言葉の意味
アルバイトは9月からであった。
しかし允華は夏月直彦から予定変更の連絡を受け、元は桃源出版の編集者だった女性と行動を共にすることになり、その後の連絡で9月3日の土曜日に彼女と落ち合う事になったのである。
女性の名前は茂由加奈子。
スラリとしたスレンダーな身体をした闊達そうなアウトドア派タイプの女性であった。
つまり、允華とは反対のタイプである。
彼女は成城学園前の駅で允華と合流すると
「君が白露允華君?初めまして」
とにこっと笑って
「夏月先生から話は聞いているわ」
ネットカフェで打ち合わせしましょ
「この駅には無いから文京で良い?」
とテキパキと告げた。
允華は慌ててビシッと
「あ、はい」
と答えゴックンと固唾を飲みこんだ。
加奈子は緊張気味の允華に
「そんなにかしこまらなくていいのよ」
と言い
「私も君と同じアルバイトなんだから」
と告げた。
「先生の下でもう一度勉強のやり直し」
小説家目指していたんだけど自分には才能がないって桃源出版に就職して
「でも何か違うなって思って事故で入院したのを切っ掛けに辞めて…この前、先生に君と一緒にアルバイトしないかって言われたの」
だから
「允華君と一緒だよ」
允華は目を見開き
「…はい」
と答えた。
彼女は笑って
「せっかく一歩踏み出したんだし」
頑張ろ
と告げた。
「私の方が三歳上だけど、それは言いこなしだからね」
允華は思わず
「いや、自分で言ってるし」
と心で突っ込んだもののコクコクと頷いた。
東都電鉄で成城学園前から文京駅に移動し、快適ネットというネットカフェに入ると指定された部屋で加奈子は
「ファイルNo8だったよね」
と言いながらUSBを差し込んでパソコンを立ち上げた。
允華は頷き
「それで、登場人物表と時系列表とトリック表を見て時系列を中心にトリックでの行動をはめ込んでおいたんですが」
と自分が作成したファイルをクリックした。
Excelのファイルで作成した時系列の一覧である。
允華は指を差して
「A列に日にちと時刻とB列に話の展開。C列にトリックの切り張りです」
と説明した。
「殆ど作られているので俺は切り張りしただけですけど」
トリック的には問題はなかったです
加奈子はにっこり笑って
「さっすが、先生の秘蔵っ子だよね」
と告げた。
「でも、一つ足りないな」
允華は目を見開いて
「?」
と疑問符を飛ばした。
加奈子は画面を指差し
「最後のD列にその大枠に登場する人物も入れていって」
と告げた。
允華は「確かにそうだ」と答え、手帳を取り出すとメモを取った。
何事も勉強なのだ。
加奈子は允華の様子を見ながら息を吐き出すと
「先生からは允華君は経験が無いからって言われたけど」
殆ど教えることないかも
と呟いた。
允華は手帳を置いてパソコンに向かって指を動かし
「いえ、俺、人物を入れるって思いもつかなかったので勉強になります」
と答えた。
彼女は驚きながら
「もっと頭でっかちでタカビかと思ったら意外と謙虚だね」
と呟き、允華が打ち込むのを見て
「それが終わったら現場検証ね」
と告げた。
允華は驚きながら
「おお!警察だ」
と思わずぼやいた。
彼女は笑って
「3Dviewにしてその場のイメージを残すと良いでしょ?」
と告げた。
允華は眼から鱗と感じると大きく頷いた。
加奈子はにっこり笑うと
「先生によりイメージを膨らませ文章を作りやすく手伝いするのも私たちの仕事よ」
と告げた。
「でも、夏月先生は調べるのも殆ど自分でするから抜けているところとか」
時間が無くて取材できない部分をフォローするの
「今は間隔空いてるけど詰まっている時は二本とか三本とか締め切り重なる時あるから」
允華はメモを取りながら険しい表情をすると
「三本って頭がこんがりがりそうだ」
とぼやいた。
加奈子はプッと笑うと
「面白いこと言うねー」
と笑った。
允華は驚くと
「そこ笑うとこ!?」
と心で叫んだ。
そして、話の舞台となる場所へと向かったのである。
コンティニューロール
東京と聞くとどこもかしこも高層ビルやマンションが立ち並ぶ都会だと思われがちだが、実際には下町情緒の残った場所や普通の住宅街などが多く存在している。
東京も人の住む街なのだ。
夏月直彦のミステリーの多くはどちらかというとそういう都会の風景の中よりは住宅街が舞台のモノが多い。
No8のファイルのミステリーの舞台も東京のそんな片隅であった。
允華は東都電鉄の四辻橋の駅で降りると線路に交差するように伸びる川に目を見開いた。
「凄い桜並木ですね」
川沿いだし風情がある
感嘆して呟き、その先に見える菓子工場の看板を目に
