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コンティニュー・ロール  作者: 如月いさみ


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36/126

運命の出会い

午後2時半過ぎに飛行機は福岡空港に到着し、允華と勇と絢華の三人は到着ロビーへと姿を見せた。


そこに武藤家の人間が迎えに来ており允華と勇を見つけると

「夏月直彦様よりご連絡がありお迎えに参りました」

と言い、共にいた絢華に目を向けた。

「あの、こちらの方はご一緒の?」


絢華は慌てて口を開きかけた。

が、允華が

「はい、春彦君の知り合いで見舞いに」

と答えた。

「それで、春彦君は今?」


それに彼は厳しい表情を一瞬浮かべたものの

「病院へ先に行かれますか?」

と聞いた。


允華は頷いて

「はい」

と答えた。


三人は車に乗り込み春彦が治療を受けている病院へと向かった。


男性は三人に九州にいる間の宿泊は島津家の方でと告げたが、絢華は

「私はホテルも取っているし、明日には東京へ帰らないといけないから」

と答えて、丁寧に辞退した。

が、男性は困ったように

「出来れば、是非にと思います」

ホテルのキャンセル料はこちらでお支払いいたしますので

と告げた。


絢華は少し困ったようにしたものの

「分かりました」

お言葉に甘えさせていただきます

「宜しくお願いします」

と答えた。


允華は彼女が自分と似た年齢なのにしっかりとした大人の女性なのだと理解したのである。

引くところは引き。

受け入れるところは受け入れる。


大人なのだ。


允華と勇と絢華は病院に着いたもののかなり厳重に警備されていることに驚いた。

病院の中にもボディーガードが配備され、入る時はボディーチェックを受けるのだ。


絢華は固唾を飲みこむと允華を見た。

允華はその視線を受けてそっと耳打ちした。

「春彦君の怪我は狙撃による怪我なんです」


絢華は驚いて允華を見つめた。

狙撃など普通はあり得ない話である。


允華は小さく頷いて、彼女の驚きと問いかけに無言で肯定を示した。


春彦は集中治療室で点滴やバイタルなどの管に繋がれ未だ意識が戻っていない状態であった。

允華は勇と絢華と三人で病院にいた更紗と春馬に面会すると

「この度は」

と頭を下げて

「春彦君はまだ?」

と聞いた。


更紗は小さく頷き

「ええ」

と答え

「直彦さんは気が付かれたと肇から連絡がありましたが」

と告げた。


允華は厳しい表情で頷き

「武藤肇さんがいなければ先生は助かっていなかったと思います」

と言い、頭を下げると

「ありがとうございます」

と告げた。

「先生から色々言付かってきましたので折りを見てお伝えしたいと思います」


更紗は頷いて

「分かりました」

と答え

「こちらこそ、遠路はるばるありがとうございます」

と告げた。


春馬は深く息を吸い込んで吐き出し

「本当に、あいつは…いつかこんなことになるんじゃないかとは思っていたが」

と臍をかんだ。


允華は頷いて

「先生もそれを危惧されていて…俺をこちらに」

と告げた。


それに更紗と春馬は不思議そうに見た。


允華は息を吐き出し

「それで、俺は一か月ほどこちらで滞在しますので宜しくお願いします」

彼女は一週間ほど滞在します

「こちらの彼女は明日には東京へ戻らないといけないので」

と告げた。


春馬はそれに

「わかった、こんな状況だから滞在している間は島津家で宿泊をお願いする」

と告げた。

允華は少し考えたものの

「分かりました、ご迷惑をお掛けしますが宜しくお願いします」

と答えた。


犯人は捕まっていないのだ。

島津家の最大の配慮なのだろう。

見舞客が襲撃されたらそれこそ島津家としては名折れも良いところである。


三人は漸く春彦と対面し、全員が言葉を失った。

ガラス越しであったが大変なことだったのだと改めて理解したのである。


絢華は目を潤ませるとハンカチを手に

「夏月君、私まだ何も返せてないんだからね」

負けるな

と小さく呼びかけ、ふと隣を見てそっと涙を無意識に落としている勇にハンカチを渡した。

「使って」


勇は視線を動かしながら涙をポロポロ落としてハンカチを受け取ると

「すみません、ありがとうございます」

と涙を拭きながら優しく肩を支える絢華にもたれかかった。


彼女はそっと抱き留めると背中を優しく撫でた。

「彼女をこんなに泣かして…踏ん張りなさいよ」

と呟いた。


允華は二人を見ると彼女がいてくれたことに感謝した。

自分だと神守勇をこんな風に包み込んであげることができなかった。


三人は暫く春彦の様子を見て病院を後にすると送迎の車で島津家の邸宅へと向かった。

広々とした屋敷。

允華は白露家でそれなりの館で暮らしているので驚いたりはしないのだが、勇と絢華は流石に気後れした。


絢華は一緒の表情をしている勇に

「なんていうか…富豪ってやつなんだね」

と呟いた。

勇は困ったように笑むと

「春彦さんはもともと普通なんですよ」

マンションでお兄さんと二人暮らししてて

と呟いた。


絢華は「そっか」と答えた。


それぞれの部屋へと案内されて允華は一度部屋に入って荷物を置いたものの直ぐに絢華の部屋へと出向いた。


絢華は彼を迎えて

「どうかした?」

と聞いた。


允華は前に座ると

「実は俺、先生に春彦君に俺と同じように情報を元に推理する…」

と言いかけた。


絢華は直ぐに

「俗にいう安楽椅子探偵って奴よね」

そう言うタイプの探偵にしろって言われたの?

