推理作家への挑戦状
允華は手紙を見て
「でも、きっと意味があるんだと思う」
とチラリと直彦を見た。
直彦は允華の視線を受けて
「大体の場所は分かったが…素直に文章を読めばわかるようにはなってる」
と告げた。
加奈子は驚いて
「わかったんですか?先生」
と聞いた。
直彦は「場所までは分からん」と言い
「だが言わんとしていることは想像できる」
と告げた。
允華は直彦の言った言葉を反芻した。
「文章を素直に読む、か」
江戸城の名前を冠した区域は千代田区。
傘を持たせた人形を入れた木箱。
場所は傘に書いているので傘を逆に読む。
允華は目を見開くと
「まさか…傘を逆に読んで坂?」
と呟くと携帯を取り出して
「千代田区内の坂で男が付く坂」
と検索をかけた。
「山王男坂、明神男坂、男坂」
晟は「そんな名前の坂があったんだ」と言い
「それで?」
と允華を見た。
允華はそれぞれの詳細を見ると
「明神男坂の上ってっことになる」
と告げた。
「山王男坂は53段の階段坂、明神男坂は68段、男坂は108段」
…つまり、68段の明神男坂の上…
直彦は「俺もそんなに男坂があるとは知らなかったが」と感心したように呟いた。
歳三は全員を見て
「それで、木箱を」
と呟いた。
允華は頷くと
「もちろん、助けに行きます」
次の場所も傘に書いていると思うので
「しかも千代田区と範囲は狭いから移動時間も短くて済む」
と答えた。
「二日過ぎてるけど…24時間以内には見つけられます」
加奈子が立ち上がると
「じゃ、行きましょ」
と告げた。
直彦と隆は待機組として待っており、現場へは歳三と加奈子と允華と晟で向かった。
太陽は明るく空を照らしながら西へと傾き始めていた。
明神男坂は外神田2丁目にある神田明神の敷地内にある明神会館の横手にある階段坂である。
夏月家のマンションがある東都電鉄高砂駅からだとJR鶯谷駅で乗り換えて秋葉原から歩くのが一番近い。
が、手紙を持ってきた辻村歳三は
「神田明神なら車で近くまで行って駐車場に止めてから向かうのが一番いいから乗りなさい」
とマンションのゲスト用の駐車場に止めていた車に允華と晟と加奈子を乗せると車を走らせた。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