「チョコビット…東都製菓の工場ここにあるんだ」
とおお!と驚きの声を上げた。
「俺、こっちには余り来たことが無いから知らなかったです」
加奈子は片手で収まるデジタルカメラを出しながら
「物見遊山だねー」
と苦笑を零し
「一応、取材で来ているんだよ」
とさっぱり告げた。
允華はハッと我に返ると
「すみません」
と慌てて頭を下げた。
加奈子は笑いながら
「うそ、うそ、冗談」
と言い
「取材は確かだけど、そう言う感覚大切だよ」
ただ風景を取ればいいってわけじゃ無いから
允華は手帳を取り出すと
「なるほど」
とメモを取った。
その時、一人の少女が脇道から姿を見せるとじっと允華を見つめた。
長いフワリとした髪をした綺麗な少女であった。
允華も彼女に目を向けると互いにじっと見つめ合った。
風が流れサワサワと葉の色が朱に変わり始めた桜の木の枝が揺れた。
加奈子も立ち止まったまま一点を見ている允華を一瞥し、少女に目を向けた。
「知り合い?」
允華は首を振ると
「いえ、けど…俺をじっと見ているみたいで」
と答えた。
加奈子は「この近くの東宮女子の子かしら?」と呟いた。
允華は「ああ」と声を漏らすと
「No8のファイルの話の中にも東宮女子学院の生徒が出てきてました」
と告げた。
「ちょうど良いから東宮女子学院の場所聞いてみますか?」
と問いかけた。
加奈子は戸惑いながら頷いて允華と共に少女の元へと進んだ。
そして、川沿いの土手のところで
「こんにちは、もしかして東宮女子学院の学生さんですか?」
と呼びかけた。
少女は頷いて允華に目を向けると
「はい…あの、もしかして…白露、允華さんですか?」
と聞いた。
允華は驚き
「え?あ、はい」
と答えた。
少女はぱぁと明るく笑むと
「初めまして、わたし神守勇と言います」
春彦さんが津洗に行ったときに送ってくれた写メに映っていたので
と告げた。
「直彦さんのアルバイト始められたんですよね」
允華は頷いて少し考え
「もしかして、春彦君の恋人の…」
と指を差した。
勇は頷いて
「はい!」
と笑顔で答えた。
「また、夏月家にお邪魔するのでその時はよろしくお願いいたします」
今日は補講だったので
と告げた。
允華は笑顔で
「そうか」
と答え
「そうだ、東宮女子学院って此処から近い?」
と聞いた。
勇は頷くと彼女が今出てきた脇道を指し
「そこから入って真っ直ぐ行くと学校の校門に突き当たります」
と告げた。
「取材ですか?」
允華は頷き
「夏月先生の小説の」
と答えた。
勇は何かを理解したように
「そうか、だからなんだ」
と言い
「じゃあ、私はこれで…頑張ってください」
と手を振って立ち去った。
允華も応えるように手を振り、加奈子も
「可愛い子だー」
と手を振って見送った。
二人は脇道に入ると真っ直ぐ進んで東宮女子学院の校門前までたどり着いた。
そして、今度は右に曲がりビル群の裏手を回って駅へと戻ったのである。
カメラ撮りが終わると二人は成城学園前の駅に戻り加奈子が
「今日は、お疲れ様」
とビシッと敬礼した。
允華も慌てて
「いえ、ありがとうございました」
お疲れ様です
と頭を下げた。
そして、加奈子の手にしているカメラを見ると
「その、今日撮影した現場検証の映像どうするんですか?」
と聞いた。
彼女はそれに
「ストリートビュー風に直すの」
と答えた。
「先生の見たいところと私たちが考える場所が一緒だってことはないでしょ?」
だからストリートビュー風にして先生に自由に触れらるようにしておくわ
允華は「おお」と驚き
「その…お手伝い俺もさせてもらえますか?」
と聞いた。
加奈子は悩みつつ
「明日しようと思っていたんだけど」
允華君はお休みでしょ?
「先生、日曜日はアルバイト休ませてあげるようにっていってたから」
と答えた。
允華は腕を組むと
「ですよね…う~ん、明日、か」
と呟いた。
明日の日曜日は泉谷晟が『ゲームするぞー』と約束をしていた日なのである。
雨さんの推理タイムが来ると何時も允華が交代をして推理していたのでいないと安心してゲームができないのである。
加奈子は眉間にしわを寄せて悩む允華の様子にクスクス笑うと
「あのさ、この先もあるんだから」
次の時に教えるわ
「無理しない!」
と告げた。
允華は頷くと
「はい」
と言いかけて、突然、背後から突進されて前のめりに倒れかけた。
「げぼっ」
と思わず咳込み
「ごほごほ」
と蹲った。
加奈子は驚いて背中に張り付いている人物に目を向けると
「…君、何者!?」
と顔をしかめた。
それに駅の改札から突進してきた泉谷晟がダバーと涙を流し
「悪い、允華」
大丈夫か?
