推理作家への挑戦状
夏月家へ5月中旬ごろに一時夏月直彦の弟である春彦が帰ってきていたのでお休みをしていたが、再び允華と晟は大学の講義が終わると通い始めた。
と言っても、4回生になると講義はほぼなく殆どが卒論、もしくは卒業制作へと時間が宛てられることになる。
親友である泉谷晟も同じで昼食の手伝いと雨さんタイム発見以外は持ち込んでいるノートパソコンでゲーム企画書とそのプログラム作成に時間を費やしている。
允華は推理小説の二作目を書きながら三作目の資料を専任で編集してくれている茂由加奈子に頼み、とりあえずは二作目を書き終えたら卒論に取り掛かろうと思っていたのだが、思わぬ話が舞い込んできたのである。
夏月直彦と繋がりの深い出版社である桃源出版の辻村歳三が
「先生、前に言っていた白露君の推理小説の件ですが7月号に空きがあるのでどうですか?」
と告げたのである。
リビングで全員が揃っていた時である。
直彦は允華を見ると
「どうする?允華君」
俺は良いチャンスだと思うんだが
「もし君さえよかったら推薦させてもらうけど」
と告げた。
允華は咄嗟に『卒論!』と思ったものの、凄いチャンスだとも思ったのである。
今まではただ書くだけで知り合いの意見しか聞けていない。
まして、雑誌に載せてもらうなんて…口利きでもチャンスはチャンスなのだ。
允華は直彦を見ると
「やります」
と答えた。
そして、歳三に
「宜しくお願いいたします」
と告げた。
歳三はそれに
「こちらこそ宜しくお願いいたしますよ」
と答えた。
そして、加奈子を見ると
「じゃあ、茂由君の腕の見せ所だな」
メールでページ数を送るから頼むよ
と告げた。
加奈子は笑顔で
「はい」
と頷いた。
通常の依頼の場合は企画書を作ってからなのだが、今回は穴埋めなのでページ数を合わせるだけになる。
ただ、そのページを合わせるのが大変なのだが、やるしかないのだ。
允華は意を決すると先に書いた一作目の訂正と修正に取り掛かることにした。
その事を大学の担当教授に話をすると
「そうだね、小説自体を卒業論文にするということも出来るんだけどね」
もちろん卒論と同じくらいの量をかいてもらうことになるけれどね
と助言してくれたのである。
「白露君が三回生の頃から作家である夏月直彦先生のところへ弟子入りしていたのは聞いていたからそう言うこともあるかとは思っていたから私の方は良いと思っている」
允華はそれを聞くと大きく頭を下げて
「ありがとうございます!」
と答え、小説へと取り組むことになったのである。
穴埋めの小説は加奈子と二人で桃源出版の歳三から送られたメールを見てページ数を確認すると加筆修正を急ピッチで行った。
桃源出版の月刊誌小説Singは毎月15日に発刊される。
つまり、締め切りが過ぎてからの依頼なので言って直ぐ入稿できる人に頼むのだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。
 




