推理作家への挑戦状
隆はふぅと息を吐き出すと
「警察には代議士であろうとなかろうと手加減なく調べるように指示を出しておく」
と男を見下ろした。
男は「何を」と言いかけてハッとすると
「…ま、さか」
と言い周囲を見回して聞こえてきたサイレンの音にがっくりと肩を落とした。
允華は青年を見ると
「大丈夫、これで彼はちゃんと裁かれるから」
と言い
「その空気銃は俺にくれるね」
と手を出した。
「誰かを傷つけても殺しても君の兄さんや切島さんや二人の親友の記者の人たちは喜ばないし汚名も雪げない」
君の話を聞いて助けようとしてくれる人がいるんだ
「君は真っ直ぐ生きて真実を訴えながら幸せになって行かないと」
青年は泣きながら空気銃を允華に渡した。
「俺、その人のこと知らないんだ」
SNSでこの事を書いたら冷やかしじゃなくてその人だけちゃんと答えてくれてそこからやり取りするようになった
「だけど口だけじゃって思って…今日実行するって言ったんだ」
その人誰かわからない俺の為に動いてくれたんだな
允華は微笑むと
「そうだね」
その人の為にも君は真っ直ぐ生きて行かないと
と告げた。
結局、その人物が誰なのかはわからなかったが、代議士の罪は全て白日の下に晒され、佐東達弘が自殺ではなく殺されたことも全てが明らかになった。
桃源出版は兄弟会社の桃源日報にその事を一早くリークしスクープとなったのである。
そして、允華には正式な依頼が桃源出版から申し入れられたのである。
彼のトリック盛り盛りの推理小説は思った以上に人気が出たのであった。
直彦の元にも弟の春彦から他の知らせも兼ねて
『そう言えば、允華さんの小説凄く凝ってて面白かった。夏休みに帰ったら色々話したい』
と電話があり、それを告げると允華は喜んで
「春彦君が楽しんくれたなら少し自信持てますね」
と告げた。
それに対して隆は慌てて
「だが、春彦君のネタは俺がもらう」
と告げた。
…。
…。
直彦はふぅと息を吐き出すと
「いや、俺は恋愛一本でも良いけど」
とポロリともらした。
隆は腕を組むと
「直彦、そう言って春彦君を書くことにやぶさかじゃないだろ?」
と告げた。
それには允華も晟も加奈子もたまらずに笑い声を立てた。
空は青く広がり、夏に向けた日差しが明るく射し込んでいた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