と言いながら、自分が大丈夫か!?と言われそうな表情で覗き込んだ。
允華は咳を押さえつつ晟を見ると
「あ、きら…の方こそどうしたんだ?」
と聞いた。
晟は「解散した」とぽつりとつぶやいた。
何が?
何が解散したんだ?
と允華は首をかしげると
「どうしたんだ?」
と再度問いかけた。
晟は涙顔になりながら
「ディテクティブGが解散した!」
うぉおお
と泣いた。
…。
…。
加奈子は「大学生がマジ泣きしてる」とドン引きしつつ允華を見た。
「なに?もしかして推しのアイドルグループ?」
言われ、允華は首を振ると
「ゲームの中のギルドです」
と答えた。
そして、晟の肩を軽く叩くと
「話聞くから…俺の家に来たら?」
と告げた。
晟は涙を溜めたまま頷いた。
允華は加奈子に
「すみません、今日はこれで」
明日、頑張ってください
とそそくさと告げるとぺこりと頭を下げた。
加奈子もどぎまぎしながら
「そ、だね」
分からないけど
「允華君も、そのゲーム君もファイト!」
と適当なことを口にして
「じゃあね」
と手を振って逃げるように改札へと向かった。
允華はふぅと息を吐き出し
「夕飯は俺の弁当半分こでいい?」
と聞いた。
「仕出し屋の弁当だから量多いし」
晟は首を振ると
「悪いだろ」
何か買っていく
と答えた。
允華は「じゃあ、それぞれ半分こにしようか」と言い、家に向かって歩き出した。
時間は午後4時を迎え傾いた陽光が徐々に赤く染まり始めていた。
初めてのアルバイトの最後がとんでもないことになったが、それでも允華はそれでよかったのかもしれないと思ったのである。
二人は近くの店で付け足し程度のおかずを買って白露家へと戻り、元と月と允華と、そして、晟の4人で食卓を囲んだ。
両親が神奈川の別宅に移り住んでからは食事を3人一緒に食べるようになった。
それまでは允華はずっと自室や外食などで食事を共にはしなかったのだ。
しかし、元が
「允華、3人になったんだ」
一緒に食べよう
「俺も月も2人だと寂しい」
と心から言ってくれた。
「それから色々話をしていこう」
3人で一緒に生きて行こう
元のその言葉を允華は素直に受け入れることが出来たのである。
元は仕出し弁当を皿に盛りつけて4人全員が取りやすいようにし涙に濡れる晟を目に
「…允華、泉谷君は大丈夫なのか?」
とぼそりと問いかけた。
「もしかして、失恋したとか」
允華は「ゲームでギルドが解散しました」とは最近砕けてきた兄だが流石に言う事は出来ず
「いや、失恋じゃないんだ」
というと
「後で話をゆっくり聞こうと連れて来たんだ」
と答えた。
元は頷き
「そうか、ちゃんと聞いてやれよ」
というと
「いただきます」
と両手を合わせて食事を始めた。
月も両手を合わせて
「いただきます」
と告げ
「晟お兄ちゃん、お腹いっぱいになったら元気になるから一緒に食べよう」
と呼びかけた。
そう言う優しい所は兄譲りなのだろう。
晟は涙を拭い
「ありがとう、月君」
と淡く微笑み
「元さん、すみません」
とぺこりと頭を下げた。
元は「いやいや、気にしなくていいから」と答え、心配そうに晟を見た。
允華は4人で食事を終えると
「じゃあ、部屋でゆっくり話してくる」
と晟と共に部屋に入りベッドに腰を下ろして
「突然だけど知ってたの?」
と聞いた。
晟は首を振ると
「知らなかった」
というか
「全員にとって寝耳に水だったらしい」
けど
「自分たちは頃合いだからってみんな引退するって」
まじかー
と叫んだ。
允華は雨の正体がわかっていたので
「もしかして、警察で何かあったのかな」
推理にゲーム経由して情報漏洩していたのがばれたとか
と心で呟いた。
雨は推理タイムと言って推理クイズを出していたのだが、それは実際には本当の事件をディテクティブGの面々に伝えて助言を求めていたのだ。
恐らくディテクティブGのメンバーは警察関係もしくは関連の人間だったに違いない。
允華はそう考えていた。
その中心者である雨が刑事でなくなったとしたら…推理タイムの必要もなく警察関連者だった彼らが役目を終えたという事で解散引退の流れになるのは分からないわけではなかった。
つまり、刑事とブレインの関係が解消されたのだろうと允華は理解していた。
晟は涙に暮れながらハァと息を吐き出し
「インするから現状を見てくれ」
とインした。
画面には晟のアバターであるサーアーサーがぽつんと荒野に立っていた。
物悲しい。
ギルドのところには『ギルドには所属していません』の赤文字。
フレンドのところには『雨』の一行だけが残っていた。
荒野に風がヒューと流れていくのだが、それが益々孤独さに拍車をかけている。
