカ これが本当の"推せる時に推せ"だ。いつまでも家族や生涯を決めた人と一緒に、いつまでもずっと仲良くしていて生きていて欲しい。常にペンライトを装備しているので、ご尊顔が見えたら全力でペンライトを振る所存。最近になってやっとノルト様の娘であらせられるノエル様の新ビジュ(以前は幼女の頃からビジュ更新がストップしていた)が目の前で解禁されたので、ちょっと供給過多はやめてもらっていいですか(大歓喜しながらペンライトを抜くのを我慢する国民達)ぽまえら絶対ノエル様に皇女って呼ぶなよ!! 推しの為に!!!
まとめ 評価が真反対。
昨日の夜(ハーメルンでの投稿時の話)おばあちゃんが窓の掃除をしたのを忘れ、網戸無しの状態で窓全開で寝ました。作者、おばあちゃんと一緒に寝てます。
蚊に刺されまくりました、おばあちゃんそんなにボケてしまったんか。
とりあえずその事は水に流しておくし、許してるけど……言いたい。寝てる間に虫に血を吸われたという事実が、とんでもなく気持ち悪い。虫嫌い、イヤッ!!
ほんとクソ!!
ただひたすらに刺された事がクソがッ!! ってなりました。おばあちゃん、夜に窓開ける時に気がついておくれ。
ちなみに痒くて4時半前くらいに起きました。でも決定打になったのは、羽音が耳元で聞こえた時……気持ち悪いね。
かゆい、うま。ならぬ……かゆい、きも。