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何から飲む?

「何から飲む?」


 帽子を脱いだアマネは髪を切っているせいか、いつもより大人っぽく見えた。


アマネが腰を下ろしたのを見て、台所からグラスに氷を入れて持って行った。


 僕の差し出したグラスに野菜ジュースを注いで、ゆっくり、グラスを傾けた。


「ねぇ~、レン君、私たちの関係ってどう思う?」


「はっ?」

 唐突なアマネさんの質問に、聞き返した僕。


 どうやら合宿中、オヤジ教授に相当「恋愛論」特に貞操観念について叩き込まれて、僕たちの関係が適切かどうか疑問を感じたそうだ。


 改めて聞かれると……。


 元々、僕は恋愛に関しては保守的だったはずだ。「婚前交渉」などとんでもないし、あり得ない。それが僕の恋愛観だった。


 でも、この前、勢いに流され欲望のままに行動してしまった事実がある。相手がいれば、貞操観念などねじ切れて、遥か彼方に飛んで行ってしまう凧だと自分を自覚した。


 でも、僕たちの年頃なら、あのくらい経験済みの奴も多いだろうし……。僕は仲間内で決して1番に経験したいわけじゃない。これが僕の今の恋愛観(常識)だ。


「エッチするしないは、気持ちの問題じゃなく、年相応の問題かな?」


「あれ、レン君って私の考えに似ているね。ほら、似た者同士っていうのかな?」


 僕の問いにアマネさんから予想外の言葉が返って来た。


「えっ、僕とアマネさんが似ているって?」


「うん。私の人を好きになる基準!! これは絶対に譲れないのよ」


 アマネさんが人を好きになる基準だって?! そう云えば、なんで、アマネさんは僕と付き合いたいって申し込んだのか、今まで、恥ずかしくて聞けなかったことだけど、一番知りたかったことだ。


 このタイミングなら聞ける。その理由がどんなことだったしても、落ち込む必要はないのだ。僕にはこれまでアマネさんと積み重ねた事実がある。


「アマネさんは、どうして僕と付き合いたいって思ったの?」


「? ――レン君が付き合ってくれたから?」


 アマネさんの顔にはてなマークが浮んだと思ったら、疑問形で答えてくれた。


 確かに一度断ったし、もし、そのまま、アマネさんが諦めていたら、今みたいに付き合っていなかっただろう。


 正解!って、僕の聞きたいことはそんなことじゃない。もっと具体的に訊かないと駄目だ。


「アマネさん、ぼ、僕のどこを……、好きになって付き合おうって思ったの……」

「っ……」


 どんどん声がちっちゃくなっていったけど……、伝えるべきことは伝わったみたいだ。

 アマネさんは息を吸い込もうとして、詰まったような声を上げて、顔が見る見る赤くなっている。


「ジュンキ君から聞いてない?」


「ジュンキからは何も……、いや、ジュンキからは「軽く相手にされなかった」と宣言されたぐらいかな?」


「そうなの。私、ジュンキ君を振っているんだよね。なのにキューピットまでさせちゃった」


 ジュンキから冗談ぽくカミングアウトされたけど、事実だったんだ?!


 ジュンキってイケメンで会話も面白くて、モテモテだけど……。僕たちの間では共通認識されてことだから、言ってもいいよな。


「軽い奴が嫌なの?」


「別に軽いのは構わないわよ。ジュンキ君が同級生ってだけ。私の絶対的な恋愛基準は年上であることなの」


「……」

 僕は絶句するしかない。


「別にびっくりすることじゃないでしょ。年上が好きなの! 生理的に!」


 生理的にっていうことは、理屈抜きってことだよね。しかし、そんな理由で僕を好きになったなんて?!


「アマネさんみたいなモテモテの人がそれでいいのか! もっと慎重な方が良いんじゃないか」


「えっ、私、モテた覚えはないわよ。小学生の時は同級生にはよくいじめられたけど……。年上の人がよく助けてくれたけど」


「だから、年上が良いってこと?」


「だって、年相応な考えを持っていて、信用できたよ。同級生はダメ、考え方が子供過ぎて。レン君もそうでしょ。大人だよね。初めてのコンパの時に分かったもん」


 両手を胸の前で握りしめるポーズを決めた。


 ああっ、アマネさんは美人だけじゃく頭も良いから、いわゆる高嶺の花ってやつで、せめてもの抵抗で、好きな女の子にちょっかいを出す男の子と、上級生としてはギリギリ大人の対応をしたっていう構図を、中高生の間と引きずって来たんだ。アマネさんの場合、それが恋愛観の元になっている?!


「いやいや、そんなことで人を好きになるの?! 理由があまりにも幼い時の狭い世界の体験談だよね」


「人を好きになるってそうでしょ。経験できるイベントなんて知れているし、出会える人だって限られているのよ。そんな確率で「年上だな」って信頼できるイベントと人に出会えるなんて、きっと運命でしょ」


 そんなことをいって、今度はさっきのポーズから親指を立てた。


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