が、允華は画面の上の方にあるビックリマークのついた吹き出しを指差し
「これ何?」
と問いかけた。
晟はカッと見つめると
「これ、連絡チャットだ」
と言い、指で押して出てきた連絡画面に
「おおぅ」
と声を上げた。
連絡者は雨であった。
出だしは二人当てだという事を言外に伝えていた。
『プラアーサーくんにテリアーサーくん』
つまり晟と允華である。
『ギルドを突然解散して申し訳なかった。プラアーサー君には本当にアクティブなバトルギルドを紹介しようと思っている。9月4日の午後8時にエスター王国の城下にある噴水前に来てもらいたい。そこにゲームでフレになった花鳥風月というギルドのギルマスであるギンガに来てもらうように伝えているのでやっていこうと思うなら加入して頑張ってもらいたい。推理タイムもないのでプラアーサー君だったら気にせず楽しめると思うので宜しく』
允華はほっと安堵の息を吐き出すと
「良かったな、ちゃんと雨さん晟の事を考えてくれていたんだ」
と告げた。
晟は小さく頷いた。
連絡はまだ続いていた。
『そして、テリア―サー君に頼みたいのだがもし俺の手伝いをしてくれる気持ちがあるならアカウントを作ってもらいたい。もちろん、リアル優先で構わないのだが君の推理力を借りたい事情が出来たので、こうしてプラアーサー君を通じて書かせてもらった。もし応えてくれるならば9月4日8時にエスター王国の城下町にある噴水前にプラアーサー君と来て欲しい。無理ならそうプラアーサー君に伝言を頼む 雨より』
となっていた。
晟は允華を見ると
「どうする?」
と問いかけた。
悩みどころである。
允華はむーんと唸り声を零すと
「気にはなるんだけど…夏月先生のアルバイトとかあるからずっとゲームにインしてみてるわけにいかないからな」
と呟いた。
「それにゲームに興味があるわけじゃないからレベリング頑張れないし」
そこが問題であった。
晟もそれに関しては深く大きく頷いた。
「だよなぁ」
俺と允華を足せたら良かったんだけどな
「俺はゲームでレベリングスキーだしインに抵抗ないし」
けど
「雨さんの手伝いは允華しかできないからなぁ」
允華は頷き
「幾ら手伝いでアカウント作ったっていってもレベル1のままじゃちょっとね」
と苦く笑った。
晟は腕を組んで
「うーん」
と唸ると
「よし!」
と笑顔を見せてギンッと允華を見た。
允華はびくっと晟を見ると
「何するつもり?」
と問いかけた。
晟はフフッフフッと笑い
「俺に任せておけ」
と答えた。
翌日の9月4日の夜8時に晟は白露家の允華の部屋に姿を見せていた。
明日の大学の講義の準備と服を持ってである。
つまり、お泊り態勢でやってきたのである。
そして、共にベッドの縁に腰を下ろし晟は携帯とタブレットの両方でゲームを立ち上げた。
タブレットの方を手にして允華を見ると
「名前何にする?」
と聞いた。
允華は覗き込みながら
「は?」
と聞いた。
晟はにっこり笑い
「これお前のアカウント」
と告げた。
「まあ、レベリングとか他の一切合切は俺がやってやるから安心しろ」
俺のサブっこだ
「アカウント譲渡じゃないからギリセーフだろ」
雨さんタイムになったら呼んでやる
「俺は二刀流」
と言って笑った。
允華は晟に
「いいのか?大変なんじゃないのか?」
と聞いた。
晟は首を振ると
「別にメインの俺は花鳥風月に入ってガンガンバトルするし、サブのお前のアカウントは暇な時に連れまわしてレベリングする程度にするから大丈夫」
だからギルドには入れないけど良いか?
「ただメインと一緒にインするから今まで通りとあまり変わらないと思う」
と告げた。
允華は頷くと
「ありがとう、助かる」
と告げた。
晟は笑顔で
「いいさ、今まで助けてもらってたから」
と返した。
「それにサブは何かと役に立つ」
倉庫番とか
素材集めとか
と付け加えた。
晟のサーアーサーは最終的には
「もう、探偵に間違われないようにする」
と言って『ライキ』に名前を変更したのである。
いずみたにあきらの最初と終わりの文字を名前にしたということだ。
允華は名前を聞かれたが思い当たる名前が全くなかった。
というか、名前には色々因縁があるのでそう易々とは付けられなかったのである。
だが、名無しの権兵衛ではあんまりである。
允華はふぅと息を吐き出すと
「名前じゃないけど」
continue roleかな
「コンティニュー・ロール」
と告げた。
晟は「?」と疑問符を飛ばし
「名前じゃないよな」
と呟いた。
「コンティニューは継続とか続くだろ?」
ロールは巻き巻き?