と理解を示した。


允華は「やはり彼女は情報量の多い人なんだ」と心で呟き

「というか、そう言う方式も出来るようにしろということです」

と答えた。


絢華は少し考えて

「それで?私に何をしてほしいの?」

と聞いた。


允華は彼女を見つめ

「ディテクティブGの頃の事件のあらましとその時に提供された写真とか残っていれば」

と告げた。


絢華は顔を顰めつつ

「なるほどねー」

と言い

「私は残してないんだけど日和か悟なら残してるかも」

と告げた。

「ちょっと、待ってて」


允華は頷いた。


彼女は携帯で天村日和に電話を入れると

「もしもし、日和。ディテクティブGの頃の事件の写真とか内容とか送ってもらえる?」

と告げた。

「テリ君と一緒なんだけど…必要なんだって」


允華はそれを見るとデビペントの本名も知っていたので

「やっぱり、全員リアルで知ってるんだ」

と心で呟いた。


天村日和はそれを受けると

「ロールちゃんと絢華がリアデートしてるのか?」

と聞いた。


彼女は眉間に皺寄せると

「おじいみたいなこと言わないでよね」

と言い

「春彦君のお見舞いに来てるの」

日和が教えてくれたから

と告げた。


日和は「そうだったな」と言い

「それで、容体はどうだったんだ?」

と聞いた。


絢華は「ん、まだ意識が戻ってなかった」と言い

「早く気が付いて欲しいけど」

と呟いた。

「それで、先の件を即効お願いするわ」


日和は「わかった」と答え

「取り合えず全部は無理だが…20件ほどなら用意できるから30分程してからメールで送る」

携帯で良いな

と告げた。


絢華は頷くと

「はい、はーい」

と答えて切った。


そして、允華を見ると

「30分程待ってくれって、それから20件くらいだって」

と告げた。


允華は頭を下げると

「ありがとうございます」

と告げ

「あの、雨さん…天村日和刑事とお知り合いなんですよね。みなさん」

と告げた。


絢華は頷くと

「ええ」

と答え

「全員、警察関連だからね」

と返した。


允華は驚いて目を見開いた。

「え?じゃあ、なんで晟を?」


絢華はプッと笑うと

「実はサーアーサー君が入る時に他に一人はいる予定だったの」

と言い

「プラ君には名前がって言ったけど、本当は勘違いだったのよ」

と答えた。

「けど、結局その話自体が無くなったんだけどね」


允華はフムッと考えると

「もしかして、西野さんですか?」

と聞いた。


絢華は目を見開くと

「知ってるの?」

と聞いた。


允華は頷いて

「夏頃にリアルで天村さんには会ってます」

その時に行動を一緒にしていた人が西野と名乗っていました

と告げた。


絢華は苦笑して

「そうなんだ」

と言って

「まあその彼をゲームに誘ってギルドに入ってから説明するつもりだったんだけど彼自身が他のギルドに間違えて入って…その時にサーアーサー君が来てね」

と告げた。

「西野くんは結局即引退したわ…元々ゲームに興味がなかったから仕方ないわね」

日和が誘った意味すら分からなかったみたい


允華は小さくプッと笑った。


その時、絢華の携帯がブルブル震え出した。

恐らくメールが届き始めたのだろう。


彼女は允華を見ると

「允華君の携帯メールのアドレス教えて」

と告げた。

「面倒くさいから転送する」


允華は頷くと携帯を出して

「分かりました」

とアドレスを見せた。


絢華はそれを見ると日和からのメールを全て転送した。


允華は彼女を見ると

「港川さんも警察の人なんですか?」

と聞いた。


彼女は肩を竦めると

「違うわ、私は国立図書館の司書よ」

と答えた。

「父が刑事だったの」

日和とは父を介しての知り合い

「んー、血のつながらない兄妹みたいなものかな」

と答えた。

「私も日和も両親を早くに亡くしてるから」


允華は驚いて

「あ、すみません」

と視線を下に向けた。


絢華は笑顔で

「別に私が気にしてないから、気にしなくて良いわ」

とさっぱり答えた。


20通のメールを全て転送し終えると

「これで全部みたいね」

と言い

「確認して」

と告げた。


允華は頷いてメールを全て開けると中を確認した。

恐らく転送されるだろうことを予測していたのだろう本文に内容を書き、その時に利用した写真が添付されていた。


それ以上の伝言は何もなかった。


そして、最後のメールに

『これからも宜しく、ロールちゃんノシ』

と付け加えられていたのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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