推理作家への挑戦状 結界編
晟も允華を見て
「俺も甘えてここで卒論書かせてもらってるけど…そうだよなぁ」
と呟いた。
允華も頷いた。
直彦はフムッと決断すると
「そうだな、春彦が帰ってきている間は俺の部屋を作業場にしてくれ」
と告げた。
「俺はリビングでもどこでも問題ないからな」
加奈子は目を輝かせると
「えー、先生のお部屋…」
と両手を組み合わせた。
晟はハハッと笑うと
「加奈子さーん」
と小さな声で呼んだ。
加奈子と晟は恋人同士だが加奈子は元々直彦が好きでファンでもあったのだ。
勿論、直彦には永遠の恋人である朧清美がいるので今は憧れの人という位置づけである。
允華は笑いながら
「良いんですか?」
と聞いた。
直彦は笑顔で
「ああ、構わない」
允華君たちも気を遣わなくて済むだろ?
と答えた。
直彦の部屋は戸口の正面に入口があり他の生活空間とは一線を画した動線にある。
確かに気を遣わずに出入りし作業もできる。
三人は頷くと言葉に甘えることにしたのである。
直彦は允華を見ると
「それで、允華君」
春彦のことを白露にも伝えてくれ
と告げた。
允華はその意味を理解すると
「はい」
と答えた。
春彦は特別な家系解体のキーパーソンなのだ。
一時でも話を詰められるのは幸いであった。
允華はそれから休みの日に港川絢華を兄の元と甥の月に紹介し、全てが順調に進んでいたある日、一通の手紙が桃源出版に送られてきたのである。
あの『推理作家に挑戦状』の手紙であった。
コンティニューロール
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




