~~~薬師寺アマネSIDE~~~
~~~薬師寺アマネSIDE~~~
毎日、電話でレン君と話をしているけれど、やっぱり物足りない。
大体、レン君から電話が掛かって来たことが無い時点で、不満だらけでしょ。やっぱり、直接会って話がしたい。
でも、授業も合わないし、夜はバイトで下宿にいないし……。
私のテレビのお仕事も、ゴールデンウイーク明けからイベントが目白押しで、土曜日の生撮り以外にも、打ち合わせとか取材で日曜日でさえ仕事が入っている。
でも、明日の2時限目はサボれない必須科目で、レン君も大学にくるはず……。そして私は都合よく3時限目は休校だから、昼に合う約束をして……。それで……、どうしよう?
多分、レン君は女の子と付き合ったことがないから、私が積極的にリードしないといけない。
私の気持ちを打ち明けたジュンキ君に、そうアドバイスされたけど、先ずは積極的なスキンシップでレン君の物理的そして精神的な壁を取り除かないと、私たちのギクシャクした関係のままズルズルと距離が広がってしまう。
よし、お弁当を作って、レン君の下宿で食べることにしましょう。レン君のことだから、私がいれば、3時限目はサボっちゃうだろうし……。
積極的なスキンシップは……、レン君のバイクに乗せてもらうように頼めば、嫌とは言わないよね。
部屋に入ったら、なるべく自然な成り行きでレン君の隣に座って……。
なんか想像するだけで、心臓がドキドキする。
そんなシミュレーションを頭の中で何度も繰り返す。経験済みのキスまではすぐに辿り着いてしまうけど、その先は……。ムリ?! 私から積極的に行かないと、レン君からはなかなか動いてくれない。
さらに、そこまで誘うためにはミニスカートの方が……、でも、バイクの後ろの乗せてもらうなら、パンツルックの方が……。
私の悩みは、いつの間にか、明日何を着ていくかに変わっていた。
翌朝、レン君は一人暮らしだから、昼はほとんどがパンを食べているのを考えて、大袈裟にならないように、お弁当の中身はサンドイッチをチョイスした。
あと、服装はスポーツブランドのハーフパンツとTシャツの上にパーカーを羽織って、鏡の前に立った。
(結局、ツーリングの服装になっちゃった。風を切って走ると、けっこう寒いらしいから……。後、化粧は……)
積極的なスキンシップを図るなら、薄化粧の方が良いよね。テレビの画面を通して見られるんじゃなく、間近で見られるんだから……。
淡いピンクの口紅を塗って、唇を突き出す。
こ、これって、キス顔?! ないない!? 今日は無いから!!
私は腕を振って鏡に写った自分に否定した。
二時限が終わると、第二学食のテラスに座って、レン君の教室の方を見ながら待っていた。
そして、レン君を見つけると大きく腕を振って、レン君の方に歩いて行った。
「一週間ぶり」、寂しかったという言葉を飲み込んで、「やっと会えたね」と声を掛けた。だって、そんなことを言うとレン君から「毎日、話しているのに」と無粋な言葉を返されそうだ。
「今日は、レン君の部屋に行こうよ」
と提案すると、レン君は、何か、色々と考えているみたいだ。
提案が拒否される前に、私は駐輪場に向かって歩き出した。
「バイクの後ろに乗せてね」
そう切り出しても、レン君は特に拒否しなかった。私はジュンキ君から、レン君の高校時代のことも聞いて知っているのだ。
バイクに跨って、レン君の背中にしがみ付いて幸せを感じる。