允華は首を振ると
「そうじゃない方のロール」
そのロールはrollだろ
「俺の言ってるロールはroleだから役目役割だよ」
未来へと継続させていく役割って名前
と笑って告げた。
「End roleじゃなくてね」
そう、允華という名前は『異家』。
どこにも繋がらない、それこそ終わりの名前だ。
允華はぼんやりと
「俺はつぐおとかつぎおとかが良かったな」
とぼやいた。
晟は允華を肘で突くと
「どっちも同じ字じゃん」
と言い
「俺は允華が允華で良かったと思うぜ」
ことかの允は誠とか誠実とか意味だから
「そう思えばいいじゃん」
と笑みを浮かべた。
允華は静かに笑みを浮かべた。
「そうだよな」
晟は頷き
「そうそう」
というと
「ま、名前はコンティニュー・ロールな」
ロールちゃん
と笑って告げた。
そして、二人はエスター王国の王城の噴水へと姿を見せたのである。
そこに雨ともう一人ギンガが現れ、雨が個人チャットでライキと名前を変えた晟に
『雨:よく来てくれたね、突然解散して悪かったね』
と話しかけてきた。
晟は指を動かして
『ライキ:いえ、連絡いただいてありがとうございます』
と返した。
雨はライキの隣で微動だにしないコンティニュー・ロールというアバターの前で踊ると
『雨:ロールちゃんがテリアーサー君?』
と聞いた。
晟はそれに
『ライキ:そうです。俺のサブでもあります』
と答え、モーションで踊るポーズを押した。
雨は二人にパーティー招待を送り、ギンガと雨とライキとロールの4人パーティーを結成した。
そして、パーティーチャットで会話をすることにしたのである。
『雨:紹介するね、彼が花鳥風月のギルマスのギンガ。めちゃくちゃバトルスキーだからプラアーサー君頑張って』
『ライキ:はい!よろしくお願いいたします』
『ギンガ:俺こそよろ!ギルドの活動は殆どが高難易度チャレンジだから色々いこう』
『ライキ:ありがとうございます!』
『雨:それでテリアーサー君は俺と二人のギルドでOK?』
『ライキ:あー、はい。ソロにしておこうと思ってましたが雨さんと二人のギルドなら助かります』
『雨:了解』
と話の決着がついたのである。
『ライキ:あの、雨さんのタイムが始まるまでは俺のサブなので声掛けてもらったら変わります』
晟は慌ててそう付け加えた。
允華が常に弄っている訳ではないことを言っておかなければ突然推理タイムに入っても自分にはどうしようもないからである。
雨はそれに
『雨:了解』
と答えた。
ライキには花鳥風月からのギルド勧誘が送られ、ロールには雨と二人だけのギルドとなるシャクヤと言う名のギルドからの勧誘が届いた。
允華は晟がギルド勧誘に承諾するのボタンを押すのを見ながら
「そのまんまだ」
と呟いた。
シャクヤというのは恐らく借家という意味なのだろう。
つまり仮ギルド。
晟は両方共のギルド加入が終わるとタブレットを允華に渡した。
「今は大丈夫だろ?」
允華は頷き
「さんきゅ」
と答え、チャット画面を見つめた。
雨こと天村日和はギルドチャットで
『雨:じゃあ、ロールちゃん。ギルドホームに来てもらえるかな?』
と告げた。
允華はそれに
『コンティニュー・ロール:はい』
と返し、ギルドホームへと移動したのである。
隣では晟が早速
「うおー、行き成り高難易のグレイトケルピーかぁ」
すっげぇ
と叫んでいる。
允華は隣で
「何が凄いか分からないけど、凄いな」
と呟いた。
天村日和はギルドホームにロールが移動すると
『雨:今日はこれだけなんだが、推理力を借りたくなったら前のように声をかけるのでホームに来てもらいたい』
と告げた。
允華はそれに
『コンティニュー・ロール:はい』
と打ち込み
『コンティニュー・ロール:それリアケなんですか?』
と聞いた。
そう、前のディテクティブGの推理クイズはリアルの事件だったのだ。
今回もそうなのだろうと判断したのである。
日和は允華の言葉の意味を理解し
『雨:ああ、だが…これからはコルケだから、時間がある。だから声をかけたんだ』
と返した。
允華はフムッと「コールド・ケースか」と呟き
『コンティニュー・ロール:わかりました。ホッケよりは助かります』
と答えた。
日和はふっと笑って「流石テリアーサー君だ」と言い
『雨:これからも宜しく。今日はこれで解散!おつノシ』
と打って允華が
『コンティニュー・ロール:お疲れさまでしたノシ』
と返すとログアウトした。
允華は隣で懸命にバトルしている晟をバトルが終わるまで待って
「終わった」
と声をかけた。
晟はそれに
「お、そうか」
じゃあ
というとタブレットを手にコンティニュー・ロールのアカウントをログアウトした。
