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あれから一週間

 あれから一週間、僕は商店街の時計台の前でコウキと人を待っていた。


 例のメンツで岡大生ご用達のパブ、ペントハウスでコンパをすることになったのだ。そして、この時計台はコンパの待ち合わせ場所として、岡大生には渋谷駅のハチ公前より利用されている。


 そんなたくさんの大学生の中、襟元と袖口にふわふわとしたレースをあしらったシックなワンピースの薬師寺さんを見つけた。サラサラのセミロングに大きな瞳。今日はメイクをしていて、特にピンクの唇が醸し出すエロさに釘付けになる。


テレビ越しじゃなく生で見るとさらに痩せて見えるのに、出るべきところは出ているワガママボディ。4Kより3Dが上だと実感する。


すると、向こうも気が付いたみたいで、こちらに向かって手を振って来た。

 すぐに近づいて来て挨拶を始めた薬師寺さん。


「こんばんは。今日はよろしくね。あっ、こちらは私の友達の天王子ユカさん」


「聖心女子大学の天王子ユカです」


 紹介された女性は、ナチュラルボブでマスカラが目立つメイクだ。服装もニットワンピースで胸元とくびれを強調した、大人可愛い雰囲気の人だ。


 天王子ユカさんも相当な美少女だ。類は友を呼ぶ、美人は自分の引き立て役にブスを周りに置くと言うが、美人は美人とつるんでいるのが真実だ(チュン調べ)。


「天王子さんですか。俺は山岡コウキ、薬師寺さんとは同級生です」


「ユカって呼んでいいですよ。私もコウキ君って呼ぼう。それでこちらの彼は?」


「僕は、中岡レンです。みんなはチュンって言います」


「どうして、チュンって呼ばれているんですか? どこにも関係なさそうなのに……」


「ああっ、中国語だと中をチュンって云うんですよ」


「そっか!第二外国語は中国語を取っているんだ!」


「そうそう、チュンは中国語が得意なんだ。大三元と国士無双とか。「緑一色(リュウイー荘)」でしょっちゅう駅前語学留学しているし……」


「それって雀荘じゃないですか?!」


 そう言いながら、コウキの肩を叩くユカさん。すでにコウキは気に入られたようだ。僕が自己紹介していたはずなのに、相変わらず全部持って行ってしまう。

 不貞腐れている僕にフォローが……。


「チュンよりレン君の方が、絶対良いよ!!」

 薬師寺さんが確信したように声に出した。


「そうしよう!! レン君、私のことはアマネって呼んでいいから」

 そう云って、僕の腕を取った。


「まだ、ジュンキとタクミが来てないから」


 時計台から、目的のペントハウスに向かおうと、僕を引っ張って歩き出した薬師寺さんを押しとどめた。


「あっ、そうだった。幹事のジュンキ君が来ないとね」

「お目当ての天野君も来てないのに……、焦りすぎ」


 薬師寺さんと天王子さんが、思い留まったところで待ち人がやって来た。


「ごめん。遅くなった?」


「もう、ジュンキがもたもたしているから?」


 僕たちに声を掛けてきたカップルはジュンキとその彼女の西園寺優菜だ。その甘ったるい雰囲気は、まるであの後の余韻を引きずっているようで……。


 これが、僕がジュンキを苦手にしている理由だ。いや、うらやましいよ。僕だって、とも思うよ。でも、人前でイチャイチャするのは僕には無理だな。


「後は、タクミだけか」


「アイツは彼女の大学まで迎えにいってるから」


 ジュンキと彼女のユウナの合流で、コウキの口から出た言葉にジュンキが答えた。


「えっ、今日、天野君の彼女さんも来るの?」


 天王子ユカさんがジュンキの話に首をかしげた。


「ああっ、タクミは彼女にぞっこんだからな。彼女同伴でないと他の女とは飲まない」


「なにそれ~?!」


「あっ、でも、タクミにアタックするのはOKだから。ナオミはタクミが他の女に靡かない自信があるから……」


「なに、それは~、それだけ彼女さんは自信があるんだ?!」


「両方!!」


「えっ?」


「だから、タクミとナオミ両方!!」


「まじなの~?!」


「まじまじ。ところで、君が聖女(聖心女子大の省略系)の天王子ユカさん? ユウナに聞いてた通り、美人でスタイルが良いんだね」


「浮気したらダメだからね」


 タクミの話から、ユカさんをさりげなく褒めるあたり、ジュンキは相変わらずナンパ力が高い。それを警戒して釘をさすユウナさん。


「うん、ユウナに聞いていた通り、ナンパ系イケメンにやんちゃ系イケメン、そしてハニートラップにも揺らがない正統派イケメンか……」


 ユカさんがポツリと言葉を呟いた。


 ナンパ系はジュンキ、やんちゃ系はコウキ、そして正統派はタクミか?! 僕はイケメンのカテゴリーには含まれないらしい。

 そんな僕の心を読んだように、さらに止めを刺しに来る薬師寺さん。


「ユカ、この人たちは中坊のころから女の扱いには慣れてて、ホスト顔負けだからね。こっちから惚れたら負けだからね。楽しめたらOKってことで! 摺れてない安パイはレン君だけだから」


「うん。チュン君はアマネに譲るわ。私はホストに囲まれて女王様タイムと行きます」


 俺を薬師寺さんに押し付けて、コウキとジュンキの間に入って、腕組んでグイグイお目当てのペントハウスに向かっていく。

 


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