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一ノ瀬澄花は無色である  作者: 如月
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第一話「感情が視える男」

小説初心者なので多めに見てください。




人は誰しも喜怒哀楽の感情を持っている。

人によってはそのうちの1つが薄かったり、逆に濃かったりするだろう。

感情があるのは当たり前のことで誰も何も疑おうとはしない。

自分の誕生日を祝ってもらえれば嬉しいし好きなことをしているときは楽しい、大事にしていた物を失くせば悲しくなるし、何か思い通りにいかないことがあればイライラする。


そうやって感情の渦は廻り続け、自分でも止めることはできない。

そして人の感情というものは察したり推察することはできても断定することは無理に等しい行為である。

だって自分の感情さえも理解できないときがあるのだから、しかし人はそれを承知の上で交流を持ち、関わろうとする。


仲が深まれば友達に、さらに深くなれば親友に、異性であれば恋人に---。

時には喧嘩もするし泣くこともあると思う、その度に話し合って和解していく。

たまには関係が壊れることもあるかもしれない、感情を理解できないからこそそういうことは起きるのだ。


それらを考えればもしかすると感情というものは理解できない方が面白いのかもしれない---。




ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ---。

耳元で聞き慣れた音がする、俺は手慣れた手付きでその音を止めた。


今日は4月1日、俺が今日から通うことになる高校の入学式の日だ。

まずは重い瞼を持ち上げて時計を見る、今の時刻は6時32分。

学校には8時に着けばいいからゆっくり準備できる、1度大きなあくびをしてベッドから起き上がった。


この高校に決めたのはこれといった理由がなく、家から近いからだった。

中学校の入学式の日は色々な期待に胸を膨らませドキドキしていた記憶がある。

まあ、中学2年になってからはなあなあでやっていた部活も辞めてなんとなくで勉強する日々だったけど。

運命的な出会いもなく、青春を謳歌することもなかったな。

これも全部アレのせいなんだけどな---。


などと昔を思い出している間に学校の準備が終わり、早速高校に向かうことにする。


「行ってきます」


自分しか住んでいない家にボソッと挨拶をしてから玄関を出た。


昨日ためしに最短コースを徒歩で学校まで行ったところ、約15分程かかった。

しかしその道は大きな交差点があり、人通りも多い・・・つまり人の感情が渦巻く場所である。

俺はワケあって人が密集するところが嫌いなので、少し時間はかかるが人通りの少ない道で通学することにした。


学校まではほぼ直線だし昨日も通学したので、迷うこともなくすんなりと学校に着くことができた。

学校の上の方に一際目立つ大きな時計があるのだが、その時計で確認したところ現在の時刻は7時50分らしい。家を出たのが7時30分くらいだったので通学時間は約20分程ということになる。


中学生の時は入っていた部活を辞めたし、高校では部活に入る気はなく、普段運動もしない身からすると良い有酸素運動にはなるか・・・とくだらないことを考えながら玄関に向かっていると、玄関の前でどこかを凝視しながら仁王立ちしている50代くらいの男の先生の姿が目に入った。


同時にその先生の体から漂う少し濃い目の赤色のオーラを確認できた。


「赤色か・・・」と独り言を呟いた後に、その先生の視線の先に目を配る。


視線の先には歩くだけでパンツが見えそうな程スカートを裾上げしているまさに金色と言わんばかりの綺麗な金髪の女子生徒がいた、顔立ちはかなり良いように見えるが化粧もしているのだろうか。

オリエンテーションの時に配られたパンフレットによると、この学校の規則ではスカートを裾上げするのは禁止になっており、髪を染めるのも禁止、化粧も当然禁止となっていたはず。


「だからあの先生はあんなに怒っているのか・・・」とまた独り言を呟き、見てみぬふりをして学校内へと入った。


そう、わざわざ人通りの多い交差点を避けてまで遠回りする理由はここにあるのだ・・・。

俺は生まれた時から人の感情が色のオーラとなって()()()のである、具体的には怒りは赤色、喜びは橙色、悲しみは青色、楽しさは黄色といった風に視えるらしく、色の濃さや量でより具体的に知ることができる。


まあ感情といってもこの4つしか視ることができず、例えば嫉妬や憎悪、恐怖などの感情は視ることができない。だから万能というわけではないが、その人を見ると同時に見たくもない感情まで視ることになり、考えてもどうしようもないのに考えてしまい無駄に疲れてしまうのだ。


そのため少しでも情報量が減るように人通りの少ない道を選んで登校することに決めたのである。

そしてあの先生は少し濃い目の赤色・・・ということは結構怒っているということになり、その理由があの女子生徒なのだろうと推測できる。


とまあこんな感じに考えてもどうしようもないことなのだが、視えてしまうが故に無意識に理由を求めたくなり、思考してしまうまでがいつもの一連の流れとなっている。


靴を履き替えて階段を登ろうとしたときに自分のクラスを確認していないことに気付き、やばっ。と一言こぼし急いで玄関へと戻る。靴を履き替えて再び校庭に出た時、さっきの先生ともめている金髪女子生徒の姿が目に入ったと同時に、その後ろからこちらに近付いてくる女子生徒の姿に「驚愕」した。


彼女は腰くらいまである黒髪で化粧はしてなさそうに見えるがかなり顔が整っている、幸薄そうな・・・放っておくと消えてしまいそうなどこか儚い印象を植え付けられる。しかし、驚愕したのは彼女があまりにも綺麗だからというわけではない。


彼女の美貌に釣られて数人の男子生徒が彼女に詰め寄り、先生もいる中で堂々とナンパもどきを行っているのだが、驚いたのはそこである・・・。


彼女に詰め寄る男子生徒達には楽しさを表す黄色のオーラが漂っている、まあこれは至って妥当な感情だと思う。こんなに綺麗な女の子がいれば声もかけたくなるだろうし、仲良くなったときのことを考えると楽しくて仕方がないとバカでも分かるからだ。


一方で黒髪の彼女の方は終始無表情で一切口も開かず、まるで周りの声が聞こえてないのかと思うほど気にしてないようにみえた。そして何より・・・数人の男子生徒に詰め寄られ、綺麗だの可愛いだのと(おだ)てられ、ぶっきらぼうな表情を見せているが内心は少し嬉しくなったり、逆に不快に思いイラつきでもする場面なのだが。


というかそうならないとおかしい状況であるにも関わらず、彼女の感情のオーラは黄色でも赤色でもなく・・・誠に信じられないのだが、何の疑いようのない・・・・・・「無色」だったのだ。

すみません黒髪ロングは完全に僕の好みです、はい。


良ければ続きも読んでくださると嬉しいです。

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