允華は笑顔で
「どう?そっちは」
と聞いた。
晟は頷いて
「ああ、みんなゴリラで俺弱すぎてヤバイと思うけど楽しい」
と答え
「明日大学あるからこっちも終わる」
と言い挨拶をしてログアウトした。
允華はベッドに身体を横にして同じベッドに身体を投げ出す晟に
「久しぶりだな」
こうやって寝るの
と笑った。
晟は身体を伸ばしながら
「そうだなぁ」
と答え
「明日から允華アルバイトだったな」
と聞いた。
允華は頷き
「大学の授業終わったらその足で夏月先生のところ行ってくる」
と答えた。
晟は笑顔で
「頑張れ」
と告げると目を閉じた。
夜は深々と降り、闇が街を支配した。
その中で警視庁特命捜査対策室の長期継続強行犯資料管理係のフロアで天村日和は椅子に座りふぅと息を吐き出した。
彼の背後には広々とした空間が広がっているがその全てが膨大な書類…いわゆるファイルであった。
彼の隣の椅子では九州県警でも日和の部下として働いていた西野悟が涙にくれながら座っていた。
「すみません、天村さん」
俺が犯人逃がしたばかりに
日和はそれに
「捕まえたし大事にならなかったらいいじゃないか」
とノンビリと言い
「それに前に言っただろ」
探偵を必要とする事件なんて1%もない
「けど、その必要とする1%こそが…コールド・ケースだ」
探偵君の知恵を借りて迷宮の出口を掘らないとな
と告げた。
悟は「おお」と顔を上げて
「では、天村さん探偵発動ですか!」
と告げた。
それに日和は
「いや、だから…俺は探偵には向いてないんだ推理は苦手だからな」
その代わり
「事件のメルティングポイントを見分ける力はあるんだ」
と答えた。
「それが俺の得意技」
悟は泣きながら手を叩いた。
「資料室送りになったけど…俺も頑張ります!」
日和は振り返り電灯の光すら届かない大量の資料を見つめ
「この中にいくつその時期が来ている事件があるか」
ここの資料の事件すべてをホット・ケースに戻してやる
と呟いた。
「頼むぞ、允華君」
翌日の夜、期待を知らないところで背負っていた允華は授業を終えて夏月家で直彦と共にチョコンとリビングの椅子に座っていた。
目の前では茂由加奈子が手際よくマーボーナスを作りながら
「先生も允華君も座っていて」
二人も揃っていてどうしたらレンジを破壊できるのかしら
とぼやいていた。
隣で泉谷晟がマーボーナスのタレをフライパンに流し入れながら
「あー、允華は料理したことないから…レンジの使い方知らなかったんで」
俺が手伝っているので許してやってください
「夏月先生は俺を呼んでくれたので許してあげてください」
とフォローを入れていた。
レンジの中はマーボーナスのタレがべっとりと付いており、拭いても取れないだろうというのが明白な状態であった。
つまり使い物にならないという事である。
允華は俯いたまま
「すみません、俺…弁償しますから」
と呟いた。
直彦は冷静に
「いや、俺と同じ存在がいて救われたから構わない」
と答えていた。
「ただ、允華君も料理はしない方がいいな」
そう付け加えたのである。
晟は料理がそれなりにできるので料理要員として夏月家へ出入りすることになったのである。
元々、直彦が「允華君、あの時に推理タイムで困っていたゲーム君は良いのか?」と言った時点から彼が出入りすることは許可されていたのである。
食事を終えると允華は彼用に購入されたパソコンでNo8のフォルダーのファイルチェックをし、直彦は加奈子から3Dviewの使い方を聞いていた。
晟はそんな夏月小説チームを横にノンビリと携帯とタブレットの二台でゲームを楽しんでいたのである。
穏やかな時間であった。
が、突然。
晟は允華を見ると「雨さんタイム来た」と呼びかけた。
直彦は允華を見ると
「じゃあ、俺の横で推理タイムを始めてくれ」
とニヤリと笑った。
小説のネタ集めと瞳が語っている。
晟を共に呼び寄せたのはこれが主原因であることが允華には容易に想像できた。
加奈子はそれに
「なるなる~、ミステリーネタですね」
と興味津々で見つめた。
允華はギンギンの二人の視線を受けて口元に指をあてると
「なんか…緊張する」
と呟きながら、晟から渡されたゲーム画面を見つめた。
チャット画面には『雨:探偵君、推理タイムの始まりだよ』と打たれていたのである。
MMORPGマギ・トートストーリーでの推理タイムの始まりであった。
天村日和こと雨は入力中のファイルを手にチャットを打ち込んだ。
『雨:2007年11月10日金曜日の午前11時に東京の御徒町にある東都銀行上野支店で強盗があった』
允華は打ち込まれているチャットの内容を見つめた。
