推理作家への挑戦状 結界編
直彦はその経緯を白露元から聞いておりその事を思い出しながら
「難しい問題だな」
允華君とはまた立場が違う
と告げた。
「母もきっと複雑だったんだろうと今なら分かる」
だがそれでも
「俺は迎えに来てくれて手を握りしめて家へ母と帰る道が好きだった」
ちゃんと迎えに来てくれたと嬉しかったのを覚えている
「本当の母は母で俺を愛してくれていたし愛してくれているだろうことは疑っていない」
同時に育ての母もまた俺を複雑な気持ちでも愛してくれていたと俺は思っている
「俺も二人の母を母だと思って愛している」
…それで良いんだと今は思っている…
「允華君もいつか胸の奥で受け止められる日が来ると思う」
允華は直彦を見ると小さく頷いた。
あと10年。
いや、あと何年かすればわかるのだろうか。
今はもう会うことのない母をどう受け止めて行けばいいのかという答えが。
允華は心配そうに見ている晟と加奈子を見ると笑みを浮かべ
「明日からここで頑張りましょう」
俺、頑張りますよ
と笑いかけた。
晟は大きく頷くと
「ああ!俺もだぜ!」
卒論上げるぜ!
と業とらしく元気に答えた。
加奈子も笑顔で
「そうね、連載も待ってるわよ、允華君!」
先ずは今回の小説兼卒論ね
「頑張れ、青年たち!」
と二人の背中をパンッと叩いた。
「いたっ!」
「いでー、加奈子さん!」
と允華と晟は背中を慌ててさすった。
直彦は苦笑して
「じゃあ、勢い余っての器物破損だけはしないようにな」
と告げた。
允華たちは作業の準備だけすると直彦に挨拶をして夏月家を後にした。
夜の闇は街を包み皓々とした月が地上を照らし出していた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