『雨:午前11時30分に二人組の男が銃を持って押し入り当時店内にいた金を引き渡させるための窓口の女性店員一人以外の銀行員と客全員一か所に集めて彼女を銃で脅して全員の目と口と手と足にガムテープを貼らせた』
『雨:東都銀行上野支店は大きくない店舗で当時店には銀行員10名と昼と言う事で客は二人ほどだった』
『雨:犯人はその窓口の女性に1億円を袋に詰めさせて彼女に他の人と同じようにガムテープで巻こうとしたが抵抗のうえに通報されてその場から鞄を持って逃走』
『雨:銀行員も客も全員が通報を受けて10分後に駆け付けた警察によって解放された。一方、犯人の3人は道路封鎖で30分後に逮捕されたが鞄を持っておらず、見張りと運転を担当していた人物が途中のマンホールで廃棄したと自白したので調べたが結局のところ、鞄は見つかったものの中身の金は見つからなかった』
『雨:3人ともがそれに関して全く分からないというのが、あらましだ』
允華は「強盗事件か」と小さくつぶやいた。
昨日、雨が言ったように事件の種類が変わったことを実感したのである。
これまでの彼の推理クイズは『今』起きている事件だった。
だが、彼は昨日『コールド・ケース』と言ったのだ。
過去の事件ということである。
その分だけ事件の種類も変わる。
直彦は横でフムフムと頷きながら
「そういうことか」
と呟いた。
それに允華と加奈子は顔を向けた。
加奈子は首を傾げ
「どういうことですか?」
と聞いた。
直彦はちらりと允華を見て
「允華君はどう思う?」
と聞いた。
「この時の犯人の心理を考えて」
この雨という人物はある考えでこのコールド・ケースを恐らく引っ張ってきたんだと俺は思ったんだが
允華は思わず「うっ」と言葉に詰まった。
そう、自分に足りないところだ。
恐らく直彦もそれを理解しての質問なのだ。
学べ、と言う事なのだろう。
允華はムムと顔を顰め
「事件の…内容…は分かるんですが」
と呟いた。
晟は隣でバトルをしながらチラチラと夏月小説チームを見た。
允華はジーと穴が開くほど画面を見つめた。
夏月直彦が言っているのは事件の内容というよりは恐らく雨がこの事件を『何故今』允華に伝えているのかという事だろう。
直彦は同じように画面を見入っている加奈子にも
「茂由君も思いついたら言ってくれ」
と告げた。
加奈子はムムッとしつつ
「雨という人がこの話を今している理由ですよね、先生」
と告げた。
直彦は「そうだ」と答え
「茂由君は途中参加だらな」
と言い
「この前、この雨という人物が允華君に出した推理クイズは日本の何処かで現在進行形で捜査が進んでいた事件だったんだが、今回は日付け的にコールド・ケースだろう」
いわゆる未解決事件だ
「過去の未解決事件というのは一件や二件ではない」
と告げた。
彼女は「そうですね」と答えた。
直彦は頷いて
「膨大にあるその事件の中から彼が何故これを引っ張ってきたかと聞いているんだが」
と告げた。
「ただ目についたものではなくて、ちゃんした理由があると俺は思っている」
と付け加えた。
允華は横で聞きながら
「膨大な量の中からこれをセレクトした理由」
今でないとだめだということなのか
と呟いた。
加奈子は目を閉じて腕を組み
「私だったら…その関係者が今日とか昨日とか起きた事件で名前が出た!とか」
とパッと告げた。
直彦はほぉと声を出すと
「良い線だ」
と告げた。
允華はサーと蒼褪めると
「今につながるなんて思いつかなかった」
と呟いた。
直彦は允華を横目で一瞥して加奈子に
「じゃあ、茂由君。もしその関係者がその関係で事件を起こすというストーリーを考えるなら」
君ならどう考える
と聞いた。
加奈子はハッと目を見開くと
「そうか、強盗の時効は15年」
2007年11月ならあと三か月で時効を迎える
「そうしたら、見つかっていないお金を使う事ができる」
と告げた。
直彦は頷いて
「そうだ」
と答えた。
允華は納得すると
「そうか、刑事訴訟できなくなるから隠していたお金を使えるようになるってことは犯人がその金を使いだす可能性があるってことなんだ」
と呟いた。
直彦は笑みを浮かべると
「まあ、探偵ミステリーならある話だな」
と告げた。
加奈子は頷いた。
「そうですね」
三人が話している間にも雨のチャットは流れていた。
『雨:あと3か月で時効を迎えるが今現在も金はまだ見つかっていない』
允華はふぅと
「なるほど」
と息をつくと雨のチャットを再度読み返した。
そして「気になる点があります」と告げた。
直彦は頷いて
「聞いてみたらどうだ?」
と告げた。
允華は頷いて指を動かした。
『コンティニュー・ロール:お聞きしたい点があります』
日和は返事を見てホウホウと呟いた。
『雨:何だい?』
允華は息を吸い込み
『コンティニュー・ロール:その防犯カメラは調べられましたか?犯人の行動におかしな点がありませんでしたか?』
と返した。
日和はそれに
『雨:防犯カメラは二か所あったが二か所とも銃で撃たれて壊されている』
と答えた。
允華は小さく
「やっぱり」
と呟いた。
加奈子はそれに
「?どうしてやっぱりなの?」
と聞いた。
直彦は黙ったまま彼を横目で見ていた。
晟もバトルしながら允華の後ろに立って
「何で?」
と聞いた。
允華はチャットの内容の一部を指すと
「俺、気になったのが犯人はどうして犯人と受付窓口の女性以外の全員にガムテープを張ったかってことなんだ」
と告げた。
晟はそれに
「それは動いたり叫んだりされたら外にばれるからだろ?」
と告げた。
加奈子も頷いて
「そうね。抵抗されたりしたら困るし」
と相槌を打った。
允華は頷いて
「だったら、口と手と足だけで良いと思う」
目まで貼る必要ないし
「時間も手間も掛かるから目を貼るという行為はデメリットだけしかない」
と告げた。
「それでも貼らなければならなかった」
見られたら困ることがあったんだと思う
「犯人にとって」
防犯カメラをわざわざ二か所とも壊したのもそうだと思う
直彦は「なるほど」と呟いた。
允華は視線を下げて
「そして、お金を犯人が持っていなかった」
とすると考えられることは
「あの時、誰にも見られずに店内で行動出来た窓口の女性も仲間で実行犯に金の入っていない鞄を渡して本当の現金の入った鞄は一時的に店内の例えば自分のロッカーとかに保管して騒ぎの収まった後に移動させたと考えられる」
だったら防犯カメラの位置が犯人に分っていたことも説明がつくし
「客の少ない曜日や時間帯も分かる」
と告げた。
加奈子と晟は目を瞬かせて
「「なるほどー」」
と同時に呟いて、顔を見合わせた。
加奈子はふむぅと考えると
「事件の解明になったらそんなにポンポン考え出るのに…最初に全然思いつかなかったのなんで?」
と聞いた。
それに直彦が
「犯人は恐らく15年の時効も調べているだろうから…この半年の間に彼女が隠しておいた金を動かす可能性があると付け加えないのと同じ理由だろうな」
犯人は15年じっと大金が目の前にあるのに我慢していたんだ
「時効が明けたら…直ぐに使いたいと考えるのが心情だろう」
と告げた。
允華は目を見開き
「あ、そうか」
と声を上げた。
允華はその事をチャットに書いた。
『コンティニュー・ロール:と言う事であの時通報した窓口の女性の身辺を調べてみる必要があるかもしれません』
日和はそれを見ると
「なるほど、確かに目にガムテープを張るという行為は時間との戦いをしなければならない強盗事件では無駄な行為の一つだな」
と呟いた。
そして
『雨:さすが探偵君だ。助言ありがとう』
『雨:おつまたノシ』
と打ち込んだ。
允華もまた
『コンティニュー・ロール:おつまたですノシ』
と返して、雨がログアウトするとタブレットを晟に返した。
晟は受け取ると
「じゃ、ロールちゃんのレベリングの旅に行ってくる」
と二台をテーブルに置いてバトルを始めた。
その後、8時まで允華は直彦の指示でホット・ケースからコールド・ケースに変わった経緯をワード打ちしていた。
つまり、昨夜の出来事である。
そして、8時になると允華と晟と加奈子は夏月家を後にした。
直彦は彼らを見送り一人になった家の中で小さくため息を零した。
何時もならば弟の春彦がいるのだが…春彦は九州の実家で頑張っているのだ。
直彦は苦く笑って
「…ま、寂しくないと言えば嘘になるな」
と呟いた。
そして、窓の向こうの夜空を見つめると
「春彦、お前がどんな答えを見つけても俺は受け止める覚悟はできているからな」
と呟いた。
允華は晟と返りながら
「心か」
と呟いた。
晟はそれに
「良いアルバイトだな」
ちゃんと允華の歩調に合わせて話をしてくれる
「良い人じゃん、夏月先生って」
と笑った。
允華は相変わらず真っ直ぐで素直な晟に
「そうだな」
晟が一緒だから余計にそう感じることが出来る
「先生の真意とか」
と告げた。
自分に足らない。足らない。
と思って落ち込む前にこうやって良い方へ目を向けさせてくれる友がいる。
允華は真っ直ぐ前を見つめ
「次はもう少し応えられるように頑張ろ」
と呟き、流れる東京の景色を見つめた。
闇は深まりながらも、その向こうのやがて来る朝焼けも彼に予感させていた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。